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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
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115話 船上の再会

 プールは船内にあった。てっきり甲板にあるものとばかり思ってたのでちょっと予想外だった。

 大きさは五十メートルで四コース。滑り台も何もない。市民プールにいる気分だぜ。


「女性がいないからってそんなに悲しそうな顔をしないで下さい」

「アホか!面白みがないと思っただけだ!」

「……泳ぐなら私は部屋で待機してる」

「そうかよ!別に俺も泳ぐ気はねえけどそれでいいのか?護衛として!」

「……問題ない」


 いやいや問題ない事ないだろ!こいつ理解して言ってるのか⁉︎

 “問題ない”はただの口癖か?



 映画館は六十席でスクリーンのサイズはそれ相応だ。ただし4Dに対応しているようだ。

 上映プログラムを見ると二十四時間上映しているようだが特に見たいものはなかった。


「どうやらアダルトモノはないようデス。残念だったデスね、チトセ」

「なんで俺に振る?」

「深い意味はないデス」

「……」


 マリが俺から距離を取る。


 俺は何にも言ってねえだろ、おい!



 ジムは色々な器具が揃っており、何人かトレーニングに励んでいた。

 インストラクターはいないようだ。

 

「チトセ、女性がいなくて残念デスね」

「うるせえ」

「……」


 シエスのアホは意図的にマリの俺への好感度を下げようとしてるのか?


「お前、絶対AIに致命的なバグがあるぞ」

「チトセもしつこいデス。ボクは人間デス」



「……これで一通り見終わりました。ご飯にしますか?」

「……賛成」

「そうだな。腹減ったぜ。ムカつきまくってな!」


 シエスは俺が何に腹を立ててるかわからないというような表情をする。

 マリも表情こそ変わっていないがシエスと同じ考えのようだ。


 ……ああ、お前らの相手してるとホント疲れるぜ。



 食堂は一階と三階にあるが三階は金がかかるので却下し、無料である一階の食堂に向かった。

 食堂は結構空いていた。

 三階の食堂もチラッと覗いただけだが結構空いているように見えた。こちらはてっきり金がかかるからと思っていたんだが、この船の乗員は思ったより少ないのかもしれない。

 食事をしている人達が着ているジャンパーの色は赤が多かった。

 赤と青に混じって黄色もチラホラ見える。


 黄色ってなんの職なんだ?

 まあ、どうでもいいか。今は飯だ!

 って、あれはっ!


「おい、外が見えるぞ!」


 今まで見てきたところは全て窓がなかったが、ここは違った。しかも、


「おお!外でも食事できるみたいぜ!外行こうぜ!」


 俺はデッキへ続くドアを開けた。

 潮の香りがした。

 そう思ったのは一瞬だ。

 デッキは涼しかった。いや、違う。寒かった。

 空は曇っており、進行方向を見ると雨雲が見えた。

 このまま進めば雨雲の下を通ることになりそうだ。

 見える範囲に島は見えなかった。


「あれ?気のせいか?なんか暖かくなって来た?」

「気のせいじゃないデス」

「どういう意味だ?」

「このジャンパーには温度調整する機能があります。勿論限度はありますが」


 成る程、言われてみればジャンパーが暖かいな。

 とはいえ、外で食事するというのはやめだ。

 手や足は冷たいし、それににゃっくがぷるぷる震えているからな!


 俺達は護衛といいながらデッキに出てこなかったマリと合流する。


「お前、本当に俺の……」

「あれ?先輩じゃないっすか!」


 声のした方を見るとそこには南川登ことトウが立っていた。


「トウ!お前も選ばれてたんだな」

「それはこっちのセリフっす!俺、先輩が集合場所にもミーティングにも来なかったからてっきり落ちたんだと思ってたんすけど、そういう事だったんすね」

「そういう事?……ああ、そうか」


 見ればトウのジャンパーの色は赤だった。


「でも先輩、隅に置けないっす!せりす先輩って彼女がいながら……」


 トウの視線の先にマリがいた。ゴーイングマイウェイで俺らの事など見向きもせずゲームをしていた。


 こいつ、隙あらばゲームしてるな。


「そんな訳ねえだろ。任務が一緒なだけだ」

「ホントっすかー?」

「本当だ」

「まあ、今のは冗談っすけど。……ところでそっちの人も技術職なんすか?見た感じ戦闘職っぽいんすけど……」


 トウの視線の先にはシエスがいた。盾を担いだな!


「気にするな。こいつはちょっと変なんだ」

「変ではないデス。至って普通デス」

「なるほど。確かに変っすね。納得っす!」

「だろ」

「失礼な人達デス」



 トウが持つトレーに乗っている皿は空だった。


「お前はもう食べ終わったのか?」

「そうっす。この後すぐまたミーティングがあるんすっ」

「ミーティングね」

「先輩達は今ミーティング終わったところっすか?」


 そんなもんねえよ。

 船長には自由にしていいって言われたしな。

 この待遇の違いを知られてると色々面倒か。


「まあな」

「今日は六時から自由時間なんすよっ。夕食は一緒にしないすっか?」


 六時か。

 問題ないはずだが念の為確認とっとくか。


「俺達、大丈夫だっけ?」

「大丈夫デス」

「……」


 む、マリの奴、今一瞬面倒だな、って思ったな。

 だが俺の護衛である以上付き合う必要があるんだよな。


「大丈夫だな。じゃあ、七時にここでどうだ?」

「はいっす」



 俺は大学での習慣で無意識にランチを注文しようとしたがギリギリで思い止まった。

 どれもタダなんだ!ならば高そうな物を食べるべきだよな⁉︎

 という事で俺はステーキセットにした。

 マリは俺が思い止まったランチセットだった。食事には全く興味がないのかもしれない。

 そしてシエスはというと、


「エネマックス800をお願いします」

「またそれかよ?そんなんで足りるのか?」

「これで十分デス。今日はそれ程行動してませんし、無駄に胃袋を大きくしてないデス」

「ああ、そうかよ」


 本当は「ロボットだからだろ」と言いたかったのだが、マリの精神攻撃を食らいたくないからな。


 ちなみににゃっくは皇帝猫用ランチセットだ。

 そう、この食堂には皇帝猫用のメニューがあったのだ。

 因みにラサロン用のメニューもあった。


 うむ、やっぱりこの船は特別なんだな。



 七時に俺、にゃっく、シエス、そしてトウで食事をした。

 マリは気分が優れないという事で欠席だった。


 絶対嘘だ。

 全くもってけしからん奴だ。



 トウの担当の近藤イサムは来ていなかった。別の任務が入ったらしい。

 それが本当かどうかは知らない。

 俺にはどうでもいい事だ。

 特に重要な話をする事もなく、世間話をしてトウと別れた。



 部屋に戻ってからしばらく待ってみたがスマホは届かなかった。

 俺は今日俺の可愛い妹に電話をするのを諦めた。

 シャワーを浴びてベッドに横になるとすぐに眠気が襲ってきた。

 

 俺はどこでも寝られるな。

 明日は遂に暗出島に到着か。


「一体どんなところなんだろうな?」


 俺の問いににゃっくは無言だった。


「ま、にゃっくも知らないか。……おやすみ、にゃっく」



 そして次の日、無事暗出島に到着、

 しなかった。


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