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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
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189話 決着

 俺の作戦にソラの同意は必要ないし、作戦自体知る必要すらない。

 というか知られたら絶対邪魔される、いや殺される。

 ケロロの縛りは緩くなっておりいつでも抜け出せる状態だ。

 あとはその時が来るまでソラの側から離れないことだ。



「……それで?」

「ん?」

「私に話があったのでしょう?」

「あ、ああ」


 お、やべっ!

 なに話すか考えてなかったぜ。

 

「お前は白翼王だよな?」

「知らない」

「知らない?……あ、そうか。白翼王は俺達が勝手にそう呼んでるだけか。お前は魔王、様の白き翼から生まれたんだよな?」

「だから何?」

「いや、今まで人前に姿を見せた事ないって話だがなんでだ?そんなに綺麗なのに」


 皆さん!チトセが見境なくナンパしてます!


 と離れた所から聞こえた。


 シエス、あとでフルボッコな!


「私は魔王様のお役に立てればそれでいい。他に興味はない」

「うーん、勿体無いなあ」

「それがお前の話か?」


 うわー、更に冷たい目をしやがったよ。

 って、明らかに周囲の温度下がってるぞ!


 なんとか話を引き延ばすんだ!

 他に話す事ないか……そうだ!


「さっき眷属の話が出たけどよ、お前を含めても五つだ。魔王様は七枚の翼を持ってるんだよな。残りの二枚はどうなったんだ?嫌いじゃないのか?」

「それはーー!!」


 ソラが答える前に再び皇帝猫二騎が激突した。

 吹き飛ばされる二騎。

 にゃん魔王がソラのもとに飛ばされてきた。

 ソラがにゃん魔王をがしっと抱きとめる。


「……ああ、魔王様のいい匂い」


 本当か?

 それ、にゃん太郎(仮)のにおいじゃないのか?


「苦しいぞ」

「申し訳ありません!魔王様、ご無事ですか?」


 と言いつつもにゃん魔王に頬ずりするのをやめない。


 まあ、見た目は子猫だからその気持ちはわかる。


「うむ。なかなかやるぞ、にゃっくは」

「魔王様が本気を出せば一瞬で片が付きます」

「ふふふ。それじゃ面白くないだろう」

「そうですね」

「いやいや。にゃっくだってそう簡単にはやられないぜ」


 ケロロの束縛から逃れた俺も話に参加し、にゃん魔王の頭を撫でる。


 このもふもふがたまらんぜ!


「無礼者!」


 ソラににゃん魔王の頭を撫でている右腕を叩かれ、グニャっと変な方向に曲がった。

 アディ・ラスで強化していたが全く役に立たなかった。

 いや、腕が千切れたりしなかったんだから効果はあったのだろう。


 言うまでもないが、めっちゃ痛い!


 思わずその場にうずくまる。


「千歳!」


 激痛が走りながらも笑いがこみ上げてくる。


「く、くくくく、あははははっ!」

「痛みでおかしくなったのかいっ!?」

「うむ、アレはもう治らん」

「あっ!そのセリフはボクが言うつもりだったデス!」

「うむ?そうだったか。それは悪いことをしたな。しかし早い者勝ちだ」


 先生、全然悪いと思ってねえだろ?

 てか怪我の心配しやがれ!

 あんた、医者だろ!


 にゃっくが俺の側へやって来る。


「俺を心配してくれるのはお前だけだな」

「いや、僕も心配してるよ」

「私もよ」

「ボクもデス」


 お前は嘘だ。


「今魔法をかけるわ」


 キリンさんの回復魔法により腕は元に戻ったが、違和感が残る。


「もとの感覚にすぐには戻らないわ」

「ありがとうございます。痛みがなくなっただけでも助かります」


 <領域>程じゃないがこれだけ魔粒子が豊富な場所だ。ほっといても自己回復しただろうが早く治るに越したことはない。


「どうしたにゃっく?もう降参か?」


 ソラから降りたにゃん魔王が前足でシャドー猫パンチを放ちながらにゃっくを挑発する。


 相変わらずかわいいぜ。

 って、そんなことよりだ、


「いや、魔王よ。勝負はついた。俺達の勝ちだ」

「何だと?」


 俺はさっき折れた腕を伸ばし撫でるジェスチャーをする。


「触っただろ」

「……あ」


 そう、俺と魔王との鬼ごっこは終わっていない。

 終わったとは誰も言ってない。


「魔王様、こいつ卑怯です!今すぐに殺します!」

「待て」

「でもっ」

「待って下さい!」


 そう言って俺の前に進み出たのはシエスだ。


 こいつが俺を庇う?

 やっと自分が俺のボディガードだって事を思い出したか?


「それがチトセなのデス!」


 ん?


「チトセから卑怯をとったら何も残りません!あ、違います!シスコンしか残りません!あ、もうシスコンじゃなくなったデスね。やっぱり何も残りません!」


 ……マジでこいつ後でぶっ壊す!


「やはり生かしておく必要はないですね」

「待て、と言ったぞ」

「……わかりました」


 にゃん魔王のつぶらな瞳で見つめられたソラは頬を赤らめながら振り上げた手を下ろした。


 いやいや、その態度おかしくねえか?

 中身は魔王かもしれねえが、見た目は子猫だぞ!?


「しかしうっかりしてたな。最初からそういう作戦だったか」

「最初からってわけじゃない」


 もしかしたらにゃっくは最初からそう考えていたのかもしれない。

 戦いの天才だからな。

 にゃっくを抱え上げて肩に乗せる。

 肩で息をしている所を見ると相当無理をしたようだ。


 魔王相手に一騎で戦ったんだから当然か。



「約束は約束だ。ーー俺の負けだ」


 やけにあっさり認めたな。

 少しはゴネると思ったんだが。

 

「じゃあ!」

「ああ。お前達の願いを叶えてやろう」


 そう笑顔で言った魔王に俺はどこか引っかかるものがあった。


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