大嫌い...嫌い。好き。
私は、今年で高校ニ年生の立川日向。もう高校ニ年生だと言うのに、未だに経験していないことがある。そう、それは恋。
友達の香純は、一年生の時に一つ年上の先輩と今も続いている。
「いいなー。香純。私も好きな人欲しいよ」お昼休み、いつものように香純とお弁当を食べながら話していた。
「すぐできるよ。日向可愛いんだから」香純が言ってきた。(可愛いのは、香純でしょ、ばか)私は、心の中でそう呟いた。
休み時間も終わり、私は掃除当番だったので残って、教室を掃除していた。
しかし、恋のことを考えていると、ぼーっとしてほうきを持ちながら立ち止まってしまった。(んーどうしたら私にも...)
私は、話しかけられていることにも気づかずにずっとぼーっとしてしまった。
「ね...」「ねえ...」「ねえ!」
「は、はい!ごめんなさい!」私は、やっとそのことに気づき、思わず頭を下げてしまった。
「何でもいいけど、そこ」
「そこ...?」
私は、目の前にいる男子が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。
「そこ通りたいんだけど、邪魔。」
「え?」
私は、言われた言葉に驚いたけれど、ドアの前で立ち止まっていることに気づいた。
「ごめんなさい!」そう言うと
「だから、謝んなくていいからさ、どいてくんね?」その人は、不機嫌そうに言ってきたので、私は思わず怖くて無言でその場から離れた。
その男子も、無言で空いた道をだるそうに歩いて帰って行った。
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それから、教室で会うたびに私は、あの時の男子の顔を思い出して、自然と避けていた。
「あんた、何があったか知らないけどさ、なかなかいないよ?あんなイケメンを避ける子なんて」香純がそう言ってきた。
「ど、どこがイケメン?ただの怖い人だよ、あんなの」私が、そう言うと聴こえたのか、あいつが睨んでこっちを見てきた。
私は、すぐに目を逸らした。
「全く、あんたは、本当変わってる。罰当たるよー?(笑)」
「もう当たったのよ!」
あいつのどこがイケメンなの。あいつに寄り付く女子の方がよっぽどおかしい。あんな目見たことない。あんな冷め切った目。人間じゃない。
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学校も終わり、今日は掃除当番ではないためすぐに帰ることにした。準備をして、香純は彼氏さんと帰るため一人で帰ることにした。
ドアを出ようとすると、
「ねえ」後ろから聴いたことのあるような声が聴こえて私は、震え上がった。
「な、何よ。また邪魔なわけ?今私も出るんだからそのあと出ればいいでしょ?」
私は、そいつの目を見ずに言い放った。
「いや、俺今日掃除当番なんだけど、用事あるから変わってくんね?」
そいつが言い出した。
「は?何で私が!...」と、言い返そうとすると「いいだろ、暇そうだし」と、私にほうきを渡しいつの間にか消えていた。
「ちょっ!」(何で、押し付けんのよ。しかも私まで、ほうき受け取ってるし...)
なんなの。嫌い。むかつく。
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私は、渋々、掃除を済ませ、一人寂しく帰ることにした。
一階に着き、入り口に向かおうとすると、
「いいの?バレたら退学だよ?」
女の人の声がどこからか聴こえてきた。
(誰だろー。もうみんな帰ったはず...)
「いいよ、そんなの。沙月さんと会えるなら退学でも何でもなればいい...」
(ん?聴いたことあるような声...)
私は、気になって立ち止まってしまった。
二人の声は、そう保健室から聴こえた。
そして、沙月さんは、保健室の先生。
と...相手は、あいつ!?
私は、つい声を少し出してしまった。
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「ほら、誰かいる...」
「いいって、気にすんなよ」
私は、すぐに口を抑え、保健室の近くの壁にもたれ掛かりながら座り込んだ。
「熱くなってきた...」
「いいよ、声だして...」
「しゅ、柊くんたら...」
ちょ、ちょっと!私に掃除当番押し付けといて、ハレンチな!!しかも、先生!?最低。最低。最低あほ、ばかやろう!
私は、今までの怒りと今の状況に腹立たしくなった。
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「何やってんの?こっそり人の話聴いてるとか最低じゃない?」
私が、膝を抱えて座り込んでいると、あいつが上からすごく睨んで言ってきた。
「ど、どっちが最低よ!先生とハレンチなことして、バレないとでも思ってんの?」
「ハレンチ?何言ってんの?」
「は?だって、熱いとか、声出していいとか、言ってたじゃない」
私が、そう言うと、後ろから
「はは(笑)私が少し熱でて具合悪かったから、眞崎くんが面倒見てくれてただけよ」沙月先生が言ってきた。
「え?だって、声出していいって」
「声出した方が熱逃げて、辛くないだろ」
は?は?何それ。
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「ばかだけじゃなくて、変態なんだな、お前」
そう言って、また冷たい目をして私の横を通り過ぎて行った。
なんなの本当。嫌い。私あいつ嫌い。
「あなたも、眞崎くんのこと好きなの?
でもだめねー、あなたみたいな子は、眞崎くんタイプじゃないわー。むしろ真逆ね!」沙月先生が、ふっと笑いながら言ってきた。
「私は、好きじゃありません。あんなの。
私だって真逆ですよ。じゃあ帰ります」
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あいつ、私の世界で一番嫌いなやつは、眞崎柊て言うんだ。同じクラスとか最悪だよ。
「ねえ、日向」「何?」「眞崎くん、可愛い子だったら一緒に寝てくれるらしいよ?」
「は?何急に、香純」
休み時間、意味のわからないことを香純が聞いてきた。
「私、誘ってみようかなー?」
「か、香純?あんた、彼氏いるじゃん」
「えーだって、眞崎くんだよ?本気で想ってくれなくても遊びだけで幸せかもよ」
「あんた、ばか?彼氏が可哀想」
「ふふ(笑)嘘だよー。思った通りのこと言って笑っちゃった」
「なによー。からかわないで」
私が笑って言うと「そうだ!日向相手いないんだし、寝てもらえば?恋の勉強」
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「やめてよ!あり得ない!私あいつ嫌いなの知ってるでしょー?怒るよ」
「いいじゃん、恋知りたいんでしょ?」
「あいつじゃなくたっているでしょ?」
私たちが、話していると
「俺がどしたって?」あいつが近くに来て、またあの冷たい目で言ってきた。
「あ、あんたなんて言ってないじゃ...」
私が言おうとすると
「ああ、眞崎くん!あのね、この子、日向がね、恋知りたいんだってー」
香純が、横切って言ってきた。
「ちょ、ちょっと香純?」
「お前、どこまできもいの。あ、だから変態なのか」あいつが、言ってきた。
「ちょ、なんなの。あんたどこまで最低なの」
私が、怒って言うと
「あんたとなら、いいよ。寝ても」
あいつが、指を指して言ってきた。
「え...?」
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「わ、私!?」
あいつが、指を刺したのは、そう。
香純だった。
「あんたなら、気が合いそう」
香純の顔が一気に赤くなっていった。
「ちょ、香純は彼氏いるの!かっこいい。あんたなんて比にならないくらい。香純はあんたじゃもったいない!」
私は、何故かムキになってしまった。
「ふーん」そう言って、あいつは、どっかに行ってしまった。
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「ははっ何ムキになってるの?日向
ちょっと驚いたけど、私ちゃんと
彼氏好きよ?」
「ならよかった!あんなんに取られたら
たまったもんじゃない」
私の大切な友達に。
その時、香純の言葉が頭をよぎった。
ー可愛い子とだったら、寝るらしいー
なによ。どうせ、私は可愛くないよ。しかも、寝よって言われても絶対断るんだから。断ろうと...断ってやろうと、思ってたのに...。
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何で同じクラスなの。早く三年生になりたい。早くあいつから離れたい。
視界に入らないようにしてても、あいつは人気だから、どうしても入ってくる。
「柊くん、今日は?私の日でしょ?」
「えー私だってばー」
化粧が濃くて、スカートが異様に短くて、あいつに気に入ってもらおうとしてるんだろうけど、あいつのどこがいいわけ。ばかじゃないの。
「今度な。今日は予定入ってんだよ」
あいつも、慣れてるかのように言っちゃって。「ええ、今日は誰?」
女子がそう聞いた後、あいつはこっちに近づいてきた。
「今日は、この子」あいつが初めて笑った。笑った顔を初めて見た。そして、肩に手を回して女子に向かって言っている。
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香純の肩に。
「え、眞崎くん?」
そう言って、香純に抱きついて香純の背中越しで
目だけで女子の方をみて「ごめんね」って可愛く言い出した。女子は、それは仕方ないというように、「じゃあ今度は、私だよ」と言って帰って行った。
「ちょ、香純から離れなさいよ」私は、突き放そうとそう言った。あいつは「わりぃ」と珍しく素直だと思ったら、香純の髪をかき分け耳に軽くキスをした。「ちょ、あんた!」香純の顔は、また一気に赤くなっていった。「あんた、いい加減に...」
私が、怒ろうとすると、「悪かったって。俺誰とも遊んでねーし、女どもがうざかったから」そう、あいつが言った。
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「だって、今日は私でしょ?とか言われたじゃない」
「知らねーよ。勝手に言ってるだけだろ。まじで勘弁なんだよ、くそ」
意味わからない。なに、こいつ。
「ご、ごめんね?私もみんなに言いふらしちゃったかもしれないから...」
香純は、いきなり謝っていた。
「香純何謝ってるの?」
「いいよ、別に。あんたもがやがやうるさいな」
香純にそう言ったあと、私に言ってきた。「な、なによ、悪いのあんたでしょ?」
私がそう言うと
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バン!!!
壁際にいた私の方を向いて、そばの壁をドンと、あと数センチで唇と唇がくっついてしまう位置まであいつの顔が近づいてきた。
「うるせーよ。あんたも俺とヤりたいの?」私は、何も言えなかった。何故か、わからない。何も出てこなかった。あいつは、そう言い放つと、さっさと教室から出て行った。
「眞崎くん、日向にちゅーするかと思った」香純も、その場でぼーっとしていた。「本当なんなの。むかつく...」しかし、言葉とは裏腹に私は、自分の顔が赤くなっていくのがわかった。
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「好きだったりして。日向、眞埼くんのこと」
香純が急に言ってきた。
「は?だから、何回言えばわかるのよ」
「だって顔赤いよ?ちゅーしてほしかったね」
香純は、にやにやしてからかってきた。
「そりゃ、あれはあいつじゃなくても、驚いて赤くなるわ!あいつにファーストキスを奪われちゃ、たまったもんじゃないわ」私は、怒って帰った。
―あんたも、俺とヤりたいの?―
「いいよ、あんたとなら、あんた可愛いし
ほら、早くこっちにこいよ」
「いや!!!」
私は、ベッドから落ちてしまった。ゆ、夢?何ていう夢を見てしまったのだ。朝から最悪だ。あれは、保健室?確かにあいつと私で・・・
「って私何、夢を再確認しようとしてるの。ばか・・・」
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「今日、ヤツれてない?日向」
「そう?でも、疲れてるかも・・・」
あんな夢をみたなんて、香純にも言えない。
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今日もあいつの周りには、女子だらけ。そして、女子だけではなかった。
「よー柊、今日どこ行く?カラオケっしょ」男子も周りには多かった。
「えーなら私も行くー」
「いいよ、でも俺ちょっと用事あるからさ、先行っててくれ」
「また沙月ー?(笑)」
「うっせ(笑)呼び捨てしてんじゃねー」
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「お前、目立つんだからバレるぞ」
「だから別にバレてもいいって
言ってんだろー」
「もーう、沙月ばっかずるい。私も相手してよね?」
「おうおう、わりぃな。今度な」
沙月...?沙月って保健室の沙月先生?やっぱりあれは、嘘じゃなかったんだ。てか今度って何よ。何もないとか言って、慣れてるじゃない。
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「沙月って沙月先生だよね?
眞崎くん...まじ?」香純は、目を見開いて言ってきた。
「そうじゃん?知らないよ、別に。てか、何もないとか言って女慣れしすぎだっちゅーの」
「ふふ」香純が、私をみて笑ってきた。
「何?」「何でもないよ」
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「あ、お前らもカラオケ行く?」
さっきまであいつといた男子がそう言ってきた。
「い、行くわ...」
私が断ろうとすると「行く行くー!もちろん行くよ、日向も行くから」
香純が言い出した。
なんてこと...嫌いなあいつがいるカラオケなんて行きたく...ない。
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「あいつ来るまで歌ってよー」
私たちは、カラオケに来た。
次は、私の番。あいつがいないから思い切り歌えるー!と私は張り切って歌っていた。
思い切り歌った私は、席に戻った。
「すっげー顔してたよ」
え?隣にあいつがいた。
「いつからいたの?」「最初らへん」
最悪。最悪。あいつがいないと思って思い切り歌い切ってすっきりして、席に戻ったら隣に座ってた。
「よ、おせえよ。お前。沙月とかまじずりぃ。ちょー美人じゃんか」
「うっせ(笑)だから呼び捨てすんな」
「お前歌えよ」
「あ、わりぃ今日はいいわ。疲れた(笑)」「うぜー(笑)ヤり疲れかよ(笑)」
「はは(笑)」
軽すぎる。あいつ。でも
ーあなたも、眞崎くんのことが好きなの?ー沙月先生が言った言葉が、今更になって理解できた。両想いなんだ。
「まあ、私には関係ないけど」
「そうだよ。お前には関係ない。だからいちいち突っかかってくんな」
あいつは、私にだけ聴こえるように、ぼそっと言ってきた。
「は?本当なんなの。あんたなんか嫌い」私は大きな声で言ってしまった。我に返ると、皆が私の方を見ているのがわかった。
「日向?」香純が心配そうに言ってきた。
「俺もあんた嫌...」
私は、鞄を持つとあいつの頭に思い切りぶつけて、部屋から出て行った。
「ちょ、日向?」
「何あれー感じ悪くない?大丈夫?柊」
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何故か知らないけれど、私は涙を流していた。悔しいから?かな。あいつがモテるから?あいつが嫌いで嫌いで仕方ないから?何も言い返せない自分に腹が立つから?
全部かな。
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「あら、あなた何で泣いてるの?」
目の前には、沙月先生がいた。
「何でもないです。それより、付き合ってるなら、あいつのこと好きなら、性格どうにかした方がいいんじゃないですか?」
「あら、私には結構優しいのよ?今日だってたくさん可愛がってもらえた」
沙月先生は、にやっと笑った。
「バラしますよ。あいつのこと見たくもないから退学が有難い」
「あなたにそんなことできる?私はできないと思うわ(笑)」
「そ、そんなこと...」
私が言い切る前に「何故なら、あなたももう眞崎くんの虜になっているから。まあでも言ってもいいわ。それでも眞崎くんは、私の所に来るって言ってるし」
「だから!私は!」
私は、今にも沙月先生を突き飛ばそうとした瞬間
ーやめろよ。お前には関係ないって言ってんのがわかんねーのかよー
あいつが間に入ってきた。
「私は、私は何も...」
あいつは、私の前で見せつけるかのように、沙月先生にキスをした。
「俺は、沙月が好きだ」
ズキッ。ドクドクドク...
私は、その場から離れた。もうなんなの。どうして涙が止まらないの。
嫌い。大嫌い。
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その日から、学校であいつに会ってもお互い他人のように、何も言わずにすれ違うだけであった。
「ねえ、彼氏と別れた・・・」香純は、急に言ってきた。
「え・・・?」私は、驚いた。だって、あれだけ好きって言ってたのに。
「私、好きな人できたの・・・」その言葉にさらに、驚いて固まってしまった。
「ねえ、もしかしてさ、あいつじゃないよね?」
「・・・そうだよ」香純は、少し俯いてぼそっと言いだした。
「やめなよ、あいつ沙月先生のこと・・・」
「わかってる、でも好きになっちゃったの」
「あいつなんか好きになっても、傷つくだけだよ」
「わかって・・・」香純が言い終える前に「わかってない!!」
私は大きな声を出して言った。
「関係なくない?日向がそんなにムキになることなくない?」
「・・・心配なんだよ・・・」
私は、自分の席に戻っていった。私も、なぜあいつのことになると、こんなにもムキになってしまう自分がいるのかわからなかった。でも、香純に関係ないと言われたことがとても悔しかった。
休み時間、私は珍しく自分の席でぼうっとしていた。
「ねえ」久しぶりに、あいつが話をかけてきた。
「何?」私も、珍しく素直に答えてみた。
「元気ないね」
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あいつの口から、聴かれないような言葉が出てきて、私は一瞬固まってしまった。
「うるさい・・・誰のせいだと思ってんのよ、ばか」
「ごめん・・・」そう言って、あいつは自分の席に戻った。
目も合わせようとしなかったので、あいつの表情まではわからなかったけれど、確かにあいつはぼそっとそう言った。
「なんなの、いきなり」
--------------------------------------------
「日向」一週間程経った頃、香純がいつものように私に話かけてきた。「何?」私は、返事をした。
「眞埼くんが、考えてくれるって・・・」
もう、驚かなかった。なぜなら、あれから香純は毎日、あいつにアピールしては、一生懸命頑張っていたから。
「そう」
「まだ怒ってる?」
「怒ってない」怒る気にすらならなかった。香純は本気だった。中学の時からそばにいたから、わかった。
「今度、四人で遊ぶことになったんだけどさ、日向来ないよね?」
「いいよ、行くよ」「え?」
あいつの事は嫌いだけど、それ以上に、香純のことが好きだから。応援したかった。
-----------------------------------------------
あいつと香純とクラスの男子と私で、遊園地に来た。
「遊園地なんて何年ぶり?」香純はとても喜んでいた。
「ふぁ~」あいつは、あくびをしている。
でも、一つわかったことがあった。今日はみんな私服で、あいつはお洒落だ。背が182cm程あって、スタイルがいい。
香純は、すぐにあいつの隣に行った。並んでいる姿はまさに、カップルそのものであった。「すっごくお似合いだ・・・」
「何か言った?日向」香純は、笑顔で言ってきた。
「何でもない」
自然と笑っている自分がいた。
---------------------------------------------
休憩中。
「私トイレ行ってくるね」香純が言った。
「いってらっしゃい」
そのあと、もう一人の男子もトイレに行ったので、私とあいつで待っていた。
「なんか、久々楽しいかも・・・」
あいつがまた、ぼそっと言った。「うん・・・」
私も素直にそう答えた。
「お前、俺のこと嫌いだろ」
「うん・・・」
「はっきりいうんだな」
「私、ちょっと飲み物買ってくるね」私は、空気に耐えられなくて、ごまかして立ち上がった。同時に、走ってきた中学生にぶつかりそうになった。
ー危ない!!!!!-
ガタッ!!!
私がぶつかって、倒れそうになった時に、あいつが私を抱えてくれていた。「ご、ごめん」私は、一気に顔が赤くなっていった。
あいつは、低い声でまた耳元で、ぼそっと「気をつけろよまじで」と言った。
「ひ、なた・・?」
トイレから帰ってきた香純がタイミング悪く、こっちを見ていた。私は、急いであいつから離れて、「わ、私が人にぶつかって、それで・・・」
「うそつき!!!日向あんたも眞埼くんが好きなんじゃんばか!」そう言って、香純は走って行ってしまった。
私が追いかけようとすると、「あんたが行ってもあれだから」そう言って、あいつは、もう一人の男子に行かせた。
「わりぃ」
私たちは、座り直した。そして、いきなりあいつがぽくないことを言ってきた。「何であんたが謝るの。こっちこそごめんね・・・」
「帰るか、送るよ」「うん」
私たちは、帰ることにした。
「ねえ、あんたいつから沙月先生が好きなの?」
「わかんねえ、あんな人を好きになったことねえし」
見たことがないあいつの顔に、そんなに悪いやつでもないのかもって思った。
「でも・・・沙月、あいつ竹川先生が好きで、俺なんかただ遊ばれてるだけなんだよな・・・」
何を言っていいかわからなかったけれど、でも私はこの瞬間、支えてあげたいって思った。
ー大丈夫だよ、あんたは。もっといい子がたくさんいると思うー
「・・・」あいつは、何も話さなかった。
でも、それでもいいと思った。
「香純、いい子だよ。私のおすすめ!」
「俺、あんたのこと嫌いって言ったけど、そうでもねえかも・・・」
「え・・・?」私は、驚いた。
あいつは、少し顔を赤くして「あんたのこと、嫌いじゃない・・・」
「・・・」私は、何も言えなかった。
「な、何か言えよ!!くそ」
「だ、だってあんたらしくないこというから・・・」
私も顔が赤くなった。
「うっせ!」あ、またあいつの顔が赤くなっていく。
だから「私も、あんたのこと案外いいやつなんだって思った」
いじめたくなってしまう。
「ばーか」「はは(笑)もしかして照れてる?(笑)」
「いいから、早く行くぞ」
「はーい」
----------------------------------------
誤解を解くためにも、香純にしっかり話しをしなくちゃ。
「あの・・・」
「あ、おはよ日向。昨日は、ごめんね?」
「い、いいよ!こっちこそごめん。本当にあの時は、助け・・・」
私は、いつもの香純に戻っていたので、喜んで言うとすると
「言ってくれればよかったのに。まあバレバレだったけど」遮るように、香純が言ってきた。
「私、あいつのこと好きじゃないよ?ちゃんと香純のこと応援するよ?」
-------------------------------------------------
「だったら間違いでも何でも私の前で、眞崎くんと仲良くしないで」
「ご、ごめんね?そうだよね。ごめん」
私は、豹変した香純が怖かった。香純だけは失いたくなかった。中学の時、なかなか友達ができない私に、唯一話しかけてくれて、友達になってくれた大切な存在だから。
「分かればいいの」いつもの、香純に戻った。
----------------------------------------
「ねえ、あんた今日暇?掃除・・・」
「今日無理」
あいつに話しかけられたけれど、私は即答えてその場から離れた。
それからも毎日、すれ違っても前みたいに他人のように振る舞う。
ときどき、話かけられる時があるけれど、もちろん無視をして、私が他の子に話しかける。
----------------------------------------
ある日、また話しかけられた。けれど、無視をして通りすがろうとした時、あいつは私の腕を強く掴んで引き戻した。
「痛いんだけど・・・」
「あんた、前より嫌な奴になった」
「あんたに用はないの。離してくれる?」
あいつは、何も言わず私の腕を離して、怒ったように、早歩きで通り過ぎて行った。
これで、いいんだよね。
ズキッ。どうして、心が痛むの。香純のために大切な香純のためならこれが正解なの。それなのに、気づいたら一粒の涙が頬を伝っていた。
----------------------------------------
「ねえ、日向」笑顔で、香純が言ってくる。
「なーに?」私も笑顔で返す。
「今度、眞崎くんとデートするんだ」
「そうなんだ。香純、可愛いからきっとあいつ喜んでるよ」
「そうかな?そうかな?」「うん」
香純が幸せそう。私も幸せなんだ。
これで、いいんだ。
その放課後も、あいつと香純が並んで下校しているのが窓から見えた。
「本当、お似合い・・・あいつも笑ってるし。あんな笑顔見たことないし」
----------------------------------------
今日は、掃除当番。
帰宅するのが遅くなって、また一人で階段を降りる。
「あら、久しぶりね、柊くん」
「おう。沙月、竹川と結婚すんの?」
また、保健室で話す沙月先生とあいつの声が聴こえた。
「知ってた?」「噂すげー広まってる」
「そうね」「俺のこと好きって言ったじゃん」
「好きだったわ。ちゃんとあなたのことも」
「嘘つけ。俺、女なんてどうでもいいって思ってたのに、沙月は違った。こんなに女のこと守りたいって思ったのも初めてだったのに」
「慰めてあげるから・・・おいで?柊」
「近寄んな!女なんてみんな最低だ」
バシっ!!「キャ!」
ガラガラ------------------------------
急にドアが開いて、あいつが勢いよく出てきた。
「また、あんたかよ。どこまでうぜえの」
あいつは、今までに見たことがないくらい私を睨みながら言った。
「わ、私は、別に・・・」
あいつは、私の横を勢いよく通り過ぎて行った。
「待って!!」私は、自分でも理解できなかった。どうして、あいつを引き止めたのか。
それでも、あいつは止まったので、私は続けた。
「あんたが好きな人は、もう違う人のものかもしれないけど、あんたを好きな人はたくさんいる!それで、ゼロにならないかな?むしろ、プラスなんじゃないかな・・・」
何が言いたいのか、自分でもわからなかった。
----------------------------------------
あいつは、私の所にきて
「じゃあ、あんたも俺のこと好きなの?」
そう言って、無理矢理壁に押し付けキスをしようとしてきた。
「や・・めて」私は、あいつから力づくで離れた。
「間違ってる。それは違う」
「説教とかいらないんだけど」
「慰めてあげることならできるよ」
そう言って、私は両腕を精一杯広げた。
「あんた、ばか?」あいつは、そう言って、私の肩にコツンと顎を乗せてきた。
私は、精一杯の力で抱きしめた。
「大丈夫。あんたは、みんなに支えられてる。安心していいんだよ」
そして、そう呟いた。
----------------------------------------
少しの間、抱きしめた後あいつは、私から離れ、デコピンをしてきた。
「いった!!」
「(笑)あんた、俺のこと嫌いなんじゃなかったの?」
「嫌いだよ」「また、はっきり(笑)」
そう言って、下に落ちていた鞄を拾い上げ、背中を向け歩いて行った。
三メートル程離れた後、あいつはいきなり振り向いて、「さんきゅー」笑顔でそう言って帰って行った。
----------------------------------------
「ねえ日向。眞崎くん、沙月先生ともう終わったらしいよ」
「そう・・・なんだ」
「でね、今度告白してみようかなって」
「いいじゃん!しなよしなよ」
「そうかな?応援してくれる?」
「もちろんだよ」
あんな香純の笑顔見たことないかも。
----------------------------------------
今日友達が、あいつに告白をする。
香純は可愛いし真っ直ぐだし、絶対
大丈夫。
「ねえ、一人だと心細いから近くで
見守っててくれない?日向」
「え?うん、わかった・・・」
放課後、私があいつを呼びに行く。
----------------------------------------
「ま、眞崎くん。私、眞崎くんのこと
が好き。大好き。そばにいたい」
香純は、真っ直ぐにあいつをみて言った。
あいつは、少し黙った後
「俺、好きとかそういうのわかんねえ」
「・・・」
「香純!?」
香純は、走って帰ってしまった。
「今の恋を忘れるには、次の恋。
もう一度、考えて?」
私は、必死であいつに言った。
「・・・」
「だって、香純のこと考えてくれるっ
て言ったじゃない。香純、よ・・・」
私が、言い終える前に
「ほっといてくんねーかな」
あいつが、強めに言ってきた。
「え・・・?」
「まじで、ほっといてくれよ」
そうぼそっと言ってあいつは、私に
背を向けて帰って行ってしまった。
----------------------------------------
私は、香純を応援して傷つけた。
そして、あいつにまで傷をつけて
しまったのかもしれない。
「ははっ・・・私周りを傷つけて
しかいない」
次にすぐ行けたのなら、恋なんて苦労しないよね。
ズキッ。また、気づいたら
涙が頬を伝っていた。
----------------------------------------
あれから、二週間が経った。
香純は、五日間程学校に来なかった
けれど、なかったことのように
いつもの香純に戻っていた。
あいつはというと、あれから私と
口を聞いていない。
私も、香純を気にしてあいつに
話しかけようとしない。
授業中、ふとあいつを見てみる。
肘を机に立てて、その上に顎を乗せ
あいつは、窓の外を見ていた。
しっかりあいつを見たのは
これが初めてだった。
明るい茶髪でワックスでしっかり
まとめられているけれど、風で髪
がなびいて、サラサラなこと。
耳は少しだけ見えて、意外と長いこと
あいつの目が、真っ直ぐなこと
そして、あいつの顔がどこか悲しそうなとこ
私は、気がついたらずっとあいつを
みてぼーっとしていた。
すると、いきなりあいつもこっちをみた。
「うわ!目が合った・・・」
私は、すぐに逸らしてその目を机の上の
教科書に向けた。
ドキッドキッドキッ。
何故か、あいつと目が合った途端、私の心臓
が激しく動いた。
「てか、私、目逸らすこと
ないじゃんか・・・」
休み時間、あいつとすれ違った。
「あの・・・さ・・」
私は、気づいたらあいつに声を
かけていたけれど、あいつは無視を
して私の横を通り過ぎた。
やっぱり怒ってるのかな。
----------------------------------------
次の時間は、委員会決め。
香純と一緒にやろうと思っていたもの
は、じゃんけんで負けてそれぞれ
男女一組ずつのものしか残って
いなかったので、仕方なく
別のものをやることにした。
「なんだあ。簡単なやつ残ってんじゃん」
私は、立候補をしてその簡単な委員会に
手を挙げた。まだ、男子は決まっていない。
----------------------------------------
私が、立候補して決定してから
少し経って
「俺、それでいいわ」
え?あいつが、私と同じ委員会を
立候補した。
「ええ、日向ずるーい」教室中が
ざわめいた。女子は、みんなあいつと
やることを狙っていた。
休み時間。委員会のメンバーで
集まることになった。
----------------------------------------
「あ、あんた私と同じで
よかったのー?(笑)」
私は、気まずさを紛らわすように
あいつに話しかけた。
「別に、一番楽そうだったから」
あいつは、笑わずに言った。
あれ、自分だけこんなこと言って
恥ずかしい・・・。
私の顔が少し赤くなったと思ったら
「あと、あんたとやると
いろいろめんどくないから」
「え・・・?」さらに、私の顔が
赤くなったと思ったら
「あんた、押し付けたら何でも
やってくれそうだし」
「は?」
「(笑)早く終わらすぞ」
「ちょっと、あんたねー!」
よかった。あいつが笑った。
「やっと笑ったね、あんた」
「うっせ」
-------------------------------------------
「2人終わったー?
今何やってるの?」
香純は、私たちに近づいて
言ってきた。
(あ、香純・・・)
私は、あいつと2人で笑って
話していたから、香純に申し訳
なくて気まずくなってしまった。
でも
「こいつがさー、要領わりぃんだよ
あーあこいつ使えると思ったから
この委員会にしたのに!
まじ使えねえ(笑)」
あいつは、何もなかったかのように
笑ながら答えた。
私は、恐る恐る香純をみると
「はは(笑)わかるわかる
日向は本当ばかだから(笑)」
と香純もいつもの香純だった。
二人が普通に話せていることに
私は、嬉しくなった。
「なんなのー二人とも!
ひどすぎなんだけど(笑)」
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こんな、こんな毎日が続けばいいなっ
て。こういう風に、三人でずっと
仲良く話せていられたらなって。
そう・・・思うんだ。
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あれから一ヶ月程経った。
今日も、放課後委員会がある。
「日向ー!私、今日バイトだから
先帰るね」香純がそう言って
帰って行ってしまった。
「おい、行くぞ、はげ」
「はげってなによ!のっぽ!」
「それ、褒め言葉?(笑)」
なんなの。でもあれ?こいつの
悪い所どこだろう。少なくとも
見た目は完璧だ。悔しいけれど。
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委員会が終わった。
「んなー、どっか行かね?」
あいつから、意外な言葉が聴かれて
私は、黙ってしまった。
「何黙ってんの?」
「いや・・・どこ行きましょ?」
「なにそれ(笑)」
「いや・・・」
「いいから、行くぞ」そう言って
あいつは、だるそうに鞄を持つと
足早に歩いて行った。
「ちょ、待ってよー」
私たちは、バッティングセンター
に来た。
あいつまだ悩んでるのかな。
すっきりしたいことでもあるのかな。
カキーーーーーーーン!!!
あいつは、いきなりホームランを出した。
「あ、あんた欠けてるとこ
ないわけ!?」
私は、思わずそう言ってしまった。
「あっ・・・」私は、すぐに
口を塞いだ。
「はは。なにそれ。お前、何か
俺の気に食わないとこあるから
嫌いなんじゃねーの?(笑)」
「き、嫌いだよ?」
「はは(笑)あんた、矛盾。
俺のこと嫌いだったら一緒に
こんなとここねーし、あんた
嘘つく時いつも目逸らしてるよ。
分かりやすい」
「最初は、うざかったけど
でも、なんか悪い奴じゃないかもっ
て思って・・・」
「で?」
「は?で、てか、なんかもう
わからないの!!!」
「はは。やっぱあんたおもしれー」
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うるさい・・・。
「あんたは、どーなのよ!
私のことどう思ってるわけ?」
私は、つい勢いで言ってしまった。
「・・・わかんねー」
急にあいつは、下を向いてしまった。
「・・・ってもう!こんな話
しに来たんじゃないじゃん。
早く打つよー!さあ来い!!」
私は、バッドを持ち、構えた。
「全然ちげーよ、持ち方」
「え?」私は、思わず外にいるあいつ
を見てよそ見してしまった。
「おま・・・よそ見すんじゃね・・」
ビューーーーーーーン
「キャ!!!」
ガシャーーーーン
スタートボタンを押していたので
ボールが勢いよく飛んできた。
私は、伏せようしたが気づいたら
あいつに後ろから抱きかかえられて
フェンスにあいつが思い切り
ぶつかっていた。
「ごめん!!大丈夫?」
「危ねえーなまじで」
あ、あの時も遊園地で助けて
くれたのは、こいつだった。
「はは(笑)」
「は?あんた、何で笑ってんだよ
こっちは、痛い思いして助けて
やってんのに」
「ごめんごめん(笑)遊園地でも
こうやってあんたが助けて
くれたなって思ってさ」
「本当だよ、くそ」
「ありがと・・・」
---------------------------------------------
後ろから抱きしめられて
フェンスに寄りかかっていた
あいつがいきなり、私をフェンス
側に寄せ押さえつけてきた。
「え、なに?」
「わ、わりぃ・・・」
あいつは、我に帰ると押さえ
つけていた手を緩めた。
でも、私には今までにない感情が
現れたことに驚いて何も
言えなかった。
嫌じゃなかったんだ。
あいつに、あんな風にされても。
嫌じゃない自分がいた。
そう思った自分は、あいつから
離されたけれど、抱きしめて欲しくて
自分から抱きついた。
「え、どした?」
「・・・少しだけ、こうさせて。
このままでいさせて・・・」
あいつは、何も言わずに抱き
しめ返してきた。
少しの間抱きしめ合った後、
離れて私は、我に帰ると
顔が真っ赤になってしまった。
しかし、あいつは
「何、お前、欲求不満?」
と、言ってきた。
「何なの!ばか!」
ああ、自分ばかり恥ずかしい。
ずるい。あいつは、慣れてるかも
しれないけれど、私はこういうの
慣れていない。
「でも、キスはとっておきなよー
あんたまだ誰ともしてないだろ」
「ちゅーくらい・・・した
ことあるもん!」
私は、強がってしまった。
「じゃあ、初めてじゃないなら
いいか。俺としてみる?」
「な、何言ってんの?あんた」
「はは(笑)冗談だよ。
あんた、顔赤すぎ(笑)」
うるさいな、本当に。こいつと
いると自分のペースを失う。
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「おはよ、日向」
「はよー、香純」
「どしたの?あくびなんかして」
「あー・・・」
私が答えようとすると
「昨日、おれ・・・」
「あーあーあー、昨日少し宿題
やっててさ、寝られなくて!」
あいつが、昨日の事を香純に
言おうとしたので私は必死に止めた。
「ふーん、日向が勉強ねえ」
「ねえ、私やればできるんだって!
ははっ思ったの」
香純は、笑いながら自分の席に
戻った。
今、私の隣の席はあいつで。
「隠すことなくね?」
「うるさいなー、いいの」
「あんたね、自分のこともっと
知りなさいよ」
あいつと私が、2人で遊んでた
ことなんて知られたら、香純だけ
ではない。
教室中の女子に変な目で見られる。
「意味わかんねーお前」
本当、マイペースなんだから。
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今日は、久しぶりに香純と
ご飯を食べに行く。
「ねえ、私ね?」
「ん?どうしたの、香純」
「海人とやり直すことにしたの」
「え?そ、そっかあ」
「私さあ魔法にかけられてた
んだと思う」
「魔法?」
「柊くんに惚れちゃう魔法(笑)」
「何それ」
「ちゃんと海人と話し合ったら
向き合わなきゃなって」
「そっかあ。でもお似合いだよ
2人が」
「ありがと。2人もお似合い
だと思うけど?(笑)」
「ん?なんのこと?」
香純は急に言ってきた。
「日向、好きだと思うよ?
柊くんのこと」
「え?は?な、何言ってるの?」
「動揺しすぎ(笑)いいじゃん
私には隠さなくたって」
「いやいや、急に香純が変な
こと言うからでしょ、もう」
驚いた。私があいつを好きだなんて。
ーーーーーーーーーーーーー
「おはよ。日向」
「お、おはよう」
「今日、海人と待ち合わせ
してるから一緒に帰れない」
「あ、うん。うちも委員会だし」
「お、委員会ねえ(笑)」
「何?やめてよ」
放課後。
香純は違う学校に通う彼と
待ち合わせをして帰って行った。
私は、委員会の集まりがある。
でも、香純のせいで何か変な感じ。
コツッ
「痛!!!」
いきなり私の額に味わったこと
ない程の痛みが走った。
「何ぼけーっとしてんだよ。
早く行くぞ」
あいつだった。あいつが
デコピンをしてきたんだ。
「ご、ごめん」
「は?何やけに素直なの。
きもちわりぃ」
もう・・。香純のばか。
香純が変なことを言うから。
私が私じゃないみたい。
ーーーーーーーーーーー
委員会終わり。私たちは
話し合いをまとめたノートを
職員室に届けるよう言われた。
「早く書いて早く帰るぞ。
こんなの適当でいいんだよ」
「さ、先帰っていいよ。
私やっておくし、用ないし」
「は?俺も別に用ないけど」
「う、うん。」
なんなの。一人にさせて。
ノートを書き終わり、私たちは
職員室に向かった。
「わ、私届けてくるから!」
「さっきから何。ここまで
来たんだからさ」
「い、いいから!ほら、私ちょっと
個人的に先生に用あるから」
「あ?あっそ。わーったよ」
こうして私たちは別れた。
別れたというか私が無理やり?
私は、先生にノートを渡し、
あいつに会わないように
ゆっくり歩いて帰った。
「もう、あいつといると頭狂う」
そう言って下駄箱へと向かった。
「よ!おせーよ。ばーか」
「は?何で居るの?」
下駄箱にあいつが立ってた。
先帰っていいよって言ったのに。
「は?届けてくれに行った
んじゃねーの?待ってたんだけど」
「え?いや、そんなこと・・」
私が言い終える前に
「うるせーな。早く帰るぞ」
ーーーーーーーーーーーーー
あいつといると、ペースが崩れる。
私がどっかに行ってしまう気が
して怖いんだ。
「先生、私委員会降りたい」
「え、どうした立川」
「ほら、眞崎くんなら一緒に
やりたいって思う女子いっぱい
いるから。私じゃなくても」
「委員会やめた?」
香純が驚いて言ってきた。
「うん。合わなかった」
「え?何で?柊くんと何かあった?」
「あいつは関係な・・」
私が言い終える前に私たちの前に
あいつが現れた。
「お前、卑怯だろ。勝手に
辞めやがって。俺に全部やれっ
て言うのか?」
「違うよ。すぐに女子なら
誰かやってくれるよ」
「は?お前はそうやって全部
中途半端なのか?他のやつに
押し付けて自分は逃げて」
「うっさい!あんたに
何がわかんのよ」
私は、そう言って教室を
飛び出した。
だけれど、あいつは追いかけて
きて足が速いからすぐに
捕まってしまった。
「痛い・・離して・・」
「やだ。無理」
「離してよ・・大嫌い」
「お前が逃げるからだろ」
「あんたが追いかけてくるから」
「わかったよ。そんなに嫌いかよ。
だったらもう追いかけないし
話しかけない」
そう、ぼそっと言ってあいつは
どっかに行ってしまった。
「何で。違うのに・・」
私は何故こんなにもムキになる
自分がいるのかわからなかった。
涙が溢れた。止まらなかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
あれから一週間。
本当に私とあいつは話さなかった。
すれ違ってもお互い目も合わせない。
委員会もすぐに他の女子が
決まった。
あいつとやりたい女子はほぼ全員で
その中でも委員会に入っていない女子
だけでじゃんけんをしたそうだ。
「ねえ。本当にいいの?」
香純が言ってきた。
「何が?」
「眞崎くんと話してる日向結構
楽しそうで好きだったのに」
「またその話?もう、やめてよ
あいつなんか好きでも何でもない」
「ふーん」
毎週月曜と木曜は香純は
彼と待ち合わせをしている。
そのため今日も一人で帰る。
本当は委員会の日だけれど
もう私は委員ではないので何もない。
「あ、雨だ。最悪。傘ないや」
運悪く、帰る時に雨が降ってきた。
少しだけ雨宿りをすることにした。
だけれど、雨は一向に止む気配がない。
「仕方ない・・」
私は、もう仕方がなく濡れて
帰ることにした。
屋根がある所からででも
なぜか濡れなかった。
「え?」
上をみると、大きな真っ赤な傘が
私を覆っていた。
ゆっくり後ろを振り向くと
あいつが立っていた。
「ん。さしてけよ」
そう言ってあいつは私の横を
通りすぎ、あいつは一気に濡れた。
「ちょ、ちょっと待って!
風邪引くから」
私は、慌ててあいつを傘に入れた。
「いいよ。俺は。じゃあな」
また、あいつは歩き出した。
「い、一緒に帰ろう?」
私は、自分でもわからなかった。
気づいたら、そう言っていた。
あいつは、驚いた顔で私をみていた。
私は、またあいつを傘にいれ
「行こう」そう言った。
「貸せ」
あいつは、私から傘をとり
持ってくれた。
「お前、よくわからない。
離れろだの、嫌いだの、言いながら
一緒に帰ろうとかさ」
「私も、自分がわからない。
何を考えてるんだろうって思う」
「勘弁しろよな。振り回される
こっちの身にもなれ」
コツン!
「痛っ!!!」
またあいつがデコピンをしてきた。
「それより、あんた委員会は?
今日委員会でしょ?」
「あ?辞めてきた」
「は?何やってんの?
意味わからない」
「お前に言われたくねーよ」
「可哀想。女子。あんたと
やりたくて、やったのに」
「知るか。使えるやつが辞めた
委員会なんてただの地獄だよ」
「え?」
「ばーか。悪口言ってんのに
何顔赤くしてんだよ」
私も自分で自分の顔が赤く
なってくるのがわかった。
「う、うるさいな。赤いわけ
ないでしょ。何であんたなんかに」
「でた。また嫌いとか言うんだろ。
なあ〜(笑)」
「言わない!!!」
私は怒って横を向いたとき、
あいつの顔がすぐそこにあって
あと何センチかで口と口が
くっついてしまう距離にいた。
私たちは、すぐに前に顔を
向き直した。
「び、びっくりさせないでよね」
「お、俺だってお前が振り向くと
思わなかったわ」
「わ、私こっちだから。じゃあ」
「送ってくよ。近くだろ?」
「い、いいよ。もう平気」
「いいっつってんだろ。素直になれ」
あいつは、私の腕を掴み歩いた。
「痛いってば!何でいつも
そんなに乱暴なの?」
私は、あいつに掴まれている腕を
振り払った。
「何だよ。お前だっていつもいきなり
怒って意味わかんねーよ。
そんなに俺が嫌いかよ!
ったく今度こそもうしらねーよ」
あいつは、そう言って私を置いて
歩いて行った。
「違・・違う・・違うんだよ!!!」
私は、気づいたら叫んでいた。
あいつは立ち止まった。
「好きなの!!!嫌い・・大嫌い
だけど好きなの。ばか!!!」
私も自分で驚いた。
え。何言ってるの?私。
あいつは驚いて立ち止まったまま
何も言って来なかった。
私は、恥ずかしくなってその場から
逃げ出したくて、走りだした。
「おい!待てよ!」
だけれど、またすぐにあいつに
捕まってしまった。
「離して・・」
「やだ。無理。お前わけわかんねえ」
「こんなこと初めてなの。
こんな気持ち。だから、私だって
どうしていいかわからないの」
「俺だってわからねえよ。
すっげえ好きなやつに振られて
耐え切れないくらい辛くて
他のやつとか考えられなくて。
だけど、お前が視界に入ってきて。
でも、それでも俺は沙月が好きだから
それはただの間違いだって」
「・・・」
「でも、お前が委員会やめて
なんか俺を避けてきて。
意味わかんねーしすっげえ勝手で
むかつく。むかつくけど
そばにいてほしいって思う」
「意味わかんない」
「そう思ってたら、お前がさっき
みたいなこと言うから」
「さっきみたいって?」
「好きだって・・言わせんなよ」
私は何も言えなかった。
ただ涙だけが溢れた。
あいつが私の所に戻ってきた。
戻ってきて、涙が流れている頬に
涙を止めるかのようにキスしてきた。
「わからないの・・私初めてだから。
全部が全部、初めてだから」
「俺だって初めてだよ」
「は?うざい。女の子慣れしてる
くせに。今まで何人の女の子を
泣かせて来たんだか」
「黙れ」
「痛い!痛いってば」
次は、私の頬をつねってきた。
「俺だってお前が初めてだよ。
女なんか遊びで十分だった」
「最低・・」
「だけど、もう俺も逃げない。
本気だから」
そう言って、私の唇に唇を
重ねてきた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「付き合うことになった!?」
香純は大きな声で驚いた。
「声でかい・・うん。なんか」
「なんかって。いやわかってたけど
急にっていうか、びっくりした」
「私もよくわからない展開。
何がなんだか、さっぱり」
「え?(笑)でもまあおめでとう。
応援するよ!お似合いだし」
ゴツッーーーーーーーーー
またいきなり次は頭のてっぺんに
何か硬いものが当たった。
「痛い!!なんなの!!!」
「ははっ(笑)わりぃ。わざと」
あいつがペットボトルを投げてきた。
「まだ中身入ってるし!
何であんたはそうやって乱暴なの」
「ごめん、て」
「知らない!もう!」
私が怒って教室から出ようと
すると
「ねえ、今日空いてない?柊」
「あー何で?」
違うクラスの知らない女子が
あいつに話しかけている声が
聞こえた。
(また、もてやがって!
行けばいいじゃん。全くさ)
「柊んち行きたい。あ、私の家でも
いいけど、久々にさ」
(久々・・?前もやったってこと?)
「ええ。どうしようかな・・」
何、あいつもまんざらでも
ないんじゃん。
迷っちゃって。
「いいじゃん。柊〜」
私の足は気づいたら止まっていた。
女子は、あいつの腕にくるまってた。
私は、耐え切れなくなって
また歩き出そうとした。
「やっぱだめ」
あいつは歩き出そうとした
私の所にきてそう言った。
「えー何でー?」
「今日は、てかこれからも
こいつだけ」
そう言って、私の髪をかき分け
私の耳にキスをしてきた。
私の顔が一気に赤く染まっていく
のがわかった。
教室中がざわめいた。
それは、そうだ。みんなの前で
キスをしてみんなの前であんなこと
を言ったのだから。
それも、私に。何の取り柄もない
目立ちもしない。可愛くもない。
そんな私にあいつは恋をしたと
いうのだから。
「いつからいつからー?」
「ねえ、柊くんてどんなひと?」
「柊くんて、優しい?ドSなの?」
今日からそんな質問ばかりを
女子からされる。
でもまあ、いじめられるよりは
ましだった。
そして、時々
「ねえたまには私にも頂戴よ」
「今日だけ!今日だけでいいの。
柊くんを貸してほしい」
そんなことも言われるようになった。
ーーーーーーーーーーーー
「はあ〜」
私は思わず、溜息をついてしまった。
「はは(笑)苦労してるね。
モテる彼氏を持つのは大変だ」
香純が私の席にきて言ってきた。
「そういえば海人さんもモテるよね。
あ、でも違う学校だし、そういう
所見なくても済むか・・」
「あーひどーい。みえないのも
怖いんだからね。陰で何してるか
わからない」
「海人さん、そういうひとには
みえないけどなあ」
「まあね!(笑)」
チャイムと同時に香純は自分の席
に戻って行った。
放課後。
「帰ろ」
あいつがいつものように私の席
に来て言ってきた。
「あーうん」
「何、用あんの?」
「別にないよ」
今日は、初めてあいつの家に行く。
ーーーーーーーーーーーーー
「適当に座ってて。飲み物
持ってくる」
「ありがとー」
あいつの部屋は2階建ての2階。
意外と片付いている部屋に
驚いていると
「あいよ。持ってきた」
入ってきた。