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普通な俺の最期。

「ふぁぁー……っ」


帰宅路、俺はのんびりとノロノロ歩く中、呑気に大きい欠伸をしながら自宅へ向かっていた。

時間帯は既に遅めで、辺りは夕暮れの光に包まれて赤くなっていた。

……そんな間抜けな俺に、隣に居る少女は強めに小突きながら呆れた様に言葉を掛ける。


「本当、君は良く欠伸をするね……眠いの?」


そんな風に問い掛けて来るのは、俺の幼い頃からずっと共に居る幼馴染。

正確は優しく、正に理想の幼馴染のタイプと言った感じの少女。

一体、普通を凝縮した塊の俺と何時も一緒に居るのは何故なのだろうと疑問に思う事が多々。

その艶やかな黒髪は腰まで伸び、綺麗な紅い瞳は透き通り、しかも顔は完璧に整っている。

可愛いとも取れるし綺麗とも取れる美少女なのだ。

……それに引き換え。

俺は適当に長く伸ばした黒髪に、特に透き通ってる訳でもない普通の黒い眼。

顔に至っては、醜いとまでは言わないが、整っているとも言わない、フツメン。

……実際、月とスッポンくらい差が有るのだ。

いや、太陽とコケか。

おぉ、しっくりくる。

今日から俺はコケ……いや、それはそれで嫌だな。


「……どうしたの?ぼーっとして?」


「……あぁ、俺とお前の差は太陽とスッポン位離れてるんだなぁって」


「何その差!?」


「あー、コケは嫌だな……でもコケなんだよなぁ」


「何で自分を卑下してるの!?」


幼馴染……基、太陽は俺にどうしたのかと問い掛けて来たので、俺の今考えて感じた心境をそのまま伝えるとツッコミを入れられた。

根っからのツッコミタイプだなぁと内心思いつつ、心境をボソボソと呟く。

その呟きにすら反応してツッコミを入れる幼馴染(太陽)。

おぉ、本当にツッコミ上手いね。


「……はは、今日の授業は疲れたんだよ」


「えーっと、何有ったっけ?」


「最後は体育。バスケとか鬼畜だろうに」


俺が今、こんなに疲れている……ネガティブになっている理由は授業だと言うと、何の教科だと聞かれた。

その問いに対して俺は、体育でバスケをやったと答えてしみじみと授業の内容を思い出す。

やったのは至って簡単、五対五のゲームだ。

フォーメーションでは俺はセンター……詰まりはど真ん中。

普通に運動が上手くも下手でも無い俺はオフェンスやディフェンスに直ぐに付く為に頑張って、アッチに行ったりコッチに行ったり。

本当、疲れた。

……未だに何故チームを支えるセンターにしたのかが全く分からない。

普通の凡人の俺にやらせるより運動神経が良いヤツにやらせれば良いのに。


「……でも、君ってバスケ上手いよね?」


「いや?普通のレベルだな。一ゲームに何点か入れる程度。」


そう幼馴染は俺に確認する様に質問をしてくるが、俺はそれを速攻で否定する。

本当に普通のレベルなのだ。本当に。

精々、打ったシュートが運良く入っただけなのだ。

そう、運が良かっただけ。


「……君って、凄くオーバースペック何だけどなぁ」


「お、コンビニ。買い食いして行かないか?」


俺は丁度コンビニを見付け、幼馴染に買い食いをして行かないかと聞く。

うーむ、コンビニで買い食いと言ったら……唐揚げ、いや。夏だからアイスだな。


「……そうだね、行こっか」


「お、そっか。今回は奢ってやるよ」


幼馴染も行くと言う事で、俺はご満悦。

気まぐれで奢ってやると宣言しながら、俺達はコンビニへ入る。


コンビニの自動ドアへ近付くと、ウィーンと音を鳴らしながらドアが開く。

それと同時に、フワッと冷房の涼しい風が吹いてくる。


「あー極楽ぅ……」


「ほら、早く入りなよ」


その涼しさに極楽と顔に笑みを浮かべながら涼んでいると、幼馴染に早く行けと急かされた。

うん、確かに何時までも立ってたら迷惑だもんな。

そう思いながらスッとコンビニの中に入る。

すると更に冷房が効いた所になるので、本当に極楽……


「君は何を買うの?」


……っと、涼んでいると幼馴染がそう聞いてきた。

うーむ、夏だから無論熱い物は食べないから、冷たい物。

詰まりは、アイスを選択。


「アイスだな。」


「……じゃ、私もそうしようかな」


「お、そうか」


俺の選択に、幼馴染も便乗した様だ。

うん、夏はやっぱりアイスだよな。

と、思いながらアイス置かれているゾーンへと行く。

……そして、そのゾーンへ着くと。


「……迷う」


「……だね」


迷う。

アイスは様々な種類が有り、どれも目移りしてしまって困る物だ。

飲むアイスも良いが、パキッと折る奴も良いがな……。

今回は、スタンダードなのにするかな。


「じゃ、アイス棒にするかな」


迷った挙句、結果選んだのはアイス棒。当たり棒有り。

味はソーダ。スタンダードな物。

当たり棒が当たると良いなぁ。


「……じゃ、私もそれにしよっ」


すると、幼馴染も俺と同じアイス棒にした様だ。

味は、イチゴサワー。

おぉ、イチゴか。旨そうだな。

と、思いつつ溶けるとアイスが大変な事になるので、溶けない内に早めに会計を済ませ、包装を取ってアイスを食べ始める。

会計は無論俺が全払い。


「うん、旨い」


びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛

と言う程でも無いが、旨い。

ガリッとした食感から、中はかき氷の様なジャリジャリとした物になる。

それが冷たく、美味しいのでコレが進む。

夏だからと言うのも有るが。


「あ、お前も食う?」


「……え?」


ふと、幼馴染が俺のアイス棒の味も食べてみたいのかなと思ったので、そう聞いてみる。

すると、幼馴染は呆気に取られた表情をする。

……あれ?要らない?


「要らないなら要らないと……」


「た、食べる食べる!」


「お、そうか」


俺が要らないならそうと言えと言い切る前に、幼馴染は息を荒らげて食べると言う。

……そんな食いたいのか?

と、思いつつひょいっとアイス棒を幼馴染の方に向ける。


「じゃ、じゃぁ……頂きます」


「おう、召し上がれ?」


そう言う幼馴染に対し、俺はそう言って良いのか疑問に思いながら召し上がれと言う。

作ったの俺じゃないし。

幼馴染は、恐る恐ると言った感じだが、アイス棒にそーっと口を近付けて、パクリと食べた。


「……旨い?」


「……うん、美味しい」


「そっか」


俺が聞くと、幼馴染は美味しいと返す。

それに笑顔でそうかと返しながら、俺はアイス棒を再び口にする。

うむ、旨い。


「……赤信号、止まれっ」


「はいっ」


と、アイスを食いながら歩いていると、赤信号になっているのに気付いたので、止まれと注意をする。

……今思えば、あれって関節キスなのだが、良かったのだろうか?

良いか?……良いか。

役得役得。


「……そう言えばさ。」


「んー?」


幼馴染は、ふと思い出したかの様に俺に喋りかける。

それに反応しながら、俺はモグモグとアイス棒を食べる。

お、当たり棒だ!ラッキー!


「君って、好きな人居るの?」


「ん?居ねぇよ?」


当たり棒が当たった事を喜びながら、そのままパクパクと食べて……最後の一口を食べ終わる。

あー美味かった。


「……そ、そうなんだ」


「おう。お前は好きな人居んの?」


「ふぇっ!?」


……で、何で急に好きな人が居るとか聞いてきたんだろう。

普通の俺にそう言う恋仲の人が出来る訳ないとは悟っているので、最初っから諦めている。

なので、好きな人など居る訳が無い。

それに、恋など経験した事は無いし。

と、思いつつ俺は幼馴染に好きな人は居るのかと聞く。


「え?居んの?」


「そ、それはそのぉ……」


そう会話をしていると、信号が青になった。

しかし、こう口篭ると言う事は脈アリだな。

誰だよソイツ。羨ましい。


「っ、それは後でっ!」


「えー?良いだろー?」


急に止まり、幼馴染はコチラを顔を赤くしながら睨み、そう後に伸ばそうとする。

それを良いだろと俺は説得しようとする。


「と、とにかく駄目っ!」


「えー、別に良いだ……ん?」


赤面してとにかく駄目と言う幼馴染に、俺は諦めずに言わせようとした時、違和感……と言うか、危機感が働いた。

遠くからブロロロロロ……と言う低いエンジン音が聞こえてきた。

車がコチラに走ってきているのだろう。

事実、それだけなら良いのだ。

何せ今は青信号。

歩行者優先だから、それを轢いて行く様な事が無い様に自動車側は赤信号になる。

……筈、なのだが。


「だ、だってそれは……」


俺は、その車の方へ視線を向ける。

その車は大型トラックで、未だに低いエンジン音を鳴らしながらコチラへ走っている。

……其処で俺が違和感に感じたのは。

何故減速をしないのか、と言う事だ。

トラックなら、少しは早めにブレーキで減速を始めても良い筈だ。

なのに、止まらない。

寧ろ加速している様な……!?

其処まで思考が廻った時、俺は反射的に操縦席を見る。


「……っ、駄目!言えないよ!」


……操縦者は、ハンドルに身を預ける様に前倒れになっていた。

つまり、睡眠運転。

ブレーキは掛からない。

そしてその進路方向は……俺達。

其処まで思考が廻り、状況を完全に把握した時には俺は反射的に、無意識に身体が動いていた。


「だって、君っ……え?」


俺は強く、出来るだけ遠くへ幼馴染を飛ばすように手で突き飛ばした。

トラックに巻き込まれない様に、轢かれない様に。

生憎、抱き抱えて逃げると言う選択肢も有ったが、何せ俺は普通の高校生。

腕力は人並み、体力も人並み。

もう其処までトラックが迫っているのに二人共助かれるなんて、そんな技は持ち合わせていないからだ。

だから……押した。

幼馴染は、助かるだろう。

だけど____



もう、直ぐ其処までトラックは迫って来ている。



____俺は、無理かもな。

そんな事を思いつつ、チラリと幼馴染を見る。

……呆気に取られた、状況を把握出来ていない、間抜けな顔。


「……はは」


思わず、笑う。

実際、笑うしか無かった。

____出来れば、生きてます様に。

まぁ、助からないかも、だけど。

そんな儚い願いと、重い事実を脳裏に浮かべながら……。


幼馴染よ、立派に生きろ。


そんな事を幼馴染に願う。


そして、それを願い終えた瞬間____



ガンっ!!



____身体に馬鹿デカイ衝撃が走ると同時に、俺の意識は途絶えた。





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