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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
191/247

177話 トラップ満載

 十九階はトラップばかりだった。

 今までもトラップはあったが、ここまで多いのは初めてだ。


「慎重に進めよ」


 先頭を歩くシエスが振り返る。


「誰に言ってるのデス?」

「もちろんお前にだ。さっきトラップ発動させたのを忘れたか?」


 シエスが罠にはまり、映画でお馴染みの通路を塞ぐほどの大きな鉄球が転がってきたのだ。

 この鉄球はラグナを纏ったミズキの双剣によって粉々になった。


「アレはわざとデス!」


 何言ってんだ、こいつは?


「そうかよ。じゃあこれからはわざとでも発動させんなよ」

「当然デス!」


 シエスが踏んだ床がカチ、と小さな音を立てて少し沈んだ。

 側面の壁に小さな穴が現れ、矢が放たれる。


「うわっ!」


 驚いたのは俺だけだった。

 四季は笑顔で矢を避け、ミズキは自分に向かって来たものだけでなく、俺に向かって来た矢も双剣で打ち払う。

 にゃっくも皇帝拳で矢を叩き落とし、ボディーガードの役目をしっかり果たした。


「サンキュー、にゃっく、ミズキ」


「どういたしまして」とミズキが言い、にゃっくが無言で頷く。


「いやあ、お約束だったね」

「嬉しそうに言うな四季!それよりやっぱりやりやがったな!」

「今のはボクは悪くないデス!チトセが急に話しかけるからデス!」

「ははは。まあ、いいじゃないか。誰も怪我しなかったんだし」

「そうデス!当たらなければどうと言う事はないデス!」


 なにかを待ってるような顔で俺を見るシエス。


 ……この顔、今のセリフはマンガかアニメのセリフだな。

 突っ込み待ちしてるようだが、俺に期待するのは間違っている。

 無視だ無視。


「罠があるなら引っかかってあげないとね」

「んなわけねえだろ!毒ガスとか出てきたらどうすんだよ⁉︎」


 四季に思わず突っ込みを入れる。

 シエスが「なんでボクには突っ込みをしないんデス」とぶつぶつ言ってるのが聞こえたが、わからんことには答えられん。


「まったくお前らは……ん?」


 さっきの訂正だ。

 驚いたのは俺だけじゃなかった。

 俺の服の中でにゃん太郎がぷるぷる震えていた。


 って、いうか立ち直り遅えぞ、にゃん太郎。



 魔物が二体現れた。

 ジャヴァ・ウェックという人型の魔物で二メートルは優に超える。

 猪のような顔をしており、皮鎧で覆われていない手足は触ればブスっと突き刺さりそうな剛毛で覆われている。手には刃こぼれの激しい大剣を持っている。


 あれじゃあ、斬るというより叩き潰すだな。


「あの装備はあいつらが作ったのか?」

「そこまでの知能はないよ。冒険者から奪ったんだろうね。使いこなす程度の知能はあるからね」

「やっぱそうだよな」


 でなきゃ、あんなボロボロの装備使ってねえか。


 魔法剣を構えるシエス。

 結局、四季から貰った魔法剣はシエスに貸すことにした。

 魔法剣にかけられた魔法を発動するにはコマンドが必要だ。しかし肝心のコマンドがわからないので魔法が使えない。

 となれば剣を使いこなせない俺には邪魔なだけだからな。

 シエスの内臓武器は強力だがいちいち腕を外す必要があり使い勝手が悪い。

 それにこの魔法剣を使った方がエネルギー消費を抑えられるだろう。


 シエスの前に四季が進み出た。


「ここは僕に任せてよ」

「一人で大丈夫なんだな?」

「うん」

「わかった」


 ジャヴァ・ウェックは獲物めがけて突進するようなことはしなかった。

 四季が一人歩いて来るのをじっと待っていた。


 顔と違って猪突猛進ってわけじゃないようだな。


 にゃん太郎がもそもそと顔を出し、ぷるぷる震えながらもジャヴァ・ウェックに向かって猫パンチを放つ。

 言うまでもないが、ただの猫パンチがこれだけ距離が離れてて当たるわけがない。

 だが、これは大きな前進だ。

 例え安全な所にいるとはいえ、自分から攻撃をしようとしたのは大きい。

 このまま百年くらい続ければにゃっく程の威力のある猫パンチを放てるようになるかもしれない。

 そこまで長生きするのか知らないが。



 四季は黒剣を出さず手ぶらで魔物に向かっていく。

 表情は見えないがいつも通り笑ってるんだろう。


 武器なしで何するつもりだ?他にも力があるのか?


 四季が何かしたのか、ジャヴァ・ウェックの一体が怒りの表情をして四季に向かって来た。

 ジャヴァ・ウェックが大剣を振り下ろすが、四季はぎりぎりでかわす。

 勢い余って態勢を崩したジャヴァ・ウェックは隙だらけに見えたが四季は攻撃しなかった。


 もしかして今のジャヴァ・ウェックの動きは四季を誘い込む罠で、それを見抜いたから動かなかった?


 だが、それは間違いだとすぐに気づいた。


 態勢を整えたジャヴァ・ウェックが再び四季に迫る。

 四季がスッと後ろのジャンプしてその場に伏せる。

 カチっと音がした。


 しゅっしゅっしゅ、と側面から矢が放たれ、ジャヴァ・ウェックの体を貫く。皮鎧は何の役にも立たなかったようだ。


「上手いね」

「ああ。だがあんな傷じゃ致命傷にはならないだろ」


 ジャヴァ・ウェックは刺さった矢を無視して四季に迫ってきた。

 だが、突然絶叫し悶え苦しみだした。

 むき出しの皮膚に刺さった矢を見るとその周辺が黒く変色し、見る間に広がっていくのがわかった。


「毒⁉︎」


 やがて皮膚がすべて黒く染まり、バタンと倒れ動かなくなった。


「成る程成る程。当たるとそうなるんだ」


 四季の満足そうな声が聞こえた。


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