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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
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141話 震える大地

 シエ・ツーがさっきと同じ動作、といっても左右反対だが、で腕を外す。

 現れたのは銃口ではなく鞭、の様に見えた。

 それはワイヤーを中心に両側が鋭い刃のような薄い鉄板が何十枚も連なっていた。

 普通の鞭より、トゲトゲ鞭より明らかに凶悪だ。


 シエ・ツーが鞭もどきを迫りくるウォルーに振るった。

 鞭もどきがウォルーの首に絡みつく。

 シエ・ツーが腕を引くと鞭もどきがウォルーの首を締め付け、切断した。


「うげえ、痛そう」


 宙を舞う首を見ながらどうせ死ぬなら苦しまずに死にたいなと思った。


 仲間の死に恐れる事なく残り二頭がシエ・ツーに迫る。

 シエ・ツーが左腕を上げると鞭もどきのワイヤーが引き戻され、鉄板が一列に並ぶ。

 その隙間が完全になくなると鞭もどきは一本の刃になっていた。

 刀身は五十センチくらいだろうか。


「マジか。アレ、剣にもなるのか」


 何十等分にもされた刃を並べたところで強度はどうなんだ?

 と思ったが心配は無用だった。

 シエ・ツーはそのオモチャのような刃で残りのウォルーを難なく仕留めたのだ。

 予想に反して斬れ味は相当いいようだ。


「では、先を急ぎましょう、death」


 シエ・ツーは腕を元に戻しながら何事もなかったかのように言った。



 シエ・ツーと共に森に向かってまっすぐ進む。

 今のところ新たな魔物は現れていない。


「なあ、お前、他にも武器を内蔵してるのか?」

「……」


 む、こいつ、シカトか?


「おい、シエ・ツー!」

「……あ、すみません、アップデートしてました、death。何でしょうか、death」

「アップデートって、それ今必要か?」


 アップデートには嫌な思い出がある。

 パソコン、あ、今の無意味に高性能なパソコンじゃなくて、最初のノートパソコンな。あれを使ってた時、OSが勝手にアップデートを始めて完成したばかりのレポートをぶっ壊した事があるんだ。

 あの時は本当に参ったぜ。

 思わずパソコンぶん殴ったもんな。

 いや、パソコンが悪いわけじゃないのはわかってる。悪いのはバカOSなんだがそうしなきゃ俺の怒りが収まらなかったんだ。

 ……ん?

 今考えてみるとノートパソコンの調子が悪くなったのはその頃からか?

 ……いや、もう済んだ事だ。考えるのはよそう。うん。

 

「私はもっと強くなる必要があるの、death。今回のアップデートはエネルギー効率の最適化が図られているの、death。今回のアップデートで行動時間が三十パーセントアップするの、death」

「三十パーセントか、そいつはすごいな」


 っていうか、それ凄すぎないか?

 今のプログラムが雑なのか?

 ま、こいつが本当の事を言ってるとも限らないか。


「それで何でしょうか、death」

「あ?ああ、他にも武器を内蔵してるのか、って聞いたんだ」

「当然、death。私は戦闘用にカスタマイズされているの、death。シエスとは違うのですよ、シエスとは!death」

「そうか」


 ……ん?

 今、なんか引っかかるものがあったが……まあ、いいか。



 森が目前に迫った時だ。


 ん?

 体が揺れてる?……違う!


「おいっ、シエ・ツー!地震じゃねえか⁉︎」

「そのよう、deathね」



「……収まったみたいだな」

「……そうdeathね」


 三十秒程か。結構長かったな。

 震度四はいってたんじゃないか?


「この島、向こうの世界から来たんだよな。下はどうなってんだ?浮島なのか?」

「いえ、繋がっています、death」

「そうなのか」

「ただ……」

「ただ、なんだよ?」

「もう余り時間は残されていない様なの、death」

「時間が残されていない?なんのだよ?この島が沈むとかか?」

「ちょっと違います、death」

「どういうことなんだ?」

「こちらの世界の復元力が高まっているようなの、death」

「は?なんだそりゃ?」

「簡単に言いますと、世界が異物であるこの島を排除しようとしているの、death」

「んん?つまり、なんだ、お前はこの世界に意思があると?」

「はい、death」

「んで、世界が『この島は俺の世界を乱すから排除する』ってか?」

「はい、death」

「そんな事……」

「絶対ない、とあなたは断言出来ますか、death」

「そりゃ……出来ないわな」

「我々は数々の現象を解析した結果、そう結論を出したの、death」

「ふうん」

「ですからその前にチトセ、あなたにやってもらいたい事があるの、death」

「いつももったいぶってるよな。それはこの島でないと出来ない事なんだよな?」

「はい、death。チトセでも、いえ、チトセ如きでももう気づいているのではないdeathか?」

「今なんで言い直した?悪い方によ。ん?」

「深い意味はありません、デス」

「お前な……」

「その通り、デス。この島は他の場所と比べて魔粒子濃度が高いの、デス」

「まだ何も言ってねえだろ。まあ、それは感じてたけどな」


 <領域>にはとても及ばないが確かにここの魔粒子量は多い。


「やっぱりここで魔法を使おうとしてるんだな?」

「その質問には私は答える事が出来ません」

「そうかよ。じゃあさっさと済まそうぜ。この島、いつ沈むかわからないんだろ」

「はい、デス」


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