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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
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169話 四魔攻略

「……嘘だろ?」


 俺の目の前でプリシスの首が宙を舞った。

 どこか既視感を覚える光景だった。

 首を失ったプリシスがゆっくりと仰向けに倒れる。

 その横を“ダンジョン・セイリュー”が次の獲物を求めてやってる。

 言うまでもなく俺だ。


「くそっ、やるしかないのか!」


 どうしてこんな事になったのか。

 それは一時間程前に遡る。



 十六階攻略のカギは四魔を如何にして倒すか、ではない。

 如何にして四魔をほぼ同時に倒すか、にある。

 四魔を倒す事で手に入る水晶玉が鍵としての効力を発揮するのは約二十分だ。

 四魔を同時に倒す事ができれば約二十分間ドアを開く事が出来るというわけだ。


 倒す時間を合わせる方法は説明するまでもないが時計を使えばいい。

 幸いにも俺はスマホを二つ持っていた。自分のと組織から支給されたものだ。

 俺は自分のスマホをにゃっくに渡す事にした。組織のスマホじゃないとケロロ操作できないからな。それじゃなくても組織のスマホを他の者に渡すのはまずいだろう。

 俺のスマホはリングストラップをつけていたためそのままではにゃっくが身に付けるのは無理があった。

 そこで組織のスマホのネックストラップと付け替えてにゃっくの首にかけた。

 みーちゃんほどではないがにゃっくも簡単な文字くらいは理解できる。

 時計を読むなんて楽勝だ。

 心配なのはそのでっかい頭が邪魔で首にかけたスマホを見ることができるのかだが、本人が無理と言わなかったから大丈夫だろう。

 ミズキにはプリシスの簡単ホンを渡した。

 これは組織支給のものではなく市販品だそうだから無くしても問題ないだろう。

 時計は向こうの世界にもあり、数字はこちらの世界と非常によく似ているので読み方を説明する必要はなかった。

 ちなみにシエスとプリシスは内蔵時計があるので問題ない。

 四魔は強いがこっちはもっと強い。倒す時間を調整するのはそんなに難しくはないだろう。


 残る問題はシャッフルが起きたせいで経路がわからなくなった事だ。

 経路を確認してから行動に移るのが確実だが、いつまたシャッフルが起きるかわからないので無駄になる可能性がある。それに経路が変わっても四魔の部屋は固定だ。

 だから強行する事にした。


 みんなの時計を秒数まで合わせる。


「今が十時一分だから……そうだな、余裕を見て十一時になったら戦闘開始だ」


 開始時間は合わせる必要はないが、仲間の行動はできるだけ把握できたほうがいいだろう。


「じゃあ十一時十分頃にここに集合する、でいいんだね?」

「ああ、この十七階へのドアの前だ。倒すのは早すぎても遅すぎてもダメだぞ。わかってるな?シエス」

「何故ボクに言うのデス?」

「お前が一番ポカしそうだからだ」

「失礼デスね!ボクは最新鋭のアンドロイドデスよ!にゃんダムなんデスよ!そのボクにポカなどありえません!」

「どの口が言う!どの口が!」

「……どうやらチトセはまだボクの力を過小評価しているようデスね」

「チカラは認めてる。思考を疑ってんだ。コンピュータらしからぬその思考をな」

「……いいでしょう!今回でボクが完璧である事を証明します!」


 今思えば、これがいわゆるフラグだったのかもしれない。



 俺とプリシスが相手にする四魔は西の魔物、ダンジョン・ビャッコだ。見た目は全然白虎じゃないけどな。

 一度プリシスが倒しているから、心配なのは道中の魔物との戦闘での戦力消耗だった。

 幸いにも魔物との遭遇は一度だけで苦戦する事なく撃退した。

 この時も俺の出番はなかった。


「経路が変わっても部屋の位置が固定なのは助かるな」

「つうほうしました」


 プリシスが部屋の座標を記憶していた事もあり、それほど迷う事なく四魔の部屋を見つける事ができた。


 時計は十時四十分過ぎ

 道順は単純だったので覚えるのは簡単だった。

 仮に忘れたとしてもプリシスがマッピングしてるはずだから大丈夫だろう。

 ここから集合地点までは寄り道せず真っ直ぐ向かえば十分もあれば着く。


「あと二十分か。この辺りで静かにして待つか」

「おまわりさん、ここです」


 二十分待つのは結構辛かった。

 暇つぶしするものがない。

 組織のスマホにはゲーム入ってねえし、プリシスと話をしてて魔物が寄ってきても困るしな。


 と言ってもプリシスとじゃ会話成立しねえけど。


 ちなみにランドセルはみんなと分かれる前から背負っている。

 

 にしてもこいつ全然ランドセルから出てこねえな。

 中にいるのは皇帝猫だと思うんだがなぁ。にゃっくと話することねえのか?

 ……実は違う生物だったりしてな。

 まあ一緒に行動してんだ。そのうち姿を見せるだろう。



「よし、時間だ。行くぞ」

「つうほうしました」


 俺はドアを開けた。

 部屋の中央に四魔が鎮座していた。

 しかし、


「な……ダンジョン・セイリュー⁈」


 そう、そこにいたのはダンジョン・ビャッコではなく、東の部屋にいるはずのダンジョン・セイリューだった。


 なんてこった!

 まさか、ダンジョンシャッフルで四魔もシャッフルされたのか⁈ミズキはそんな事一言も言ってなかったよな!


 だが、戦いを見ていただけラッキーだった。

 これがもし唯一見ていない(その時の)南の魔物だったら詰んでたかも知れねえ。

 この分だとにゃっくかシエスがダンジョン・スザクに当たった可能性が高いな。

 大丈夫だろうか?

 特にシエス。

 ……いや、今は自分のことだ!


「プリシス!相手が変わったが作戦続行だ!お前は接近戦が得意なんだろ。こっちの方が返ってラッキーだったんじゃないか?」

「つうほうしました」

「よしっ、何言ってんだかわからんが頼むぞ!」

「おまわりさん、ここです」


 プリシスがダンジョン・セイリューに突撃した。



 シエスの言ったことは嘘じゃなかった。

 プリシスは近接戦闘力は高く、ダンジョン・セイリューを圧倒していた。

 あっという間にダンジョン・セイリューの右腕と左足を破壊した。

 ダンジョン・セイリューはまともに行動するのも困難な状態だ。


「楽勝だな。だがあと七分もあるのかよ。ちょっと時間多く取りすぎたか。ま、少ないよりはいいよな。よしっ、ちょっと手を緩めろ。まだ倒すのは早すぎる。でも油断すんなよ」

「おまわりさん、ここです」



 そして戦闘開始から七分過ぎた頃にそれは起きた。

 突然、なんの前触れもなくダンジョン・セイリューの体が青く光り出したのだ。


「……なんだ?」

「おまわりさん、ここです」


 俺達は何もしていない。

 いや、それがまずかったのか?

 戦いから時間が経ち過ぎると別のパターンで行動するようになっていたのか?

 そう言えばミズキが突然動きが速くなった事があるって言ってたな。

 あれはダンジョン・セイリューの事だったか。

 いや!考えるのは後だ!

 ともかくさっさと倒さないとヤバイ気がするぞ!


「プリシス!時間を気にせず奴を倒せ!」


 俺の命令をプリシスは忠実に実行した。

 蹴りがダンジョン・セイリューの頭に叩き込まれる。

 と思われた瞬間、ダンジョン・セイリューが今までとは比較にならない程のスピードで体を逸らしてケリを回避した。

 そして残された右足で地面を蹴ってプリシスと距離を取る。


「なっ、嘘だろ!しかも片足であの動きって……⁈」


 驚くのはまだ早かった。

 ダンジョン・セイリューは片足でバランスを崩す事なく立っているのだ。

 まるで見えない左足があるように。

 それが魔法によるものなのかわからない。

 楽勝モードから一転して予断を許さない状況に変化した。


 俺はこのまま見てていいのか?

 戦いに参加すべきじゃないのか?


 だが、俺が戦いに参加するということは敵に近づくと言う事だ。

 そうなるとプリシスのパイロットが怖がって本来の力を発揮できないかもしれない。

 俺が迷っている時だった。


 ダンジョン・セイリューのラリアットがプリシスを襲った。

 プリシスは避けきれなかった。

 ダンジョン・セイリューのラリアットがプリシスの首を吹き飛ばした。


「ちょべりば」


 宙を舞う首がそう呟くのが聞こえた。


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