152話 復活のC
「で、そいつの居場所はわかるのか?こっちに向かってるのか?」
「わかりません。今は回線をオフにしていますので」
「そうか」
敵だったらこっちの位置知らせてるようなもんだしな。
このまま下を目指すか悩んだが、しばらく様子を見ることにした。
実のところ、座ったことで疲れが溜まっていた事に気づいたのだ。
シエ・ツーのエネルギーの事もあるしな。
ペットボトルを取り出して水を飲む。
「他の機体の武装はお前と同じなのか?」
「違います。装備テストも兼ねておりましたので各々の装備は異なっています」
シエ・ツーの話によれば三号機は中距離戦闘用装備で四号機は武装の代わりに二メートルを超える大きな荷物を背負っていたとの事だ。
中身については知らされていない。
しかし、本当に敵になってたら面倒だな。
「チトセ」
「ん?」
「一つ確認したいことがあるのデスが?」
「なんだよ?」
「あなたは、誰デスか?」
「は?何言って、」
「私の知っているチトセにしては強過ぎます。はっきり言って異常デス」
「そうか?まあ、俺も結構経験積んだしな」
「ここはロールプレイゲームの世界ではありません」
「当たり前だろ」
「万全な状態ではなかったとはいえ私が苦戦したテイ・ルウェポを圧倒するなどあり得ません」
「言うじゃねえか。でもよ、今の俺はそんなに弱くないぞ。ケロロも魔法もあるんだからな」
「それにあなたの行動には不自然な所がありました」
「透視魔法の名前を知ってたって事か?」
「それもありますし、ガルザ・ヘッサはどうデスか?どこでその魔物の名を知ったのデス?」
「それは答えられねえ。っていうか、本当に俺が言ったのか?言った記憶がねえんだよな」
「……」
「なんだよ?本当だぜ」
「……チトセ、あなたもマリと同じ“ダブル”なのではないデスか?」
「ダブル、って二つ魂持ってるって奴か?ないない。俺はムーンシーカーじゃねえぜ。ネバーランド号事件とも関係ねえしよ」
「ではそれ以外に何か心当たりはないデスか?」
「そう言われてもなぁ」
思い当たるのは一つ。
シエ・ツーの言うことが本当なら間違いなく魔王の仕業だ。
だが魔王の事は極秘だしな。
「……心当たりがありそうデスね」
「さあな」
丁度いい。俺もそろそろはっきりさせるか。
「俺も言わせてもらうぜ。お前、シエスだろ」
シエ・ツーは一瞬驚いた表情をしたが、意味ありげな笑みを浮かべると人差し指を立てて左右に振る。
「チトセ、ここはこういうのデス。『お、お前は誰だ⁈』と」
「なんでそんな演技しなきゃならねえんだよ。大体今の話の流れじゃそうならねえだろ?」
「それでも必要な事なんデス!」
あー、めんどくせー。
「お前は誰だ?」
「感情が篭ってません。やり直しデス!」
「断る」
シエ・ツーはしばし考える素振りを見せてたが、
「……もうとっくにご存知なんでしょ?」
「だからシエスだろ?」
「……本当にチトセはノリが悪いデス」
「今、遊んでる状況じゃねえだろ」
「どんな状況であろうとオタク魂を失ってはダメデス」
「そんなもん持ってねえ」
「これだから隠れオタクは……」
「隠れオタクでもねえ」
「ふう、仕方ないデスね。……その通りデス。私、いえ、ボクはシエスデス!」
「だよな」
「ボクの存在に気づいたことからもやはりあなたはチトセではなないデスね!」
「お前、俺をバカにしてるだろ?まる分かりだったぞ」
「ご冗談を」
「ここに来てからオタクっぽい事言い始めたしな」
「……やはりオタクとオタクは引き合うと言うのは本当のようデスね」
「オタクじゃねえ。しつこい奴だな」
「またまた」
またまた、じゃねえよ。
「やっぱ、あのダウンロードのときか?」
「はい。シエスシリーズ四機は全て共通OSを使用していますが隠し機能があるのデス」
「隠し機能?」
「スバリ“シエスモード”デス。このモードに切り替えることでボクは“シエスシリーズ”のどの機体にもボクをインストールする事ができるのデス!」
「つまりシエスシリーズは全てお前のバックアップ機って事か?」
「そうデス。シエスシリーズは全てボクのために、ボクのためだけに存在しているのデス!」
うーむ、よかった様な残念な様なよくわからん。
「それでシエ・ツーはどうなったんだ?上書きで消されたのか?」
「いえ、サブシステムとして使用してます」
「そうか」
AIとは言え、残ってると知ってホッとした。




