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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
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184話 玉座

「で、いつ来るんですか?」

「それは君の方が知ってるんじゃないか。魔王に愛されし男」

「変な言い方やめてください」


 ったく、俺はホモじゃねえぞ!

 とはいえ、確かにこのメンツじゃ俺が一番魔王と親しい事になるのか。

 納得いかんが。


 玉座を見るが、やはり空席のままだ。


「何処へ行くの?」


 玉座に向かって歩き出した俺にキリンさんが尋ねる。


「じっとしてるのも飽きたんで、ちょっと玉座を近くで見てみようかと」

「そう」


 止めることはなかった。

 たぶん、キリンさん達は既にこの部屋を調べ終えているのだろう。

 シエスも興味があるようでこちらに歩いて来る。

 ミズキはまた楓さんと向き合ってる。

 何事か話し合ってるようだ。



 部屋の作りもそうだが、玉座も最低限の装飾しかなくとても質素だった。

 魔王は倹約家なのか?

 魔王が金欠とは考えにくいから着飾る事に興味がないのか。


 カオスに落ちた時に会った魔王は着飾ってなかったしな。

 あれが現実の姿かという疑問はあるが。


「もしかして素材が高級品とか?」

「高級品だけど最高級ではないわ」


 俺の独り言にキリンさんが答える。


 おお、口に出してか。

 どうも最近思った事がすぐに口に出ちゃうな。

 気をつけないとな。

 今のはどうでもいい事だったが、変な事考えてる時にうっかり口に出したらセクハラとか言われるからな。



「隠し階段がないデス」


 玉座の後ろを調べていたシエスが悲しそうに言う。

 

「なんでそんなとこにあると思ったんだ?」


 シエスが驚愕の顔で俺を見る。


「何故、知らないんデス?」

「何故って、玉座の後ろに隠し階段があるのは常識か?」

「常識デス!」


 うむ、このバカ、いやぷーことその愉快な仲間達限定の常識な。

 みんな知ってるなら隠し階段じゃねえし。


 玉座の上に置かれているクッションに触れてみる。


 ほう、思ったより柔らかい。

 座り心地良さそうだな。

 そう思っていると、


「千歳、玉座には触れないで!」


 キリンさんが真剣な顔で言った。


「あなたでも魔王の怒りを買うかもしれないわよ」


 なるほど。


 とは思ったものの無性に座りたい。

 その衝動が抑えられない。

 玉座の横で身動き一つしないで立っている”少女”を見る。

 肌も服も真っ白な少女。

 その目は閉じられている。寝っているならとても器用だ。

 いつからいたのか、少なくともこの部屋に入った時はいなかった。

 玉座を見てる時に気づくと側に立っていた。

 自分でも不思議だが全く驚かなかった。

 それどころか、そこにいる事が自然、さっきまでこそが不自然だったと思わせる。

 ちなみににゃん太郎は俺が少女の存在に気づいたときに気絶した。


「なあ、ちょっとだけ座ったらダメかな?」


 少女に尋ねてみるが無言だった。


「ち、千歳⁈あなた誰と話しているの⁈」

「うむ、黒竜だろう。友達少ないからな」

「え?誰ってこの人ですよ」


 俺は玉座の隣に立つ少女を指差す。


「それと先生、友達は多ければいいってわけじゃないですよ!多いだけ関係密度が薄くなるんです」

「何を言ってるんだ君は」

「そうよ!何処にいるのよ?こんな時に冗談はやめて!」


 え?冗談?


 肩に乗るにゃっくの表情は見えないが緊張しているのを感じるから見えているはずだ。

 まあ、にゃん太郎に見えてにゃっくに見えないわけないよな。

 こいつ、霊的な存在なのか?

 俺の脳のフィルターは既に壊れてるので霊を何の補助もなく見る事ができる。


「シエス、お前はどうだ?」

「……ボクのレーダーには反応がありません」


 シエスのレーダーにも反応しないって、こいつどんな存在だ?

 それとも俺の頭が本当にイカれた?

 いや、それだとにゃっくやにゃん太郎の態度の説明がつかない。

 こいつはいる。

 確かにいるんだ。

 だが見えてるのが俺と……そうか、そういうことか。


 見えているのは俺だけなんだ。

 にゃっくとにゃん太郎に見えたのは俺に触れているからだ。


「なあ、あんた、他の奴にも見えるように出来ないか?このままじゃ俺が狂ったと思われる」

「手遅れデス」

「お前は黙れ」


 白い少女が初めて口を開いた。

 声は聞こえなかったが意味は理解できた。


「……何?そんな指示は受けていない?」

「……千歳、本当に誰かいるの?」

「冗談では済まないぞ」

「なんでこんなとこで冗談言うんですか」


 はあ、困ったなあ。


「では、その者の特徴を話してくれるか」

「わかりました」


 俺は少女の特徴を説明する。


「……ふむ。本当のようだね」

「そうね」

「それってこの少女が誰かわかったって事ですか?」

「いや、さっぱりわからないね」

「じゃあ、なんで本当だと思ったんですか?」

「うむ、いい質問だね」

「それはどうも」

「簡単な事だよ。その少女が服を着ていた」

「……それで?」

「以上」

「ふざけんな!このアラフ……」

「なんだって?よく聞こえなかったよ」


 葉山先生が今まで見たこともない笑顔で俺を見る。

 言うまでもなくその目は笑っていない。


 てか、俺が悪いのか⁈

 そんなバカな理由で信じるって許せねえだろ?

 俺の妄想なら現れる少女はみんな全裸ってか!


 俺の”アラフォー”発言に反応したのは先生だけじゃなかった。

 楓さんが無表情で俺を見ていた。


 ……あー、楓さん、新田さんのお母さんの姉だから、楓さんもアラフォーだなぁ。

 確か彼女は独身だったよなぁ。



 なんかどっと疲れたな。

 ちょうど椅子があるんだから休ませてもらおう。


「ちょ、ちょっと千歳!」


 キリンさんが慌てて駆け寄ってくる。

 なんだろう?と思いながらも椅子に腰を下ろした。


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