声に出さなきゃ分からないよ
見上げた夜空は、あんまりにも綺麗で。
もったいないくらいに澄んでいて。
雨とまでは言わないけれど、一面覆う曇り空くらいだったら僕らしいのにな、なんて彼は思った。
風が頬を掠めて、左側の髪を揺らす。
目の前は真っ暗だった。
暗闇と言うよりも、何かあるはずの場所に光がないからだろう。
いや、もしかすると、彼の目にはそこからの風景などは一切見えていないのかもしれない。
それから、ゆっくりと。
彼は。
20階建のマンションから、羽もなく落ちていくのであった。