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父と母。

「……。」


俺が赤ちゃんだと言う事を理解してから数日が経った。

俺……ルナリーフは生まれ変わり、どうやらこの世にもう一度生を受けた様だ。

実際、この身体になってから俺は身動きがマトモに出来ないからじっと成長を待つしか出来ないのだ。

すげぇ地味。

まぁ、成長して楽に動ける様になるには恐らく一歳二歳になった辺りだろうか。

良く成長の過程等は覚えていない。


それと、俺の両親の名前をつい最近知った。

父の名はリーフ・サレブライト。

母の名はルナ・サレブライト。

俺の名はどうやら、この「リーフ」と「ルナ」を合わせて、「ルナリーフ」と言う名前になったらしい。

ふーむ、良い名だが安易ではないか?

直訳すると、月葉……だろうか?

俺は普通の勉学の知識しか持ち合わせていないからな、良く覚えていない。

うむ、日本語にしても英語にしても良い名だな。


そう言えば、前から思うのだが。


俺が偶に開いている窓から外を見ると、父リーフが木刀を持って素振りをしているのは何故だろう?

毎日毎日、百を超える回数を振り、その後に構えからの抜刀術の素振りを百回以上。

それから、自由に舞う様に剣を踊らせる。

……父は剣道でもやっているのだろうか?

そんな疑問を抱きながら、今日も俺は退屈な気持ちを父の素振りを見て紛らわしていた。




ビュンビュン、と言う風を切る音が、家の中に居る俺の耳にまで届いてくる。

その風を切る音の正体は、父が木刀を外で素振りをする音。

毎日毎日、怠けずに汗を大量に掻きながらも振り続けている。

基礎、応用、戦闘用。

この種類の素振りを毎日やっている。

……本当に、何故素振りをやっているのだろうか?

そんな疑問を抱きつつ、俺は父が剣を持って舞う姿を見る。


剣は上から叩き割る様に振り落とし、そのまま下方へと勢い良く振り下ろす。

其処から続けて下から上へと更に速さを加えて振り上げる。

その勢いで軽く宙に浮いた身体は、隙だらけとも言える体勢だったが、その隙を作らせない為なのか、その僅かに浮いた身体からも技を繰り出す。

身体を横に捻り、剣を身体ごと回転させる。

そのまま剣が対象の肩からを切り裂く様に斜めに振り下ろす。

その振り降ろした大勢が低い状態から、その低い状態を活かす様に足のバネを使って剣の切っ先を前方へ向けて突っ込む。

そしてその突進をした後に剣を片手持ちにして、身体を回転させて対象を後ろから切り裂くが如く何度も速く回転させる。

そして其処から……。



「……。」


その動きの一連を見て、俺は心から「凄い」と思った。

その動きの一つ一つには無駄が無いし、剣の動きが全て繋がっている。

全て、一連の動作の様に。

本当に、無駄が無い。

そう心から感嘆していると、ひょいっと俺の身体が持ち上げられた。


「ルナリーフ、パパを見ていたの?」


俺を持ち上げたのは、母のルナ。

今日もその白銀の髪と蒼い眼は輝いている。

その母の言葉に、俺は小さいながらも頷く。

……実際、他にやる事が無いんですよ。

そう理由を心中で付けながら。


「ふふ……パパはね?一流の剣士なのよ?」


……剣士?

俺は、母が言った「剣士」と言う言葉に興味を惹かれる。

その「剣士」と言うのは、何なのだろう?

剣道をやる者として凄いから、「剣士」なのか。

それとも……。


「魔王軍の敵をバッサバッサと薙ぎ倒してね?あれはもう凄かったわぁ……!」


……魔王軍?敵?

どう言う事だ?

この世界には……敵が居るのか?

この世界は、戦いを起こしているのか?

戦争?喧嘩?奪い合い?

……何にせよ、俺に情報が足りないのは確かだった。


「……お、ルナ。見てたのか?」


「そうよリーフ。この子とね?」


「ほーう?」


そう深く考えていると、リーフがタオルで流れる汗を拭いながらコチラへ歩いてきた。

父のリーフは、金の明るい髪と透き通る緑の眼を持った少し細身のイケメンだ。

クソ、イケメンめ。

……それはそうと、この世界は常識が有るのか、非常識に塗れているのか。

どっちなのか、早めに知りたい所だ。

転生と言ったら、大抵非現実的な世界へ行く物だが……俺はどうなのだろう。


「やっぱり、ルナリーフには剣士になって貰いたいな!俺としては!」


「いいえ?ルナリーフには魔法使いになって貰いましょう?私としての意見はそうです。」


……ん?


「いやいや……男なら剣士さ。」


「男でも魔法使いでしょう?」


「ん?」


「はい?」


……おい待てお前ら。

今、魔法使いとか非常に非現実的な単語が出て来たぞ?

この世界には、魔法の概念も有るのか?

……えっと、有るとして脳内の知識を纏めると。

この世界は、魔王軍と争っている。(現段階で理由は不明。)

その敵とやらを葬る為に、剣士になったり魔法使いになったりする……と言う事だろうか?

……うーむ。


「……ふふ、久しぶりに神具で勝負をしましょうか?」


「おーう、良いだろう……」


「ふふっ」


「ははっ」


二人が笑いながら火花を散らしあっている時、俺は更に来た単語に頭を抱える。

……新しい単語、神具。

これは……何だ?全く分からない。

実物を見たり、説明して貰うしか知識の付けようが無い。

しかし、神具か……言葉からして、道具の類か?


「来い!『デュランダル』!」


「来なさい!『蒼魂の魔法杖』!」


と、二人が叫んだ瞬間。

突然、眩しい光が走った。

その眩しさに思わず目を瞑る。

この光は、一体?

そんな疑問を新たに抱えながら、光がやっと収まったのを確認して、目を開く。

……すると。


「いやー……久方ぶりだな、デュランダル」


『本当、貴方は何時もそうですね。何でも放って。私の事はもっと大切にして下さいよ』


「俺の中に居るから大切にしてるに決まってんだろうが」


『……全く。』


父、リーフの右手には緑の刀身を持ち、柄に蒼い宝石が輝いている。

そして、全体的に金色の装飾が施されている、美しい両刃の剣が現れていた。

……更に。


「……あら、お久しぶり」


『そうねー。久しぶりー。』


「質、落ちては無いわよね?」


『あらー?私を何だと思っているの?』


「……ふふ、信じてるわよ」


『お任せ♪』


母、ルナの手には深い蒼の宝石の周囲に透明な氷晶が浮かび、その宝石の下には白い枝とも言える様な捻れた物が真っ直ぐに伸びている杖が現れていた。


……さて?



「っしゃぁ!行くぞ、デュランダル!」


『はい、マスター』


「行くわよ!蒼魂の魔法杖!」


『はーい!マスター!』


……これは、どう言う事だ?


俺は、目の前で起きた非現実的な事に、理解が追い付いて行かなかった。


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