表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

未完結で終わる物語を

作者: 愛兎

朝目が覚めると、アナログ時計の針は5時50分を指している。目覚ましよりも10分早く起きれるようになったのはいつからだろうか。前まで目覚ましより後に起きることの方が多かったのに、いつの間にか二度寝をすることも無くなり、起きれなかった時の保険の為に着けておいた目覚ましを切って仕事の支度を始める。

いつもと同じ工程、作業は少しの狂いもなく時間通りに行われていく。まるで自分は機械のようだと感じた時にはこのサイクルから抜け出せなくなっていた。

朝7時半、外は陽の光で満ちている。街全体を照らす光は外に出た自分も例外なく照らしてくれる。その光に温もりを感じることは無いが、一日のスイッチを押してくれるような気がした。


いつもと同じ時間の駅。ホームは人でごった返し、人波と人波がぶつかり合っている。駅には秩序というか、遠慮がない気がする。

その光景に慣れた今でも、満員電車だけには慣れることができない。周りの人間は邪魔だし、朝は始まったばかりだと言うのに汗くさく感じる。雨の日なんて最悪だ、鼻の中に形容しがたい臭いが電車の中を埋めつくしていく。

ただひとつ良かったことがあるとするならば電車からの景色だろう。吊革に掴まっている先から見える窓の景色は、電車の外では味わうことの出来ない一枚の絵になっている。

この景色が堪らなく好きだ。

田舎も、都会も、空も、草原も、川も。どこを切り取っても、いつ切り取っても、何回見たって飽きることの無い素晴らしい二次元がそこにあった。


写真集のような景色を見ながら毎日のように思っていることがある。


『こんな生活から抜け出したい』


小説を書いて印税で生活をしたいと何度も思う。しかし、今小説を書いていないのは小説を書きたいからじゃなくて印税が欲しいからだ。楽をしたいからだ。

大好きなはずの小説も、大人になるにつれて読まなくなって、書きかけの小説もたくさん増えてしまった。この全ての小説を完結させることができれば少しは人生が変わっただろうか。なりたい自分になれただろうか。夢を追うことは、叶えることはできただろうか。


この先叶えることの無い未来を想像して、電車を降りた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ