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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
202/247

188話 にゃっくVS魔王

 本来、にゃっくの戦闘力はにゃん太郎(仮)を遥かに上回る。

 戦えば一瞬で勝負がつくはずだ。

 だが、今のにゃん太郎(仮)は魔王が憑依している、にゃん魔王だ。

 キリンさん達、三人がかりで傷一つつけられなかった最強の敵だった。



 にゃっくが動いた。

 と思った瞬間、姿が消えた。

 アディ・ラスで動体視力も強化されているはずなのに動きを目で追えなかった。

 にゃん魔王もさっきまでいた場所にいなかった。


 キィーン


 耳障りな音がした直後、ガンッ、ガンッと何かがぶつかる音が立て続けに鳴った。

 にゃっくとにゃん魔王が壁に激突する音だった。


「相討ちか?」

「そのようデスね」


 俺のそばにシエスがやって来る。

 シエスだけじゃない。キリンさん達もだ。


「魔王が本来の力ではないとはいえ、互角の戦いができるなんて」

「にゃっくの報告は受けていたけどこれ程とは思わなかったわ」

「やっぱりあの子は普通のユーマオンじゃないのかもしれないね」

「うむ、流石私が見込んだだけの事はある」


 身動き取れない俺を囲んで戦いを見守るキリンさん達。

 って、


「あー、お話中申し訳ないですが、誰か俺を助けてくれませんか?」

「「「「……」」」」

「おーい、聞こえてます?この距離で聞こえてないわけないですよね?」


 しかし、誰も俺に答えず、戦況を語り合う。


 おいっ、こらっ!

 お前ら何しに集まって来やがった!?

 助ける気がねえなら寄ってくんじゃねえよ!



 アディ・ラスの強化を目に集中するとなんとか二騎の動きを目で追えるようになった。

 とはいえ、目に負担が大きく、すぐに目や頭が痛くなる。

 マゾでない俺はこの苦痛に耐えられず、休み休みでしか見る事ができない。


 にゃっくってこんなに強かったのか?

 キリンさん達も言ってたが、今までより強くねえか?

 にしても、


「……笑ってる?」


 俺の呟きに反応したのはミズキだ。


「チトセには戦いが見えているのかい?」

「ん?ああ。なんとかな」

「へえ、君って凄いのか凄くないのかわからないね」

「凄くはないぜ。てか俺を空気扱いするのをやめたのか?」

「別にそんな事してないさ」

「さっき無視しただろ」

「君は結構根に持つタイプだったのかい?」

「見た目通りデス」

「うるせえよ」

「悪かったよ。助けたいんだけどね、マグを破壊できる力はないんだ」


 成る程。「出来ない」と言いたくなかったって訳か。

 だからって無視は酷くねえか?


「で、『笑ってる』って言ったよね。にゃっくがかい?」

「にゃっくだけじゃない。魔王もだ」


 そう、二騎は純粋に戦いを楽しんでいる。

 魔王はその圧倒的な力のせいで本気を出すと誰も太刀打ちできない。

 借り物の体によって能力制限されているとはいえ、互角に渡り合える相手に出会えたのは久しぶりなのだろう。



 ……もしかして今なら。

 

 腕にゆっくりと力を込める。

 ケロロの縛りはさっきより緩かった。


 思った通りだ。

 にゃっくとの戦いに集中してるせいでケロロの制御が甘くなってるぜ。

 確かにケロロは魔王の支配下にあるかもしれねえ。

 だが、俺の命令にも従っていた。

 魔王がにゃっくとの戦いにもっと集中すれば俺の言う事を聞くんじゃないか?

 がんばれっ、にゃっく!


 にゃっくとにゃん魔王が再び対峙する。

 にゃっくが纏っている青い光はラグナだろう。

 対するにゃん魔王は赤い光を纏っていた。


「魔王の赤い光は魔法か?」


 俺の言葉にミズキは首をひねる。


「……いや、違うと思う。魔王もラグナを纏っていると思う」

「え?ラグナって青色じゃないのか?赤色もあるのか?」

「色はともかく、ミズキの言う通りアレはラグナだと思うわ」


 と楓さん。


「簡単なことデス」

「なに?シエスにはわかるのか?」


 シエスは組織のデータベースと繋がるみたいだからこういう場合役に立つよな。


「敵と味方でビームサーベルの色が違ったりするじゃないデスか。アレと同じデス」

「は?」

「うむ」

「「……」」


 シエスの言ってる事を理解できたのは葉山先生だけだった。

 間違いなく漫画やアニメの事だろう。


 うん、ちょっとでもこのアホに期待した俺がバカだった。



 俺は体をひねってにゃん魔王を応援しているソラを見た。

 雪女を想像させるほどの白い肌。

 整った顔立ちでスタイルもいい。

 とても美しい少女、に見えるが人じゃない。

 彼女にも二騎の動きは見えているようだ。


 まあ、魔王の眷属なら当然か。

 ソラは白翼王だろう。

 これだけ白ずくめで青翼王とか緑翼王とか言ったら詐欺だぜ。

 ……いや、あの魔王ならやりかねんか。


 実は今まで白翼王の姿を見たものは誰もいない。

 名前も知られていなかったのでソラという名に誰も反応しなかったのだ。

 見たこともないのに何故白翼王が存在するとされていたのか。

 それは七翼の魔王に白い翼があるからだ。

 白い翼があるならその翼から眷属が生まれたはず。

 白翼王が存在するはずだ、というとても単純な理由からだった。



「なあ、ソラ」


 俺の言葉にソラは冷たい視線を向ける。


「……殺しますよ?」

「まあまあ、ちょっと話があるんだが」

「……何故私がお前と話をしなければならないのです?」

「ちょっと、千歳!あなた……」


 制止しようするキリンさんを手で制止し、したかったが自由がきかないので動く手首だけでゼスチャーする。

 意思は通じたようだが、その後すぐに後ろを向いたのは何だ?

 って、他の奴らの反応を見ればわかるな。

 笑ってんだ。

 くそっ、今はそんな些細な事気にしてる場合じゃねえ!


「聞くだけでもいいからさ」

「……」


 ソラがゆっくりと俺の側まで歩いてくる。

 彼女の放つオーラに圧倒されてキリンさん達が俺から、いやソラから距離を取る。

 結果、俺の周りはソラだけになった。

 ソラが見下ろしながら口を開く。


「魔王様に忠実なのは私だけ」

「は?」

「私はファル・シーガが嫌い。古の神が作り出した生物を手下にして遊んでる」


 魔王の黒き翼から生まれた眷属ファル・シーガ。

 古の神が作り出した生物とは言うまでもなくレイマ、いや、ルシフの事だ。

 ルシフの上位種、ルシフロードは古の神の成れの果てとも言われている。


「いきなり何言ってんだ?」


 ソラは他の者達にもれず俺の言葉をスルー。


「私はドラゴ・ファーガが嫌い。自分の信者に自分の力を分け与えて遊んでる」


 ドラゴ・ファーガは魔王の青き翼から生まれた眷属だ。その姿はドラゴンそのものだ。

 信者はドラゴンに変身できると言われている。


「私はメサイアが嫌い。魔王様の翼に人間の魂を混ぜた出来損ない。人間の中に溶け込んで遊んでる」


 メサイアは魔王の紫の翼から生まれた眷属だ。他の眷属と違い、その魂はソラの言う通り人間のものだ。

 だが、人の魂を入れたのは魔王のはずだからメサイアに罪はないと思うぞ。


「私はアレキサンが嫌い。魔王様から与えられた力でおもちゃを作り、人に与えて遊んでる。ーーそして何よりメサイアと仲がよかった」


 アレキサンは魔王の赤き翼から生まれた眷属で俺を縛るケロロをいつのまにかマグに改造した奴だ。


「それで?それがなんだって言うんだ?」


 ソラが目を細めた。

 その眼光だけで心臓が止まるかと思った。


「ーーだからお前が嫌い」


 今の流れでどうやったらその結論が出るのか俺にはわからない。

 だが、嫌われていようと俺の作戦には、俺達が勝つためにはソラの協力が必要だ。


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