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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
セクション・サーティーン編
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29話 クリスマスってこんなもんだよな

 俺がバイトから帰宅するとテーブルにはチキンをメインとした料理とクリスマスケーキが並べられていた。

 あと寿司だ。

 ん?寿司?


「あんたが気を利かせるなんて珍しいわね」


 俺じゃねえ。だが俺の名で配達されたのなら注文したのはみーちゃんだろう。真実を言ったところで信じるわけねえよな。


「みーちゃんの歓迎会してなかったからな」

 ということにしといた。


 にゃっくとみーちゃんは着ぐるみを着ていた。

 サンタクロースとトナカイだ。

 母は今日のために修繕を急いだようだ。よく見れば母の目元にうっすらとクマができていた。


 ……他にすることないのかよ。



 俺は俺の可愛い妹にプレゼントを渡した。

 魔法少女ぜりんの新しいステッキだ。新しいステッキは今までの三倍の力が発揮できるという設定だ。

 見た目はそんなに変わらないのでパーツのほとんどは前のステッキの流用品だろう。

 そんな子供騙しの商品でも入荷するとすぐ売り切れる人気商品だ。


 くそっ、いい商売しやがるぜ。


 今回、皇の情報提供のお陰で余裕でゲット出来た。

 だが、早く購入するのも問題だな。

 俺の可愛い妹がせりんのドラマやCMを見て欲しそうな顔をする度、その場で渡しそうになっちまったぜ。


 俺の可愛い妹は大喜びし、俺に抱きつき頬にちゅーをした。


 おませさんだなあ。


「あんた、目が怖いわよ」


 母が不審者を見るような目で俺を見る。


「失礼だな、どこから見ても妹思いのいいお兄ちゃんだろ」

「よく言うわね」

「他に誰も言ってくれないからな」

「つまり、みんな私と同じように思ってるってことよ」

「……」


 しかし、考えてみると皇には結構世話になってるよな。

 ……いや、これは皇の作戦かもしれない。

 皇嫁の話を信じるなら外堀を埋めて攻めるのが得意技みたいだしな。

 貸しをたくさん作っておいていざという時、自分のお願いを聞いてもらおうと考えているのかも知れない。

 年末のイベントの手伝いの件では今の所『ここどこ戦記』以外交渉に出してきていないが、このまま断り続けると今回の件を持ち出して来るかもしれないな。


 ……まあ、親切でも下心があるにしても世話になっているのは確かなんだよな。

 どうすっかなぁ。



 夕食が終わり、俺はみーちゃんと共に自室へ戻った。

 にゃっくは新しいステッキを手にした俺の可愛い妹と一緒に悪の怪人(父)と戦っている。

 本来なら俺も妹を陰から助ける素敵なお兄ちゃん役をすべきなのだが、母親に鬱陶しいと追い出されたのだ。

 その際、みーちゃんも俺についてきたというわけだ。

 にゃっくが何かいいたそうに見えたのは気のせいだろう。



 みーちゃんは既にトナカイの着ぐるみを脱ぎマントを纏っている。

 結構気に入っているようだ。

 にゃっくも気に入っているみたいだし、皇帝猫はマントが好きなのか?


 俺はエアコンをつけた。俺の部屋は寒さにめっぽう弱い皇帝猫でなくても暖房を入れないと耐えられない程冷え切っていたからな。


 みーちゃんは眠そうな目をしながら自分のパソコンを立ち上げ、今日の株価をチェックし始める。

 俺はみーちゃんパソコンと比べて数段性能が劣る自分のパソコンでいつものウェブサイトを見る。


 そういや、みーちゃん、最近、俺の可愛い妹と一緒にいないよな。

 だからといって仲が悪いというわけじゃなさそうだ。さっき俺の可愛い妹はみーちゃんに寿司を食べさせていたからな。


「妹とはうまくやってるのか?」


 小さくうなずくみーちゃん。


「それならいいけどよ。あと、パソコン使うときは気をつけろよ。母さん達に見つかると面倒だからな」


 またも小さく頷くみーちゃん。


「そうだ、今日、ぷーこに会ったぜ」


 みーちゃんがマウスを操作する手?を止め嫌そうな顔を俺に向けた。


 みーちゃんは感情豊かだな。

 にゃっくはあまり感情を表に出さないからな。


「まあ、お前が怒る気持ちはわかる。あのバカがガッツポーズさせたんだってな。アレさえなければ、あのロボ、<プリンセス・イーエス>だったか、が大破することはなかったかも知れないんだからな」


 みーちゃんはメモ帳を起動するとネズミ型マウスを操作してソフトウェアキーボードで『ぷりんせす・いーえす ×』とタイプする。

 

 ん?


 更に改行して『MR-NET008』とタイプした。

 

 なるほど、<MR-NET008>が本当の名前か。またぷーこは俺に適当なこと言いやがったな。


「ぷーこはお前のこと探していたぜ」


 みーちゃんはぷるぷるとでっかい頭を横に振る。


「だろうと思って知らんと言っといた」


 とはいえ、気づかれるのも時間の問題だろうな。


「そういや、あいつは今何処に住んでるんだ?事務所は閉まってたよな」


 みーちゃんはでっかい頭を横に振る。

 そうか、知らないのか。



 みーちゃんは株のチェックを終えるとパソコンを立ち下げ、ベッドにジャンプして布団に潜り込んだ。

 今日も俺の部屋で寝るつもりのようだ。


「おやすみ、みーちゃん」


 こうして俺のクリスマスは終わった。


 ……なんだろうな、この虚しさは。


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