【一場面小説】ジョスイ物語 〜如水、半兵衛を想うノ段
上方で徳川内府と奉行衆が衝突し、戦が始まった。これに乗じた如水は九州で挙兵した。
千年鳳。永遠に続く平和な世をもたらす鳳凰の姿。如水は、あの竹中半兵衛が用いた、珍しい花押を想い出していた。
包囲した高田城から返事があった。城主の竹中重利は半兵衛が義弟。黒田との誼から如水殿に与いたす、暫し時が欲しいと言ってきた。家老連を説き伏せるのに時間が要るのだろう。 確かに九州一円は石田方、四面楚歌だ。 評定は揉めていることだろう。斯様な場合は、脅してやると話が却ってまとまる。 一戦仕ろう、官兵衛は伝令を追い返した。
半兵衛がこの世を去って二十余年が経つ。絶対者信長の命令を涼しい貌で無視し、我が子の命を救ってくれた畏友は天下泰平を求めていた、志していた。 花押に籠めたその願いを反芻し、この戦で何をなすべきか、如水は己を省みた。