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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
セクション・サーティーン編
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59話 斉藤さんは語る

「なんでお前がここにいるんだ?」

「黙秘権を行使するわ!」

「何言ってんだお前は」


 ぷーこは布団の中から出ようとせず、中でもぞもぞしている。


「なんで布団から出てこないんだ?もしかして裸か?なんてな」

「相変わらず下半身でしかものを考えない……ってイタイイタイ!」


 俺は無意識にぷーこのこめかみをグリグリしていた。


「痛いって言ってるでしょ!」


 いつも以上に痛がってる涙目のぷーこを見て俺はクララのパワーレベルを上げていたのを思い出した。


「悪かったな。俺は寛容なんだが、俺の腕はお前を許せなかったようだ」

「何訳のわからないこと言ってんのよ!」

「その言葉、お前に言われるとすっげームカつくな。で、電気もつけず何やってるんだ?」

「言う訳ないでしょ!あたしは極秘任務遂行中なのよ!」


 亀みたいな格好して威張るな。


「誰にも気づかれないように電気を消していた、ということか?」

「他に考えられないでしょ」


 こいつのやることは相変わらず穴だらけだな。


「だったらまず物音を立てるべきじゃなかったな。声を出すなんて以ての外だ」

「ふん!」


 改めて部屋を見回す。

 部屋の内装は俺のいる部屋より豪華だ。

 っていってもノートパソコンだけだけどな。


 液晶ディスプレイにはゲーム画面が表示されている。消音しているようで音は聞こえない。


 ん?このゲームには見覚えがあるぞ。


「あ、ちょっと!何勝手に見てるのよ!」

「攻撃受けてるみたいだぞ」

「うそっ!」


 慌てて布団から飛び出してきたぷーこ。


「あ」

「へ?」


 ぷーこは下着姿だった。


「お、お前はなんて格好してんだ!」

「は、はめたわね!そしてはめる気ね!」

「するか!さっさと服を着ろ!」


 冗談で言ったのに本当に裸だったのか?

 さっき布団の中でもぞもぞしてたのは下着を着けてた??

 二月だぞ。暖房が効いているとはいえ裸じゃ流石に風邪引くだろ。

 ……あ、ぷーこは風邪引かないか。

 バカだからな。



「私がいいっていうまで向こう向いてなさいよ!」


 ぷーこの言うことを聞く理由など全くないのだが、今ここに誰か来たらまずい。

 こいつは間違いなく俺に襲われたとか言うに違いない。俺はぷーこに背を向けた。


 新田母は誰もいないと言ったが実際にはぷーこが隠れていた。

 澄羅家にはバケモノ級の強さを持った人達が何人もいるんだ。ぷーこがいることを本当に知らなかったとは思えない。

 組織から秘密にするように言われてたのだろうか?

 もしそうなら俺も知っちゃまずかったのか?

 だとしても俺は悪くないよな。

 ぷーこが迂闊すぎなんだ、うむ。


 俺の背後でパソコンのキーを叩く音が聞こえる。

 服着るより、ゲームのセーブの方が優先らしい。



「こっち向いていいわよ」


 ぷーこが着ているのは使い古しのジャージだった。

 胸の所に名札が縫い付けてあり、"3-A 斎藤"と書かれていた。


「って誰だよ、斎藤って。お前は姫野って苗字だろ?」

「な、ななななに言ってるのよ!あたしは姫よ!それ以外の何者でもないわ!」


 あ、久し振りに聞いたな姫って。まだ自分の事姫って呼んでんだな。


 それはそれとして俺はさっきからぷーこに言うべきか迷っていたことがある。

 俺が黙っていてもそのうち誰かが言うだろうし、その前に自分で気づくかもしれない。

 だが、結局言うことにした。

 誰も言いたくない事だから俺が泥を被ろうと思ったのではなく、それまで待ってられなかったのだ。


「さっきから気になってたんだが、お前、すごく臭うぞ」

「へ、変態!あたしが美少女だからって体のにおいを嗅ぐなんて!」

「そんなことしてねえだろ!お前の体臭がここまで臭ってくるんだよ。浮浪者レベルに近いぞ。一体何日風呂に入ってないんだ?」

「ふ、二桁はいってないわよ!」

「は?……ふざけるな!さっさと風呂で体洗ってこい!」


 こいつ、マジでダメだな。

 見た目だけはいいのに。本当に残念な奴だ。


「……ははーん、読めたわよ」


 仁王立ちで俺を見下した目で見るぷーこ。


「何がだよ?」

「全裸プレイしてた私の奇襲に失敗したからって、今度は難癖つけて風呂場で全裸になったあたしを襲うつもりね?甘い甘い甘いいいいいいいい!」


 ……相変わらずのアホだな。


「そうか、やっぱり全裸でゲームしたのか」

「え?……へ、変態!やっぱり覗いてたわね!」

「何言ってんだ?」

「今あんたは自分で証明してしまったのよ!あたしが全裸プレイしてたことを知ってるって事をね!」

「その言い回し探偵みたいだな、ってそういえばお前、探偵事務所にいたな。お前も探偵してたんだっけ?」

「当たり前でしょ!あたしは師匠を超える名探偵なのよ!って話を逸らそうとしても無駄よ!この覗き魔!」

「あほか。お前、自分で全裸プレイしてたって言っただろ」

「……」


 マジでダメだな、こいつ。

 なんでこいつ、組織の一員なんだ?

 間違いなくアヴリルと関係があるからだとは思うが。


「あ、あたしは言ってないもん!」

「それはもういいからさっさと風呂入ってこい!気分が悪くなってきた」

「年頃の女の子に向かってちょー失礼ね!」

「年頃の女の子なら身だしなみくらい気を使え」

「……しょうがないわね。覗くなよ!」

「覗くか!」

「言っとくけどあたしもスラ流の門下生なんだからね!下っ端のあんたなんか一発で終わりよ!」


 なんか聞きようによっては卑猥な事言ってるように思えるな。


「パンツ盗むなよ!」

「盗むか!」


 あー、なんか疲れがどっと出たぜ。



 ぷーこは夕食、いや夜食のカップ麺を持って戻ってきた。


「部屋が片付いてるわね」

「隣の部屋がゴミ部屋じゃ気分悪い」

「失礼ね。パンツ盗まなかったでしょうね?」

「するか」


 しかし、ぷーこは俺の言葉を信用せず、荷物を確認し始める。

 まったく失礼な奴だ。


 ぷーこはカップ麺のフタを取り、ズルズルと麺をすする。

 美味そうに食いやがって。俺も腹が減ってくるじゃねえか。


「お前はゲームをする時いつも全裸なのか?」

「そんなわけないでしょ。このゲームだけよ」

「このゲームと全裸がどう関係するんだよ?」

「願掛けよ。全裸プレイすると願いが叶うって話があるのよ」

「ぜってー噓だろ、それ。なんでそんなの信じんだよ?」

「できる事はなんでもやるわ!」


 あー、こいつ、詐欺とかにすぐ引っかかりそう。

 ……いや、待てよ。

 前にオタクは深夜アニメ見る時、テレビの前で全裸待機するって話聞いたことあるな。冗談だと思ってたが本当なのか?

 今度、皇に……聞けねえな。こんなこと。


「もちろんそれだけじゃないわ。このゲームは以前、みーちゃんと一緒にプレイしてたのよ」

「……ああ、そういうことか。ゲーム内でみーちゃんと接触しようとしたんだな?やっぱ全裸必要ないだろ。実は露出狂かお前?」

「うるさいわね!ともかく!このゲームであたし達は友情を深めあったのよ!愛と言ってもいいわ!このゲーム中なら壊れた関係を修復できるはずなのよ!あんたの陰謀によって壊された関係をね!」

「そうか。じゃあ頑張れ」

「ちょっと待ちなさいよ!なに帰ろうとしてるのよ!あんたには協力する義務があるわ!」

「人のせいにするんじゃねえよ。全部お前のせいだろ。俺はお前のせいで死にそうになった事忘れてねえぞ」

「そ、それは記憶にございません!」

「なに政治家みたいな事言ってんだ」

「そ、そんな過ぎた事忘れなさいよ。あたしもあんたのした事忘れてあげるわ!」


 相変わらず自分勝手でいい加減な奴だ。


「最近みーちゃん、ログインしてないけど、あんた、監禁してんじゃないでしょうね!?」

「んなことするかよ」

「誤魔化しても無駄よ!あんたんとこにいるのはわかってるんだからね!」

「まあ、仮に俺のとこにいたとしてもだ、寒さに弱い皇帝猫が今活動できるのか?」

「あ……」


 マジあほだな。皇帝猫に関してはお前の方が詳しいだろう。そこまで追い込まれてるのか?

 ……いや、アホだからだな。


「そういや、バイトはどうした?」

「よくそれ聞けたわね」

「は?どういう意味だよ?」

「なに勝手にあたしに断りもなく辞めてるのよ!おかげであたしのシフトが増えちゃったじゃない!」

「いいじゃないか。お金が増えて。課金できるだろ」

「あたしはあんたと違って忙しいのよ!まあ、あたしもみーちゃんを救出したら辞めるけどね!」

「お前って奴は……」


 またタカる気だな。

 絶対こいつにみーちゃんを渡したら駄目だ。


「……あ、ちょっと待て。お前、その体臭撒き散らしてバイトしてたのか?」

「さっきから失礼ね!ここ一週間体調が悪いってバイトサボってるから問題ないわよ」

「全然問題なくねえだろ!」


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