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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
110/247

101話 誰もが欲する魔法

「あー、ビックリした。一時は世界が終わったのかと思ったぜ」

「まあ、見るものが全部スケルトンじゃ、そう思うかもしれないわね」

「にしてもなんだよ、この魔法、使えねえな」

「進藤君が使いこなせてないだけじゃないの?」

「む、それは否定できない。もう一度試したいところだが、今使ったら間違いなくカオス落ちだな。まあ、それ以前にどうやって魔法使ったのかわからんけど」

「私が来た時にはもううなされてたから……あ、でも呪文のようなものが頭に流れてきたんでしょ?」

「そうなんだが、何言ってんだかさっぱりだった」

「ねえ、魔法が使えるようになったって言うのはやっぱり……」

「ああ、間違いなく魔王の奴の仕業だな。あいつ、前にご褒美をやるとか言ってずっと放置してたからもう忘れたんだと思ってたぜ。にしてよ、もっと他に方法はなかったのかよ、まったく。死ぬかと思ったぜ」

「さっきの魔法だけど、」

「うん?」

「あれ、“透視”の魔法よね?」

「そうかもな。にしても透け過ぎだってーの」

「透け過ぎ、とは?」

「え?」

「具体的にどこまでがよかったの?」

「な、何突然、な、なんでそんな軽蔑したような目で見るんだよ?」

「別に。ただ、あの魔法を使いこなせるようになったら進藤君、可愛い女の子を透視しまくるんだろうなあって、思っただけ」

「新田さん、俺を信用してくれよ」

「どの辺りを?」

「……おかしい、何故俺はこんなに信用ないんだ?」

「ふふ、冗談よ」

「ビックリしたな」

「……やったら、その目潰すから」

「へ?」

「ん?どうしたの?」


 どうしたの?じゃねえよ!

 さっきの呟き、しっかり聞こえたぞ。

 っていうか、聞こえるように言ったよな、絶対。

 間違いなく本気だな。

 だが、せっかく手に入れた魔法だ。そう簡単に手放してなるものか!

 って、べ、別に透視魔法だからじゃないぞ!


「ということで新田さん、この魔法を使いこなせるように協力してくれ」

「嫌よ」

「こんな事頼めるのは新田さんしかいないんだ」

「……」

「それに新田さんはマイナス面ばかりを見てるぜ」

「……どういうことよ?」

「さっきはいきなりだったからどんな効果があるのか調べる余裕がなかったが、わかったこともある。例えば、俺自身は透過してなかった。手は普通に見えたし、服も透けてなかったと思う」


 新田さんの様子を見ると興味を持ったようだ。気持ち軽蔑レベルが下がった気がする。


「続けて」

「部屋の物や壁も透けてなかった。あの魔法は俺以外の生物に対して働いていた気がする」

「……なるほど。つまり、現状、透視するには対象を直接見る必要がある、というわけね?」

「ああ」

「で、この魔法を制御していずれは障害物があろうが関係なく可愛い女の子の服を透視する力を手に入れる。そのために協力しろ、というわけね?」

「言ってねえ!」

「でもするんでしょ?」

「そんなわけねえだろ。大体一回使っただけで俺の魔粒子がほぼゼロになるんだぞ。で、こんなヘロヘロ状態だ」

「……まあ、それはそうかもね」

「俺がこの魔法に期待してるのはそんな事じゃない」

「じゃあなに?」

「この魔法の効果が生物限定だったとしてもだ、レイマのコアの場所を見つけられるんじゃないか?」


 あの大和静のようにな。


「……それは確かに」

「だろ?」


 よしっ、いいぞ!

 この調子で一気に丸め込……説得するぞ!


「今度遭遇してもまた助けが来るとは限らない、だろ?」

「そうね。今度も助けが必要になるとは限らないけど」


 出たよ、この負けず嫌いが。

 美人コンテストでランク外に落ちたのは俺じゃなくて、その勝気な性格を表に出すようになったからじゃないか?

 いや、この本性を見せるのは彼氏である俺だけか?


「何ニヤニヤしてるの?いやらしい」

「そんなんじゃねえよ。でだ、同じ勝つにしても楽に勝てるに越した事はないだろ?」

「そうね……でも、魔法を制御出来るようになったら大勢の女の子が進藤君の目に汚される危険も伴うのよね……」

「……あの、新田さん、俺の彼女だよね?それ、言い過ぎじゃね?」

「冗談よ」


 いや、冗談に聞こえないぞ。


「……私も女性の敵か。ま、別にいいか。わかったわ。私も女性の敵になるわ」

「いや、そこは『魔法制御の手伝いをするわ』だよね?」

「冗談よ」


 だから冗談に聞こえないんだよ。

 だがまあ、これで思う存分……


「イタズラで使ったら速攻で潰すから」

「え?」

「冗談よ」


 いや、絶対マジだ。


「で、具体的に私はどうすればいいの?」

「とりあえず今はない。まずどうやったら魔法が使えるのかを見つけてからだ」

「変な話よね」

「ああ、ほんと困ったぜ」

「その魔王に聞けないの?」

「無理だな。多分この状況を楽しんでるはずだ」

「じゃあ、キリンさんとかに聞いてみたら?」

「いや、それはしない、というか、俺が魔法を使えるようになった事は誰にも言わないで欲しいんだ」

「それは……」

「知られてない方が制限をかけられず透視し放題だから、という理由じゃないぞ」


 新田さんから小さな舌打ちが聞こえた。


 やっぱり言う気だったか。


「他に何か理由があるの?」


 なんで不貞腐れてんだよ。

 そんなに言いたかったのか?


「みーちゃんも内緒にして欲しいんだ。事後承諾で悪いんだが。もちろん、にゃっくやウリエルに話すのはいいぜ」


 みーちゃんのでっかい頭が頷いた。


「助かる」

「ウリエルって妹ちゃんを護衛してる子だっけ?」

「ああ。それで内緒にする理由だが、最近組織の動きが変なんだ」

「変?」

「悪い。それ以上は言えない」

「組織に不信感を持ってるって事ね。わかったわ」

「ありがとう。早速だけど、今回の魔粒子減少も知られてると思うから新田さんとの訓練に使ったって事でよろしく」

「それって……」


 新田さんが顔を赤くして睨む。


「まあ、減った理由は深く追求しないだろう……って、あれ、新田さん、ブレスレットは?」

「とっくに外したわよ。ある程度自分で把握出来るし、監視されるなんて御免だから」

「え?そんな勝手に……」

「違うわよ。お婆ちゃんが組織と話をつけてくれたの。それに私、組織の協力者ではあるけど組織の人間じゃないし」

「え?あれ?そうなんだ。俺、もう組織に入ってるもんだと思ってたぜ」

「お婆ちゃんが保留にしてるの」

「あ、そう」


 やっぱり、俺が感じてる組織のゴタゴタと関係があるのだろうか?

 って、考えても分かる訳ないな。



「そういえば新田さん、本当にラグナの腕上げたんだな。前は服の上にラグナを纏うの無理って言ってたよな?」

「うん、服の事気にしながら戦うのは大変だし、もっと上手くなりたいと思ったからお婆ちゃんや楓さんにも特訓に付き合ってもらってるの」

「なる程ね」


 新田さんが強くなるのはいい事だとは思うが、あやめ様、楓さん、猪突猛進の性格も直してくださいね。



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