表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
122/247

113話 船出

 マリはコートのポケットから携帯ゲーム機を取り出した。

 耳にワイヤレスイヤホンをつけて遊び始める。

 その手の動きからゲームはアクション系のようだ。

 マリは表情一つ変えず、淡々と操作していた。


「なあ、マリ、何のゲームしてんだ?」

「……」


 返事はない。ただの屍のよう……だった方が無視されるよりマシか?

 いやいや無視したんじゃないよな!イヤホンで俺の声が聞こえてないだけだよな!

 だよな⁉︎

 確認はしない。

 ゲームの邪魔をしちゃ悪いからな!


 ……俺もゲームするか。


 スマホを取り出し、いつも暇潰しにやるクイズゲームを起動させる。

 だが、


「あれ?ネット繋がらない?って、アンテナ一本も立ってねえ!」


 俺の叫びにシエスが答える。


「チトセのスマホは通信は出来ませんよ」

「なんだと⁉︎……あ、そうか。GPSとかで位置がわかるからか。景色を見えなくした意味ねえもんな」

「その通りデス」


 ん?

 今、千歳の、と言ったな。という事は俺以外は使えるって事か?

 ちょっとムカつくがしょうがないか。俺は下っ端だしな。


 俺はテトリスもどきゲームを起動する。

 こいつはネット接続出来なくてもできたはずだ。



 軟らかい何かが頬に触れた。

 目を向けるとにゃっくがいた。

 今のはにゃっくの肉球だったようだ。

 どうやらいつのまにか寝てしまったようだ。


 隣の席にマリの姿はなかった。

 いや、車内にいるのは俺とにゃっくだけだった。

 ドアが開き、シエスが現れた。


「着きましたよ」

「そうか」


 車から降りるとそこは駐車場のようだった。

 それほど広くはなく、見渡す限り駐車スペースは全て埋まっている。

 辺りの様子に違和感を覚える。

 どこか普通の駐車場とは違う気がする。

 何かおかしい。


 ん?

 なんか地面が揺れてる?

 地震……じゃないよな。


「どうしました?」

「いや……ってお前っ!」


 よく見ればシエスは自分の身長程もある大きな盾を背負っていた。

 前に探偵事務所で見たあの盾だ。

 って、それどこにあった?車内で見なかったぞ!


「また持ってきたのか?」

「当然デス」

「目立ちすぎだろ」

「心配ないデス。チトセは気にし過ぎデス」

「いやいや、そんな事ねえぞ。一緒にいる俺が恥ずかしい」

「これは必須なのデス。前回闇皇帝との戦いの時、この盾があれば圧勝していたはずデス」

「……本当か?」

「チトセの意見を聞いたのが間違いでした」

「何俺のせいにしてんだよ!」

「事実デス」

「ああ、そうかよ」

「チトセ、あなたは自分の置かれている立場をわかっていないようデスね」

「は?なんだよそれ?何か?闇皇帝は俺を狙っているとでもいうのか?」

「それだけじゃないデス」

「……それ、どういう意味だよ?」

「ともかくデス。ボク達はチトセを守るためにいるのデス。装備は万全にする必要があるのデス」

「……大丈夫。私が傷一つつけさせない」


 と結構程離れた位置からマリが言った。


「そうか?さっきからのお前の態度が俺の心を深く傷つけてるんだが?」

「……問題ない」

「何をもって問題ないとい……」

「チトセ、話は後にしましょう」


 そう言ってシエスが先を歩き出す。


「ったく…ってちょっと待て。荷物……」

「心配ないデス。既に部屋に運ばれているはずデス」

「部屋?ここはホテルの地下なのか?」

「すぐにわかります」

「また説明なしかよ……ったく」


 シエスの後に俺、と俺の肩に乗ったにゃっく、その後に距離をとってマリが続く。

 エレベーターに乗るとシエスは二階のボタンを押した。

 流石にエレベーターの中ではマリは俺と距離を取る事が出来なかったが、それでも壁に背中を押し付け俺から距離を取ろうとする。


 ……更に精神的ダメージを負ったぞ。


 ボタンをみる限りではこのホテル?は地上四階、地下三階まであるようだ。今いた駐車場は地下二階だった。

 エレベーターが開き、降りると左右に狭い通路が延びていた。両側に複数のドアが見える。おそらく客室だろう。


「ここ、ホテルじゃないな。なんか映画で見た船の通路に似ている」

「その通りデス」

「やっぱりか」


 通りでさっきから地面が揺れている気がしたわけだ。


「チトセ、あまり目立たないようにしてください」


 と真剣な表情でシエスが言った。

 が、

 俺達とすれ違う者達は皆シエスの盾に好奇の視線を向ける。


「言った本人のお前が目立ってるぞ」

「気のせいデス」

「いや、気のせいじゃねえ」

「……目立ってる」


 マリも同意する。

 が、


「お前も十分目立ってるぞ」

「……何故?」

「季節外れのコートなんか着てるからだ!」

「チトセ、声が大きいデス。目立つ行動はやめてください」

「……慎重さが足りない」

「だからお前らの方が目立ってんだよ!」


 ……あー、疲れる。

 何なんだよ、こいつら。



 シエスが案内したのは暗出島に着くまで俺が使用する船室だった。

 個室で広さは四畳よりやや狭いくらいか。

 その半分を二段ベッドが占めており、下はベッドではなく机があり、その上にはタブレットが置かれていた。

 

「ん?このドアは……って、ユニットバスか」

「ここをチトセとにゃっくさんで使ってください。両隣がボクとマリになります」

「そうか」


 シエスが壁に掛かっていた青色のジャンパーを指差す。


「船内での服装は自由ですが、このジャンパーを必ず着用するようにしてください」

「制服か?」


 今まですれ違った人は色は違えど皆このジャンパーを着ていたな。


「そう考えてもらって構いません」

「もしかして色で職種が決まってるのか?」

「はい。赤が戦闘職、青が技術職デス」

「じゃあ、お前達は赤なのか?」

「いえ、ボク達も青デス。ボク達は表向き技術職デス」

「……職種が違うと一緒に行動しにくい」

「お前ら、本当に俺の護衛なのか?」

「最初からそう言っています」

「そうだけどよ……で、お前達は俺に何をさせる気なんだ?確か装備テストと魔法実験だったか?魔法って具体的にどんな魔法なんだ?」

「ボクもそこまではわかりません」

「……私の任務は千歳を無事キリンの元に送り届ける事。それ以上の事は知らない」

「キリンさんが……、そういやアヴリルはどうしたんだ?暗出島にいるんだよな?それともここにいたりするのか?」

「知りません」

「知りません、って、お前……」

「そもそもボクはその“アヴリル”という人に会った事がないデス」

「そうなのか?外見はぷーこそっくりだから実は会ってたり……って、あんだけ雰囲気も性格も違うから間違えることはないか」

「ボクは間違いなく会ったことはないデス」

「そうか……ああ、まだロールアウトしてなかったんだな」

「違います」

「マリ、お前はどうなんだ?」

「……知らない」

「お前もそうなのか」


 うーむ、アヴリルの知名度低いな。



「ではマリ、ボク達も部屋に行きましょう」


 マリが小さく頷く。


「では三十分後に外で集合デス」

「わかった」


 そういや、トウを見てないな。

 選ばれなかったのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ