145話 休憩
「なんでダンジョンの中にこんなとこがあるんだ?」
六階に降りるとすぐ正面にドアがあり、休憩室と書かれていた。
ドアを開けるとそこはおよそ二十メートル四方の大きな部屋だった。
天井にはリビングにあるような照明があり、室内にはテーブル、ソファがなどがいつくも置かれていた。
空調が効いているのか丁度いい室温だった。
壁にはいくつかドアがあり、そのドアにはネームプレートが貼られていた。
トイレ、風呂、キッチン、寝室などの文字が目に入った。
「戦士にも休息は必要と言いますデス」
「なんか違わねえか?」
「ここで一休みしましょう」
確かにここまで飲まず食わずだったし、この部屋を見て一気に疲れが襲ってきた。
「何かの罠じゃないのか?」
「心配性デスね。大丈夫デス。前回も使いましたし、創造主はこのダンジョンを娯楽施設と考えているようなのデス」
「娯楽施設ね」
一歩間違えば死ぬような場所なのにな。
側のソファに腰を下ろすと眠気が襲ってきた。
座るとスリープの魔法が発動するトラップに引っかかったんじゃないかって思ったくらいだ。
シエ・ツーは背負っていた装備からペットボトルを取り出した。
シエスが飲んでいたものと同じようだ。
「俺達も食事にするか」
にゃっくが小さく頷いた。
リュックから携帯食を取り出す。
船を降りるときに支給されたものだ。
箱は黒で何も書かれていない。サイズは五センチメートル×七センチメートルといったところか。
見た目はよくあるスティック状のバランス栄養食で三本入っていた。
さて、どんな味がするんだ。
色的にはチョコレート味ぽいんだが。
……む、なんだこれ、チョコじゃない。バナナ、か?
味は悪くない。悪くないが見た目と予想した味が違うとなんか変な感じだな。
にゃっくは相変わらずポーカーフェイスで黙々と食べている。
味は予想を外したが、粉っぽさ予想通りで、口の中の水分を奪い取られた。
支給されたペットボトルを取り出す。
こちらもラベルには何も書かれていない。
色からすればコーラ的なものに見えるが……匂いはないな……ん?味もない⁈
「どうしましたか?」
「これ、味がないぞ」
「そうですか。私にはよくわかりませんが、体力回復の成分を含んでいるはずデス」
「そうなのか」
じゃあ、飲むか。
まあ、不味くはないからな。
にしてもだ。最近無色でカフェオレ味とかあるのと正反対だな。
着色してあって無味無臭って気持ち悪いぞ。
これを開発した奴に会ったら文句言ってやりたい気分だぜ!
「その顔……どうやらその食事がチトセのクレーム魂に火を付けたようデスね!」
「そんな魂持ってねえ」
「……ん?」
「起きましたか?」
いつの間にか眠ってしまったらしい。
スマホで時間を確認すると三十分ほど過ぎていた。
「何か変化はあったか?」
「特にありませんデス」
「そうか」
変な体勢で寝ていたせいか体のあちこちが痛い。体をほぐす。
「こういう休憩場所はこの後もあるのか?」
「あるはずデス。私の準備は終わっていますが、チトセ、にゃっくさんはどうデスか?」
「ちょっと待て。一応トイレ行っとく」
あとせっかくだから全部の部屋見て回るか。
キッチンは広く。三、四人同時に作業できそうだ。
冷蔵庫らしきものがあり、中を見るが何も入っていなかった。
「空のペットボトルに水を補給した方がいいデス」
「なるほど」
確かにこの後、いつ水分補給できるかわからないな。
風呂は岩風呂で、一度に六、七人は入れそうだ。
今回はパスだな。
「チトセ、私に期待しても無駄デス」
「何をだ、何を」
寝室はダブルベッドが三つ。
こっちで寝ればよかったぜ。まだ体痛え。
「チトセ」
「何だよ?」
「ニッタセリスを連れてくれば、と考えましたね」
「してねえよ」
「何故わかったのか、デスか」
「言ってねえだろ」
「それは私が名探偵でもあるからデス!」
「馬鹿が。お前、シエスみたいなことを言ってるよな」
「……私はそんなにデキはよくないデス」
この野郎!ここで正体暴いてやろうか。
「気が済みましたか?」
「ああ」
「では先に進みましょう」




