やって来ました‼冒険者ギルド
トコトコと、可愛らしい足取りで、冒険者ギルドにやって来る10歳の少年。
別に気負うこともなく入って行く。
「お!配達か?」顔見知りのベテラン冒険者が尋ねてくる。
「いや、違うよ。10歳になったから冒険者始めようと思ってね♪」
「坊主なら、器用なんだし自分で店でも構えた方が儲かるんじゃないのか?」
「世の中、お金だけじゃないよ?」
「まぁ、坊主にはあんまり必要は無さそうだな。」
「そんなことより、そろそろ坊主は止めて欲しいんだけど?」
「う~ん、坊主を名前で呼ぶのは違和感あるんだよなぁ~」
「はぁ~、分かったよ。なら、同じランクになったら名前で呼んでよ?」
「ふっ、分かったよ坊主!怪我だけはするなよな。」
「ありがとう!あんまり待たせないから期待していてね」
「ふぅ……心配してくれるよい人だから、あっさり追い抜くのは気が重いなぁ」そう、彼はベテラン上級冒険者であるのだが、ライルからすれば、追い抜くのはやろうとすれば、1日で済む程度なのだ。
だからといって一日でランクを抜いてしまえば、目立ってしまい自由に動けているメリットを逃してしまい、尚且つ些細な意地や見栄で自分の子供のように心配してくれている相手のプライドを傷付け事になるだろう。
状況を見つつやっていこうと思う。
それではと、登録しようとした。のであるのだが、以降もほぼ全ての冒険者に声を掛けられ、短いながら対応をしていく…………
いうまでもなく、冒険者にとって道具屋は身近な存在であり、皆が坊主にお世話になっていたりするのだ。
具体的には、ライルからすれば失敗してしまったゴミやガラクタに近い薬や物を押し付ける様に渡しているのだが、お客はおまけと受け取り、嬉し顔である。
お客も失敗作として渡されたそれが、言葉通りに失敗作と思っておらず、試作品と思っており、実際にそれで助かった例もあったりする。
なんだかんだと、時間を取られ気が付いたら…………、
新規冒険者登録受付時間を過ぎていた。考えてみれば分かる事だが、夕方から登録して始める新人など普通はいない。
ライルなら、可能なのだが、ライル一人の為にギルドがやっているわけでもなく、家族が心配するので何もせず帰宅するのだった…………
その姿を見て、ギルドの皆が思う。
『坊主は何のために来たのだろうか?』奇しくも、本人含めたギルドにいる皆が寸分違わず思ったのだった。