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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
208/247

194話 分断

「せりすの事を覚えてないの?」


 楓さんはどこか責めるような口調で尋ねる。


「せりすって、新田せりすの事ですか?」

「知ってるんじゃない」


 確かに知っている。

 同じ大学に通っており、楓さんによく似た容姿で美人なので男子にスゴイ人気だ。

 俺も彼女に出来たらいいな、と思った事はあるが実現するとは思っていなかった。

 学部が違うので基本的に会う機会が少ないし、自分を積極的にアピールする事もない。

 そもそもアピールポイントが見つからない。

 そんな俺が新田せりすと付き合ってるだって?

 どんな奇跡が起きたんだよ?


「知ってるけど俺の彼女だという記憶がない」

「それって……!?」


 楓さんが何か言いかけたところで地面が大きく揺れた。


「ダンジョンシャッフル、じゃないよな?!」

「ええ、これはシャッフルじゃないわ!」


 世界がダンジョン、もしくはこの島自体を排除しようとしてる。

 揺れは小さくなったものの完全には収まっていない。

 明らかに今までの揺れとは違う。


「うむ、これは本当に時間がないようだ」


 どこか嬉しそうに白衣の女性、葉月先生と言ったか、が鷹揚に頷く。


「話の続きは外に出てからよ!」



「アヴリル、大丈夫?」

「ありがと、キリン。ちょっと揺れが大きいし、お尻も痛いけど大丈夫よ」


 アヴリルはまだ一人で動くのは無理があり、行きと同じくにゃんタンクに運ばれている。

 今回は棺の中ではなく棺を固定していた台に腰をかけている。

 当然その台にクッションなどない。


「それだけ文句言えれば大丈夫だな」

「千歳が背負ってくれてもいいのよ?」

「重すぎて無理だ」

「失礼ね!」


 ちょっとムッとしたアヴリルに笑みを返す。


「ーーチトセの性欲増大を確認」

「してねえよ」


 マジうるせえな、コイツ。


「ーー進藤君、浮気は許さないわよ」

「楓さん、そんなバカロボットの言うこと真に受けないでくださいよ」

「バカロボットではありません!シエス、デス!」



 何事もなく転送の紋章のある場所へ到着した。

 転送人数は三人だった。

 カウントされるのは、俺、シエス、ミズキ、キリンさん、楓さん、葉月先生、にゃんタンク、そして復活したアヴリルの計八人だ。


「誰が行く?」

「ーー正直、今上がどうなっているかわからないからどういう順番で行くのがベストか難しいけど……四号機とアヴリル、それに楓」

「わかったわ」

「楓、アヴリルをお願いね」

「任せて」

「キリン、四号機ではありません。にゃんタンクデス!」


 というシエスの言葉をみんなスルー。


「キリン、君はアヴリルと一緒でなくていいのかね?」

「私がこの計画を立てたのよ。最後まで残るわ」

「あ、ちょっと待って。この子も頼むよ」


 ミズキは抱いていたまだ名前のない皇帝猫(俺はにゃん太郎と呼んでたらしい)をアヴリルに渡す。

 皇帝猫は素直にアヴリルの胸に抱かれた。

 アヴリルが皇帝猫を撫でながら済まなそうな表情をする。


「本当は私が残るべきなんだろうけど、足手まといなのよね」

「心配しなくても大丈夫よ」

「キリン……ええ、信じてるわ。みんな無事に戻ってきてね」



 三人と名の無い皇帝猫が紋章の入るとスッと姿が消え、紋章もどこかへ移動した。


「さ、移動した紋章を探しましょう」



 目の前に魔物が現れた。


「この階は魔物でないんじゃなかったのかよ!?」

「魔王が去って特別じゃ無くなったって事だろう、ね!」


 襲いかかる魔物をアッサリ斬り伏せるミズキ。

 キリンとミズキの二人であっと言う間に全滅させる。


 流石にその辺の魔物じゃこのパーティの敵じゃねえな。



「階段デス!」


 消えたはずだが、魔物の出現と同時に復活したようだ。


「どうする?」

「上に向かいましょう!」


 キリンは即答した。


 確かに魔物が現れるようになった二十階で転送の紋章を探すより、地上に向かいながら紋章を探した方がいいよな。

 魔物も弱くなるはずだし。



 十八階で転送の紋章を発見した。


「……二人用ね。千歳と夏美が行って。ミズキには申し訳ないけど」

「構わないよ。僕はどうしてもチトセ達の世界に行きたいわけじゃない。このままダンジョンと一緒に移動してもいいんだ。あやめには会いたいと思ってたけど絶対ってわけじゃないし」

「ありがとう」

「それよりもさ、聞きそびれてたんだけど、キリン達は元の世界に戻りたくないのかい?」

「……正直わからないわ。でも戻るとしてもそれは今じゃない。やり残した事があるのよ」

「そうなんだ。わかったよ」



 葉月先生が紋章に乗った。

 そして俺とにゃっくが紋章に乗ると、一瞬体が揺れ、視界が歪んだ。

 次の瞬間、目の前の景色が変わっていた。



 突然、目の前に斧を持った巨人がいた。その頭は熊だった。


 なんだコイツっ!?


 驚いて動きが遅れた。

 熊巨人が斧を振り上げる。

 だが、その斧が振り下ろされる事はなかった。


 にゃっくだ。

 にゃっくは誰よりも早く状況を判断し、斧が振り下ろされる前にその熊の頭を皇帝拳で切り落としたのだ。


 頭を失った熊巨人がゆっくりと仰向けに倒れる。


「助かったぜ。にゃっく」

「うむ、今のは危なかったな」


 仁王立ちで大きく頷く葉山先生。


 魔物は今の一匹だけだったようだ。

 辺りを警戒しながら周囲を見回す。


 転送先はダンジョンの入り口ではなかった。


「ここどこだよ?」

「ーーうむ。どうやら島の西側の森に転送されたようだ」


 葉山先生が腕時計?を見ながら答える。


「なんだよっ!ダンジョンの入口に転送されんじゃないのか!?」

「うむ。今までとは違うようだな」


 ってことは、また俺達用にルール変えたってか?!

 まだ遊び足りないってか!


「アヴリル達はいないみたいだな」

「違う所に転送されたのだろうな」

「アヴリル達の場所はわかるか?」

「今、確認中だ。ーーうむ、どうやら彼女らは島の東側の海岸に向かっているようだ」


 その後、葉山先生は楓さんと連絡が取れたようだ。



「で、向こうの状況は?」

「うむ。魔物の襲撃はあるもののそれほど問題ではないようだ」

「それは良かった」

「今は東岸にある”エスビー“の基地に向っているそうだ」


 エスビー?


「じゃあ、俺達もその基地に向かうか?」

「やめた方がいいだろう。時間がかかり過ぎる。もし消えるのがダンジョンだけでなく、この島ごとだった場合、島からの脱出に間に合わない可能性が高くなる」

「じゃあどうする?」

「西にもう少し進むとエスビーの基地があるはずだ」

「葉山先生、さっきからエスビーって言ってるけど、セクション・サーティーンじゃないのか?」

「何を言っている。同じだ」


 ん?ん?


「君はもっと頭が柔らかいと思っていたのだがな」

「悪かったな」


「13は繋げると”B“と読めるだろ?」


 あ、なるほど。


「で、どうするかね?」

「西の基地までどのくらいかかるんだ?」

「二、三十分程度と言ったところか」

「じゃあ基地に向かおう」


 俺達は西の基地に向かう事にした。


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