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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
196/247

182話 現実と妄想

二十階はまたも石造りのダンジョンになっていた。


 いや、と言うよりも、


「城の中を歩いてるみたいだね」

「ミズキもそう思うか?」

「チトセもかい?」

「ああ。と言っても実際に入ったことないんだけどな」

「そうなんだ。どちらにしてもここは魔物の気配が全くないね」

「そうなのか?」

「ボクのレーダーにも反応はないデス」

「このまま何事もなくキリンさん達に合流してさっさとこんなダンジョンからオサラバしたいぜ」


 あ、好んでダンジョン探検してるミズキがいたんだった。


「悪い。今のは他意はないって言うか」

「気にしてないよ。君は冒険者じゃないんだから」

「そう言ってもらえると助かる」

「チトセは無神経デスから」

「お前には言われたくねえ!」



「もうすぐデス」


 しばらく歩くと目の前に両開きの大きな扉が見えてきた。


「でかいな。誰用だよ?巨人でも入れるんじゃないか?」


 扉の高さはざっと見て俺の背の倍以上はあるから四メートルは越えるな。


「この先に誰かいるね。……向こうも気づいている」

「透視してみるか?」

「キリン達デス。それでも透視するのならどうぞ。通報します」

「何処にだよ?全く失礼な奴だな。わかったよ、やらねえよ。別に俺だってやりたいわけじゃないからな」

「ではボクが開けます」


 シエスが両手で押すと、ギギギ、と小さな音をたてながら内側に開いた。


 そこは映画で見たことのある謁見の間のような場所だった。


 キリンさんとそのパーティーは中央にいた。

 パーティーは見知った顔ばかりだった。

 新田さんの伯母である楓さんとアラフォー女医の葉山先生だ。


 この楓さんはキリンさん達と知り合いなんだな。


 そしてもう一人、いや一機か、シエス四号機。

 シエス四号機の見た目は三号機に近かった。

 違うのは装備だ。

 三号機はキャノン砲を装備した攻撃特化型だったのに対し、四号機は自分の身長を超える、二メートル程の高さの箱を背負っていた。


 四号機は搬送用か?

 にしてもあのでかい箱、いや箱というよりは棺に見えるぞ。

 そういえばアヴリルは何処にいるんだ?ここにはいないようだが。



「遅かったわね」


 どこかイラついているようなキリンさんの言葉にカチンと来た。


「これでも急いで来たんですけどね。どっかの誰かがろくに応援をよこさないんで」

「そうだったわね。ごめんなさい」


 本当はもっと言いたいことがあったが、あっさり謝られたのでタイミングを失った。


「進藤君、本当にごめんね。迎えに行きたかったんだけど、上に上がる階段が無くてね」

「階段がない?」


 そういえば、俺達が下りてきた階段も無くなったような……。


「転送の紋章で地上に戻るって手もあったけど、全員一度に移動できなかったし、行き違いになっても困るからここで待ってることにしたのよ」

「まあ確かに」


 ここは魔物が出現しないみたいだから待ち合わせに丁度いいよな。


「もういいじゃないか。みんな無事だし、間にあったんだからね」

「そうだな……って間に合った?何に?」


 ああ、島かダンジョンが飛ばされるタイムリミットか。

 と勝手に納得した。



 楓さんとミズキがお互いをじっと見ていた。

 お互いの服装はどことなく似ている。

 つまり今楓さんが着ている服で外を歩けばとても目立つ、コスプレしているように見えるって事だ。

 楓さんの武器は長剣で背中に背負っていた。


 最初に口を開いたのは楓さんだった。


「私は楓よ。よろしくね」

「僕はミズキだ」

「あなた、スラ族?」

「君もかい?」

「ええ。といっても私の母さんがだけど」

「そうなんだ。君のお母さん、名前はなんて言うんだい?」

「あやめよ」

「……へえ」


 あれ?

 ミズキが不機嫌になった?

 ミズキがあやめ様と面識があるとは思えないから知り合いになにか因縁があるのかもしれないな。

 だとしてもこんな所で争いを始められたら困るぞ。


「おい……」

「進藤」


 俺の言葉を中断させたのは葉山先生だった。


「ちょっと待ってくだ……」

「その腕はどうした?」


 腕?ああ、袖破れたからドラゴンの紋章は丸見えだったな?


「これはドラゴンにやられたんだ」

「ドラゴンだって?」


 微妙な雰囲気のスラ族二人だったが、ドラゴンと聞いて楓さんがこちらに顔を向けた。

 ミズキもこちらに顔を向ける。


 おお、いいタイミングだったぜ、先生。

 もしかして二人が険悪な雰囲気になりそうなのを察して……なわけねえよな。



「ねえ進藤君、ドラゴンなんて何処にいたの?」

「え?この上、十九階ですよ」

「私達は見てないな」

「あれ?でも二十階への扉を守ってましたよ。十九階のボスだったんじゃないんですか?」

「私達はボスらしい魔物にすら出会ってないよ」

「マジかよっ!じゃあ四魔は?」

「よんま?それはなにかしら?」


 キリンさんも話に加わってきた。


「ちょっと待てよ!もしかして俺達が攻略してたダンジョンて、キリンさん達より難易度が上がってたんじゃねえのか?」

「興味深いね。まだ時間はありそうだから詳しく話を聞かせてくれないか?」


 俺は葉山先生達にこれまでのいきさつを語った。

 葉山先生からも話を聞いて俺の推測が正しかったことがわかった。

 道理でキリンさん達はさっさと先へ行ったわけだ。


 って、ふざけんなよ魔王!

 俺達だけ難易度上げやがって!

 俺を殺す気か!


 どこかで誰かが笑ったような気がした。



「千歳はまた右腕を呪われた、ということかしら?」

「呪いとは言い切れないですよ。黒竜は力を貸すって言ってたし」

「どんな力なのかしら?」

「わかりません。それも含めてキリンさんに聞こうと思ってたんです」

「ごめんなさい。ちょっとわからないわ」

「そうですか」


 まあ、そうかもしれないって思ってたけどよ。

 参ったなあ。



「……黒竜か……やはりな」


 葉山先生がぼそりと呟き何度も頷く。


「先生!何かわかったんですか?」

「うむ、当然だ。君を最初に見たときからいつかこうなると思っていた」

「じゃあ……」

「私が伝授した包帯巻きをするがいい」

「……は?」


 葉山先生は白衣のポッケから包帯を一巻き取り出す。


「使いたまえ」

「いや、使えって言われても」

「まさかもう巻き方を忘れたのか?」

「忘れるも何も最初から覚える気がねえから知らねえよ!てか、今更だけど何医者らしい格好、てか本当に医者だけど、そんな格好でこんなとこ来てんだよ?ここへ来る格好じゃねえだろ?」


 いや、俺も人のこと言えねえけど、俺の場合はダンジョンに行くなんて聞いてなかったから仕方ねえよな?

 そもそも知ってたら絶対来なかったぜ!


「ふむ、君は身も心も冒険者気分を満喫してるようだね 」


 あ、今の俺は冒険者の格好してたんだった。


「ち、違うわ!そういうんじゃねえ!命がかっかてんだぞ!格好なんか気にしてられるか!」

「では私のこの格好も問題ないではないか」


 ……あれ?そうなるのか?

 いや!絶対おかしいよな!


「……ねえ、進藤君。もしかして今ままでの話は進藤君の妄想だった?」


 楓さんが悲しい者を見る目で俺を見る。


「違うわ!全部事実だ!」


 と同意をミズキとシエスに求めるが何故か無言。


「お前等も何とか言えよ!」

「ボクは以前からチトセはオタクだと知ってましたデス」

「僕は言ってる意味がよくわからないんだ」

「ちげえよ!そっちじゃねえよ!俺の話したドラゴンや四魔のこと言ってんだよ!」

「……進藤君、その年で発症すると後が大変よ。感染源は……なんでもないわ」


 最後まで言いませんでしたけど、姪御さんこと言ってます?

 って、そうじゃねえ!


「待て待て!なんで俺の妄想って事で話が進んでんだ!」


 ここまで来て一体何の話してんだよ!

 まったく!



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