終わりに近い始まり
電車に揺られること三十分。軽い吐き気を感じながら学校へと歩き出す。最近は何故か動くとすぐに気分が悪くなる。週末にでも病院に行ったほうがいいのかもしれない。
そんなことを考えていたら教室に着いた。ドアを開けると談笑中の同級生諸君が一斉にこちらを振り向くが、それ以上は反応せずにまた話し始める。そう、僕には高校の友達がいない。今更作りたいとも思わない。
八時三十分。学校中に鐘の音が響き渡る。鐘が鳴り終わるまでに登校しなければ遅刻となる。鳴り終わるというのも曖昧な気もするが、これが伝統らしいので深くは考えないことにする。
鐘がだいたい鳴り終わったところで担任が姿を見せた。
「みなさんおはようございます。出欠確認をしますので名前を呼ばれたら返事をしてくださいね。あ、今日は沖野さんはお休みだそうです」
沖野……?あぁ、隣の席の女子か。最近は体調を崩す人も多いらしいし、僕も気を付けなければ。いや、さっきの吐き気もその前兆だったりするのか…?
「葉山くん?葉山一郎くん?」
「え?あ、はい」
名前呼ばれてたのか……全く気が付かなかった。朝一番から集中力を欠いているようではならない。いつの間にか終わっていた朝のホームルームを僕は心の中でそう締めくくった。