表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
セクション・サーティーン編
98/247

89話 バカ夫婦には関わるな

 次の日、指定された喫茶店に行くと既に新田さんと皇嫁は来ていた。


「待たせたか?」

「ちいと!とりあえず正座!」

「なんでだ?時間前だろ?」

「そんなの関係ないわ!連帯責任よ!」

「連帯責任ってなんだよ?意味が分からん。新田さん、この人何言ってんの?」

「この人とは何よっ!」


 うるせえな。


「悪かったな、つかさちゃん」

「ちゃん付けするなっ!」


 最近このパターン多いな。


「はいはい、つかささん」

「つかさ様と呼べ!」

「俺帰るわ」

「まあまあ。つかさ、話が進まないから」

「……しょうがないわね」


 俺は注文を取りに来たウェイターにレモンティーを注文する。


「で、なんなんだよ?俺は色々忙しいんだぞ」


 俺の可愛い妹と遊ぶとかな!


「あのね、皇君が浮気してるかもしれないんだって」

「は?」

「かもじゃないわよ!間違いなく浮気してるのよ!」


 皇が浮気、ねえ。


「進藤君は相手の心当たりある?」

「ない。少なくとも科にはあいつと特別仲がいい女友達はいないと思うぜ」

「じゃあ、サークルね!」

「サークルか。確かに女性もいたけどな」

「それで決まりよ!」

「その前になんで皇が浮気してると思ったんだ?証拠は?」

「……それは言えないわ」

「いやいや、証拠もなく親友を疑えっていうのか?」

「私が確信してるんだからいいのよ!」

「……ったく。それが本当だとしてもだ、俺にできることなんてないぞ」

「あんた、あちこちに盗聴器仕掛けてたでしょ?それらしい情報……」

「ちょっと待て!人聞きの悪い事言うな!」

「進藤君にそんな趣味があったなんて……まさか、以前私の後をつけてたのって……」

「してねえよ!お前な!自分が不幸だからって他人まで巻き込もうとするな!新田さん、俺は盗聴なんてしてないからな!ついでに尾行も、あと盗撮もな!」

「冗談よ」

「ならいいけど」


 だが、皇嫁は納得しなかった。


「だって前に……」

「まだ言うか!あれは適当に言ったのがたまたま当たっただけだ!皇から聞いてないのか⁉︎」

「そんなの信用するわけないじゃない。伊達に付き合い長くないわよ!」

「いやいや全然長くないだろ。会ったのもこれで四、五回目くらいだろ。まともに会話したのだって映画の時が初めてじゃないか」

「あたしにはわかるのよ!」


 おお!なんと思い込みの激しい奴なんだ!


「まあまあ、つかさ、落ち着いて。進藤君が盗聴器を仕掛けるのはあなた達に男の子が生まれてからよ。ね?」

「……それ、フォローしてるつもりか?」

「冗談よ」


 まったく、新田さんにも困ったもんだ。


「ともかく!零の浮気を防げなかったちいとにも責任があるでしょ!」

「なんでだよ?」

「あんたには零に悪い虫が寄り付かないように監視する役目があったはずよ!」

「初耳だ。それにお前、別れたがってたじゃないか?」

「わ、私が捨てるのはいいのよ!でも……でも捨てられるのは我慢できないの!」


 と言って皇嫁の目から涙がポロポロ溢れてくる。


「ちょ、ちょっと待て、泣く事ないだろ?」

「進藤君」


 新田さん、なんで俺を責めるような目で見るんだよ?

 俺、悪かったか?

 とはいえ、泣いている女の子をこのまま放っておくことも出来ないよな。


「わかったよ。直接皇に聞こうぜ。あいつは今どこにいるんだ?」

「……マンガのアシスタントに行ってる……嘘だと思うけど……」

「嘘って……そういえば俺もその話、前に聞いたぞ」

「真に受けてどうするのよ。嘘に決まってるじゃない。零ごときにそんなの務まるわけないわ!」


 皇!嫁の評価、スッゲー低いぞ!


「俺はあいつのマンガ、結構面白かったけどな」

「女の子の裸見て喜んでただけでしょ!このエロ男」


 ……皇嫁に一瞬でも同情したさっきの自分を殴ってやりたいぜ。


「ともかく皇を呼び出す。いいな?」

「……うん」



『どうしたの?珍しいよね、電話かけてくるなんて』

「今からすぐ来い」

『どうしたの?あ、新田さんのことで相談とか?』

「今のお前に人のことを心配する余裕などないぞ」

『え?意味がわからないよ?』

「とにかくすぐに来い。いいな⁉︎」

『う、うん、わかったよ』



 俺は喫茶店の場所を教えて電話を切った。


「すぐ来るそうだ。たぶん三十分くらいだろう」

「それだけあれば一仕事終えられるわ」

「一仕事って何だよ?」

「変態!」


 何で聞いた俺が変態扱いされんだよ?

 まったく何考えてんだ、この嫁は?


 それから三十分ほど経ち、これから吊るし上げにあうとも知らない皇がのほほんとした顔で現れた。


 いや、ちょっとやつれてるか?


「あれ?つかさちゃん?家にいないと思ったら……あ、新田さんもいるんだ」


 皇は俺達の冷たい視線に気づき居心地が悪そうだ。


「お前、家にいたのか?漫画のアシスタントはどうした?」

「うん?うん、終わって帰ってきたときに進藤から電話があったんだよ。それでこれ、なんの集まり?ん?つかさちゃん、目が赤いよ?」

「なんでもないわよ!」


 皇は俺の隣に座り、ウェイターにアメリカンを注文する。


「簡単に言えば原告がお前の嫁、弁護士が新田さん、で、裁判官が俺だ。当然被告はお前だ」

「被告って僕、何かしたっけ?」

「お前には浮気の容疑がかけられている」

「え?」


 驚いて嫁を見る皇。目を真っ赤にして睨み付ける皇嫁。その目には再び涙が浮かんでいた。


 皇は小さくああ、と呟いた。


「心当たりがあるんだな?」

「うん、あ、いや、そう誤解した理由を、だけどね」

「誤解じゃないもん!」

「困ったなあ。それで僕の弁護してくれる人はいないの?」

「浮気相手でも呼んだら?」

「いたら弁護人じゃなくて証人じゃないか」

「じゃあ呼べねえな」

「だからそんな人いないって」

「じゃあ、始めるか」

「ちょっと待ちなさいよ」

「何だよ?俺はさっさと終わらせたいんだよ」


 こんな下らんこと。


「なんで、あんたが裁判官なのよ?あんたも被告よ」

「なんでだよ?」

「あんた、彼女のせりすを放ったらかしてここ数日何やってたのよ?」

「ちょっと、つかさ!」


 あれ?新田さん、あなた、このバカ嫁に何言ったんだ?


 俺が新田さんを見るとスッと視線を逸らした。


「皇はともかく俺は無実だ」

「ちょっと進藤!僕も浮気なんてしてないよ。っていうか進藤、新田さんとの仲、進展あったの?」

「被告人のお前に話すことはない」

「それって……」

「こらっ!話を聞きなさい!」

「つかさちゃん、もっと声落として。周りに迷惑だよ」

「そうだぞ。お前ら夫婦は恥自慢が趣味だから注目浴びて嬉しいかも知れんが、こっちは迷惑だ」

「だ、誰が恥自慢なんかしてるのよっ⁉︎」


 だから、お前らバカ夫婦だって言ってんだろ。


「落ち着いて」

「だって、ちいとが零はともかく、私まで馬鹿にするから」

「ちいと言うな」

「つかさちゃん、僕はいいんだ?」

「いいのよ。事実だから」


 この後しばらくバカ夫婦の浮気した、してないの言い合いが続いた。

 皇嫁が肝心の皇が浮気している証拠とやらを出さないから話はまったく進まない。


 ……面倒くせえなあ。

 早く家に帰って俺の可愛い妹と遊びたいぜ。

 俺が思うに、皇はマンガのバイトが忙しくてしばらく夜の相手をしてなかったんだろう。

 これを口に出すと皇嫁はキレて俺に八つ当たりしそうなんで言わないが。

 にしてもこれ以上付き合ってられねえぜ。


「もう面倒だからまたボーリング勝負でもしたらどうだ?」

「進藤君、流石にそれは……」

「いいわよ。こてんぱんにやってつけて離婚よ!」

「……はあ。ほんとつかさちゃんにも困ったもんだなぁ。……まあ、それでつかさちゃんが納得するならそれでもいいけど」


 ……へ?

 俺は冗談で言ったんだぞ⁉︎


「ほんとにいいのか?」

「あんたが言い出したんじゃない」

「いや、まあそうだが……」


 こうして再びボーリング対決をすることになったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ