第三者
彼女が何者で、何であのような状況になったのか、なんて不躾なことは聞くことが出来なかった。見た目からしてまだ若いだろう彼女が莫大な何かを抱えているのは見て取れたから余計に。
沈黙が続く医務室に突然ガチャリと扉が開く。
「ルヴィちゃん聞いたよぉ〜。ついに始まったらしいねぇ」
第三者の声に反応したのは、俺も彼女も同時だった。
「え……フユカ…?」
「えっ何々。ルヴィちゃんいつからボーイフレンド出来たのぉ〜?」
美しい琥珀を印象付けさせる金髪の女は、日本で俺の仕事をブッチした女…フユカであった。
「フユカ、久しぶりやな」
「誰かさんが急に日本国内でパイプを作ってきてとか言ったからねぇ。お陰さまでここまで日本語ぺらぺらになったわよ」
「馬鹿なフユカが、成長するとはすごいやん。」
先程までの耳を下げる犬のような少女はどこにも居ない。フユカと嫌味の応酬を繰り広げる彼女は、これこそが素の姿なのではというほどに年相応だった。
「それで、ボーイフレンドじゃなかったらそちらさんは?」
「アタシのせいで巻き込まれたんや。ちなみにフユカの大好きな日本人やけど手を出さんといてな」
「おっ、日本人かぁ。だから私の名前も知ってたんだねぇ〜。」
差し出された手を、俺はぎゅうと力強く握り締める。力の入る限り全力で、だ。
「よろしく~……ってめっちゃ痛い!?」
「俺ですね。フリーのジャーナリスト胡桃 冬萬と申します。昨日さくじつは急なドタキャンをありがとうございました。ムーンプロジェクト所属のフユカさん。体調が治ったようで何よりです」
息継ぎすらせずに一気に捲し立てると彼女は、みるみると顔を青くさせる。
「私の過激ファンより怖いじゃん…!」
赤くなった手をさすりながら彼jは涙目で言ってきたので、それはそれはいい笑顔を向けてやった。あの時、フユカがインタビューに答えてさえいれば俺は商店街で一人寂しくご飯を食べることなかったのだ。上海旅行に来たのだって裏を返せば彼女のせいである。
「あまりの剣幕にスルーしちゃったけど、まじでに何で日本人のジャーナリストが居るの…?ルヴィちゃんはことの重大さを分かってる?」
おちゃらけた雰囲気を一変させて彼女は低い声を出した。一方でその声を向けられたルヴィはどこぞの風を向くやら、不敵に笑う。
「フユカが帰ってくるほど緊急なのは分かっとるよ。オニーサンはほんまに巻き込まれただけ。責任ならアタシがとるわ」




