言葉足らずのラブレター
言葉足らずの愚痴には用はない。
面と向かって言われないけど、斜に構えて待っていて。
思い付く限りの口説き文句を言う前に、歯並びの悪い口はマスクで隠せ。
噂話の生け贄は願い下げだ。
甘い言葉に身震いし、歯軋りで邪魔する出番を待っている。
ガリガリに擂り潰すから期待して。
粉々にしてから砂浜に撒き散らすから、自己探求者は切りきり舞い。
壊れたバイクに跨がって、勝利宣言は誰がする?
全力でアクセル吹かせば、気の抜けた罵声を吐き散らす。
初恋の煮え切らない罰の身代わりに、失恋の冷めない反省の弁を捧げます。
仕上がったラブレターは虫食いのごとく隙間ばかりで、これでは世間話の餌にもなれない。
あの遺言は痩せ細るでもなく、煙のように器用に消えていく。
雲と白髪と空白の見境がなくなるのは言うまでもない。
言葉足らずの愚痴は言うまい。
背中越しに語りかけるのはもう飽きた。
呼び止めようとした声は、斜めに刺す光に掠め取られて飾られる。
楽しんでいいのか、悲しんでいいのか、どれにする?
言葉要らずの謝罪が通用する場所は何処ですか?
歯切れの悪い屁理屈だけが宝物のように降り注ぐ。