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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
175/247

161話 東の魔物

 俺達の目の前にある大きな扉。

 この先に四魔のひとり、東の魔物がいるはずだ。


「ミズキ、ここの魔物はどんな奴なんだ?」

「チトセ、あなたにはプライドはないのですか?」


 またか。さっきはあっさりぶっ飛ばされたっていうのによ。


「ねえよ。俺は戦闘狂じゃねえ。死にたくねえんだよ」

「情けないデス!」

「大体だ、お前は俺の護衛だろ!護衛なら護衛対象を危険な目に遭わせんなよ!」

「ぐ……、珍しく正論を……」

「いつもだ!」


 ミズキはちょっとだけ考える素振りを見せた。


「そうだね。確かにチトセの言うことももっともだね。アドバイスなしで死なれたりしたら恨まれそうだし」

「問題ないデス!」

「お前は黙ってろ!」

「……」


 まったく困った奴だ。


「東の魔物はゴーレムだよ」

「ゴーレムか。それで?」

「攻撃はすごく単調だよ。殴る蹴るだけ」

「ほう。魔法とか放たないのは助かるな」

「全身が硬いから壊すのちょっと面倒かもしれないけどね」

「硬いってダンジョン・ゲンブとどっちが硬いんだ?」

「そりゃダンジョン・ゲンブだよ。でも向こうは弱点があっただろ?」

「東の魔物はないと?」

「あるのかもしれないけど僕は探したことない」

「あ、そう」


 弱点探さなくても倒せるか。


「調子に乗ってますね。ちょっと体育館裏でシバきましょう!」

「何言ってんだ?」

「たいいくかん?」

「いや、気にしなくていい。さっきの戦闘で頭の打ち所が悪かったんだろう」

「失礼デス!」

「で、ミズキ。他には?スピードはどうだ?」

「そんなに速くはないね。あ、でも……」

「でもなんだ?」

「一度だけやけに早く動く時があったかな。対処できないほどじゃなかったけど」

「それは気になるな」


 壊した場所によってブーストがかかるとか?

 壊した本人がわからんのだ。考えても無駄だな。


「百聞は一見にしかず、デス!」

「そうだな。じゃ、行くか……いや、その前に決めとくことあったな。誰がメインで戦うかだが……」


 にゃっくが進み出る。


「いや、ちょっと待て。ここはプリシスにやってもらおう。こいつの強さを知っときたいしな」

「ちょべりば!」


 プリシスが少し後退する。


「へ?お前、戦いたくないのか?」

「つうほうしました」

「いや、わかんねえから。おい、シエスどういうことだ?こいつ改良型だよな?強いんだよな?」

「はい、プリシスの戦闘力は従来比で五十パーセントアップしています。特に接近戦では二百パーセントアップデス」

「じゃあ問題ないんじゃないのか?向こうは遠距離攻撃もないようだし」

「そうデスね。相性は問題ないでしょう。しかし、」

「しかしなんだよ?」

「プリシスは平和主義者なのデス。好戦的なニッタセリスとは違うのデス!」

「いや、今、新田さん関係ないだろ。お前はなんですぐに新田さんバッシングに走んだよ、って今はいい。つまり戦いたくないって事か?」

「そうデス」

「おわまりさん、ここです」


 何これ、ダメじゃねえか。

 ……待てよ。

 こいつ、一人で十五階にいたのは充電中だとか言ってたけど、実は役に立たねえから置いてかれたんじゃねえのか?


「どうする?」


 ミズキ、そんな困った顔で見んなよ。俺も困ってるんだよ。


「ともかく敵を知らないとな。にゃっく、頼めるか?」


 小さく頷くにゃっく。


「よし、じゃあ、にゃっくがメインで。危なくなったら加勢に入るからな」

「ちょっと待ってチトセ」

「ん?」

「もしかしてユーマオン、にゃっくに戦わせるのかい?」

「ああ。マズイのか?」

「というか……」


 にゃっくをじっと見るミズキ。


「この子がユーマオンの中でも戦士タイプなのはわかるけど、流石に無理じゃないかな?」


 にゃっくの表情が微かに変化した。


「にゃっくは強いぜ。俺のパーティの中で一番かもしれない。あ、お前を除いてな」

「……まあ、いいか。そこまで言うならお手並み拝見と行くよ」


 ミズキはどこか納得していないようだが、実際ににゃっくの戦いを見てもらった方が早いだろう。


「よし、じゃあ、開けるぞ」

「ちょっと待って下さい」

「またかよ。今度はどんないちゃもんつける気だ?」

「失礼デスね!まだ重要な事が残っています!」

「重要な事?」

「東の魔物の名前を決めてないデス!」

「そんなもん見てみないと決められねえだろ?」

「ボクはチトセとは違います」

「ああ、そうかよ。もう面倒だ。さっさと決めろ」

「では東の魔物をダンジョン・セイリューと呼称します」

「お前、ミズキの話聞いてたか?ゴーレムだぞ。ドラゴンの形はしてないと思うぞ。してないよな?」

「うん、人型だね」

「青いか?」

「いや、黄土色かな」

「だそうだぞ」

「では行きましょう!打倒ダンジョン・セイリュー!」


 話聞いてねー。

 ま、どうでもいいや。


「いくぞ」


 ドアを開けると正面に黄土色のなんかが立っていた。


 ってゴーレム⁉︎

 近い近いっ!


 ゴーレムの腕が上がる。

 俺達は慌ててドアの左右に散った。

 どうやらゴーレムは部屋の外には出られないようだった。

 ドアが閉まり、ほっと息をつく。


「びっくりしたなぁ。ミズキ、ゴーレムが待ち構えているなら最初に言ってくれよ」

「ダンジョン・セイリュー、デス!」

「いやいや、僕も初めてだよ。たぶんドアの前で話し合ってるのが聞こえたんだろうね」

「そんなのありかよ」

「おまわりさん、ここです」

「そうだな。取り敢えず一旦ここから離れて奴が部屋の中央に戻る頃にもう一度チャレンジしようぜ」

「そうだね」

「チトセ」

「また文句か?」

「違います。にゃっくさんがいません」

「なにっ⁉︎」


 確かににゃっくがいない。

 ……まさか、いや、それしか考えられねえ!


「にゃっく、一人で戦いを始めたな!」


 さっきのミズキの言葉にプライドを傷つけられたんだろう。


「助けに行く!……アディ・ラス!」


 体全体が強化されるのを感じる。


「チトセ⁉︎君、魔法を⁉︎」

「ミズキ!もしもの時は援護頼むぞ!」

「ちょっとっ……」


 俺はダンジョン・セイリューのいる部屋のドアを開け、飛び込んだ。



 目の前ではにゃっくとダンジョン・セイリューの死闘が繰り広げられていた。

 ダンジョン・セイリューの攻撃は当たらず、にゃっくの攻撃は当たってはいるがまったくダメージがないようだ。

 とはいえにゃっくはまだラグナを使っていない。

 弱点がないか探しているんだろう。

 さっきは余裕がなかったが、急いで助けに入る必要がないとわかり、改めてダンジョン・セイリューを観察する。

 大きさは三メートル程でミズキが言った通り人型だ。

 と言っても手足があり、目が二つあるだけだ。人と見間違うことはない。

 龍でもなく青くもないこいつを青龍と命名する奴の気がしれん。


「シー・ル・ディー」


 ダンジョン・セイリューを透視するが、特に弱点らしいものは見えない。


 てっきりレイマのように核があるのかと思ってたんだがそんなものはなかった。

 こいつは一定以上のダメージを受けると破壊判定されるようだ。


「にゃっく!そいつに弱点はない!ただぶっ壊すだけだ!」


 俺が叫んだ直後、にゃっくの全身を青いオーラが包んだ。


「ラグナ⁉︎」

「ああ、ラグナだ。言っただろ、にゃっくは強いって」

「……」


 ラグナを纏ったにゃっくはダンジョン・セイリューを圧倒する。

 程なくしてダンジョン・セイリューは原型を止める事なく砕かれた。


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