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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
173/247

159話 15階の出会い4

 食後そのまま買い物に出かけた。

 外は暗かった。

 シエスの話では十六階は外の時間に合わせて明るさが変化するらしい。

 流石に天気までは変わらないけどな。

 時間を聞くと夜八時過ぎとの事だった。



 靴だけじゃなく服も新調した。

 あちこち破れてたからな。

 言うまでもないが選んだ服は軽装だぜ。重量を軽くする魔法のかかった鎧は高かったからな。

 他には短剣を購入し、腰に装備している。

 短剣は至って普通のやつだ。魔法などはかかっていない。

 あくまでもアクティブ・ワイヤー、ケロロを失った時の保険だ。

 これを抜く事態になった時点で俺の命運は尽きてる可能性が高い。


 装備を整えて鏡の前に立つ。ケロロは服の上から右腕に巻きつけた。


「おお、結構似合ってんじゃん」


 靴の履き心地は悪くないし、マントも結構様になってんじゃねえか。

 リュックはそのままなんでちょっと違和感があるが。

 ……しかし、この姿、


「コスプレしてるみたいじゃないか?」

「大丈夫デス。バッチリデス!」

「褒めてんだよな?」

「はい、夏コミに間に合います」

「出ねえよ」

「ケロロを包帯に変えたら完璧デス」

「やめろ!」


 くそっ、中二病と間違えられたときの悪夢を思い出しちまったじゃねえか。



 一通り店を見て回り、必要なアイテムを購入してから部屋に戻った。

 宿屋には風呂があったのでにゃっくと共に向かった。

 俺達の他には誰も入っていなかった。


「めっちゃ気持ちいいなぁ。なあ、にゃっく」


 にゃっくが無言で小さく頷く。

 相変わらずクールだが、その頬は微かにだが緩んでいるような気がする。


 そういや、あいつらも風呂入るのか?

 一応女設定なんだよな?

 プリシスのパイロットも女、雌なのか?

 いや、そもそも風呂入ってないかもな。



 風呂から上がりベッドに横になると一気に眠気が襲ってきた。

 ウトウトし始めた所でドアを叩く音が聞こえた。


「チトセ、寝てないでしょうね?」


 ……ん?やべっ、今後の事を話し合うんだった。


「当たり前だ。今開けるからちょっと待て」



「さて、ミズキの提案だが……」

「ボクは反対デス」


 シエスはミズキと話している間、ずっとムスッとしてたよな。

 コイツが反対するのはきっと下らない理由からだろう。

 そう直感が告げている。


「一応聞いてやるよ。理由はなんだ?」

「キャラがかぶります」


 やっぱり下らない理由だった。

 アホだな、こいつ。


「“出来る方“のチトセも一人称が“僕”でしたが性別が違いましたからギリギリセーフでした」

「なにがだよ?っていうか出来る方とか言うのやめろ」

「あの女は、ミズキは僕言葉だけでなく、性別も一緒でしかも美女、ボクとまる被りデス!」


 ……あー、頭いてー。


「安心しろ。全然似てねえよ。お前を美女なんて思ったこともねえし」

「失礼デスね」

「お前もな」

「……」

「それだけか?」

「それにあの女、ミズキはニッタセリスに似ています」

「お?お前もそう思ったか?」

「つうほうしました」

「あー、お前もそう感じた、でいいか?よーわからんが」

「おまわりさん、ここです」

「はいはい。実は俺もそう思ったんだ。理由はよくわからんが」

「理由ははっきりしています」

「なんだよ?」

「ミズキの性欲レべルがニッタセリス並みなのデス」

「は?なんだって?」

「デスからミズキの性欲レベルが……」

「さっきもそんな事言ってたな。なんでわかんだよ、そんな事」

「にゃんダムの名は伊達じゃありません!」

「お前、それ言えば納得すると思ってんのか?全然説明になってねえ。納得できる説明しろ!」

「僕には性欲探知機が内蔵されているからデス!」

「嘘つけ!本当にあるとしてもエネルギーのムダだ!切れ!」

「失礼デスね」

「お前がな!で、それがどうした?」

「なるほど。チトセはウェルカム、というわけデスね。あとで報告します」

「やめろ、っていうかどこに報告すんだよ?」

「秘密デス」


 こいつの思考、やっぱぷーこに近いな。


「で、それだけか?今のじゃ断る理由にならんぞ」

「……あとはミズキはスラ族だからデス」


 何?スラ、族?


「あの独特の衣装はスラ族のものデス。まず間違いないデス」

「ちょっと待て。スラ族ってなんだよ?新田さんの祖母あやめ様の名字と同じだよな。もしかしてミズキはあやめ様と同じ一族出身なのか?」

「そうなります」


 なるほど。

 あやめ様の話だと俺に力を与えた魔王が澄羅、つまりスラ族に力を与えたって話だった。

 ということは俺がミズキに感じたものは魔王の力だったのかもしれない。

 だがどうして急にそんな事が感じ取れるようになったんだ?

 魔王の奴、俺の体になんかしたか?

 って、本人に聞くか。

 おいっ、こらっ魔王!聞こえてんだろ!どうなんだ⁉︎

 ……って答えるわけねえか。


「チトセ?」


 あ、やべえ!


「ああ、悪い。それでミズキがスラ族だと何が問題なんだ?組織と協力関係にあるんだろ?」

「それはこちらに来ている者達の話デス。スラ族全てが味方になるとは限りません」

「もしかして元の世界では敵対してたのか?」

「そこまでは言いませんが仲がいいとも言えません。魔法使いとラグナ使いは元々敵同士だったのデスから」

「でもよ、こっちの世界じゃ魔法使い同士が殺しあってんじゃねえか?変態マッチも魔法使いだったよな?」

「それはそうデスが……」

「だろ?スラ族というだけじゃ拒否する理由にはならないぞ。ミズキは俺が魔法使いだって気づいていたと思う。その上で協力を求めてきたんだ。少なくともミズキは魔法使いに抵抗はないんじゃないか?」

「裏がある可能性が高いデス」

「裏って何だよ?」

「それはまだわかりません」


 こいつのは完全に毛嫌いしてるだけだな。

 いや、そうプログラムされてるのか。

 なんでそんなにスラ族を嫌うんだ?

 そういや、ぷーこも何かと言えば新田さんに絡んできたような気がするな。

 でも澄羅家に匿って?もらってたしなあ。

 ……だめだな。考えたってわからん。情報が足りなさ過ぎんだ。


「じゃあミズキと手を組まないとしてだ、お前はどうやって下の階に向かう気だ?他に魔法使いの協力者でも探すのか?」

「チトセ、あなたは大きな見落としをしてます」

「何?」

「ボク達は三人ではありません」

「にゃっくを合わせて四人と言いたいのか?」

「わかってるじゃないデスか。ボク達はあの女の力を借りなくても十七階へ行くことができるのデス!」

「あほか。俺を過大評価するんじゃねえ。俺が階層ボスっぽい奴とタイマンで勝てると本気で思ってんのか?俺はにゃっくと行動するに決まってんだろ」

「……確かに“できない方“のチトセでは厳しいかもしれませんね」

「マジで失礼な奴だな」

「お互い様デス」

「つうほうしました」


 何参加してきてんだ、お前はよ。

 意味わからんし。

 会話に参加したかっただけか?


「大体だな、魔物の強さもわかってないのになんで勝てるって思うんだよ?」

「にゃんダムの名は伊達じゃないデス!」

「それはいいから」

「……」

「ともかくだ、一度その四体の魔物を見てみようぜ。プリシスの強さもわかってないんだ」


 プリシスはプリンセス・イーエスの改良型って聞いたがどの程度強いのかわからんし、強くなっていたとしてもパイロットがその力を十分引き出せなきゃ意味がない。


「ちょべりば!」

「わかんねえよ」

「……わかりました。ともかくその四体の魔物を見てみましょう」

「だな。それからミズキと協力するか考えようぜ」


 案外、俺達が弱すぎて向こうから断ってくるかも知れん。

 俺はシエスみたいに自信過剰じゃないからな。

 俺は客観的に自分を見ることができるのだ。

 こいつらと違ってな。



 次の日、朝食を取り、宿屋から出るとミズキがこちらに歩いてくるのが見えた。


「丁度いいところで会ったな」

「僕を探してたのかい?」

「ああ。昨日の話だが」



「……というわけで一度魔物を見てから協力するか考えようと思う。お前もその方がいいんじゃないか?」

「そうだね。僕に異論はないよ。で、いつ魔物を見に行くんだい?」

「今からいこうと思う」

「そう。じゃあ僕も行くよ」

「わかった」

「十六階への階段わかる?」

「ああ。昨日下見した」


 ミズキを加えた俺達は十六階へと向かう階段へ向かった。


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