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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
169/247

155話 料理対決の結末

 三号機の攻撃で左腕が消滅した時、何故か皇夫婦が家探しをしている時に発生したイベント、料理対決の事を思い出した。


 ……これが走馬灯、な訳ないよな。



 最初に料理を作ったのは俺・皇ペアだ。

 相手が新田さん・皇嫁ペアだから無理しなくても勝てるだろうということで特に目新しい事はせず普通にビーフシチューを作った。


「ま、まあまあじゃない」


 皇嫁は口ではそんな事を言っていたが速攻で平らげてしまった。

 新田さんも何も言わずに綺麗に残さず食べた。


 そして俺達が新田さん達の料理を食べる番になったのだが、新田さん・皇嫁ペアが出してきたモノを見て背筋に悪寒が走った。

 そんな予感はしてたんだ。

 キッチンから「あっ!」「やばいっ」とか聞こえてくるし、しまいにゃ「コレを料理と認める勇気が必要よ!」だぜ。

 なんで料理作るのに勇気が必要なんだ?と思ったのだが出てきたものを見て納得しちまった。

 見た目は酷く、においも普通じゃない。

 うまいまずい以前に食べ物であるはずがない。


 料理が苦手な者同士とはいえ、いや、そうであれば尚更のこと互いの弱点をカバーするもんじゃないのか?

 実際カバーしようとしたかもしれないが、結果だけみれば弱点を何倍にも強化してしまったようだ。

 って、そんな事あるのかよ?


「で、コレ何?」

「料理に決まってんでしょ!」


 どこかキレ気味に叫ぶバカ嫁。


「なんて料理?」


 一瞬言葉に詰まるバカ嫁。


「……オリジナル、創作料理よ!」


 創作料理に謝れ。


「お前らの創作料理すごいな。凄すぎて料理だとわからんかった」

「じゃあ、私達の勝ちね!」

「そんなわけねえだろ。嫌味だ嫌味。気付け」

「うるさいわね!いいからさっさと食べなさいよ!」

「お前、本気で言ってる?俺達を毒殺する気じゃねえのか?」

「失礼にも程があるわ!一口でも食べてから言いなさいよ!」


 いや、毒だったら一口でもやべえだろ。

 にしても酷いな。

 漫画なんかでよく酷い料理出てくることあるけど、まさか現実で出てくると思わなかったぜ。

 バカ嫁は味覚音痴か?

 いや、今まで一緒に食事した限りでは普通だった気がする。

 新田さんもお母さんがあんなに料理上手なんだ。味覚がおかしいとは思えない。


「なあ、コレ、味見したんだろうな?」

「においも変だよね?」

「納豆やくさやだって臭いでしょ!」

「そうだけど、これそういうのは違うような……」

「で、味見はしたのか?」

「し、したに決まってるじゃない!……途中まで」

「なんだって?」

「だ、大丈夫よ!隠し味大量投入で持ち直したはずよ!」

「それ、もう隠してないよ」

「完成品の味見しろ!」

「必要ないわ!自信あるもの!」

「どっから来るんだその自信は?」

「うるさいわね!」


 恐怖の合作料理を改めて見てると、案外食えるかも……

 なんて思うかっ!

 見てるだけで気分が悪くなるぜ。


「もう食べなくていいだろ。俺達の勝ちでいいな?」

「いいわけないでしょ!」

「諦め悪いな。自分達もわかってるんだろ?ソレが出来た時点でよ」

「まだよ!見た目はアレ、かも知れないけど、まだ可能性はゼロじゃないわ!」

「そうだな。ゼロじゃなくマイナスだ」

「うるさーい!ともかく!一口も食べないで負けを認めることはできないわ!」


 何と諦めの悪い。

 ふむ、仕方ないな。


「行け、皇」

「え?いや、ちょっと……」

「自分の嫁が殺人犯で捕まるとこ見たくないだろ?」

「僕はつかさちゃんの犯した罪を一緒に背負って生きていくよ」

「良い事言ったつもりか?」

「いやあ」


 本当にそのつもりだったか。


「大丈夫だ。お前は死なねえよ」


 優しい笑顔をして言ってやる。


「どうしてそう思うのかな?」

「こんなもん平気で出す嫁と暮らしてるんだ。て事はだ、こういうの食い慣れてんだろ?絶対毒耐性出来てるぜ。漫画とかだとそうだろ」


 自信を持って言ったんだが皇は困った顔をして「これ漫画じゃないから」と食べようとしない。


「あんたらね!人をバカにするのもいい加減にしなさいよ!」

「じゃあ、お前食えよ」

「嫌よ!」

「何でだよ?」

「お、美味しすぎて全部食べちゃうかもしれないでしょ!」

「そうなったらお前達の勝ちでいいから食えよ」

「絶対いや!」


 ……マジでどうしようもないな、このバカ嫁は。

 ……ん?

 そういや、この場にいながらさっきから全く発言しない人物がいるな。

 ……あれ?おかしい。

 確かにこの部屋にいるはずなんだが姿が見えないぞ。

 ……いた。

 さすがスラ流武術の達人。

 完全に気配消して部屋に溶け込んでたぞ。

 意識集中しないとわからなかったぜ。


「なあ、新田さんはどう思う?」


 俺の言葉で皇バカ夫婦も新田さんの存在を思い出したようだ。


「そ、そうよ!せりす!あなたも言ってあげてよ!」

「……」

「新田さん、バカ嫁の代わりに味見してくれないか?」

「あ、そうだね。新田さんでもいいよね」

「せりす!全部食べたら私達の勝ちよ!って、ちいと!誰がバカ嫁よっ!」


 新田さん、そんなに睨まないでくれ。

 元はと言えばソレを作っただけでなくこの場に出してしまったあなた達が悪いんだ。

 主犯はバカ嫁だろうが新田さんも共犯者なんだ。罪がないとはいえないぞ。


「無理よ、そんなもの……じゃなくてそれは進藤君達のために作ったんだから。ね、食べて❤️」


 うわー、すげーいい笑顔だなぁ。

 新田さんの事よく知らなかったときなら、その表情にその言葉だけで間違いなく二つ返事で食ってたな。

 で、一口食ってあの世へ逝ってたな。

 っていうか、今、自分で“そんなもの”って言ったよな。

 やっぱり新田さんもソレが危険だとわかってるんだよな。

 素直に負けを認めろよ。

 そうすれば犠牲者を出さずに済むんだぞ。


「少しでいいから食べてくれよ。ソレが食べ物だと俺達に証明してくれよ」

「……私、今日はちょっと体の調子が悪くて食欲ないから」

「わ、私も!」


 何乗っかってんだ、バカ嫁。


「さっき俺達が作った料理ばくばく食ってたじゃないか」

「食べてないけど?」

「食べてただろ」

「ばくばくは食べてない」

「子供か!」



 結局、何だかんだと言って二人とも味見を拒否したため、勝負の行方は二騎の皇帝猫に託されることになった。

 にゃっくとみーちゃんである。

 二騎の恨みがましい視線を感じる。

 

 許せ。だが歴戦の勇士であるお前達ならきっと大丈夫だ!

 呪い耐性があるんだからコレもきっと大丈夫だ!

 それに、そう、皇帝猫は禍が起きるところに現れるんだろ?

 これは必然だったのだ!


「ねえ。猫って食べちゃダメなものあったんじゃなかった?」


 何言ってんだバカ嫁は。

 それを言うならコレは猫でなくてもダメなものだ。

 ちなみに俺達が作った料理の中には猫が食べちゃいけない食材も入っていたが皇帝猫は猫じゃないから問題なしだ。


 バカ嫁の言葉でみーちゃんが嬉しそうに顔を上げた。

 が、


「つかさ。この子達は新種でね、私達と同じ物食べれるのよ」

「へー、そうなんだ。じゃあ大丈夫ね」


 新田さんの言葉で一瞬で地獄に突き落とされるみーちゃん。



 最初に動いたのはにゃっくだった。

 さすが皇帝猫最強!(俺の中で)

 にゃっくは並べられた二つの皿のうち俺・皇ペアが作ったビーフシチューの前に来ると静かに食べ始めた。

 それに遅れてみーちゃんが同じように俺・皇ペアの料理を食べる。

 にゃっくはビーフシチューを食べ終わるとスタスタとその場から離れて行った。

 新田さん・バカ嫁ペアが作ったモノには見向きもしなかった。

 まるでその場に存在しなかったかのようにである。


 みーちゃんはチラリと新田さん・バカ嫁ペアが作った料理らしきモノを見た。

 そして新田さんを見る。


 みーちゃんは新田さんのゲーム仲間だ。

 その仲間が作ったモノをにゃっくのように簡単に切り捨てる事は出来なかったようだ。

 どこか諦めた表情でその皿の前に立つ。


「みーちゃん、無理するな」


 だが、みーちゃんの決意は固かった。

 ソレをチョロっと舌の先で舐めた。

 次の瞬間、みーちゃんの体が固まった。

 かと思うとその場に倒れ込みゴロゴロ転げ回る。


「みーちゃん!」

「みーちゃん!水だ!水を飲め!大丈夫だ、傷は浅いぞ!」


 みーちゃんの決死の行動により判定は下った。

 言うまでもないが俺達の勝利である。



 その後、新田さんに罰ゲームを実行したのは言うまでもない。

 素直に負けを認めなかったので五割増し(前回比)にした。

 お仕置き中、新田さんは顔を真っ赤にしながら「絶対倍返しするからっ!」って叫んでたけど、バカ嫁とのペアを解消しない限り俺に勝つ事は不可能だろう。


 いやー、すげーよかった。

 またいい思い出ができたなぁ。

 次はどんな罰ゲームにするかなぁ。

 ぐふふふふふ……


『おまわりさん、ここです』


 ん?

 なんだ今の声?



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