死後
という訳で俺は死の世界へと旅立っていた。
いや、死んだ自分の遺体の周りに浮かんでいるだけである。
死んだのは初めてなのでどうしたら良いのか分からず、迎えが来るのをしばらく何もせず佇んでいた。
そこへ、「初めまして!新明 高光君」と現れた光の存在がいた。
俺は期待通り迎えが来たことにホッとして、
「初めまして、高光です。貴方は?」と応えた。
「おぉ~!冷静だね!姿は見えてないよね?なら名前を教えても仕方無くないか?」
「呼び掛ける時、ねえ、ちょっとより良いと思わない?」
「そうかもしれないね♪では、神様と呼んでくれ」
「結局は神様かぁ 」今のやり取りはなんだったのだろう?
ここに二人?人と神の間には軽い認識の違いがあり、神の場合は、何々の神と呼ばれる。神自身も名前を必要だと感じる事がなく、実際名前が無いのである。それとは逆に人の場合は呼称で呼ぶのが、普通だったからだ。
「それで、君にはそのままの魂の状態で転生してもらう事になったよ。」
「どういう事ですか?」
「うん、通常は魂って生きている内にすり減ったり、汚れていくんだけど、高光君にはそれが無く生まれたままの無垢な状態なんだよ。だから、転生する為に魂を浄化する必要がなく、貯めた魂の力を減らさずに次へと転生が可能なんだ。」
「それって、お得に生まれ変われるって事ですか?」
「まぁ、早く説明するとそうなるよ。」
「それで、高光君の魂の状態・履歴を調べて見て分かった事なんだけど、明らかに献血の回数多いよね?」
「献血は趣味だ!俺としては少い位だと思っている。」
「いや、あのね?献血は年に6回までなんだよ。それなのに、毎月の様に献血してるよね?さらに、暇なときは態々、病院で緊急輸血待ちという信じられない事もしてるよね。」
「毎月では少いんだよね。」
「いや、多いから……それでね、君の血を輸血した人は全快したという嘘みたいな話があるんだよ。さらに、献血センターから話が広がり始めて病院内までも広がり、高光君の血にはある種のプレミアみたいな扱いで病気が重い患者に優先して使われていたんだよ。」
「へぇ⤴初めて知ったよ。」
「まぁ、そういう患者や裏話はありえないし、教えて貰えないからね。」
「人の役になる趣味で良かったよ。」
「献血は趣味と言える物でもないし、人の役という物より人助けになるよ?」
「好きでやっていることだ。困っている人を助けるのも、自分が困っている人を見るのが嫌なだけだ。人の役に立つつもりは断じてない、自分のやりたいようにやる。それだけだ。」
「うん、分かったよ。それでね、どうしたい?」
「?(・_・?)良く分からないんだが?」
「実は高光君は転生初めてじゃないんだよ。履歴に因ると、どうやら以前の記憶は封印というのかな消してあるだけの様で魂の浄化は魂が生まれてから一度もしてないみたいだね」
「そうなのか?」
「これって凄い事でもう少しで神の域に達するぐらい魂も鍛えられている様だよ。でね、今後どうするかある程度選べるよ。生まれる世界や記憶の消去など一先ず転生しないで守護霊として過ごすとか、天界でやりたい事をやってノンビリ過ごすとかね」
「特に希望とかないんだが……」
「まぁ、ゆっくり考えても良いよ。でも、タイミングによっては無理な条件もあったりするから早い方が叶えやすいけどね。」
「分かった。少し、一人で考えてみます。」