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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
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162話 プリシス

 ダンジョン・セイリューが消滅するとその場に金色の水晶玉が現れた。

 にゃっくがそれを転がしながらやってくる。

 その顔はどこか誇らしげだった。


 その姿がボール遊びしてる子猫に見えたのは秘密だ。


「まったく無茶しやがって」


 水晶玉を拾い上げる。

 思ったより軽い。



「ビックリしたよ」

「言っただろ。にゃっくは強いって」

「そうだね。でも僕が一番驚いたのは君なんだけど」

「俺?」

「僕はてっきり君がラグナ使いだと思ってたんだ」

「そうなのか?」


 どうやらミズキは魔王の力、イコールラグナだと思っていたようだ。


「一応確認だけど、ラグナは使えないんだよね?」

「ああ、使えない」


 残念そうな顔だな。


 幸いにも、シエスには不幸か、ミズキからパーティの解消の話はでなかった。



 さて、問題はここからだ。

 にゃっく、ミズキは一人で倒せる事を証明した。

 シエスも次は倒せるだろう。

 となると残り一体を俺かプリシスのどちらかが倒せればこの階を攻略できる。

 だが俺はゲンブやセイリュークラスの魔物をひとりで倒せる自信はまったくない。

 かといってプリシスは戦うのを嫌がるしな。


「どうしたんだい?」

「いや、後一体どうやって倒すかなって思って」

「君が倒せばいいじゃないか」

「無茶言うな。俺は攻撃魔法を持ってないんだぜ」

「身体強化してたよね。武術は学んでないのかい?」

「かじった程度だ。通用するとは思えん」


 俺はどっかのロボットと違って過大評価しないのだ。


「なあ、プリシス、お前さ、」

「つうほうしました」


 何をだよ、まったく。

 シエスの言う事が本当ならプリシスも四魔を倒せる力を持ってるはずだが。

 ……ん?

 待てよ。


 確か、みーちゃんはプリンセス・イーエスをタブレットで無線操縦していたよな。

 コイツも同じなのか?もしそうなら……。


「なあ、シエス。プリシスの操縦席ってランドセルなんだよな?」

「中の人などいないデス!」

「そういうのいいから」

「……そうデス」

「ならこういうのはどうだ?ランドセルを誰かが担いで離れた場所から本体を操縦するっていうのは?離れてなら戦えたりしないか?」

「確かに。どうデスか、プリシス」

「おまわりさん、ここです」

「『出来ます、それならやってもいい』と言ってます」

「よしっ、じゃあ決まりだ!誰がどの魔物の相手をするかは次見て決めるか」

「なんかよくわからないけど次の魔物のところ行くかい?」

「ああ」



 まさか、この歳になってランドセルを背負うことになるとは……。

 言い出しっぺは俺だし、実際担ぐ奴は戦闘に参加しない俺しかいないんだけどよ。


「うれしそうデスね?」

「ついに表情解析機能もイかれたか」

「失礼デス」

「お前がな」

「どうかしたのかい?」

「ああ、ミズキは知らねえか。この俺が背負ってるの、ランドセルって言うんだがな。小学、いや子供が使うものなんだよ」

「そうなんだ。でも悪くないよ」

「うれしくねえ」


 ……いや待てよ。

 前に外国の歌手かなんかがファッションで担いでなかったか?

 そう、これはファッションだ!

 そう思えば……思えねえな。

 大体ファンタジーの服装にランドセルは絶対おかしいだろ!



 俺達が向かっているのは西の魔物のところだ。丁度正反対なので結構時間がかかる。

 金色だった水晶玉の色は灰色に変わっている。


「にしても結構重いな」


 別に今から担ぐ必要はないが慣れといたほうがいいだろ。

 慣れたくねえけど。


 アディ・ラスは必須だな。じゃなきゃランドセル担いで走れん。



 西の魔物は部屋の中を飛行していた。その姿は鷹に似ている。


「ダンジョン・ビャッコデス!」

「はいはい」


 白くねえし、虎でもねえけどな。


「手はず通り行くぞ」


 俺の掛け声でプリシスがダンジョン・ビャッコに向かって走り出した。

 俺はこの場に待機だ。移動は最小限に心掛ける。

 俺が動き回るとプリシスの操縦に影響がでるだろうからな。



 ダンジョン・ビャッコが口を開いた。


「来るよ!」


 ミズキがそう叫んだ直後、ダンジョン・ビャッコがプリシスに向かって炎を吐き出した。

 この攻撃はミズキから聞いている。


 プリシスは靴に装備されていたローラスケートを起動し高速移動で攻撃を避けた。


「速いな!」

「当然デス!イーエスと違うのデス!イーエスとは!」


 だが逃げ回るだけじゃどうしようもない。


「やっぱり相性最悪だな」


 ダンジョン・ビャッコと相性が悪いのはミズキにこいつの事を聞いた時からわかっていた。

 ちょっとでもプリシスの戦闘を見たかっただけで、倒せるとは思ってない。

 ちなみにミズキがどうやってダンジョン・ビャッコを倒したかというと、

 ラグナを飛ばして翼を切り落とし、落ちてきた所を倒したそうだ。


「そろそろ代わろうか?」

「そうだな……いや、ちょっと待て」


 プリシスが右腕をダンジョン・ビャッコに向ける。

 次の瞬間、右腕の肘から下が射出された。

 射出された部分はワイヤーで接続されている。


「ロケットパンチデス!」

「近接戦闘用じゃなかったのか⁉︎」


 射出された腕の手が開きダンジョン・ビャッコの足を掴んだ。


「上手い!……ん?」


 だが、ダンジョン・ビャッコは落下するどころか、プリシスをそのまま引きずっていく。

 プリシスがもう片方の腕も飛ばした。

 ダンジョン・ビャッコの腹を直撃した。


 クェエエエエエエ!


 ダンジョン・ビャッコが地面に激突する。

 そこへ両腕を戻したプリシスが迫る。


 あとはボコ殴りだった。

 しばらくするとダンジョン・ビャッコはチリとなって消えた。

 その場に青い水晶玉が現れた。


「やればできるじゃないか!プリシス!」

「つうほうしました」


 ロボットのくせにその表情はどこか誇らしげだった。


「これでなんとかなるな、ミズキ」

「そうだね。やっと下の階に行けそうだよ」

「よし、じゃあ一度十五階に戻るか」

「ちょっと待って下さい!」

「なんだよ?」

「まだ南の魔物を見てません!」

「必要ねえだろ。そいつはミズキが倒せばいいんだし」

「ダメデス!名前をつけてません!」


 あー、聞こえんなあ。


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