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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
153/247

139話 死者が蘇る島

 上陸した場所は小さな漁村だった。

 といっても今は誰も住んでいないのか住居は朽ち果てるがままになっていた。

 ただ、新しい足跡がいくつもあった。組織の者達のだろう。


 こんな小さな港じゃあんな大きな船停泊できねえな。

 最初からボートで乗り降りする予定だったのかもな。

 それとも別に港があるのか?



 村を抜けるとすぐに組織の者達が使っているであろう住居がいくつか見えた。

 工事現場や災害地とかで見かける仮設住宅だ。

 一緒に降りた乗員二名はその中の一つに入っていった。


「どうかしましたか、death」

「いや、想像したのと違うなと思ってたんだ」

「どう違うの、death」

「この島自体が組織の重要機密なんだよな?」

「そう、death」

「だからさ、てっきり最先端な未来感あるような建物が並んでると思ってたんだ」

「そんな物が建っていたら目立ってしまいます、death」

「そりゃそうだな」


 空の上には数え切れない程の衛星が飛んでんだからな。



 しばらくの間、当時のままろくに整備されていない道を徒歩で進む。

 その先には森が見える。

 シエ・ツーは目的地を言わないがこのまま進むとあの森に入ることになる。


 しかし、呼んどいて出迎えなしなのか。

 アヴリルが迎えに来ると思ってたんだが。


 それにしても何だろう、あの森には違和感を覚える。

 木々に詳しいわけじゃないが、どこかおかしい。

 人工的って意味じゃない。

 何がどうおかしいのか自分でもよくわからない。

 思い過ごしかもしれない。

 

 自分のスマホ、組織から借りたスマホのどちらもアンテナは立っていない。


 これ、いつ使えるようになんだよ。

 持ってる意味あんのか?


「なあ……」

「ちょっと待ってください、death……」


 シエ・ツーが立ち止まる。


「また指令が来たのか?」


 シエ・ツーは問の答えとは違う言葉を発した。


「……現れましたか、death」

「何?何が現れたって?」


 シエ・ツーの視線の先を見るとこちらに何かが向かって来るのが見えた。

 高さが膝まである自然の草木を踏み荒らしながらこちらに迫ってくる。


「なんだ、あれ?」


 人にしては移動速度が速すぎじゃないか?……む?毛むくじゃら?縫いぐるみ……じゃないよな、って事はやっぱり人じゃない?


「……戦闘形態に移行します、death」

「何?」


 シエ・ツーは左腕で右腕の袖をたくし上げて腕を露出させる。

 その腕には不自然なラインがいくつも走り人工的に作られた腕だとわかる。

 シエ・ツーが左手で右腕をひねると肘から下がラインに沿って一回転した。

 そのまま右腕を下にずらすとあっさりと外れ、中から銃身が現れた。

 シエ・ツーの右腕には銃が内蔵されていたのだ。


 ん?

 これ、どっかで見たことあるような気がするな。

 ここに皇か新田さんがいればわかるんだろうけど。


「なあ、それ……」

「早速私の力を見せる時が来ましたね、death」


 シエ・ツーは銃口を向かってくる何かに向けると警告もなしに発砲した。


 ビィウィーン!


「ビーム⁉︎」


 そう発射されたのは鉛の弾丸ではなかった。

 キリンさん達が使った魔法ライ・ディーや新田さんが放ったラグナとは見た目から明らかに異なる。


 魔法じゃない。化学兵器だ。

 

 シエ・ツーの右腕の銃から発射されたビームは標的との距離が百メートル以上離れていたにもかかわらず狙い違わず標的の腹に命中した。


 バタンと倒れる何か。


「……任務完了、death」


 シエ・ツーは右腕を元に戻しながら平然と言った。


 いや、ちょっと待て!


「おい!本当に攻撃してよかったのか?アレ、人じゃないのか?」

「違います、death。アレはワーウルフ、death」


 ……は?ワーウルフ?


「いわゆる魔物、death」

「ちょっと待て。確認させてくれ。ここ日本だよな?向こうの世界じゃないよな?」

「……私にはその質問に答える権限がありません、death」

「おいおい、それはここが日本じゃないって言ってるのと同じだぞ!」

「そうとも限りません、death」


 そういうとシエ・ツーは先へ歩き始めた。


 何がそうとは限らないだよ、

 ……って待てよ、そういえばあの船、魔物を運んでたな。


「そうか、あれも船でここへ運んできたんだな?それが逃げ出した、そうだろ?」

「お答え出来ません、death」


 ちっ、もったいぶりやがって……。


「おい、アレ、ワーウルフだったか、そのままでいいのか?」

「大丈夫、death。連絡しましたので処理班が片づけてくれます、death」

「本当にか?……それならいいけどよ」


 ワーウルフから視線を外しシエ・ツーの後を追おうとした時だ。

 何かの気配を感じた。


「どうかしましたか、death」

「何か感じないか?」

「何か、deathか……私のセンサーには何も反応はありません、death」

「そうか」


 だが俺は感じる、スッゲー嫌な感じだ。


 ん?


 ワーウルフが微かに動いたような気がした。

 ワーウルフとの距離はかなりあるので見間違いかもしれないが。


「今、ワーウルフが動かなかったか?」

「……」

「なあ……‼︎」


 今度ははっきりわかった。

 やはり見間違いじゃなかった。

 ワーウルフがゆっくりと立ち上がったんだ。

 腹に大きな風穴を開けたままで。

 そこから何か、おそらく臓器だろう、が飛び出している。

 昔の俺ならそう思っただけで間違いなく吐いていただろう。


 人は慣れていくものなんだな。

 って、そんなことよりだ!


「おい、あのワーウルフ、まさか、」

「……はい、チトセの想像通り、death。ゾンビとなって蘇りました、death」

「やっぱりか⁉︎ってまたゾンビかよっ⁉︎」


 ワーウルフゾンビは首を少し傾けたままじっと立っている。


「あいつ、何やって……」


 ワーウルフゾンビが俺の方を見た。


「うわっ、こっち見たぞ……っ⁉︎」


 ワーウルフゾンビが走り出した。

 俺に向かってだ!


 速い‼︎

 船で変態マッチョが作り出したゾンビとは違う⁉︎


 肉眼で姿がはっきりわかるほどの距離になった。

 狼の顔、服から覗く毛むくじゃらの手足。

 間違いなく狼男だった。


 目前にまで迫って来た所でちっちゃなものが俺の肩を蹴って跳んだ。

 にゃっくだ。


 にゃっくの皇帝拳でワーウルフの首が宙を舞う。

 頭を失った体はしばらく走った後に石か何かに躓き派手に転んだ。

 そして動かなくなる。


「ワーウルフのゾンビ化を確認、death」


 そう言ったシエ・ツーがワーウルフの頭を踏み潰した。


 うげー、グロい……。


「申し訳ありません、death。今のは私のミス、death」

「いや、それよりもだ!ここにもすでに変態マッチョの仲間が入り込んでいるんじゃないのか⁉︎奴らの仲間がその辺にいるんじゃないのか⁉︎」

「それは違います、death」

「なんでそう言い切れるんだよ?」

「ここが暗出島だから、death」

「は?何言って……」

「ここは死者が蘇る島なの、death」


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