マックの女子高生が喋っていたというのは大抵嘘だが、その実マックに女子高生はいる。
「おかしい! おかしいわよ~!」
「なにがよ」
某青い鳥のSNSでマックの女子高生が喋っていたというのは大抵嘘だが、その実マックに女子高生はいる。
ああ、マックっていうのは「マックスとロナルド」っていう名前のバーガー屋さんね。
「聞きなさいよ~!!」
「聞いてるっつーの」
新発売のシェイクをたしなみつつ、目の前でうなだれている相手を見る。
彼女は話したい。ならば何故すぐにでも話し始めないのか? 簡単なことだ。めんどくさいことにこの女、私からどうしたの? と聞かれたいのだろう。
「どったん」
「うっうっ、二組の川島いるじゃない?」
「ああ」
「少し前、あいつと私ともう二人で今話題のゲームしたのよぉ~それでぇ~まぁ……私と川島が雑魚だったのよね……なのに昨日もう一回やったらあいつ……なんて言ったと思う!?」
シェイクをすする口が止まる。
めんどくせぇ……
その感情は顔に出てしまっていたらしい。彼女は目を泳がせながら続きを話はじめた。
「私が雑魚だっていうのよ!? なんでよ……百歩譲って川島と私は同じくらい雑魚だったのよ!? なのに……私だけが……私だけが悪いみたいに~~~~!!!!!!」
彼女は勢いよくバーガーに食らいついた。そこまで大きくないとは言え、三口で跡形もなく消し去ってしまうのは、花も恥じらう乙女としていかがなものか。
「悔しい悔しい悔しい~!!!!!!!!!
でも何が悔しいかって、雑魚って言われて…私だけが悪いみたいに言われたときに、何も言えなかったことよ! 反論も何も出来なくて……ただただそれが悔しいの……」
「まぁ……川島とお前、どっちが雑魚かなど、見てない私では判断しかねるが……ああ、詳細に話さなくていいぞ。お前目線は今は感情も高ぶっているし、主観的な感想しかもらえなさそうだからな」
「川島……あいつの魂胆はわかるわよ。どうせあれでしょう? 私と同じよ……駄々をこねれば甘やかされてきたのよ。メンバー内でしょうがいないなぁ~っていう末っ子ポジになりたいのよ……でも私は譲らない……今までごねれば譲ってきた連中とは違うのよ……! ごね続けてこのポジションを獲得するなんて絶対許せないわ……
はぁ……川島のことはもう嫌いになりそう……でもさ、みんなで遊ぶのは楽しいの……」
「川島抜きで遊べば……」
「川島の紹介で知り合ったメンバーなの……川島がいなかったら、きっと絶対誘われないわ……それに話題のゲーム以外を遊ぶ時の川島のことは嫌いじゃないもん……なんだかんだ長い付き合いだし……」
「ほかに遊ぶ友達は……」
「いた、けど……ちょっと行かなかったらどんどん行けなくなって……はぁ……」
「疎遠、か。難しいな。そのゲームは一人では遊べないのか?」
「遊べるわ、もちろんね。でも、一度他人と遊ぶ快感を知ったら、もう一人だけでずぅっと遊ぶなんてできないわよ……
うううう~なによなによ、私だけが悪いみたいに言ってさぁ~!!!!」
「まぁ、時間を置くべきだな。たいていの問題は時間が解決する」
「このまま疎遠になったら?」
「お前から誘う努力もしろ。しかし、問題は川島だな。二組は隣だぞ、すれ違って話しかけないのも不自然だしな……」
「あっ『二組の川島』ってSNSの名前だよ? リアル面識ないって~」
ズコッ
シェイクも底をついた。新発売ゴーヤ味、悪くない。
ならばそろそろお開きを。
物語はめでたしめでたしで終わるが、現実はそうはいかない。
この女子高生が川島に意地を張り続け疎遠となったのか、はたまた川島以外の勢力を味方につけて省いたか、はたまた時間が二人の仲を修復したのかは、マックの女子高生だけが知ることなりや。
みんなも川島が悪いと思うよね!?




