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にゃっく・ザ・リッパー  作者: ねこおう
運命の迷宮編
107/247

98話 シエスvsせりす

「新田さん、ストップ!シエスもだ!」

「この子、進藤君の知り合い?」

「ああ」


 新田さんが構えを解くと同時にシエスも構えた盾を右肩にかけた。


「チトセ、何故ここにいるのデス?」

「それはこっちのセリフだ。まあいい。俺達はちょっと様子見にな」

「様子見、デスか?」

「ああ。俺はここでバイトしてることになってると、ちょっと前に知ったからな」

「そうでしたか」

「事務所開けたのはお前か?」

「そうデス。ショチョサンに頼まれたのデス」

「なんでそこ片言なんだよ?」

「進藤君、このスターライトナイトの格好してる人の紹介してくれないの?」

「え?あ、ああ。こいつはシエス。組織の一員だ。って、新田さんには言っていいんだよな?」

「問題ありません。ボクは王子シエス。普段は喫茶店ねこねこねの看板ウェイターデス」


 自分で看板っていうか?


「私は新田せりす。よろしくね。私のことはせりすでいいわよ。私もあなたのことをシエスって呼ぶわね」

「了解デス」

「その喫茶店、ねこねこね?ってどこにあるの?」

「幼稚園のそばだよ。たぶん新田さんが見たっていう喫茶店だ」

「ああ。そうなんだ」

「セリス。あなたの事はチトセから聞いてます」

「は?」

「へえ、どんな事かな?」

「いや、新田さん、俺、こいつになんも話してねえから」

「そうなの?でも聞きたいわ」

「いや……」


 こいつ、絶対ロクなこと言わねえぞ。


「新田セリス、七つの大罪を一身に背負った罪深き女」

「……」

「おい、おまえは何言ってんだ⁉︎」

「特にその色欲は凄まじく、何度もチトセをカオスに落とす寸前まで追いやった」

「……」

「な、何言ってんだ!このバカ!」

「……進藤君、この子、私に喧嘩を売ってるわよね?」


 目を細め、ちょっと顔を赤くした新田さんが再び構えを取るとそれに合わせてシエスも盾を構える。


「ちょっと待った!シエス!謝れ!」

「何故ボクが謝るのデス?ボクは入手した情報を伝えただけデス。この短時間でボクの得た情報が正しい事がわかりました。短気で無鉄砲で性欲が強いデス」

「いや、性欲はわからんだろう」

「他のは認めるんだ?」


 いや、それは事実だろ?

 とは言わない。言えない。

 ここは俺の死に場所じゃないからな!


「落ちつけよ、コイツはおかしな情報をインプットされてんだよ。恐らく、いや、間違いなくぷーこにな!」

「ロボットみたいな言い方ね」

「いや、コイツはロボットだ」

「え?」

「……セリスの攻撃色が消えるのを確認したデス」

「何だよ、攻撃色って、お前は感情が見えるのか?」

「進藤君!その話本当⁉︎」

「え?」

「本当にこの子、ロボットなの⁉︎」


 おお、シエスの言った通り怒りが収まった?

 好奇心が怒りを上回ったか!


「ああ、前のタイプは操縦席があってみーちゃんが操縦してたが、今度はAIで動いてるっぽい」

「すごいわ!」

「違います。ボクは本当に人間デス」

「性別はどっちに設定されてるの?見た目はどっちにも見えるけど、男の子?女の子?」

「男らしい」

「へえ!よく出来てるわね!」


 まじまじとシエスを観察する新田さん。

 その勢いに押されやや後退するシエス。


「ちょっと触らせて」


 新田さんがシエスの頬に触れようとすると、シエスはばっと後ろへ飛び退いた。


「セリス、ボクはあなたの性欲を受け止める気はありません」

「あ、このバカ!」

「……進藤君、ロボットならバラしてもいいわよね?」

「いや、ダメだろ!誰が修理代払うんだよ⁉︎」

「進藤君」

「何即答してんだよ⁉︎コイツ、絶対高いから!一生只働きかも知れねえ!」


 俺は新田さんを必死になだめた。


 シエスの奴、いや、おかしな情報をインプットしたぷーこか、今度会ったらお仕置きだな!



「で?じいさんに何を頼まれたって?」

「おじいさん?」

「ああ。実はここの所長は俺のじいさんらしい」

「らしいって……」

「俺も本人に直接聞いたわけじゃないし、両親も知らないんだ。だからこの事は内緒にしてくれ」

「わかったわ。進藤君のとこの家庭も複雑なのね」

「うーん……ちょっと前までは単純だったんだけどな。で、シエス、どうなんだ?」


「事務所の掃除に来たのデス。そしてこれをチトセに渡すように頼まれたのデス」


 それは鍵だった。


「この事務所の鍵か?」

「そうデス。表向きチトセはここでバイトしてる事になっているので」

「今頃かよ?」

「ショチョサンも知ったばかりだったのデス」

「おいおい、マジかよ?組織、大丈夫か?」

「組織は今、立て直しの最中なのデス。些細な事は後回しになっていたのデス」

「立て直し?」

「詳細は言えません」

「もしかしてアヴリルと関係あるのか?」

「アヴリルってぷーこちゃんにそっくりの人だっけ?」

「ああ。どうなんだ?」

「ボクには答える権限がありません」


 それは関係あるって事じゃないのか?


「まあ、給料は入ってるからいいか」

「この事務所は自由に使っていいそうデス」

「何⁉︎いや、でもいきなり自由に、って言われてもな……」

「他にここで働いてる人はいないの?」

「そうだ、俺、じいさんとぷーこしか見たことないぞ。他にいるのか?」

「今は誰もいません」

「つまり俺一人って事か」

「大丈夫デス。ボクも自由に使わせていただきますので」

「いや、何が大丈夫なのかわからんが」

「私もいいわよね?」

「……まあ、いいけど」

「チトセの性欲の上昇を確認」

「うるせえ!」


 このアホが余計な事を!新田さんが睨んでんじゃないか!


「じいさんはどうしたんだ?今どこにいるんだ?」

「わかりません。ボクは頼まれただけデスので」

「じゃあ、ぷーこは?」

「チトセ如きにはお答えできません」

「なんだと!」

「と、ぷーこ様に回答するように指示されておりました。『つきまとわれるのは迷惑だ』との事です」

「ふざけんな!つきまとわれて迷惑してんのは俺の方だろ!」

「ぷーこ様って……ぷーこちゃんて何者?」

「バカ者、と言いたいんだが、困った事に天才プログラマーらしいんだよなぁ」

「困ったわねえ」



「ここの賃貸料や電気代諸々は誰が払うんだ?」

「ショチョサンデス」

「ならいい」

「進藤君に払えなんて言わないでしょ」

「普通はな。だが、俺の周りには非常識な奴が多すぎるから確認するに越した事はない」

「あなたのおじいさんなんでしょ?」

「それは関係ないだろ。俺はじいさんとは二回くらいしか会った事ないし、会話もロクにしてないからな」

「そうなんだ」

「あ、そうだ。シエス、お前さっきどこ行ってたんだ?事務所にいなかったよな?」

「……」

「おい、シエス、何目をつぶってんだ?眠ったふりか?」

「理由をネットで検索してるのかも」

「いや、さすがにそれは……」


 と、シエスの目が開いた。


「チトセ」

「お、おう」

「さっきはお花を摘んでいました」

「な、なに?」

「……うん、検索してたわけじゃないみたいね」

「そうだな。もしそうならもっと上手い言い訳をしただろう。本当の事を言いたくないんだな?」

「本当の事を言ってますよ?」

「トイレなら外に出なくてもあるだろ?」

「気づきませんでした」

「……進藤君、この子、本当にロボット?」

「……いや、俺もちょっと自信なくなってきた」

「デスからボクは人間デス」



 事務所の掃除は三人で行った。

 一番手際が良かったのは意外にもシエスだった。


 いや、意外は失礼か。

 元々掃除のために来たんだし。


 三人の中で一番下手だったのは新田さんだった。

 どうやら新田さんは家事全般がダメなようだ。


「何?」

「え?」

「何か言いたそうに見えるけど?」

「いや、別に」

「……」


 マジで心読まれてる?

 それとも俺、そんなに顔に出やすいのか?



「シエス、ずっと気になってたんだが、その格好はなんだ?」

「先程セリスが言ったようにスターライトナイトデス」

「そうじゃなくてだな、なんでそんな格好で来たんだ?来る途中職質受けなかったか?」

「チトセとは違うのデス。チトセとは」

「失礼な奴だな!」


 もし本当ならそれだけコスプレが世間で認められてるって事か?


「そのスターライトナイトって何?マンガ?アニメ?」

「知らないわ」

「え?でもさっき……」

「言ってないわよ」


 いや、言っただろ?

 どうやら新田さんはスターライトナイトと口走ったことを自分の中でなかったことにしたようだ。

 シエスのコスプレ自体にはそれ程興味はなかったが、後で調べてみるか。


「実はこの盾、バッテリーなのデス」

「バッテリー?デカすぎないか?自分用か?」

「違います。バッテリーはあって困ることはありません。また盾の表面はソーラーパネルデス」

「そりゃ便利だな。だがデカすぎて目立つだろう?仮にも俺達は秘密の組織に属してるんだぞ?」

「心配無用デス」

「何?」

「確かにこのサイズのバッテリーを持ち歩くと目立ちます。デスから目立たないように盾に偽装しました。服装も合わせました。完璧デス」

「どこがだ!余計目立ってるわ!偽装するならギターケースとか他にあっただろう!」

「……そういう方法もなくはないデスね」

「それが普通だろ?」

「だが断る、デス」

「は?」

「……ああ」

「え?新田さん、今の『ああ』は何?」

「んー、何でもないわ」


 ……怪しい。



 掃除が終わり、事務所の鍵を閉めてビルを出ると目の前にタクシーが止まった。

 現れたドライバーには見覚えがあった。


「進藤君、この人、」

「ああ。前に訓練場へ行く時に乗ったタクシーの人だ」


 タクシードライバーは俺達に一礼すると、シエスを乗せ去って行った。


「ねえ、進藤君」

「ああ、そういう事だな」

「え?」

「シエスの奴もてっきり俺達と同じように電車で来たと思ってたが、タクシーで直接ここへ来たんだな。だからあいつは職質受けなかったんだ。だろ?」

「え?」

「あれ?言いたい事違った?」

「うん、シエスって喫茶店に帰るのよね?」

「ああ、そうだと思うけど?」

「乗せて貰えば良かったのに」

「……ああ‼︎そうだよ!なんだよ!」



 帰宅した後、スターライトナイトをネットで検索するといくつかヒットした。

 その中から、あのコスはとある十八禁ゲームに登場するキャラであることがわかった。


 成る程、言いたくないわけだ。

 これを知ってる新田さんて……いや、考えるのはやめてあげよう。


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