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第1話 参戦!

 小説家になろうにおいて、人気ジャンルである「ハイファンタジー」。

 そこで繰り広げられる、熾烈な争い。


 そこには、単なる「作品の質」だけでなく、作家の思考、思惑、戦術、といったドラマがある。


 まさに当人たちにとっては苦役、端から見ればそれすら娯楽、そんな作家の「ランキング攻防戦」を、私の視点から解説する話だ。


 基本的に作家向けだが、読み専の方にとっても十分面白い内容となることを約束しよう。


 ただ⋯⋯。


 「こいついやらしいやっちゃなー!」


 と思われる可能性は高い。

 嫌わないでね。



 あと一応


 ※このエッセイはフィクション要素を多分に含みます。私以外の作品や作者は想像上の存在です。


 としておく。




 日間ポイントを積み上げた作品は、まず、「ジャンル別ランキング」に掲載される。


 そのランキングの中で、さらに苛烈な競争を勝ち抜き、日間ポイントを積み上げたものだけに許される「日間ランキング、ジャンル別上位五作品」という特別枠。


 トップページの「ランキング」ボタンを押せば、まず各ジャンルの日間上位五作品が表示されることから、「表紙」とも呼ばれる、各ジャンルの表彰台だ。



 ここで私が、ランキング上位を目指すために与えられていた武器を紹介する。


 作品名は「【完全版】俺は何度でもお前を追放する~以下略~(長いので以下から『完全版』と呼称します)」


 この作品はいわゆる「リメイク作」であり、元になる「簡易版」は、総合ポイント六万を超え、ブックマークは6580ほど。


 他の実績としては、「農閑期の英雄」という書籍を一冊出版したことがあるだけの、ランキング上位にひしめく猛者たちからすれば、とるに足らない存在だ。


 おそらく長谷川凸蔵という名前だけ見て、作品をクリックする人はほとんどいないだろう。

 


 この完全版だが、前作の評価があったので、私はかなり油断していた。


「まあ、投稿すればそれなりに読まれるだろう』


 と。


 実際、私が今まで投稿してきた作品と比較すれば、早期に読者は増えた。


 しかし、私の中には


「えっ⋯⋯こんなものなのか?」


 という思いが拭えなかった。


 この時点で、私が本作を告知した方法は


 Twitter

 活動報告


 主にこの二つ。


 そう、そんなに読まれなくて当然なのである。


 なぜなら、簡易版を気に入ってくれた人のほとんどは、この時点で完全版の存在など知らないのだから。


 それでも、少しずつ発見してくれる人が増え、作品はランキングを登っていった。


 完結時のランキングは「七位」。


 これからだ! と思ったのだが⋯⋯。

 そこから、ポイントの伸びは鈍化した。


 最高順位、ジャンル別日間七位。

 これがこの作品に与えられたら結論だ、と思った。


 なぜなら、有名作家たちの新作も上がってきているし、上位層も厚い。


 しかも作品は完結している。


 1日あたりの獲得ポイントも、ピーク時の1000から、800程度に収まってきた。


 しかも下から、ある有名作家の新作がぐんぐん上がってきていた。


 手詰まりだ!


 ⋯⋯と、思っていた。



 そこで、私に一つの連絡があった。


 


 実は『簡易版』がランキング上位にあった時期、コミカライズの打診を受けていた。

 それに対して私は


「完全版を執筆するので待って下さい」


 と、お願いしていたのだ。


 受け取った連絡とは「コミカライズの詳細発表はまだダメだけど、企画進行中の発表はOK」というものだったのである!



 来た!


 ここで打てる、新たな一手!


 「簡易版」を更新する「口実」である。


 すぐさまどんな話にするか考え、急いで「簡易版」を更新した。


 500文字程度の、ちょっとした小話だ。


 もちろん、あとがきで告知を忘れないようにする。


「コミカライズ決まりました! あと『完全版』も完結しましたよ」



 さて、これにより何が起こるか。



 簡易版にブックマークしている6000人。


 そのうち、『更新通知を受け取る』に設定している人々へと、コミカライズの報せとともに、『完全版』の存在が発信されるのだ。


 「簡易版ブースト」ともいえるこの更新により、完全版は再び上昇した。


 ジャンル別ランキング六位。

 1日の獲得ポイントは、1500ほど。


 下から上がってきた作品との差は、約100。


 ギリギリだった。



 そして、その状況での上位五作品。


 五位の作品は1550ほどで、もしかしたら抜けるかも、という感じだった。


 しかし、念には念を。



 実は、その時点でハイファンタジーランキングの日間一位だった作品。

 その作品は明らかに「異世界転移」作品だった。


 第1話で「カラオケいこうぜ」とか、第2話で「1ゴールドは一円」といった説明があったのである。


 読み専の人には知らない人もいるかもしれないが、「異世界転生」や「異世界転移」は、別枠として扱われるため、それ専用のキーワードを設定する決まりになっている。


 キーワードを設定すると、その作品は「異世界転生・転移ランキング」という、別のランキングの対象になるのだ。


 つまり、もしその作品が「異世界転移」だとした場合、明らかなルール違反なのである。


 私には以前、「農閑期の英雄」が日間総合三位を頂いた時に一位だった作品が、後日、複数アカウントによる規約違反で強制退会になった、という経験がある。


 しかもその作者は、今でもTwitterの自己紹介欄には「なろうで日間総合一位」などと、裏口入学してそれがバレたにも関わらず、首席卒業みたいな自慢を載せているのである。


 そのせいで、三等賞となった作品の事なんて知ったことではないのだろう。


 恥知らずとはまさにこのことだ。


 私はそういった経験から、故意、過失は別としても、不正の被害に敏感なのである。


 そのため、私はその2日前に、運営に「これ異世界転移じゃないですか?」と連絡していた。


 しかし、3日目にしても対応する気配がない。


 いてもたってもいられず、私はその作品の感想欄に


「これは異世界転移じゃないですか? 違うならこの感想を消して下さい。もしそうなら、キーワードを設定してください。キーワードの設定を確認したら、この感想は消します」


 と書き込んだ。


 数時間して返信があった。

 内容は簡単に言えば


「すみません、間違えてましたので、設定します。今後も読んで下さい」


 といった内容だった。


 小説情報に乗ったキーワードを確認しながら、私が「誰が読むか」と思ったとしても仕方ないだろう。


 おそらく、今後どんな名作を書いたとしても、私が彼または彼女の作品を読むことはない。


 うそうそ、読む読む!

 応援してるよ!


 さて。


 とにかくハイファンタジー一位の作品に「異世界転移」のキーワードは設定された。


 しかし、なろうのハイファンタジーランキングにはまだ載っている。


 実は、ランキング更新の時間にならないと、このキーワードを設定してもすぐに順位には反映しないのだ。


 この時の私は


「とにかくキーワードは設定された。次の更新で下に抜かれなければ五位、もしかしたら上を抜いて四位になれるかも」


 という状況になった。


 そして更新された、ランキング。


 私の作品は五位だった。


 私が「抜けるかも?」と思った作品は、なんと一位に上がっていた。


 こういったポイントの推移には、何か理由がある。


 私はすぐに、該当作品の最新話、その「あとがき」へと飛んだ。


「やはり⋯⋯」


 私の予想通りだった。


 どうやら物語の佳境で、「一区切りなので評価を!」という旨の告知があった。

 それに応じて、大量のポイントを獲得していたのだ。


「危なかった⋯⋯」



 もし、あのタイミングで「異世界転移」のキーワードが設定されていなければ、私の作品は六位のままだっただろう。


 そうなると、私は「六位」VS「七位」の対決を制する自信はなかった。


 向こうの方が勢いは上だし、自分は「簡易版ブースト」が切れるからだ。


 そのまま順位は入れ替わり、完全版は沈んでいっただろう。


 だが。


「五位」VS「六位」。


 この戦いなら、こちらが圧倒的に有利だ。

 それくらい、五位と六位には壁がある。


 すぐに六位の作品の作者ページから、更新されている作品を確認する。


 執筆経験豊富な方で、人気作を多数抱えている。

 それらの作品が複数更新され、最新作への誘導が行われていた。


 つまり相手は「人気作からの、誘導ブースト」を駆使し、上位に迫っていたのである。


 この状況で、もし私が逆転されていたら、盛り返せなかっただろう。


 五位の壁。


 なんども言うが、それは分厚い。


 個人的には、一位と五位よりも、五位と六位の方が圧倒的に壁がある。


 私の作品は、五位になることによって、ユニークユーザーは前日の倍以上に増えた。

 それほど、表紙入りの恩恵は大きい。

 つまり、ランキングから作品を探す人は、まず上位五作品から、それが終わってはじめてその下を覗くのである。


 「五位ブースト」VS「誘導ブースト」の戦い。


 ポイント獲得とは、つまりどれだけ「まだ作品にブックマークや評価をしていないユニークユーザーをかき集められるか」であり、その戦いをギリギリで制したのだ。


 一度五位の壁に阻まれ、ポイントが一旦下降すると、もう浮上は困難。


 それほどの壁がある。


 という面から言えば、私はその壁を「繰り上げ」という、考え得る中で、もっとも楽な手段で越えた、ともいえる。


 つまり、「運」。


 結局運が左右する要素は大きい。



 こうしてなんとか五位へとたどり着いた完全版。


 しかし、この後も(現在進行形で)戦いは続くのである⋯⋯。



(続くかも)




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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界転移、転生をチェックすると別ランクになるとは知らなかった。 でも、私の作品はランクインしないから安心。
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