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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
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126話 魔法

 こいつは生かしておけない。

 女を全て消す、殺すということは俺の可愛い妹をも殺すと言うことだ。

 そんな事をしようとする奴を生かしてはおけない。

 そんな事をいう奴を生かしてはおけない。


 俺は自由な左手で変態マッチョの顔面を殴ろうとするがあっさりかわされた。

 蹴りを入れる。

 変態マッチョは避けなかった。

 足に痛みが走った。

 変態マッチョは見下した笑みを浮かべている。

 ダメージを受けたのは俺だけだったようだ。


「無駄デース。実はワタシ、体鍛えてマース」


 そんなの見りゃわかるわっ!


 くそっ!

 ちょっと訓練した程度の攻撃は全く効かない。


「もう終わりデスカー?」


 バカにしたような口調で言いやがってっ!


 こいつは生かしちゃおけない!

 ……だが、俺にはこいつを倒す力がない。


 俺もシェーラのように肉体強化魔法が使えれば。

 キリンさんやゆきゆきのような攻撃魔法が使えれば。

 魔法使いになったはずなのに使った魔法といえば透視魔法だけだ。

 それも一度だけでどうやって使ったのかもわからないし、今使えたとしても役に立たない。

 今欲しいのはこいつを叩きのめす魔法だ!

 暗出島に行けば俺は魔法を使う事が出来るようになるかもしれないと思っていた。

 そうだったとしても遅い。遅すぎる。

 今欲しいんだ!


 ……待てよ。


 俺は魔法補助デバイスEMUだったか、を使わずに魔法を使った。

 なら、他の魔法も使えるんじゃないのか?

 一度も試した事はないし、出来たとしても透視魔法の時のように激しい頭痛に襲われるかもしれない。

 どれだけ魔粒子を持っていかれるかもわからない。

 下手したらまたカオス落ちするかもしれない。

 だが、この窮地を脱するにはそれにかけるしかない!


 俺はシェーラが使った肉体強化を試してみることにした。

 キリンさん達が使った雷撃魔法は腕を掴まれた状態では自分もダメージを受けるかもしれないからだ。

 シェーラが呟いていた呪文を聞き逃さないでよかったぜ。


「アディ・ラス!」

「!?」


 何も起こらない⁉︎


「アディ・ラス!アディ・ラス!……くそっ、呪文が違うのか⁉︎」

「……フフフ、ハハハハッハハハハ!笑わせてくれマース!無知とは恐ろしいものデース!」


 変態マッチョが俺を突き飛ばす。

 その勢いで俺は倒れ込んだ。


「あなたの無知に失望デース。興味がなくなりマシター」


 変態マッチョがガラケーを取り出した。


「あなたは魔法の事を何も判ってイマセーン」


 当たり前だ!俺はまともに説明受けた事ないんだからな!


「ではあなたの無能な教育担当に代ワッテ講義してアゲマース。本当の呪文はもっと長いのデース。あなたが唱えたのは発動コマンドデース。中身のない魔法が発動するわけアリマセーン」

「……EMUは魔粒子を供給するだけじゃなかったのか?」

「ソノ通りデース……ん?あなた、魔粒子の事を知ってて魔法を使おうとシタノデスカ?カオス落ちを知らない?……いや、その顔、それは知っていたヨウデスネ。ナルホド、スバラシーイ!カオス落ち覚悟で挑んだのデスネ!」

「うるせえ!」

「フフフ、デハ実践シマショウ。ついでにお代もイタダキマス」

「お代だと?」

「ハイ。……あなたの命デース」


 変態マッチョがガラケーのキーを叩く。

 ガラケーから「レディ」と小さな機械音が聞こえた。


「アディ・ラス!」


 瞬間、変態マッチョの体を赤いオーラが包む。

 シェーラの時と同じだ。


「見エマスカ?コレがあなたが使おうとした魔法デース……何が可笑シイノデス?」


 ん?俺は笑っているのか?

 だが、それはしょうがないだろ。


「おかしいから笑ってんだよ」

「……不愉快デス」

「お前には感謝してるぜ」

「?」

「意味がわからないか。そりゃそうか」

「……説明シナサイ」

「ああ。お前は俺に魔法を教えてくれたんだ。俺の勘違いも正してくれた」

「……何デスって?」

「わからないか?ならかかって来いよ」


 自然とその言葉が出た。

 今の俺に恐怖はない。

 それどころか俺は“覚えたばかりの魔法”を使いたくて仕方がなかった。


「下っ端の分際で……簡単には殺しマセンヨ!」


 変態マッチョが俺に迫る。

 俺は呪文を唱えた。


「アディ・ラス」


 瞬間、魔粒子を失う感覚とともに激しい頭痛に襲われた。

 頭痛が来るとわかっていなければ次の行動は取れなかっただろう。

 俺は痛みに耐えながらも素早く立ち上がった。

 変態マッチョは俺が魔法を使ったことに驚いていた。その隙を見逃さず顔面を殴りつけた。


 変態マッチョの体が吹き飛ぶ。

 体勢を崩したのは一瞬だけですぐに立ち上がり構えをとった。

 変態マッチョも肉体強化していたので大したダメージは負っていないようだった。

 だがその表情には驚きが残っており、すぐに反撃は来なかった。


「魔法だと!?いや、そんなはずは……この世界でEMUなしで魔法が使えるはずがない!」


 俺は自分の体を赤いオーラが包んでいるのを確認した。


「そ、そうか!お前、俺を騙していたな⁉︎どこかにEMUを隠し持っていたな!」

「流暢に喋れるようになったじゃねえか。打ち所がよかったか?」

「ふざけるな!どこにEMUを隠していた⁉︎」

「何言ってんだ、お前」

「何だと⁉︎」

「仮に持っていたとしてもだ、こっちの衛星はお前らが使えなくしたんだろ?」

「あ……」

「俺は今覚えたんだよ。お前が目の前で魔法を詠唱したじゃねえか」

「何を言ってる⁉︎あの圧縮された呪文を理解したというのか⁉︎ありえない!ありえない!そもそもあの音は人間の耳には聞こえないはずだ!」

「そう言われてもな。聞こえたんだよ。俺にはな」


 これは本当のことだ。

 俺には奴のEMUから流れた呪文が聞こえ、内容が理解できたのだ。

 どうやら俺はどんな形にしろ呪文を聞けばその魔法を使えるようになるようだ。

 頭痛を伴うのが難点だが。

 EMUの機能のことをもっと早く知っていれば”アディ・ラス”だけでなく”ライ・ディー”も使えたはずだ。

 戦いの展開もこうはならなかっただろう。


 まあ、そのことを今言ったところで仕方がないことだが。


 視界の隅でにゃっくと闇皇帝が戦っているのが見えた。まだ決着はついていないようだ。

 にゃっくが負けることはないと思うが救援に来るのは難しそうだ。

 シエスはといえば未だゾンビと戦っている。

 ゾンビの数は減っているようだがこちらも援護に来れそうにない。


 で、俺と変態マッチョだが、お互いに強化魔法をかけ合った状態では致命傷を与えにくいし、向こうには今は停止しているがアレックスもいるのだ。

 もう少し時間を稼ぎたいところだ。


 変態マッチョは構えを取りながらもブツブツ何かつぶやいている。


「……本当にEMUなしで魔法を……そんな事が……いや、しかし、もしも……」


 今がこいつを倒すチャンスか?

 ……ん?


 変態マッチョが不思議な笑みを浮かべて俺を見た。


「……あなた、すばらしいデース」


 また口調が変に戻りやがった。これは冷静さを取り戻したってことか?

 わかりやすいが厄介だな。


「あなたのそれはムーンシーカーの能力デスネー?」

「誰がだ」

「違うのデスカー?まあなんでもいいデース!」


 変態マッチョは天に両手を上げた。


「私はついてマース!ここに来てよかったデース!」


 舌なめずりする変態マッチョ。


「訂正シマース!あなたを殺すのをヤメマース。じっくり調べてタクナリマシター!アレックス!」


 変態マッチョの叫びでアレックスが俺を見た。


 ……うーむ、ちょっとマズイか。


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