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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
セクション・サーティーン編
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25話 誕生日プレゼント

 みーちゃんの荷物は首にぶら下げていたがまぐちだけだった。アレキサンダーの犬小屋の中も確認したが他に荷物はなかった。

 ちょっと迷ったが、俺は中を調べてみることにした。がまぐちも洗いたいしな。

 中には一万円札二枚、百円玉三枚、みーちゃんハンコ一個、カギが一つ、そして折り畳まれたレシートらしき紙が一枚。

 カギは藤原探偵事務所のものだろうか。レシートはロッカーの暗証番号で皐月駅に設置してあるもののようだ。

 俺の可愛い妹はみーちゃんを手放す様子がなかったし、みーちゃんも眠ったままだったので、みーちゃんから声をかけてくるまで放っておくことにした。


「ちょっと出掛けてくる」

「……え?、ええ」


 母は俺に声をかけられ慌ててを編み物を隠したが俺はそれが何かすぐにわかった。

 マントだ。

 みーちゃん用だろう。口ではなんだかんだと言いながらも母は猫好きなのだ。



 俺が外に出ると雪は止んでいた。

 うむ、日頃の行いだな。

 しかし、ジージャンはちょっと寒いか?いや、まあ大丈夫だろう。


 俺が向かったのは駅前の商店街にある百円ショップだ。

 百円ショップで洗面器を手に取る。金に余裕がないのでこれをみーちゃんの寝床にするのだ。あとは下にタオルとか敷して完成だ。


 でもまあ、きっと俺とか俺の可愛い妹と一緒に寝るに違いないので使う機会は少ないな。


 他にお菓子やジュースを適当に洗面器に放り込むと会計を済ませて店を出た。



 ふとジュエリーショップに目が止まった。

 来月二日、つまり一月二日は新田さんの誕生日だ。

 それを知ったのはつい最近だ。情報提供者は皇だ。皇は皇嫁から聞いたらしい。

 ちなみになぜか皇嫁の誕生日まで教えられたがそっちはすでに記憶にない。

 皇は俺と新田さんとくっつけだがっている節がある。

 気がないといえば嘘になるが、手伝ってくれと言ったことはないし、どうしても彼女にしたいかと問われれば即答できない。それが今の俺の新田さんに対する感情だ。


 ……案外、新田さんが……てなことはないよな。


 俺が命の恩人である事を知っているならいざ知らず、客観的に見て、俺が新田さんに好かれる理由が見つからない。


 ……まあ、知ってしまったからには何か贈った方がいいかな。でもさすがに宝石はないよな。ただの友達に高価な物を贈られたら迷惑だろう。


 俺が店の前で考え込んでいると店から店員が出てきた。きちっとした身なりのおっさんだった。店長かもしれない。


「ご興味がおありでしたら中に入ってご覧になってはいかかでしょうか?」

「いや、別に。金、そんなに持ってないし」

「リーズナブルな商品もございます。一度見てはいかがでしょうか?」


 うーむ、確かにこういう店は一度も入ったことないしな。

 俺はちょっとだけ覗いて見ることにした。



 店の中には客は一人もいなかった。だから俺に声をかけたのだろう。

 最初に案内されたのは指輪が陳列されたコーナーだった。

 パッと見た感じ全くリーズナブルじゃなかった。俺の金銭感覚がズレてなければ。


 安くても二十万を超える。完全に勘違いしてるな、このおっさん。


「相手は恋人じゃないんだ。友達の誕生日プレゼントなんだ」

「それは大変失礼致しました。私はてっきり婚約指輪をお贈りなるものとばかり」


 なんでそう思った?ジージャン、ジーパン、おまけに百円ショップの買い物袋ぶら下げてる俺を見てそう思ったあんたの感覚はおかしいぞ。


「失礼ですがお相手は女性の方ですか?」

「ああ」

「好意を抱いておられますか?友達以上になりたいと」

「……まあ、思わなくはないかな」

「ではペンダントなどはいかがでしょうか?」

「そうだな」


 次に案内されたのはペンダント、ネックレス、それにイヤリングが陳列されていた。


 うーむ。どれがいいのかさっぱりわからん。


 思い返して見ても、新田さんが装飾品を身につけていたかわからない。

 少なくともイヤリングやピアスはしてなかったとは思うが。


 ふと右隅に陳列されていたペンダントに目が止まった。

 ペンダントトップに埋め込まれた青い宝石はやさしい光を放ち、まるで自ら光を放っているように見えた。

 俺はこのペンダントに何か惹かれるものを感じた。


「この宝石は何?」

「ブルーサファイアでございます」

「ふーん」


 3万か、高いな。

 それに恋人でもない俺からこんな高価な物プレセントされても困るだろう。


「別のないですか?」

「では、これなどいかがでしょうか?」


 店員が笑顔で別の商品を取り出した。


 む?さっきより宝石大きくねえか?


「これいくら?」

「5万円です」


 やっぱりか!そうじゃねえだろ!

 まったく。なんでもっと高いのを出してくるんだよ。

 察しろよ。ったく。


 店員に内心腹を立てながらも、できた人間である俺はもっと安いのを探していることを伝えた。

 ああ、俺ってほんと出来た奴だよな。

 と自分で自分をほめてやる。


 一通り見せてもらったが、あのブルーサファイアのペンダント以外これはというものはなかった。

 もう一度さっきのペンダントを見せてもらう。


「身につけてみますか?」

「え?」


 あ、そうか、別にプレゼントにする必要はないんだ。デザイン的に男が身につけてもおかしくはないだろう。


 やはり、このペンダント、というかこの宝石は他のブルーサファイア、いや、どの宝石とも違う。

 今まで装飾品なんか欲しいなんて思ったことなかったんだが、自分用に欲しくなってしまった。

 だが、やっぱり三万は高いよな。


「これ、もっと安くならない?」

「申し訳ございません、これでも良心的な価格です」


 そう言った店員の表情が微かに変わり、不機嫌になったのがわかった。


 ってなんで俺が店員の表情を読まにゃならんのだ。


 そのペンダントに未練はあったものの買うのを諦め店を後にした。


 プレゼントどうするかな。



 家に帰ると俺の可愛い妹はにゃっくとみーちゃんを両脇に抱え、幸せそうな寝顔をしていた。


 しばらくして皇からSNSのキャットウォークにメッセージが届いた。


『明日、映画見に行かない?スペーストレック』


 スペーストレックは元は海外ドラマだ。数年に一度のペースで映画が公開されている。俺は子供の頃からスペーストレックのファンだったのでこのシリーズだけは今も欠かさず見ている。

 趣味の異なる皇と仲がいいのは皇もスペーストレックのファンだったことも大きいと思う。

 まあ、あいつはこれ以外も詳しいんだが。


『いいぜ』と返事を出し、待ち合わせ時間も決めた。


 丁度いい。ついでに皇の意見も聞いてみよう。嫁さんいるんだし、俺より詳しいだろう。


 色々時間を食ったが、そろそろバイトの準備をしないとな。

 また駅に向かう事になるが、流石に洗面器持ってバイトには行きたくなかったからな。



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