154話 にゃんダムの戦い2
にゃっくが皇帝拳を放つがにゃんダリウム合金に傷をつけることが出来ない。
いつものキレがないな。
目覚めたばかりで体調は万全には程遠いようだ。
「チトセ!」
「何か手が見つかったか⁉︎」
「三号機のことは“にゃんキャノン”と呼称する事にしましょう!」
……あー、またどうでもいい事を。
「バカなこと考えてねえでさっさと三号機を何とかしろよ!」
「にゃんキャノンデス!」
三号機のビームが左側を通過する。
一瞬遅れて激痛が走る。
見ると左腕の肘から先が消失していた。
さっき手に入れたポーションをポケットから取り出し一気に飲み干す。
失った左腕が一瞬で再生した。
手の動きを確かめると以前より反応が明らかに鈍い。
うーん、やっぱりこのポーションいまいちだね。
「チトセ!」
「大丈夫大丈夫」
「チトセ?……あなた、チトセじゃないデスね?」
「バカ言ってないでアイツの気を引いてよ。にゃっくも頼むよ。その間に倒す方法を考えるから」
二人?が疑惑の目を向けるが三号機、いや、にゃんキャノンを何とかするのが先だと理解してるので、僕の言う通り時間稼ぎを始める。
さて、どうするかな。
万全な状態ならともかく今のにゃっくににゃんキャノンを倒す手段はない。
シエスもにゃんダリウム合金製同士でお互いに決定的なダメージを与えられない。
それも今だけだ。
エネルギーに不安のあるシエスは長期戦になれば不利なのは明らかだ。
透視魔法でにゃんキャノンを調べる。
……ん?なんか寄生してる?
敵になった原因はアレだね。
……うーん、今使える魔法じゃアレを殺すのは厳しいなぁ。
にゃんダリウム合金だけでもやっかいなのに、その上にバリヤまで張られちゃ攻撃が通らないんだよねぇ。
僕はあらゆる魔法を使える。
その中にはにゃんキャノンを破壊できる魔法もある。
だけど“この体”じゃ耐えられないね。
それに、
そうこれが一番大事な事なんだけど、今ある力でこのピンチを乗り切らないと面白くない。
そう面白くないんだよ!
……待てよ。
そういえばさっきこの階を透視した時……あった。
……うん、丁度いいじゃないか。アレを使おう!
「にゃっく、シエス!逃げるよ!」
「え?」
シエスが驚いた表情を見せる。
理由を説明したいところだけど、あの寄生生物がこちらの言葉を理解できる可能性があるからね。
にゃっくが右肩に乗る。
頬に当たる視線から僕を完全には信用していないようだとわかる。
その場から逃げ出すとにゃんキャノンは追ってきた。
時折ビームを放つが難なくかわす。
「チトセ⁉︎」
「にゃんキャノンがビームを放つ時、大気中の“マナ”、じゃなかった魔粒子の流れが変わるんだ」
シエスが疑問を口にする前に教えてあげる。
「チトセにはそれがわかるのデスか?」
「なんとなく、ね」
この辺りでいいかな。
走るのをやめ、振り返りにゃんキャノンと対峙する。
「チトセ?」
「逃げるのはやめだよ。ここで決着をつける」
にゃんキャノンが砲塔を僕に向ける。
撃たせないよ。
ケロロを投げ、砲身に巻きつけ自由を奪う。
これで暫く大丈夫かな。
にゃっくがシエスの元に向かう。
にゃっくは僕の意図を読み取ったようだ。
互いにパンチと蹴りのみで戦う。
僕には他に攻撃手段がないけど、にゃんキャノンはまだ武装があるはずだ。
少なくともビームサーベルは後一本あるはずだけど使う素振りはない。
まさか、僕に合わせて、なんて考えてないよね?
だとしたらちょっと心が痛いな。
案外、あの寄生生物はすべての武器を操作することができないだけなのかもね。
「チトセ!」
にゃんキャノンから離れると同時にシエスが右腕の“最高の銃”を放つ。
今までで最大の威力だった。
撃った直後、シエスは体から力が抜けたように跪く。
その攻撃はにゃんキャノンを吹き飛ばしはしたものの、大してダメージを受けていないようだ。
でもそれでいい。
「アディ・ラス!」
体勢を立て直しているにゃんキャノンにアディ・ラス二重掛けプラス下半身に強化を集中した蹴り放つ。
足に、腰に激痛が走るが無視。
にゃんキャノンの体が更に後方へ吹き飛んだ。
今の僕ができる全力の攻撃でも見た目はノーダメージだ。
でも問題ない。
この攻撃もさっきのシエスの攻撃も破壊が目的じゃないから。
そう、逃走から今の攻撃はにゃんキャノンをある場所へ誘い込むための行動だったんだ。
そして今、にゃんキャノンは計画通りの場所にいる。
にゃんキャノンは体勢を立て直し、ケロロから解放された両肩のビームキャノンを向ける。
だが、にゃんキャノンがビームを放つ前に床が発光し、姿が消えた。
「さよなら」
僕の元へにゃっくとシエスがやって来た。
シエスはさっきの射撃でエネルギーの殆どを使ったらしくその動きは鈍い。
今はエネルギー変換の真っ最中のようだ。
周囲に光のカーテンが発生し始める。
テレポートの紋章を使用したことでのダンジョンの再構成が始まったようだ。
「上手くいきましたね。まさかテレポートの紋章を使って地上へ飛ばすとは」
「うん、うまくいってよかったよ」
倒せないなら出て行って貰えばいい。
好都合な事にこの十一階のテレポートは一人用だった。
寄生生物もカウントして二人と判断されたらどうしようかと思ったけどよかったよかった。
「でも戻って来た時はどうしますか?」
「まあ、その時はその時だよ。ーーさてダンジョンの再構成も終わったようだね。鍵と階段を探して下へ向かおうよ」




