表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
178/247

164話 散歩

 俺達は十五階に戻り、宿屋で食事をしていた。

 ミズキは別の宿屋に泊まっていたが、こちらの宿屋に変更した。


「君のさっきの挑発にはちょっと驚いたよ」

「俺も驚いてる」

「え?」

「ボクはてっきり“出来る方“のチトセが出てきたと思いました」

「ん?“出来る方”」

「シエス!」

「すみません、チトセ」

「まったく……」

「これからは“裏チトセ”と呼びます」

「呼び方を言ってんじゃねえ!いや、言い方も気に食わんがな!」

「だから“出来る方”とか”裏“とかどう言う事なんだい?」


 む、困ったな。

 とは言え、誤魔化すのも難しそうだ。


「まあ、なんだ。俺、二重人格らしいんだ」

「二重人格?」

「自覚はないがな」

「ふうん……」


 お、すげー怪しんでる。


「つまり裏チトセ?は好戦的って事かな?」

「よくわからん」

「少なくとも頭の回転は通常の三倍デス」

「へえ」

「ふざけんな!どうやって測ったんだ⁉︎」

「こう言う場合、三倍と言っておけば間違いありません!」


 自信満々に断言するシエス。


「で、『下等生物』発言は君なのかい?それとも裏チトセ?」

「その言われ方嫌だな……、まあ言ったのは俺だ。記憶もある。だが、自分の意思で言ったのか、と聞かれると自信がない」


 あの時湧き上がった怒り。

 人を殺す事もいとわないと思った程の怒り。

 あの感情は俺のものじゃない。

 それだけは確かだ。

 もし、敵の魔法使い?が逃走しなければどうなっていたかと思うとゾッとする。


「君は向こうの魔法使いと知り合いだったのかい?」

「そう思うか?」

「少なくともに君を知っているようにみえたよ。君に怯えていたしね」

「見覚えはない」

「そう」

「それを言ったらミズキ、あなたデス」

「ん?」

「そうだな。お前は向こうパーティ、リーダーとは知り合いだったみたいじゃないか」

「ああ。大した事じゃないよ。前に一度パーティを組んだ事があってね。その時宝を持ち逃げされたってだけだよ」

「相当高価なものだったのか?」

「そうでもないよ。ただ僕は裏切られるのが大嫌いなんだ」

「いや、それは誰だってそうだぞ」


 明日、十六階を突破する予定だったが、あのパーティがどう出るかわからない以上、迂闊なことは出来ない。

 とりあえず、明日また考える事にして解散した。



 俺はにゃっくを連れて街を散歩していた。

 本当は一人で出かけるつもりだったのだが、にゃっくに気づかれたのだ。

 しばらくすると気配を感じた。

 そちらに顔を向けると、何もないように見えたところに黒い影が現れた。

 黒いローブで全身を覆い顔は見えない。


「お待ちしておりました、我が王よ」

「誰が王だ、誰が」


 相手は笑ったようだ。

 ゆっくりとこちらに歩いてくる。

 フードを下ろし現れた顔、それはあの魔法使いだった。


「確か、ミュート、だったか?」

「光栄です!私のような者の名前を覚えて覚えていただけるとは!」

「いや、喜んでるところ言いにくいんだが、俺はあんたの王なんかじゃないぜ」

「お隠しにならなくても私にはわかります!」


 うーむ、困ったな。

 こいつの顔、どこかいっちゃった奴の顔だ。

 こいつが崇拝しているのは魔王だろう。


「何で俺があんたの王なんだ?」

「私にはわかります!あなた様から微かに溢れでる魔の波動を!ああっまさかこのような階層であなた様に出会うことが出来るとは!」


 魔の波動って何だよ?

 にゃっくを見るがにゃっくはなんの反応もしない。


「ところで、お前大丈夫だったのか?パーティの奴らに責められなかったか?」


 俺の言葉にミュートは残虐な笑みを浮かべた。


「私の心配をして頂きありがとうございます。でも問題ありません。全て片付けました」


 片付けた?


「お前、お前のパーティをどうしたんだ?」

「殺しました」


 こいつ……。


「私はあなた様の僕です!あなた様に害をなすものを許しはしません!それが誰であろうとも!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ