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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
218/247

204話 おまえの名前はなんなんだ

「進藤千歳、ついてきなさい」


 あやめ様はそういうと俺の返事を待たず、リビングを出て行った。

 拒否する理由もないので素直に後について行く俺。

 その後を何故かちょこちょことついてくるにゃん太郎(仮名)


「僕もアヤメに話があるんだ」


 そう言ってミズキがついて来た。

 躊躇していた楓さんとせりすだったが、ミズキの行動を見てついて来た。

 あやめ様は一度だけ振り返ったが何も言わなかった。



 案内されたのはあやめ様の部屋だった。


 この部屋には見覚えがある、気がするな。


 俺の隣にミズキが座る。

 対抗するようにその反対側にせりすが座ろうとしたが、にゃん太郎(仮名)のほう早かった。

 って、なんだこいつ?


 せりすはにゃん太郎(仮名)に気付かずお尻で潰しそうになったので俺がその尻を押してにゃん太郎(仮名)が潰されるのを助ける。

 すると顔を少し赤くしたせりすに頬を殴られた。


 なんでだよ?

 にゃん太郎(仮名)が大怪我するのを助けただけだぞ。

 あ、別にせりすの体重がどうこう言ってんじゃないぞ。

 せりすじゃなくてもヒップアタック食らったら大怪我してたところだ。

 にゃん太郎(仮名)は皇帝猫と言っても戦闘タイプじゃないし、トロそうなんだよな。


「ももちゃん、危ないでしょ」


 せりすはにゃん太郎(仮名)のことをももちゃんと呼んでるらしい、を抱えて座る。


 って、なんでみんなこいつの呼び方違うんだ?



『進藤千歳、お前に確認したいことがある』


 お、あやめ様、いきなり向こうの世界の言葉で話して来た。

 それじゃ、楓さんやせりすはわからんぞ、

 って、だからせりす達が付いて来ても止めなかったのか。


「お祖母様!日本語で話してください!」

「そうよ、母さん!」


 あやめ様は二人を一瞥した。


「楓、お前は自分の勉強不足を反省しなさい。あきらは話せるのだぞ」

「う……」

「え?お母さん話せるの!?」

「せりす、お前は組織とは関係ないから話を知る必要はない」

「でもっ」

「そんなに知りたいなら私達の会話を聞いて言葉を覚えなさい」

「そんな……」


 うわー、あやめ様、無茶振りするなぁ。

 そんなの俺には絶対無理だぜ。


『さっきから何話してるのさ?まあ、なんとなくわかるけどさ』

『じゃあ、いいだろ』


 あやめ様の鋭い視線を感じた。


『ーーなるほど。進藤千歳は本当に私達の言葉が話せるのだな』

『は、はい。そのようです』

『そのようです、か。まるで他人事だな』

『あ、いや、そのようです、って言ったのは俺もミズキと話すまで話せると知らなかったので……』

『ふむ、つまり自分で覚えたのではなく、自然と話せたという事だな?』

『はい』

『ーーそれはどうしてだと思う?』


 ん?なんでそんな事聞くんだ?

 そんなに興味ある事なのか?


『おそらく魔王から魔法を授かったときだと。最初に魔法を覚えたときかもしれませんが確かめる方法がありません』

『ーー他に何か気づいた事はないか?』

『他、ですか?』

『例えば、私達の、いや、向こうの世界の国の事とか、風習とか』

『国?』


 うーん、全然わからん。


『いえ』

『じゃあさ、スラ族の事は?』


 興味深々で俺を覗き込むミズキ。

 それを押しのけるせりす。


『いや、大したことは知らないぞ。女しか生まれない一族で生まれながらにラグナが使えるってことくらいかな』

『それは私が以前話したことだ』



 その後もあやめ様にいくつか質問された。

 一通り説明を終えて俺も質問してみる。


『あやめ様に尋ねることじゃないかもしれませんが、あの後、俺達が島を脱出した後どうなったのでしょうか?』

『ふむ、島は消滅した、いや、別の世界に移動した、というのが正しいのかもしれん。確かめようがないが。島が消えた事は確かだ』

『そうですか』


 じゃあ、四季薫は別の世界に行ってしまったのだろうか?

 何度か電話とメールを入れたが返事はない。

 って、これはいつものことか。

 本人の意思とはいえ、無茶する奴だよな。


『そういえばカルト教団に襲われたそうだな』

『はい、あれはなんなんですか?』

『黒翼王を崇拝する馬鹿どもだ』

『それだけですか?』

『あと、キリン達がこちらの世界に来ることになった元凶だ』

『それってネバーランド号事件ですよね』

『ああ』


 ん?

 あれ?


『あやめ様はネバーランド号事件とは関係なくこちらに来たんですか?』

『ああ。私はもっと前にこの世界にやって来た』

『僕みたいに来たんじゃないのかな?』

『まあ、そんなところだ』


 はぐらかされたが、どうしても知りたいわけじゃないからいいか。


『俺達が島に行くときに使った船やあの島で結構人が死にましたが、大丈夫なんでしょうか?まさかゾンビや魔物に殺されましたなんて正直に遺族に話したりしないですよね』

『予めアリバイ作りをしていたのだろ?それらしい理由づけをするのだろう』

『なるほど』


 って、じゃあ俺が死んだ場合、探偵の研修に死んだって事になったのか?


『一度に処理できる量ではないようだから、今後、色々な事件を偽造して紛れ込ませていくのだろう』

『なるほど』



『話は以上か?』

『あ、はい。』

『ではミズキ、話があるんだったな』


 そう言ってあやめ様は面倒くさそうにミズキを見る。


『決まってるじゃないか。再戦だよ!』

『私はお前と違って暇ではない』

『ムカつくね!』


『ところで進藤千歳、小夜はどうする?』

『さよ?』


 あやめ様の視線の先にはにゃん太郎(仮名)がいた。


 って、あやめ様、あなたも違う名前で呼んでるんですか。

 家族で呼び方統一してないってどういうことだっ!?

 当のにゃん太郎(仮名)はどの呼び方にも反応しないけどな。


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