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魔剣

王都は賑わっていた。いつものように。

だが、王城のある一室だけは、静かだった。

可憐な王女の面影はない。

「ねえ、私を解放するあの方はいつ来るの? 」

少女は歯を食い縛り、

「早く私を解き放って、連れ去ってよっ!」


悲痛な叫びは何処にも届かぬまま闇に消える。

なんだ、ここ。

そう、俺は


異世界に行ってしまった。


「めちゃくちゃすぎんぞ・・・」


とまあ軽いパニックになりながらも歩いてみると何か足元で鈍い音がした。

ちょっと嫌な予感がしたので、下を見ると、イノシシのようなブタのようなものが俺を見ている。

その感想は、「デケェ・・・」 俺の身長ぐらいのイノシシが俺を睨みつける。

あれ?これ、ヤバない? イノシシは威嚇している。俺はとっさにVRから一緒に連れられた剣を手にする。これで戦えるのか・・・?鼓動が速い。ドクドクいってるよ!これ!剣は持ったものの 相当ヤバイシチュエーションだ。落ち着け カイ、こういうときはああああああああああっっ!イノシシの無慈悲なタックルが俺の腹に直撃した。


あーあ。いきなり異世界行って、なんかできんのかと思いきや、なんもない草原でイノシシにやられるとは・・・。 お母さん お父さん 今までありがとう。僕は死にます。異世界で大活躍の予定でしたが、イノシシにやられました。あっちの世界でいいところに墓があったら嬉しいです。さようなら。 2053年 吉日 斉藤 櫂


あれ? 死んでない?というか傷一つついてない? あれ? 目の前にはイノシシが俺の腹にタックルを続けるも俺は動じない。まさか・・・ ゲームのステータスがそのまま俺に移ったのか・・?


ポケハンは、育成型ゲーム。

発売日初日からやり込んだ俺。というより、高経験値モンスターを討伐し尽くした。つまり、あのフィールドで毎日チート級の速さでレベルを上げ続けた俺のレベル、実に 307。攻撃力はカンスト。スピードもカンスト。そして数多のスキルを持った俺の異名は 改造者(チーター)。俺を倒せるものはいなかった。そして、ゲーム内でも優れたプレイヤーに与えられる武器。その一つ 《魔剣 エル・ジフリーチ》。それを駆使してそろそろクエスト無双する予定だったのだが、今は別だ。ゲームのデータが俺に移ったなら、俺は負けない。


そこに、手が淡く赤く光るのを感じる。これは向こうでいうスキル 《忍耐カウンター》の発生合図だ。これが出たということは、「この世界でもスキルが使えるのか…」すると、向こうからイノシシの仲間なのか膨大な量のイノシシが攻めてくる。


瞬間、俺は背中から 魔剣を抜く。

「お前らは、俺の異世界転生最初の相手だ。」

イノシシが迫る。

「見せてやる…俺の強さっ!」


禍々しい剣の剣先を相手に向ける。魔剣のスキルの使用モーション。そして、迫るイノシシに向かって地を蹴り、走る。走るというよりは浮いている感じだ。通常は普通に走るのだが、スピードカンストの俺は違う。と、俺はイノシシの大群の反対にいた。何が起きたのかわからないようなイノシシの反応。


「水晶の牢獄クリスタル・プリズン…」


刹那、イノシシの大群が透明の水晶で固められる。

「改めてすげえな…」

イノシシに向かって合掌し、その地を後にする。


これが異世界。ならば街があるはず。歩いていれば見つかるだろう。なにせ俺の幸運値はカンストしている。


こうして俺は、異世界での第一歩を踏み出す。

「隊長、これはっ…」

「団長に報告しろ。クレトラルク草原に巨大な水晶があった、と」

「は、はいっ。 直ちに!」

男は水晶を眺める。そして嘲笑する。


そして、言った「解放の日は、近い…」と誰にも聞こえない声で。

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