星空
初夏。
星煌めくこの季節。
夏の夜空は最高だ。
俺の名前は牛尾明彦。流星高校三年。天文学部所属。趣味は天体観測。特技は、八十八星座すべてを空で言うこと。今、一番欲しいものはMY天体望遠鏡。
「はい、牛尾さん。そろそろ休憩終了です。早く困っている人を見つけ出して“ハピポ”を稼いでください。時間がないんです!」
教師が生徒に注意するような口調で呼びかけてきたのは天使のシロ。名前がないと言ったので、俺がテキトーに付けてやった。
頭にクリーム色の輪っかを浮かべ、その両脇に柔らかそうな純白の羽を生やした女の子。
小顔で童顔な彼女の服装は、これまた純白のワンピース。天使はみんな同じ恰好ですよー、らしい。生地が薄く見えるのは気のせいか?
俺ら男共にとってはお得な情報だと思う。
「もう、行くのかよ? もうちょい休もうぜ?」
「ダメです! 貴方を鍛えてあげられる時間は一週間。今、貴方には『天界』の未来が託されているんですからね」
少し怒らせてしまったみたいだ。
「分かったよ」
女の子を怒らすと面倒だから、ここは黙って従おう。
「分かってくれればいいんです。さぁ、探しましょう!」
シロは無言で俺の前を歩いていく。
本当にこの子の事、信じて良かったのか?
頭を掻きながら、思わず天を仰ぐ。
星空は俺の気など知るわけもなく、いつもと変わらず星たちを煌めかせていた。
やっぱり、星は美しい。
俺がシロと出会ったのは一日前のこと――昨日は七夕だった。