健康体
生物は何も食べないと死んでしまう。当然人間も例外ではない。つまり朝から気分の良くない僕もなにか食べないといけない。
一食ぐらい抜いてもいいかと考えたが母親の「絶対に飯は抜くな」の言葉を残しているのでこれに従うことにする。ちなみに母親は二週間出張中で、予定では明後日帰ってくることになっている。
昼休み。僕は昼休み開始の鐘と同時に急いで食堂へ向かう。急ぐのは食堂のあまり多くない席がすぐに埋まってしまうからだ。
食堂に着くと、僕はすぐに日替わりランチを注文した。体に優しいものが出てくるようにお祈りする。
「葉山くんだね。はいこれ」
あゝ、無情。今日はフライ定食のようだ。僕にはまだ祈祷力が足りないというのか。しかし出されたものは食わねばならない。
……今なんで名前を呼ばれたんだ?まぁいいか。
運良く食堂の隅に空席を見つけたのでそそくさと座る。
「いただきます」
とはいったものの、まだこのフライ定食のことをよく見ていなかった。もしかしたら案外簡単に食べられるかもしれない。
そして、僕の目に最初に止まったものは…
「エビフライ……」
エビフライがデカい。蕎麦屋の海老天くらいデカい。それが二つもある。しかも他のフライもどれも同じようなサイズだ。なんだこれ。地獄か?
「全部食ってやる……」
僕はエビフライにかじりつく。熱々だ。美味い。気がつくと一本まるごと食べてしまっていた。毒を食らわばなんとやら。勢いで尻尾も食べる。
次は何を食べようか。行儀悪く迷い箸をする。
「……うっぷ……」
やはりエビフライを一気食いするのは良くなかったか。とりあえず味噌汁を飲んで落ち着こう。
カラン、と下から音がした。箸を落とした音だった。箸を拾おうと身を屈める。が、そのままバランスを崩して床に倒れてしまった。
「あえ……?」
体に力が入らない。起き上がるどころか喋ることもまはまならない。
「うぅ……」
「おい、大丈夫か?」
誰かに体を起こされる。しかし、返事もできずに頭もがくんと垂れ下がってしまう。
「誰か!養護の先生呼んでこい!」
誰かが誰かを呼ぶ声が聞こえる。そして、だんだん眠くなってくる。
……眠い。もうこのまま、寝てしまって、もいいんじゃ、ないか?
僕の意識はそこで途切れた。