11 来襲
加筆すると、前の文との間に綻びが出ます。
ようやく直しました。
もう、大丈夫だと思うんだけど…。
ディンダーデンは剣を豪快に振り回し、どれだけ居るんだ。と思う数の男を斬り殺す。
一歩足を下げその横に死体を見つけると、一瞬それがもぞりと動き出さないか、つい見守ってしまった。
が、その死体が死んだままなのを確認し
『…だよな』と、吐息を付く。
斜め後ろでシェイルが小さなレイファスの腕を掴み、後ろに回して自分に向かい来る真正面の男に、その美貌でいきなり、にっこりと笑いかけるのを見る。
下卑た賊がシェイルの輝くような美しさに見惚れ、惹かれるようにそっと寄ると、シェイルはいきなり後ろに隠した小刀をすぱっ!と振り回し、その男の喉を掻っ切った。
ディンダーデンは呻いた。
「いい手だな」
シェイルは憮然と唸った。
「接近戦じゃないと殺れないから、仕方無いだろう?」
「短剣が使えるだろう?」
言って正面から飛び来る賊を、背にかかる濃い栗毛を散らして一瞬で剣を、ずばっ!と横に薙ぎ払い斬り殺す。
シェイルが、独り言のようにつぶやく。
「…数が、無い」
「そうか…」
ディンダーデンがずっ!と横に歩をずらすと、シェイルとレイファスを背に回す。
そして豪快に剣を振り回し、また一人斬り殺しながら、背後に向かって怒鳴る。
「そっちの数は、減ってるか?!」
ローフィスはシェイルの背の後ろの小さなレイファス目がけ、寄り来る賊の正面に回り込んで降って来る剣をがしっ!と受け止めていたが、その賊の背の向こうにもう二人、子供を狙い駆け寄る賊を見、後ろのディンダーデンに怒鳴り返した。
「…減らないな。まだ、来る!」
ローフィスの言葉にディンダーデンが振り向くと、まだわらわらと後方岩影から賊が群れなして、飛び込んで来るのが視界に飛び込む。
賊は一人倒れてもまた一人と、その数を減らす様子無く次々と走り来て、彼らの周囲を取り巻き、隙あれば子供をさらおうと狙いすます。
アイリスは幾度も背後のテテュスを振り向いて確認しながら正面の敵、そして横のディングレーとの隙間をすり抜けようとする敵に剣を短く振って、素早い一撃で倒し続ける。
チラと左横に視線を送ると、斜め前に出たローフィスが走り込んで来る賊に一瞬で間を詰めて斬り込みながら、左手に持つ短剣をレイファスを狙って滑り込む賊に投げつけて、その男を仰け反らせていた。
ローフィスの向こうには金の髪を振ってギュンターが、次々に現れる男の群れに突っ込んで行き、その豹の様なしなやかな動作で右左に、銀の閃光を放って矢継ぎ早に薙ぎ倒して行く姿が見える。
ゼイブンはファントレイユを背に回し、飛び込む賊と剣を交わし、ローランデがファントレイユの後ろに回ってその背後を護っていた。
数を、こなすしか無いのか…!
アイリスはぎり…!と唇を噛むと、それでもテテュスを奪い去ろうとする敵を、斬り殺し続けた。
ディングレーはテテュスを背に回し、間に割り込もうとする男に激しい一刀を振り下ろす。
右横をチラと見るが、シェイルがディンダーデンの背に護られ、それでも隙間から滑り込む賊の進む歩を止めようと、銀の髪を散らし素早く真正面に回り込んで逆手で持った剣をすぱっ!と振り回し賊の喉を掻き斬っていた。
皆が同様、押し寄せる敵と戦うしか術が無いと腹を括り、ディングレーはまたテテュスを捕えようと背後に飛び込む賊の真正面に割り込み、一瞬で剣を、振り降ろした。
最後方に居たゼイブンはファントレイユを背に回し、岩場から再び続々と押し寄せる敵の一団に眉間を寄せる。
背に回したファントレイユを狙っているのは一目瞭然で、隙あらば背後に忍び込もうとする。
ざんっ!
腹立ち紛れに長剣を思い切り振り、斬り殺すともう次の男が背に滑り込み、怯えるファントレイユを捕らえようとするのを目に、短剣を投げつけ阻止した。
「ぐわっ!」
ゼイブンの反対側でファントレイユを護っていたローランデも、寄り来る賊を右に左に一瞬で剣を返して斬り殺す。
が隙を狙いファントレイユに寄る賊に気づくとその前に、長い栗毛を流し一瞬で付き、剣を斜めに振り切った。
「ぐあっ!」
が、右を殺っても直ぐ左に滑り込もうとする賊を殺る羽目に成り、彼の剣は一時も止まる事無く次々と現れる敵に銀の閃光を降らせ続けた。
チラと視線を送ると後方岩場から、賊の一群がどっ!と走り来るのが見え、思い切り舌打つ。
メーダフォーテ。
どれだけの報奨金を子供達に掛けたんだ…!
賊は皆、下卑た顔で子供をお宝のように目を輝かせて見つめ、灯りに群がる蛾のように、斬られても斬られても次が突っ込んで来る。
ファントレイユは前後を護っていたゼイブンとローランデの戦いが、そのあまりの賊の多さに激しくなり、次々に襲い来る男達を相手に激しく足場を変え、引き、追いかけて止めを刺し、素早く位置を変えて新しい敵と戦い、混乱を極めて行く様を、二人に挟まれ狼狽えて見つめていた。
ギュンターが、坂に成った草原の下方から押し寄せる敵の数が減ったのを目にし、その護りをローフィスに任せ、まるで砂糖に群がる蟻のように後方に群がり来る賊の数の多さをを見、援護に回ろうと進むものの、直ぐに周囲をぐるりと囲まれて足を止められ舌打つ。が顔色も変えず後方に押し寄せる敵を睨み据え、その俊敏で激しい剣を振り回して突進して行った。
ファントレイユはギュンターが、金の目立つ髪を振り、囲みを少しずつ崩しながらも剣を振り続けて敵を薙ぎ倒し、駆け付けようと少しずつこちらに進み来るのを見た。
けどゼイブンとローランデの前にまだ、あまりにも多くの賊達が二人にどっ!と押し寄せて来るのを見つめ、その数の多さにはらはらして、必死でゼイブンの様子を伺う。
ゼイブンは次々に横を擦り抜けようとする男達を蹴り倒し、倒れた男の腹を思い切り踏みつけ、進み来る賊の振り下ろす剣を自らの剣でがちっ!と音を立てて止めながらも、横の隙間から後ろのファントレイユを捕まえようとする敵を、剣を合わせたまま右に左に次々に腹を蹴って、押し戻していた。
がゼイブンの足の届かない場所からその賊は入り込み、ファントレイユの目前にいきなり下卑た顔の、まるで宝物を見つけたような輝く目をした賊が現れ、屈んで捕まえようとする。
「…!」
ギュンターが賊に剣を合わせながらこちらを見つめる。
けど…距離が遠くて、間に合わない!
ファントレイユは捕まえようと手を伸ばす男に背を向ける。
咄嗟に手を掴まれ、思わず叫んだ。
「ゼイブン!」
ゼイブンのブルー・グレーの瞳が、こちらに振り向く。
ゼイブンは左手で短剣を投げようと腰から引き抜いた瞬間、別の賊が横から剣で襲い来て
「糞…!」
唸って咄嗟に短剣を持ち上げ、がきっ!と音を立てて受け止めた。
両手に持つ刃で二人の敵を押し止め、顔を歪ませるものの気が気ではない。
「ファントレイユ!」
ファントレイユはゼイブンの様子を目に、必死で賊が捕まえようとするその手から、すり抜け身を屈めて走る。
咄嗟にローランデが滑り込んで、追いかける賊の背を、ずばっ!と斬り付ける。
がローランデは直ぐ、はっ!と気づいて横から振りかかって来る剣に咄嗟に剣を合わせ止める。
がちっ!
頂き!と反対横から襲う剣をも、がちっ!と音を立てて左脇差しで止め、がその間に別の賊が飛び込んでファントレイユの背を追い始め、ファントレイユは二人に背を向け必死で追う賊の手から、逃げ出していた。
ローランデが、合わせていた両の剣を一瞬で上に振り上げ、ずばっ!と左右同時に振り降ろし、斬り殺して叫ぶ。
「ファントレイユ!」
がその姿は、続々と寄り来る賊の手を振り切って逃げながら、どんどん離れ行く。
追いかけようとしたローランデの歩を、正面滑り込む賊が止めようとし、ローランデは一気に突進し、相手が剣を振る隙を与えず斬り殺す。が直ぐ次が現れその賊に剣を振ろうと構えた時、両横、そして背後に賊の気配を感じ一瞬剣を握る手を、ぴくりと動かした。
ぐるりと囲む賊達は、戦う隙を狙い澄まして待ち構える。
ローランデは構わず剣を振りかぶり、突進して行く。
背後の賊がその背を狙い剣を、振りかぶる。
ローランデは賊が剣を振る前に、一瞬で剣を鮮やかに逆手に持ち変え、背を向けたまま背後の賊の懐に飛び込んだ。
「ぐあっ!」
前に居た筈のローランデの背が目前で、剣が腹に突き刺さり、賊はくるり!と振り向くローランデを驚愕の表情で見つめ、ローランデは突き刺した剣を、血を迸しらせて引き抜き様直ぐ右横の賊の前へ、一歩詰め寄って血糊真新しい剣をざっ!と横に薙ぎ払った。
「ぎゃっ!」
胸を斬られた賊は仰け反り、背を向けたローランデ目がけ、左横に居た賊が背後から襲い来る。
その間にローランデは一瞬で上体を返し、栗毛を散らし振り向き様剣を斜めに一気に振り下ろす。
ずばっ!
剣を振り上げた隙だらけの腹を一瞬で斬られ、賊はどっ!と前に倒れ伏す。
間髪入れず真正面に居た、右から襲いかかる敵をローランデは引かず、頭を下げて突っ込んで行き、一瞬で腹にその刃を突き刺す。
「ぐっ!」
賊は口から血を吹き出しローランデが剣を引き抜き様、前へと倒れ込んだ。
だが倒れた男達のその周囲を、ぐるりと囲む賊達が姿を見せる。
一瞬で四人を殺すその凄腕の使い手に、皆が皆、距離を置き獲物を隣に譲り合う。
が、振り向くローランデの美しく端正で気品ある顔の、射抜くような青いその瞳に睨め付けられ、足を止めたまま包囲網を解く事無く、賊達はローランデを殺す機会を狙い続けた。
ファントレイユは背を追われ、けど正面から捕まえようとする賊を避けて右に左に、蛇行して走りながら必死で捕らえようとする賊の手を、振り切って逃げ続ける。
ゼイブンはファントレイユの姿が賊に正面を塞がれる度、それを避けてすばしっこく逃げ続けながら、どんどん遠ざかって行くのを目を見開いて見つめ、咄嗟に左手の短剣で剣を合わせてた賊の腹を思い切り蹴り倒し、敵がヨロめいた隙にさっと短剣を振って斬り殺す。
賊は喉から血を吹き出して仰け反り倒れ、が右手長剣を合わせてたでかい賊が力で押し来、それを必死で右手一本で押し止めながら左手に握る短剣を、ファントレイユを追う賊の背に一瞬で投げ付ける。
だん!
男が背に剣を受け、前のめりに崩れるのをファントレイユは見たものの、追う賊は四方から寄り来、ファントレイユは差し出す手を避け再び駆け出して、更にゼイブンから離れ行く。
「糞………!」
がしん!
一瞬離れ、だが再び頭上から振って来る長剣を、瞬時に長剣で受け止めながらもゼイブンは気が気で無く、ファントレイユを追う賊に一人。また一人と短剣を、投げつけては愛息を捕まえようとする敵の数を、減らし続けた。
テテュスは後方、ファントレイユが群れから賊に囲まれながらも必死で小さな隙を付いて逃げているのに気づく。
ゼイブンの短剣が一人。一人と銀の閃光のように捕まえようとする賊を倒し、ファントレイユはその度に別の賊の手を振り切って逃げていた。
見ていていつ掴まるか、はらはらものだったが今度こそ掴まる!と伸ばす賊の手が、一瞬で強ばり、喉を短剣で突かれ仰け反る。
が、ファントレイユ同様、一人の賊は蛇行しながらその背を追いかけ、ゼイブンは狙いを定められないのか追う男を仕留められず、ファントレイユはどんどん皆から離れ行く。
が………必死で後ろに気を取られながら走るファントレイユのその先に、大きな男が立ち塞がろうと近寄るのをテテュスは見つけると、必死になって叫ぶ。
「ファントレイユ!」
叫ぶと同時にテテュスは庇う皆の背の間を一気にすり抜け、レイファスの横を突っ走って行く。
「テテュス!テテュス危ない!」
レイファスが叫び、シェイルが、がっ!と、テテュスの後を追おうとするレイファスの手を掴む。
レイファスが振り向き叫ぶ。
「テテュスが!」
がつん!
アイリスが襲いかかる敵の剣を刃で止め、咄嗟に振り向く。
テテュスの背が決然と、戦うローランデを取り囲む賊の背を抜けて遠ざかって行く様に、目を見開き叫ぶ。
「テテュス!」
後ろから幾度も手を伸ばし、襟を掴もうとする賊の大きな手を必死で身を左右に小刻みに揺らし避けながら、ファントレイユは必死で走る。
テテュスはファントレイユの走り行くその前を、賊では無く大きな騎士が塞ぐのを見つめ、やはり自分に手を伸ばし捕らえようとする賊の手を、右に左に避けながら、必死で速度を上げ、突っ込んで行く。
ファントレイユは後ろから追いかける賊を見ながら走っていたけど、進む先にいきなりどん…!
とテテュスの背が現れ額に当たり、びっくりした。
ゼイブンが、止まる子供達を捕まえようと群れ来る賊目がけ、咄嗟に立て続けに短剣を投げつける。
ファントレイユは背後の男が一瞬で、その下卑た顔を歪めて後ろに倒れるのに、目を見開く。
そして左横からテテュスと自分目がけ、寄り来る二人が同時に
「うっ!」
と叫んで身を捻り、もんどりうって地に倒れ伏すのも、見た。
その後続々寄り来る三人が、順繰りに足を止め一瞬身を揺らし、顔を歪めて地に伏して行く。
捕まえようとする賊が途絶え、ほっと短い息を吐く。
が前を見るとテテュスの背の向こう、長身の立派な体格の騎士が、黒に近い栗毛を揺らし、冷たいグレーの瞳を煌めかせ、立っているのに身震いする。
明らかに、アイリス達同様、戦い慣れた強そうな騎士だった。
その騎士はファントレイユを庇うテテュスを見つめ、嬉しそうに嗤う。
「一目で解る。アイリスの、息子だな?」
ゼイブンはその騎士に目を見開き短剣を握るが、この位置から丁度テテュスの背の向こうに敵は立っていて、ヘタをすればテテュスに当たる。
ましてやギュンターやローランデ並の騎士に成ると、隙が無けりゃ、手持ちの剣で叩き落とされる。
ベルトを探るが、いつ短剣が切れるかとはらはらもので、一本だって無駄には投げられない。
が、がつん!と持ち上げた剣を振り下ろされ、ゼイブンは慌てて目前の敵に視線を戻した。




