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「アースルーリンドの騎士」別記『幼い頃』  作者: 天野音色
第四章『晩餐での冒険』
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6 最強の美女達

 一同が、広間に戻ると、状況を召使いから逐一聞き出していた客達は、一斉に歓声を、上げた。

エリューデ婦人はもう、涙が止まらず、数人の婦人達に、慰められていた。

ディングレーがその横を通り過ぎた途端、その袖を、一人の婦人に掴まれる。

ディングレーは何げにさりげなく、その掴まれた袖を、振って外そうとしたが、もう一人の婦人は優しげに、彼に話しかける。

「…彼女の心の震えを止めるのに、とても女性では心元ありませんわ。

貴方のように頼もしいお方の胸なら、さぞかし安心で、震えも止まると、思うんですが」

ディングレーは、内心の動揺を必死で隠し、つぶやく。

「申し訳無いが、とても、喉が乾いてしまって…!」

近くに居た老侯爵が、すかさずグラスを差し出す。

「…どうぞ。これを頂いて乾きを癒し、ご婦人を慰めてくだされ!」

老侯爵は、片目をつぶってウィンクし、それこそが男たる醍醐味だ。と、言わんばかりでディングレーは、その茶目っ気ある老侯爵を睨みそびれ、嫌々グラスを受け取ると、やけ酒のように喉を晒して一気飲みし、仕方なさそうにエリューデ婦人を、胸に抱き寄せた。

途端、彼女の涙が止まり、頬が赤らんで、客達はその見事な慰めにその男らしい若者へ、褒美の拍手を降らせた。

固まり、じっとその見せ物に耐えるディングレーにローフィスはこっそり、同情の視線を投げる。

が、気づくと目前に、彼が抜け出した取り囲む女性の内の一人の姿が見えた。

彼女は胸に、飛び込み兼ねない程近くに寄ると、その爽やかな若者に顔を近づけ、微笑む。

「…口説きたい、ただ一人のお方は、見つかりました?

あの方と恋人だと言うのは勿論、冗談だったんでしょう?

逃げ出したい気持ちは、解りますわ…。

だってあの取り巻き連中ときたら…!

サーシャやアルフレーシァ迄、居たんですものね!」

自分以外はとても趣味の悪い女性ばかりだから、当然自分を選ぶ為にローフィスは取り巻きから逃げ出したのだと、彼女は、思ってるようだった。

シェイルはローフィスの胸にぴったり寄り添う、その赤毛の美女を、見た。

そのドレスの胸は、思い切り開いていたし、その胸はとても豊満で、ローフィスは少年の頃から豊満な年上女性の幾人かと関係があったし、初恋の女性もとても豊満だった事を思い出し、思い切り眉をしかめるとたった今、ローランデから手渡されたばかりのグラスをそのまま彼に返し、咄嗟にローフィスと女性の前へ、つかつかと詰め寄った。

ローランデは手渡した筈のグラスがまた、手元に戻されてつい、そのグラスを見つめるが、ふいに上から伸びた手にグラスを奪われ、見上げると長身のギュンターが、それを一気に、飲み干していた。

「…彼は君を、選ばない。悪いが」

言ってシェイルは、ローフィスの腕を思い切り、引っ張る。が、女性はもう片腕にしがみつくと、シェイルに喰ってかかる。

「…そんな事実は彼の口から、一言も聞いてないわ!

第一、貴方にどんな権利が、あるというの?!」

シェイルが、銀髪の美青年だと、気づいてはいた。

が、ローフィスはどう見ても、騎士達の中でも男に走りそうなタイプには、見えなかった。

か弱い女に気を使うより男が好きな男達はもっと、無骨な男が、多かったので。

が、シェイルは真っ直ぐ彼女を見据えると、低い声できっぱりと、言った。

「こいつは俺の男だ。

悪いがあんたには、やれない!」

彼女の目は、まん丸に成ったし、その周囲に居た客の皆が皆、ど肝を抜かれて呆け、その間にシェイルはローフィスの腕をさっさと引っ張って、彼を、連れ去った。

オーガスタスはそれを見、くっくっくっ…!と喉を鳴らして笑っていて、ローフィスはシェイルに腕を引っ張られながらも、オーガスタスの笑いをチラ見して肩を、すくめた。

ギュンターはローランデからひったくった杯を飲み干し、それを見た後、ローランデに顔を傾けささやいた。

「今後お前を口説きに来る女が居たら、俺もあれをやるぞ」

ローランデはいきなり顔をしかめると、ギュンターの腕を掴み、人混みから外れた場所迄、引っ張って行った。

「…冗談だろう?

こんな所で恥を晒して、どうする…!」

と、つぶやきながら。

ファントレイユは、ゼイブンと一緒にそれらの騒ぎを見ていて、顔を上げてゼイブンに、話しかけようとした途端、ゼイブンはさっさとファントレイユの背から離れ、彼を待ち構えていた三人の美女達へ、寄り添った。

ファントレイユが途端、その綺麗な顔を、がっかりさせて項垂れる。

「…ゼイブンって、あれであっという間に、立ち直るんだね…」

小さなレイファスの感想に、オーガスタスは顔を傾けて頷く。

「…ファントレイユが、気の毒だがな…!」

レイファスは気づき、ファントレイユに慰めるように、寄り添った。

アイリスは、見知りの客にねぎらいを受けたがいつものように、優雅に対応する事はとても、出来ない程余裕が、無かった。

青冷めた顔色の彼を、テテュスが心配そうに見上げ、オーガスタスはすっ、と客とアイリスの間に入ると、アイリスに話しかける客に笑い、告げる。

「…とても、息子を心配していたので。

安堵の余り、声も出ないようだ。

少し彼を、休ませてやって下さいますか?」

アイリスは目前のその大柄な男に、感謝の視線を投げたが、オーガスタスは、逆はあっても、言葉の出ないアイリスを自分が庇う役割を果たす日が来るとは、自分でも、信じられずに居た。


シェイルは人の少ない廊下迄ローフィスを引っ張り、そしてくるりと向き直ると、彼をその、エメラルド色の瞳で真っ直ぐ、見つめた。

「…どうせ、あの胸にイカれて、チラチラ彼女の“胸”を見てたんだろう?!」

ローフィスはその剣幕のシェイルについ、肩をすくめた。

「…並んで用を足す時、隣の男の立派な一物につい、視線が吸い寄せられるのと、同じだ」

シェイルはその、言葉巧みに言い逃れする義兄に、思い切り向っ腹が立ったが、ローフィスの後ろからくすくす笑う声に気づき、思わずそちらに視線を投げる。

ローランデがやはり、ギュンターの腕を、引っ張って来ていて、ギュンターはローフィスの言い訳に、肩を揺すって笑っていた。

シェイルは思いっきりぶすったれたが、ローフィスは振り向くと、ギュンターに言った。

「そっちもローランデから、お咎めか?」

言って、ローランデの思い切り眉をしかめた表情を見、つぶやく。

「…俺とは、違う理由のようだ」

ギュンターは肩をすくめる。

「嫉妬して喰ってかかられたら、俺なら最高に嬉しいが…」

腕組みし、フテ切ったシェイルはローランデに言った。

「どうせまた、馬鹿な事をしようとして、君を怒らせたんだろう?」

ローランデはシェイルに、即答した。

「…私の所にも取り巻きの女性が現れたら、君と同じ事をするぞと、脅すんだ!」

ローフィスは途端、吹き出す。

シェイルはその長身で金髪のギュンターの、取り澄ました美貌の面を見た後、直ぐ横に並ぶ親友を、じっと真顔で見つめて忠告した。

「ローランデ。それは、脅しじゃ、無い」

ローランデは二人を交互に見たが、ローフィスは『その通りだ』と頷き、シェイルは『だろ?』と肩を、すくめた。

ローランデは横のギュンターを、見上げて睨み付ける。

「…シェイルがやれば可愛げがあるが、君がしたらみっともないと、どうして解らないんだ?

…みっともない事が、大嫌いなんだろう?!」

が、今度はギュンターが、即答した。

「お前相手に、もうそんな事構っていられるか!

時間が空けば北領地[シェンダー・ラーデン]に籠もって、俺の事等綺麗に、忘れてるんだろう!」

ローランデが思い切り、言い淀む。

ギュンターは怯むローランデに思い切り、次の言葉を叩き込む。

「…やっぱりだ!

俺の方から様子を伺わないと、そっちから連絡を全然寄越さないだろう!」

ローランデが慌てて口を挟む。

「だって…!

こっちから連絡を入れる前に、君からの使者が来る!毎回!

…だから………!」

「お前、ちゃんとマトモに女と付き合った事も、無いんだろう?

こっちはもう限界だと、待ちきれずに使者を送ってるのに!

つまりそれだけ、俺の事を忘れていられるって事だ!違うのか?!」

痴話喧嘩に巻き込まれそうな予感に、ローフィスはため息混じりにシェイルを見たが、怒鳴り、追いつめようとするギュンターから、親友を救い出せ。とその大きなエメラルドの瞳でじっ。と見つめられ、ローフィスは思い切り、俯いた。

「…ギュンター。ローランデは恋愛オンチだと、もういい加減、気づいてるんだろう?

使者を、送る気は無いと、彼は言ってる訳じゃない。

君の反応速度に合わせられないだけで、それを責めるのは筋違いだ」

ローフィスの言葉に、ローランデは途端、ほっ。とした様子を見せ、ギュンターはローフィスを、思い切り睨んだ。

ローフィスは標的が自分に移った事に内心、げんなりしたが、シェイルはその隙にさっさと親友の腕を掴むと歩き出し、二人をその場に置き去りにした。

「…おい!

話は終わってないぞ!」

ローフィスは咄嗟に、後を追おうとするギュンターの腕を掴み、止める。

ギュンターが歯を剥いて、ローフィスを睨む。

がローフィスは胸を盗み見し、女に言い寄られた失態を取り戻す為、役割を果たすしか無い。

落ち着いた声音で、話しかける。

「…元気だな…。

あれだけの高さから飛び降り、冒険した後なのに」

ギュンターが、人の怒りを逆撫でするその穏やかな態度につい、ムキになって怒鳴った。

「…あの高さは、さすがの俺でも怖かったぞ!」

ローフィスは、頷く。

「…どうしてそう言って、ローランデの同情を、買わない?

あいつは、弱い相手にはそれは、親切な男なのに」

ギュンターは思い切り、ためらったがつぶやく。

「………………自分の弱さを武器に、する気は、無い」

が、ローフィスは畳みかける。

「だってローランデ相手にもう、格好を構ってる余裕も、無いんだろう?」

ギュンターは返答に、もの凄く困ってる様子で、その隙にシェイルは、ローランデを連れて完全に逃げ切った。

ふと、ローフィスの様子に気づくギュンターは振り向くと、廊下から二人の姿が、消えている。

「…わざと俺が嫌がる忠告をして、ローランデを逃がしたのか?!」

「だってお前、ローランデを困らせて、楽しんでるだろう?」

ギュンターは、かんかんだった。

「俺は本気で!怒ってた!」

がローフィスは、慎重だった。

「…相手に待たされた経験が殆ど、無いんだな?」

その鋭い突っ込みに、ギュンターが思い切り、言い淀む。

が、ローフィスは返答しろ。と顎をしゃくる。

ギュンターが、仕方無しに口を開く。

「…そりゃ…。

まあ、大抵相手の方から、次はどうするのかと、打診して来る」

「お前、ローランデだけは他と反応が違うから、入れ込んでるんじゃ、無いだろうな?

実戦じゃ確かにお前は信頼が置けるし、ローランデもそう、思ってる。

が、恋愛に関しては、全く信頼出来ないと思われていても、無理無いぞ!

振り向かないからムキに成って追っかけて、あっちが振り向いたら途端、気が無くなるんじゃないのか?!」

その、穏やかさを取っ払った鋭い切り返しに、ギュンターは内心、やっぱりローフィスは侮れないと思い知り、しょげきった。

「…だからあいつもムキに成って俺に振り向かないのか?

…大公子息だし凄腕の剣客だと誰からも一目置かれてるから、誇り高いしな」

ローフィスがとうとう、本音を晒すギュンターに、怒鳴った。

「でかい図体して、落ち込むな!

鬱陶しい!」


ファントレイユとレイファスが、そっとテテュスを、伺う。

レイファスが、そっと言う。

「アイリスが泣いても、無理無いよ…。

僕だって、テテュスの頭が一直線に落ちた時、ぶつかると思って目を、閉じたもの」

ファントレイユも、同意した。

「…僕もだ。

でも目を開けたら、光ってた。

『光の国』の子供が、助けてくれたんだって、嬉しかったけど、あの子はディアヴォロス左将軍の、ワーキュラスだって」

「…ワーキュラスって、『光の国』の光竜だろ?

どんな姿をしていたの?」

レイファスが、好奇心を抑えられず、わくわくして言った。

「金に光ってたけど。人間の少年の姿だった。

でも、こういう姿はしてないって。

…竜の姿って、どんなのかな?」

レイファスは少しがっかりした様子だった。

「竜の姿じゃ、無かったんだ」

「どっちみち、君は見られなかったんだから、がっかりしなくてもいいんじゃない?」

「それは…そうだけど…。

でも、いっぱい冒険、したんだろう?」

「…でも、楽しいの後に、直ぐに不安になる。

ギュンターは頼もしかったけど、がくんがくん跳ねて、本当に落ちたらどうしよう。って、必死だったし。

でも、着地した時、二人に思い切り挟まれたのは、初めての体験だった。

体が、ぺちゃんこになったのかと思うぐらい、ぐえっ!って成ったし」

レイファスが思い出し、内臓がぺちゃんこに成った、ファントレイユの苦しそうな様子につい、俯くと小声でつぶやく。

「…あれは………本当に、苦しそうだった」

ファントレイユは、こくん。と頷いた。

レイファスはその、表情の無い綺麗な顔の彼を見つめ、何でも無いように言ってるけど、その時は凄く、衝撃的だったんだな。と思った。

でもファントレイユは、自分の状態がどうだったかを人に伝え、同情を買うのは凄く、ヘタだと思った。

今の彼の表情を見て、本当に苦しかっただなんて、誰が思うだろう?

二人が気づいてテテュスの側にそっと寄る。

だがテテュスはまだ、アイリスの告白で青冷めていた。テテュスは顔を伺うように見つめる二人のいとこに、顔を上げて尋ねる。

「…そんなに、危なく見えた?」

二人は途端、揃ってこくん…!

と頷く。

テテュスがもっと、落ち込み、レイファスはささやく。

「でも…『光の国』の子供が、助けてくれるって、思ってたんだよね?」

テテュスは俯いた。

レイファスがその様子に、ファントレイユを見つめる。

ファントレイユは見つめられても凄く、困った。

そして…テテュスを代弁するかのように、つぶやく。

「…何にも、考えて無かったと思う………」

レイファスは呆れたが、テテュスのしょげようが気の毒でつい、尋ねる。

「…普通、怖いんじゃない?

あんな高い所から滑り降りたら。

僕だったら、ゼイブンがどれだけ困っても体が固まって、ゼイブンから離れて飛び降りる事なんて、出来ないと思う…」

テテュスが顔を上げた。

「だって全然、怖く無かった。

風を切って凄く、爽快で、叫びたくなるぐらい、楽しかったから…。

それで、危ないだなんて、思わなかったんだ………」

レイファスもファントレイユもつい、同時に驚いて叫んだ。

「楽しかったの?!」

側に居たオーガスタスは振り向いたし、その横で椅子に座りうずくまるアイリスはもっと、肩を落とした。

テテュスは二人の反応につい、尋ねる。

「…おかしい?」

聞かれて二人は、固まった。

オーガスタスが、アイリスの様子に同情を投げて、ささやく。

「確実に着地出来る方法を、考えてるなら、それは大した度胸だと、誉められるが」

テテュスがその、大らかなライオンのような武人を、見つめた。

「でも、何度も木から、飛び降りた事がある。

一度、ひどく挫いたけど…。

でも大抵は大丈夫だったし…。

そんなに、高いと思わなかったんだ…」

「着地場所は草の上か?

だがここの床は、石レンガだ。

アイリスが心配しても、無理は無い」

テテュスは、頷く。

「暗かったから…。

飛び降りてから、結構高いなと、気づいたけど…」

オーガスタスは吐息を吐いて、つぶやく。

「そんなに、ゼイブンは辛そうだったのか?」

「口にはしなかったけれど…手首がベルトで、千切られるんじゃないかって、ぞっとした。

下にぽとりと手首が落ちて…僕たち、二人共が落ちるより、僕一人が飛び降りた方が、いいでしょう?」

アイリスがオーガスタスを見上げているのに、彼は気づくと、アイリスにぼそりと告げた。

「とても、冷静な判断だ」

アイリスはテテュスを見つめると、テテュスは一気に彼に駆け寄り、アイリスは両手を広げてテテュスをくるみ込んだ。

ファントレイユはその息の合った抱擁を、羨ましそうに呆けて見つめる。

レイファスはそっ、と視線を、ゼイブンに向けると、ゼイブンはソファに掛け、両端に座る女性の肩にその両腕を掛け、左右交互に顔を向けてその魅力的な微笑みを、彼女達にアピールしていた。

レイファスは一つ、下を向いて吐息を吐くと、ゼイブンの方に、歩きかけた、途端だった。

「…レイファス!」

名を呼ぶ声につい、彼は足を止める。

レイファスはそのままの体勢で暫く…固まり、思った。とても…とても聞き覚えのある声だ。が、ここで聞くなんて…。

慌てて顔を造って愛嬌笑顔で振り返るとやっぱり…そこに居たのは彼の母親、アリシャだった。

彼女は大袈裟に両手を広げてレイファスを抱きしめ、そして叫んだ。

「行方知れずだったんですって?

もう…!

どうしてあの立派な騎士達が一緒で、こんな事に成ってるの?!」

彼女の腕の中でチラリと見ると、ファントレイユもとっくに、セフィリアにきつく抱きしめられて、揉みくちゃで、最後に頬を挟み込まれ、セフィリアの泣き顔を見せられて言われていた。

「凄く、危険だったなんて!

あんまりだわ…!」

アイリスはその二人の様子に気づいたが、対応する気力が、無い。

エリューデ婦人がすっ飛んで来ると二人の母親に、自分の目が、行き届かなくて。と詫びを言い始めた。

が、セフィリアはその向こう…。

晩餐の客達の居並ぶ広間の端のソファの一つに、ゼイブンの姿を見つけると決然と、進んでいく。

レイファスが、アリシャの腕の中で目を、伏せたが、アリシャは大柄なオーガスタスの向こうでテテュスを腕に抱くアイリスを見つけると、戦闘態勢に、入った。

「お兄様…!」

火蓋を切ったのはアリシャが先だった。

エリューデ婦人はとりなそうと無視され、おろおろと視線をアリシャと、アイリスの間を彷徨わせ、後ろからディングレーが、二人の婦人を見つけ、こっそりとその場を、逃げ出し始めた。

どん…!と顔を手でそっと隠し歩く彼は誰かに正面からぶつかったが、「失礼」とそのまま行こうとし、だが相手はどかずに彼の行く手を阻んで言った。

「…どこに行くんだ?」

ディングレーが顔を隠す手を下げ、見るとシェイルで、隣にローランデが、居た。

「…ファントレイユとレイファスの母親が、どうしてだか解らないが、来ている」

言うなり、シェイルを交わして先を急ごうとするからシェイルは彼の前に歩をずらしてまた、立ち塞ぐと質問する。

「…進む方向が、反対だ」

だがディングレーは眉間を寄せ、怒鳴る。

「こっちで正解だ!」

後ろから、ローフィスがギュンターを連れて、口を挟んだ。

「ディングレーは、逃げたいんだ。あの二人から」

シェイルもローランデも揃って、その頑健な肩をし、立派な体格の黒髪の男前を、たっぷり、見つめた。

「その視線は、よせ!

俺にだって、怖い物があったって、不思議じゃないだろう?!」

ローランデとシェイルは顔を、見合わせ、言った。

「いや?…凄く、不思議だ」

「いいから、どけ!」


 オーガスタスはその小柄でレイファスをそっくり大人にしたような、華奢で可憐な好戦的な美女から、アイリスを庇うように、丁重に告げる。

「…彼はすべき事を全部したし…妻を亡くしたばかりの彼の、息子の行方知れずの間の取り乱しようを、貴方にも、見せたいくらいだ」

テテュスもアイリスに寄り添い、しょげてつぶやく。

「僕が全部、悪いんです。ごめんなさい…!」

テテュスにそう、言われた途端、アリシャは屈んで彼の手を取るとささやく。

「…いいのよ。反省してるのね?

本当に…テテュスったら!

お兄様の血を、引いているのかと思うぐらい、素直で可愛いわ!」

オーガスタスは思わず、アイリスを見たし、アイリスは額に指を当てて俯いた。

テテュスは自分の手を取っていたアリシャが立ち上がり、アイリスに喰ってかかろうとするのに気づき、叫ぶように告げた。

「…アイリスは僕たちを探し回って本当に、疲れてるんです!

心配かけて、僕が泣かせちゃったし!

だから…!」

アリシャはそう叫ぶテテュスに振り向き、次に青冷めて微笑む、アイリスを見、つぶやく。

「本当のようね…。

いつもの…誤魔化す気満々の、人を小馬鹿にしたような魅力溢れる笑顔が、造れないようだから」

言って、くるり…!と背を向ける。

オーガスタスはつい、

「お前ら兄妹仲は、一体どうなってるんだ?」と尋ね、アイリスは返答に、詰まった。

テテュスはその横のレイファスを見つめると、レイファスは肩をすくめた。

テテュスは、レイファスでも打つ手が無いのか…。と、項垂れた。


 ゼイブンは正面に立つ婦人が、妻に似ているなと思い、笑顔で会釈し、だが直ぐに隣りの美女にその笑顔を、向けた途端、胸ぐらをぐい!と掴まれ、凄い形相の妻の顔を間近で見、言った。

「…セフィリア…!」

「貴方迄居て、どうしてファントレイユがあんな目に合ったのか、たった今!理解出来たわ!」

「…君にも招待状が届いたのか?」

「お察しの通りよ!

強盗の話を聞いただけでも卒倒しそうだったのに…!

混み合ってて、やっと屋敷に、入れたと思ったらファントレイユが行方知れずだって、聞かされた時の私の気持ちが貴方に、解って?!

盗賊が押し入った時だって貴方、一緒だったんでしょう?」

「…セフィリア。ファントレイユは掠り傷一つ作ってないのを、確認していないのか?」

隣の美女が楽しい時間を邪魔され、眉を顰めて尋ねる。

「この方、どなた?」

ゼイブンは胸ぐらを掴まれたまま、返事した。

「ああ…妻だ」

途端、三人の美女はぶすったれた顔で揃って、席を、立つ。

ゼイブンはセフィリアについ、怒鳴る。

「君が俺を寝室から閉め出す上に外で遊んで来いと、言ったんだぞ!

遊ぶのだって苦労するんだ!」

が、セフィリアはゼイブンを、睨み据えた。

「言い訳は、それだけ?

あの…アイリスお兄様でさえ、テテュスの側を離れないと言うのに!

貴方はファントレイユを放って、こんな所で遊んでるだなんて!」

「俺だってそりゃ怖かったし、女の胸に顔を埋めて慰めて欲しいが、男で子供のファントレイユにあの豊かな胸は、無いだろう?!だって!」

ぴしゃん!

セフィリアに思い切り、頬をはたかれ、ゼイブンは黙った。

ディングレーが思わずそれを見つめ…シェイルもローランデも…そして後ろから来る、ギュンターもローフィスもそれを見、自業自得だと、俯いた。

が、ファントレイユが両親の側に来ると、セフィリアにささやく。

「でもゼイブンは強盗の時、体を張って助けてくれた…。

今度だって、ぎりぎり迄頑張ったんだ…」

セフィリアはだが、その可愛らしい息子を抱きしめると、ささやく。

「でも最低だわ!

貴方を慰めたりせずに、あの態度は!」

ゼイブンは一つ、吐息を吐くとセフィリアの肩に手を、乗せる。

その男っぽい顔に、皆がつい、彼が次にどう出るのかを見守った。

「…やるべき時はちゃんとやる。

だからもう、非難するな」

セフィリアはその、美男の夫の引き締まった魅力的な顔を、見たが、次の瞬間、顔を思い切り、歪めたのはゼイブンの方で、彼はつま先をその妻のかかとの高いヒールで思い切り、踏まれていた。

「行きましょう。ファントレイユ!」

ファントレイユは手を引かれながら心配そうにゼイブンに振り返るが、ゼイブンは苦笑してみせただけだった。

皆がその情けないゼイブンに項垂れ、ディングレーがぼそりとつぶやいた。

「………浮気に、走るはずだ」

残りの四人も、揃って無言で、頷いた。

が、ディングレーが自分のしようとした事をふと思い出し、必死でその場を逃げ出そうと、正面を塞ぐシェイルを押しのけるその男らしい背に、アリシャの声が、降る。

「あら…!

見知った顔がいらっしゃって、嬉しいわ!」

ディングレーはシェイルの腕を掴んだまま振り向き、アリシャと目が合った。

途端、彼女はディングレーが手に掴むシェイルの美貌に、思い切り片眉寄せると、扇子で口を隠し、つぶやく。

「…こんな大勢人の居る所でお楽しみだなんて…!

お兄様より、強者ね!」

ディングレーはつい、掴む腕と、シェイルを見つめ、慌てて怒鳴る。

「一体これの、どこがお楽しみだ!」

アリシャは二人を、ジロジロと見

「どっから見ても、そう見えるけれど?」

ディングレーはシェイルの腕を放すと、アリシャに喰ってかかった。

「奴がどかないから!

俺の前からどかせようと、しただけなんだ!」

アリシャが途端、眉を更に、寄せて吊り上げる。

シェイルもローランデもギュンターも、どうなったんだ?と彼女を凝視したが、ローフィスだけは先が読めて、くるりと背を向け、俯いた。

「…こんな、美青年を振る程彼が、好きなのね?」

その扇子は、最後列に居る俯くローフィスに向けられ、その場の皆は扇子に吊られて彼を一斉に、見た。

ディングレーが怒鳴る。

「どうして…そうなる!」

「だって…彼の所へ行こうと、その美青年に阻まれたんでなくて?」

シェイルがその言葉の通じない婦人に、憮然と怒鳴る。

「この男は…!

あんたから、逃げたがってたんだ!」

後ろからテテュスがつい、レイファスを見たが、レイファスは青冷めた。

対戦カードの中でも、最強同志の組み合わせで、つい青く成ってその戦いを、見守った。

「あら…!

良く見知りもしない私から逃げる言われが、彼のどこにあるの?」

「そりゃあんたが、彼とこいつがデキてると、勘違いするからだろう?」

と、シェイルは後ろに居るローフィスに親指立てて示し、怒鳴る。

アリシャの眉が思い切り、寄る。

「勘違いなの?

だってどう見たって…彼が、好きよね?」

アリシャに聞かれ、ディングレーは口を、ぱくぱくさせて言い返そうと、したが巧みな言葉を知らないディングレーに、放つ言葉は、無かった。

シェイルはつい、ディングレーを見る。

ディングレーは慌ててシェイルに怒鳴る。

「俺はローフィスに、惚れてない!

たわ言を、本気にするな!」

だがアリシャは扇を口に当てて、ささやく。

「…そんなに立派な体格なら、さぞかし隠して置きたい事でしょうね?

彼に、女性のように扱われたい願望だなんて…!」

アリシャの横に顔を出したエリューデ婦人の目は、まん丸に成り、みるみる内に涙で、潤んだ。

ディングレーは慌てて怒鳴る。

「そんな、事実は無い!」

だがギュンターが、冷静に聞こえる声で言う。

「お前に願望が、あると言ったんだ。事実で無く」

ディングレーは途端、その背の高い金髪の男に怒鳴る。

「願望だって、無い!

お前、面白がってるだろう?」

が、ギュンターはその美貌の、真顔で言った。

「いや。そうだったのかと、凄く驚いてる」

隣のローランデも頷いたし、シェイルも呆気に、取られていた。

ディングレーは、焦りまくった。

「…どうして…あっち側だ!

俺との付き合いが長いのは、お前らの方だろう?!」

ギュンターが続けて、言う。

「だってお前、丸で浮いた噂が無いし…。

引っ付く相手は、ローフィスかディアヴォロスだろう?」

ローランデまでが困惑しきって言った。

「…まさかシェイルを、恋敵に、して無いよな?」

シェイルは狼狽えきってディングレーを見つめ、ささやく。

「…その…俺が二人を一人占めして、恨んで無いよな?」

とうとうディングレーは背を向けるローフィスに怒鳴る。

「俺をここから、助け出せ!」

ローフィスが振り向くと、怒鳴り返す。

「俺が今出たら泥沼だと、どうして解らないんだ!

何言ったって、混ぜっ返されるに決まってる!」

「沈黙して、耐えろと言う気か?」

「嵐が過ぎ去る迄、じっと耐えるしか方法が、無いだろう?!」

「その後の…じゃこいつらの誤解はお前が何とか、してくれるんだな?」

「誤解なのか?」

ローランデに真顔で聞かれ、ディングレーはぐっ!と詰まる。

「女の直感は鋭いしな」

言ってギュンターはシェイルを見ると、シェイルは途端、気の毒そうにディングレーを見る。

ディングレーは慌てて、怒鳴った。

「俺は…!

お前に取って代わりたいと一度だって思った事が無いから、安心しろ!」

だがシェイルは、心から気遣う視線を、ディングレーに向ける。

「本当に…?」

最後に、アリシャが畳みかけた。

「そりゃ…認めたくなくて、さぞかし必死でしょうよ!

こういう立派な殿方にはそれは立派な、プライドが、おありでしょうから…!

けれど自分を偽ると、いつ迄たっても幸福には、成れません事よ?」

ディングレーがとうとう、アリシャに怒鳴った。

「余計な、お世話だ!」


 一同が一部屋に集められ、ディングレーはぶすったれ、セフィリアとアリシャは息子から離れず、ひそひそと話をしては、ディングレーとゼイブンを交互に見る。

二人共口に扇を当てているものの、非難しているのは、明白だった。

オーガスタスの横に来るとディングレーは、直訴した。

「何とか、してくれ!」

オーガスタスはローフィスを見たが、お手上げだ。と肩をすくめた。

アリシャとセフィリアは、その一番大柄なオーガスタスをボスだと認め、近寄って来る。

「…私達、ディアヴォロス左将軍から遣わされた騎士達を、信頼して息子を、お預けしました」

が、オーガスタスは笑った。

「彼らは随分、逞しく成った。

今はおめかしして、そうは見えませんが」

レイファスはファントレイユを見たし、ファントレイユはレイファスを。

テテュスは、二人を。

アリシャがぴしゃり!と言う。

「…わたくし達、そういう事で無く、環境が悪いと、思うんです」

オーガスタスが、肩をすくめる。

「危険に立ち向かい、傷一つ無い事で無く?」

セフィリアが、微かに頷くが、告げる。

「…そりゃ、夫のように女と見ればデレつく男に成って欲しいとは思いませんが、ファントレイユはそれは…男の方に、ヘンな目で、見られたりするので先行きが、心配です。

出来ればわたくし達、気品ありお行儀のいい、清楚なお嬢さん方の中へ彼らを、置いて置きたいんです」

オーガスタスはもっと、笑った。

「俺達のように、ごつくて品の無い荒っぽい男の側に、置くよりも?」

アリシャも、頷く。

「だって近衛の騎士って、戦で出向くと男性しか、相手にしないんでしょう?」

オーガスタスは大きく、吐息を吐いた。

「そういう心配は、解る。

ご子息達は貴方に似て、大層な美貌だ」

だが、その誉め言葉も社交辞令と、二人の婦人は眉も、動かさない。

ギュンターがそっと、ローフィスにささやく。

「手強いな」

ローフィスが憮然とつぶやく。

「そう、言ってるだろう?」

アイリスはまだ青い顔で椅子に掛けていたが、二人の雲行きを、見守った。

「だが…」

オーガスタスが言うと、婦人達は彼を、見上げる。

ライオンのような男は真顔で、二人に説いた。

「レイファスもファントレイユも貴方方に似て大層向こう気が強いから、やり用を覚えれば無敵でしょう」

二人は、びっくりした。

特に、アリシャが叫ぶ。

「レイファスの、体格を見て貴方のような立派な体格のお方がそう、おっしゃるの?

本気じゃ、無いんでしょう?」

が、オーガスタスはシェイルを指して言った。

「彼は軟弱だと見られがちだが、短剣を使える。

彼に喧嘩を売ればいつ短剣が飛んでくるか解らないから皆迂闊に彼を怒らせまいと、必死だ」

「お言葉ですけど…!」

アリシャが果敢に、言い返す。

「ディアヴォロス左将軍には失礼だとは、思います。だけれど彼でしょう?

銀髪の将軍の思い人って。

つまり、権力者の恋人だし、猛者達は彼で無くて、左将軍が怖いんじゃありません?

本当に、彼自身が怖がられているのかしら?」

シェイルが直ぐさま、怒鳴る。

「俺がディアヴォロスを、保身の為に垂らし込んでると言いたいのか?!」

アリシャはだが、即答した。

「そうなんじゃないの?

だって…」

オーガスタスをじろじろ見る。

「こんな大男がごろごろ居るんですもの。

保身に走ったって誰も、非難しないでしょう?」

レイファスはつい、シェイルをそっと見たがシェイルは、唸った。

「あんたがアイリスの妹でなけりゃ、顔に短剣、投げつけてる所だ…!」

レイファスは、それは脅しで無いなと解って、ぞっとした。

ギュンターも唸った。

「体がでかけりゃいいってモンじゃない…!

第一この中で一番剣が使えるのは、そこのローランデだ!」

二人の婦人はその、品のいい貴公子を、見つめた。

セフィリアが、言った。

「だってこのお方は大公のご子息で、特別な身分だしそれは幼い頃から…鍛えていらっしゃるんでしょう?」

「鍛えてやればいいだろう?ファントレイユも」

ゼイブンはぶすったれ切って、椅子に掛け顎に手を乗せ、言い放つ。

セフィリアは途端、眉を顰めて夫を、見つめた。

「貴方は黙ってらして…!

いつも家を明けて、外を遊び回ってらっしゃるじゃ、ありませんか!」

「外を遊び回るのにだって、腕が要る。

じゃなきゃ生きて、屋敷に帰ったりは出来ないんだぞ?

第一…オーガスタスも言ったろう?

ファントレイユは君に似て、気が強いし誇り高いから、鍛えればそれなりの武人に、成る。

いつ外で死ぬか、はらはらするよりずっといい…!

それとも、もっと俺に帰れと言うか?

家でファントレイユが無事な知らせを君と一緒に聞いてやれるし、妹か弟だって、作ってやれるぞ!」

セフィリアは夫をじっ。と見た。

「三人も、逃げられたから今度は私を、口説いてるのね?」

皆がつい、一様に俯いた。

が、ゼイブンはがたん!と椅子を立つと、彼女の前で怒鳴った。

「現場を見られた以上、言い訳はしないが…!

君が居れば他の女は必要、無いんだぞ?」

「だって、私には必要だわ!

少なくとも貴方の精力が、衰える迄は。

だってとっても…付き合いきれないんですもの」

ゼイブンは思い切り、項垂れ、皆はなる程。と彼に、同情した。

ギュンターも思い切り俯き、そっとつぶやく。

「俺ならとっくに、離婚してる」

ローフィスは頷く。

「ローランデ相手ならそれでも我慢するだろう?」

ギュンターはローフィスを、見たが彼は、ゼイブンもそうだ。と頷いたりするから、ギュンターが今度はぶすっ垂れた。

がオーガスタスはさすがだった。

「それで?

貴方方の意見を聞こう」

アリシャが、言う。

「連れて帰りたいんです」

オーガスタスが、笑った。

「彼らが教練に入った後も、事件が起こったらそう言って、家に引き取る気か?」

アリシャはその、人懐っこい笑顔のくせ者に、眉を顰めた。

「それとも…貴方方が寂しくて、彼らを手元に置きたい?

綺麗で、行儀の良い人形を置くように。

だが直ぐ、背が伸びる。

大きく成るのは、あっという間だ。

大人に成り、騎士に成らなくとも旅先で、不逞の輩に出会い、命を無くすとも限らない。

鍛えればいいと、言う訳じゃないが、喧嘩の仕方を学んで置くのは、男の子にとって、必須だ。

ただ、暴力を振るうと言うだけで無く。

駆け引きも、勝ち方も」

アリシャは、兜を、脱いだ。

「さすがに、責任者だけあって説得が、お上手ね?」

だがオーガスタスはまた、笑った。

「出来れば女の子を引き取る事をお勧めする。

息子にそれを強いるのは、罪作りだ」

もう子が出来ないアリシャを、セフィリアは見たが、アリシャは強気でつぶやいた。

「考えて置くわ…!」

「でも、アリシャ…」

言いかけるセフィリアに、アリシャは振り向く。

「あらだって…!

私の子で無くても、お兄様くらい行状が悪ければ、どこかで一人くらい、女の子の隠し子が、居ても不思議じゃないわ…!」

オーガスタスはそれを聞いて彼女達に、情事にだらしないと信頼を失いきってるアイリスを思わず、見た。

皆もアイリスを見たが、アイリスは青冷めて俯いた。

「居ないんなら、否定しとけ!」

ローフィスが言うが、アイリスはつぶやく。

「居るなら、もっと言え無いじゃないか…!

だって」

「居るの?!」

テテュスに聞かれ、アイリスは彼を見つめ、微笑んでささやく。

「居たら真っ先に、君に紹介する」

テテュスは、頷いた。

「居ないんだな?」

ローフィスも言い、ほぼ同時にアリシャも、がっかりして、つぶやいた。

「居ないのね?」

ディングレーが二度、咳払いをし、オーガスタスは肩をすくめると、言った。

「ディングレーが男好きだと言う件だが…」

アリシャとセフィリアは、途端振り向く。

「成人の男にどだい、女役は無理だ」

二人はじっ。とその、大柄な男の、言わんとする事を、探る。

「つまり…体の構造上。

そんな事をしたら大怪我で、ひどいと失血死だ」

オーガスタスにあんまり素っ気なく言われ、二人は彼を、見た。

アリシャが、尋ねる。

「じゃあ、子供の頃に、そういう体験が無いと、無理なの?」

「その通り」

二人が揃って、ディングレーをじっと、値踏みするように、見る。

「あの大層立派に見える男に、少年の頃そういう経験があるかと言う件だが…」

二人は一斉に、オーガスタスを見た。

「まず、無理だろう。

大抵は貴方方が心配した通り、不本意に男の相手をさせられる事が、多い。

貴方方が、思い知ってるように、若い男はケダモノでしょっ中発情してるし、それなりに体面を保ちたい男は手頃で力でねじ伏せられる男を、相手にする。

だがあの男は売られた喧嘩に、負けた事が無いから…」

「あらでも…自分から差し出せば、成り立つんじゃなくて?」

セフィリアに言われ、教練時代を良く知るゼイブンが、肩で風を切り、学年一の畏敬を受け、誰もが彼の登場に自分を控える程の実力者、ディングレー相手に何を言ってるんだ…。と顔を、下げきった。

オーガスタスが彼に、顎をしゃくる。

「夫君に、聞いて見ろ。同学年で良く、知ってる筈だ」

セフィリアは彼を見るが、ゼイブンは本気で言ってるのか?とセフィリアを、見た。

「学年で揉め事が起こると彼が収める。

つまり、学年一の実力者で、強者だ。

男が皆、一目置く男の中の男だぞ?」

「だから?」

「ローフィスに懐いているのは昔、突っかかっていた反動だ!

男が認める男ってのは、居るもんで…」

セフィリアはびっくりして問うた。

「貴方でも、居るの?」

その問いに、皆が普段のゼイブンの、男嫌いの弊害だ。と項垂れた。

「そりゃ…頼りに成る男が仲間だと、助かる。

屋敷に賊が押し入ったと、聞いたろう?

仲間で競争したり仲が悪けりゃ、今頃ファントレイユと君は、出会えて無い」

「じゃあ貴方は、ディングレーがその筋の男じゃないと、きっぱり言い切るのね?」

「奴の私生活なんて、知った事か?

だが確かなのは…。

あいつを組み敷こうと思う、男は居ないし、奴もそうされたいと、思わないだろう。

好戦的な男は大抵、寝室でも攻めるのが、大好きだ」

ディングレーはまさか自分の窮地を、ゼイブンに救われたのは予想外だったが、心の底からほっとした。

が、二人の婦人はそれを聞き、またディングレーを見つめて、眉を顰めた。

ローフィスが、顔を下げてつぶやく。

「また、あらぬ想像をしているぞ」

「…そういうご趣味なら、お相手をなかなか見つけられなくても、無理無いわね…」

セフィリアも、そうね。と頷く。

ギュンターも、オーガスタスも意味が解って振り向く。

ディングレーが一気に自分が、サディステックな性癖だと勘違いされた事に異を唱え、オーガスタスにどうにかしろ!と目で訴えたが、オーガスタスは笑いこけた。

だが、とうとうゼイブンが、彼を慰めた。

「楽しませて置け…。

彼女達は、そこらの人間を使ってあらぬ想像をするのが、大好きだから」

ディングレーはかろうじて。だったが、大貴族たる体面を保ち、仕方ないかとおもむろに、頷いた。


 皆が用意された食卓に付き、力仕事をしたオーガスタスはそのご馳走に、嬉しそうに顔を輝かせたし、ローフィスもローランデもシェイルも走り回って腹ぺこだった。

ギュンターは言う迄も無く。

だがゼイブンはやっと食べられると思ったもう一つのご馳走、三人の美女に逃げられ、ひどく項垂れていたし、アイリスはテテュスのショックの後のアリシャとセフィリアの登場に、食欲が無かった。

だが、彼らが食事を始めた途端、猛烈に掻き込むテテュスとファントレイユを見つめ、目を丸くしたし、セフィリアは卒倒しそうだった。

だってファントレイユはやっぱり、チキンを手掴みして喰い千切っていたので。

レイファスが三度、咳払いしたが無駄で、オーガスタスが慌てて、テテュスが危なくて、ディアヴォロス左将軍が神秘の力で彼を救った事を話し出すが、セフィリアの視線はファントレイユに釘付いたままだった。

オーガスタスが仕方無しに、ファントレイユを取りなして遣れと、ゼイブンに視線を送る。

ゼイブンはスープを飲みながら気づくと、顔を上げる。

「逞しく成ったろう?」

「これは…単に、お行儀が悪く、成っただけなんじゃないの?!」

「だが、男の食べ方だ」

「アイリスお兄様はそんなはしたない食べ方は、しないわ!

行状は悪くても、お行儀だけはとても良いお方ですもの!」

アリシャに言われ、ゼイブンはじっ。と、その淡いブルー・グレーの瞳でアイリスを見つめる。

『何とかしろ』

というゼイブンの視線に、アイリスはささやく。

「…つまりこんな食べ方をする程、彼はお腹が、減ってたんだ。

体が弱いと、満足に暴れさせたりしなかったから。

彼はそこの、金髪の騎士に戦いを挑んで、彼を本気にさせる程気が強い。

明らかに、君譲りだ」

セフィリアはその優雅な濃い栗毛の兄を見つめたが、はすに構えてささやく。

「あら…!

まるで私が、騎士を相手に戦っても、勝てる程気が強いと、おっしゃってるように、聞こえるわ?」

皆は俯き、『その通りだ』と内心思った。

だが誰もそれを口にする勇気は、無いようだった。

ゼイブンはセフィリアにつぶやく。

「だがああいう喰い方をした方が、野郎に女の代わりにされる事は、まず、無い。

いい加減、人形を卒業させろと、その左将軍にもそこの、側近の男にも、言われたろう?

ちょっとぐらいお行儀が悪い方が、男らしさをアピール出来る」

セフィリアは眉を、顰めまくった。

「…そんなに、ファントレイユは変わってしまったの?

この騎士達と過ごす間に……」

アリシャが彼女を助ける。

「セフィリアはショックなのよ。

ずっと一緒だったファントレイユがいきなり、変わってしまって」

「だが別人に成った訳じゃない。

本来の地が、出始めただけだ」

セフィリアはそう言うゼイブンをきつい瞳で見つめた。

「貴方に…だんだん似てくるみたいで、心配だわ…!」

皆は俯いて笑い、シェイルはぷっ!と吹いて、ローランデに肘で小ずかれた。


 食事を終えると、ゼイブンはアリシャべったりの、セフィリアに視線を送る。

「晩餐は、まだ続いてる。

俺はファントレイユに、剣術の足捌きを覚えるのに、ダンスをしろと言った。

見本を見せたいから、俺の相手をして、踊ってくれないか?」

皆が彼を見るが、彼は真剣(マジ)だった。

そのブルー・グレーの瞳が輝き、淡い髪を肩で揺らし、大層な美男に、見えたからだった。

セフィリアはチラ。とファントレイユを見るが、彼が途端、嬉しそうにぱっと顔を輝かせるのを目に、ささやく。

「いいわ」

ゼイブンは席を立つと、セフィリアに肘を曲げた腕を差し出し、彼女はその腕にそっと手を乗せ、それは優雅に顔を揺らし、立ち上がる。

アイリスに、面差しも濃い栗毛の髪の色もそっくりで、そのまま華奢で小さくしたようなセフィリアは緑のビロウドのドレスを揺すり、とても上品にゼイブンの腕に手を乗せたまま、戸口へと歩いて行く。

二人が広間に続く戸を開けて出て行き、皆もざわざわと席を立ち始める。

アリシャはセフィリアを見送ると、席を立ち、戸口へ歩くアイリスの横に、深紅のビロウドのドレスを揺らして歩み寄り、その背の高い魅力的な兄を見上げ、ぼやいた。

「本当の、本当に、女の子の隠し子はいないの?」

後ろのテテュスはそれを聞いてアイリスが、表情も変えず困っているのを見、ため息を吐き、レイファスを見ると、レイファスは可愛らしく肩を、すくめた。

ファントレイユは広間に出る戸口に先に駆け寄っていたが、二人に振り向くと、叫ぶ。

「早く来ないと、ゼイブンのダンスを見逃すよ!」

とても…とても嬉しそうだった。

テテュスもレイファスも彼のその様子につい、ぱっ!と顔を輝かせると、一気にアイリスとアリシャを追い抜いて、ファントレイユの元へと走った。

ローフィスが席を立つと、シェイルがきつい瞳を向けた。

「…どうせ、踊る気だろう?」

ローフィスは来るな…。と思ったが、笑いながら肩を、すくめた。

「食べ過ぎたから、腹ごなししないと。

ダンスの相手の了承が要るか?

巨乳は…駄目なんだろう?

どの当たりの女性なら、お前の機嫌を損ねない?」

立ち上がったオーガスタスは横で、シェイルのご機嫌を伺う親友、ローフィスに内心、肩をすくめた。

が、シェイルは顔を反らせ、腕組みし、目を閉じてつぶやく。

「オーガスタスかディングレーが限界だ」

ディングレーは彼の後ろに居たがつい、

「本気か?!」

と前のシェイルを覗き込んだ。

席を立ったローランデが思わず、シェイルのその可愛らしい嫉妬から出た条件付けに、ぷっ!と吹き出す。

が、ローランデの隣に来るギュンターは彼に屈み込むとささやく。

「俺も同様だが、相手はディングレーでもオーガスタスでも却下で、俺以外は認めない」

ローランデはとうとう、その美貌を傾けて寄せるギュンターにぷんぷん怒った。

「…だから…!

シェイルだから可愛いんだ!

君が言っても、ちっとも可愛くない!」

ギュンターの眉が思い切り、寄る。

「可愛いけりゃ、いいってもんじゃないだろう?!」

オーガスタスは二人を見、やれやれと肩を、すくめる。

ローランデはまだ伺うように顔を傾けるギュンターに、とうとう怒鳴った。

「足捌きを見せるのも、講師の役の内なのに!

第一、私は女性役は踊れないぞ!」

ギュンターが思い切り異論を唱える。

「男踊りをすりゃ、いいじゃないか!」

一同はしゃべりながら戸を通り過ぎ、広間では中心でゼイブンとセフィリアが、それは華やかで華麗なダンス姿を披露していた。

皆が中央を開け、周囲を取り巻きそれを眺め、同時に五組ほどの男女が、音楽に合わせて、ゼイブン達から少し離れた場所で、軽やかにステップを踏んでいた。

ゼイブンは素晴らしく身軽で、そして陽気で男らしかった。

独特の柔らかさと、爽やかさ。

そして太陽のような微笑み。

優しく、そして力強く、それでいて決して強引に見えない辺りは、さすが女性の扱いに慣れた、“垂らし"の面目十分だった。

セフィリアは濃い栗毛を揺らし、それは優雅で、二人は文句無しの美男美女だったが、やはりゼイブンが気にするだけあってセフィリアはいかにも貴族のお姫様。という気品に溢れ、ゼイブンは庶民的だった。

両親を夢中で眺めるファントレイユの、輝くような笑顔を皆が見て、二人の踊りを見つめていた。

アリシャがアイリスにささやく。

「踊りません?」

アイリスはアリシャにそっとつぶやく。

「とても…疲れていてそんな気に、今は成らないから…」

と、後ろを振り向く。

皆が一斉に、被りを振って辞退したい。と意思表示を示した。

「…あの、北領地[シェンダー・ラーデン]の貴公子にお相手して頂きなさい。

彼は女性の扱いは申し分無い上、素晴らしくダンスが、上手だから」

アリシャが、あら。と、ローランデに視線を送る。

ギュンターが途端、『この野郎…!』とアイリスに凄まじい視線を送ったが、アイリスは顔を背けてとぼけた。

ローランデは婦人に恥をかかせる男では無かったので、優雅この上無い仕草で彼女に寄り、そっとささやく。

「お相手、願えますか?」

大抵、とても優しげでロマンチックな雰囲気のその貴公子に、そんなにも丁寧に申し込まれて頬を染めない女性は居なかった。

が、アリシャは『合格ね』とつん!と顎を上げ、その手を取り、二人同時に広間の中央に進み出て、曲に合わせて踊り出す。

セフィリアより小柄な、ほんの少し明るい栗毛を背に流すアリシャは可憐そのもので、普段目にするレイファスを連想させ、彼はやっぱり、母親似だな。と皆が改めて、認識する。

ローランデは素晴らしく軽やかな足捌きで、秘やかだがとても流麗な足運びで、子供達は彼のステップに、魅了されて見惚れる。

上体を柔らかく、優雅に使い、傾け、そして女性を優しくリードする彼は、会場の女性の、ため息を誘う。その貴公子の手を支えに、右に、左に髪を揺らして身を回すアリシャは、大輪の薔薇のようだった。

女性達から見たら、濃い栗毛と明るい栗毛の交互に混じる髪を背に流し、感じやすい優しい青の瞳の色白の端整な顔立ちと、すらりとしたその出で立ちの気品と優雅さ溢れるローランデはやっぱり、“夢の貴公子”そのものだった。

ディングレーがぼやく。

「…さすが、君の妹は気位が高いな」

アイリスは、自分に話しかけられたのかな?と振り向く。

「父親が、極上の美少年だったし、叔父は大貴族で気品の塊の美男で、目が肥えきっている。

それに、彼女は逞しい男が苦手だから、踊りの相手の出来る基準は、ローランデかシェイルだけだし…。

けどシェイルを勧めると絶対、踊りの途中に火花が散るだろうから…」

レイファスが、頷きながらそっと言った。

「二人とも、最悪に気が強いし」

テテュスもファントレイユも、そう告げるレイファスを見たが、二人が二人共、後ろのシェイルをそっと見た。

やっぱり、シェイルは大きくくねる艶やかな銀髪を肩で揺らし、美貌の、そのエメラルドの瞳でレイファスを、睨んでた。

ローフィスは明るい栗毛を振って、オーガスタスに肩をすくめた。

「…それに兄貴が、あの男ぶりだしな!」

オーガスタスが鬣のような赤毛を揺すり、ぷっ!と吹いた。

金髪のギュンターが、気配を消してアイリスの、横に来る。

「俺は、お前が妻を亡くしたばかりだし、母親を亡くした息子をそれは、心配するので、今までそれなりに、加減して来た」

アイリスは濃い艶やかな栗毛で顔を隠し、思い切り俯いた。

「…ローランデがここに来るのは、大反対だったし、お前が困ってても放っとけと、言い続けた」

アイリスは今度は、ギュンターの反対側に、俯けた顔を、向ける。

テテュスとファントレイユは、肩を並べる長身の騎士達を、ついじっと見つめ、会話の行方を見守っていた。

ローフィスが、二人の子供の様子に気づき、ぼやく。

「ローランデへ苦情を言う代わりに、アイリスにぼやくのか?」

ギュンターはその美貌の紫の瞳を、鋭く輝かせてささやく。

「ぼやくんじゃない」

アイリスも、頷く。

「…脅してるんだ」

ギュンターも、解ってるようだ。とそのアイリスの返答に、頷く。

「…じゃあ、こうしないか?」

アイリスがそう、ギュンターに持ちかけるので、テテュスはアイリスそっくりの濃い栗毛に囲まれた色白の可愛らしい顔の、緊張を解いてほっとした。

助っ人を、しなくちゃいけないのか心配したので。

「舞踏曲が一段落したら、君とローランデで『ダダュスの悲劇』を踊り、ディングレーとオーガスタスに『ミアネスの決闘』を。

私も…子供達の手前があるから、最後に皆で、『ダフネス』を踊って逃げれば、会場の皆も満足して私達を解放してくれる」

そして振り向き

「『ダフネス』は、アッカラの親友達を、私とローフィス。

ラミネアをシェイルに頼み、後は皆が、狼藉者の騎士だ」

オーガスタスは笑い、ディングレーが肩をすくめる。

「ゼイブンは混じらないな。絶対」

ローフィスも頷く。

「無理だろう?男ばかりの、見せ舞踏だからな」

そしてシェイルを、見る。

「ラミネア一曲くらいなら、見せ物に成ったっていいだろう?

本来女の踊りだが、足捌きが激しすぎて大抵踊りの上手い小柄な男が踊るんだし。

お前、得意だろう?」

シェイルが、抜け目の無いアイリスに憮然と尋ねる。

「どうして俺がラミネアを踊れると、知っている」

アイリスは、どこで聞いた情報だったか、忘れたので肩をすくめる。

「だって私には、耳がある」

シェイルが怒鳴った。

「それで返答に成ってると思うのか!」

ディングレーもオーガスタスもローフィスも…そして、ギュンター迄もがシェイルに無言でその瞳で、告げた。

『だって、アイリスだからな』






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