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ふりむけば、鬼嫁。  作者: 江本マシメサ
第四話「細行を矜まざれば終に体徳を累わす」
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四十一

 村の朝を知らせる鐘の音が鳴り響き、総一郎は目を覚ます。


「……朝か」


 いつもの癖で眼鏡を手探りで探すが、その手は何者かによって踏み付けられる。


「ん?」

「ん?じゃねえよ」


 視線を手元から天井の方へ向けると、そこには両手を腰に当て、堂々と総一郎の手を踏みつけるラムウルの姿があった。


「あ、あれ…ラムウルさん?」

「ーー私になにか言う事はあるか?」

「えっと…おはようございます?」


 疑問系なのはラムウルの拳が怒りで震えていたからで、これは朝の挨拶の要求じゃないぞと気付いていたが、他に言う事も思いつかなかったのでとりあえず言ってみた。


「一回死ね!!」

「うわ!!」


 やはりラムウルの要求は朝の挨拶では無かった。頭上から振り落とされる金棒を総一郎は布団を転がりぶつかる寸前で避ける。


「チッ…避けたか。すばしこい奴め」

「い、いやいやいや!! 今のちょっとだけ当たってましたよラムウルさん!! 髪の毛何本か金棒に持ってかれましたもん!!」

「ーーチッ」


 本日二回目の舌打ちである。

 何故こんなにもラムウルは不機嫌なのか総一郎には分からなかった。今までは理由も無く怒っている事もあったが、ここ数ヶ月ほどは喧嘩も無く仲良くやってきたと思っている。


「そもそもここは…?」

「婆さんの寝室だ」

「え…? ハクゲイ様の?」


 全く状況も掴めぬまま、抜けた髪の毛が生えていた頭皮がひりひりと痛むので、擦りながら総一郎は起き上がる。どうしてハクゲイの部屋で眠る事になってしまったのか、昨日の記憶を掘り起こしてみたが、どうにも曖昧な部分多数があり、首を捻る。とりあえず覚えている所を言葉として出してみた。


「昨日は結婚式で」

「そうだ」

「ラムウルさんがとても綺麗で」

「わ、私の事はいい!!」


 嫁の事を褒めたら必要ないと突っ込みが入る。肩を叩かれそうになったが、行動を予測していたので楽々避ける事が出来た。しかしラムウルの突っ込みの手が手のひらパーでは無く、グーだったので当たったら危ないと戦慄する。


「…それから村の皆さんと宴会をして、沢山の方からお祝いにお酌をしてもらって」

「ああ。それで?」

「山田のお姫様も来てましたね」

「そうだったな」

「はい……」

「それから?」

「……」

「おい」

「大変申し上げ難いのですが、以降記憶がございません」

「なんだと?」

「昨晩は大事な大事な初夜でしたが、何一つ覚えていないのです」

「何かあったように見えるか!?」

「……いえ」


 室内は綺麗に整えられており、布団や服装の乱れも無い事から何もしなかったのだと総一郎は思っていた。


「お前は」

「はい」

「べろんべろんに酔った挙句」

「…はい」

「一人陽気になって他人に絡みまくり」

「……はい」

「周囲を困らせ、私の静止も聞かず、浴びるように酒を飲んでいた」

「…………それは、申し訳ありませんでした」

「しかも、何故かずっと私の尻を撫で続け」

「それは(記憶が無いのが)惜しい!!」

「惜しいじゃねえよ!!」


 ラムウルに睨みつけられ、総一郎は押し黙る。お尻を触っていた事情について詳しく知りたかったが、そんな事を聞ける雰囲気では無い。


「ーー記憶が無いというのなら教えてやろう、昨晩のお前の痴態の全てを!!」

「ん、痴態? 何だろ…?」

「……」


 能天気な夫を怒鳴りつけたくなったが、ラムウルは必死に怒りを抑えつつ、話し始めた。


◇◇◇


 この「鬼ヶ島」の結婚披露宴とは村人総出の宴会の事を示す。皆で食べ物や飲み物を持ち寄り、着飾った新郎新婦を酒の肴にして騒ぎまくる、という昔からの決まりごとだった。

 数年ぶりのめでたい席に村人は落ち着きを失っており、ハクゲイの屋敷は今までに無い人数で埋め尽くされている。家に中に入りきれない人々は庭に陣を取って場所の確保に努めていた。

 机の上にはアメリやラムウルが作った料理やお祝いにと持って来た酒の瓶が数多く並べられている。日本の披露宴のように格式張ったものでは無いようで、皆好き勝手に飲んだり食べたりしていた。


 本日の主役であるラムウルと総一郎が登場した時は家が揺れるのではという程の歓声で迎えられ、この日一番の盛り上がりを見せていた。

 若夫婦を迎え、仕切り直しとばかりに乾杯取ろうと、各人のさかずきの中を酒で満たす。


「あ、忘れてた」

「どうした?」


 お酒の入った小さな杯を手にした総一郎が困った顔で今更な事実を呟く。


「お酒飲めないんですよ」

「はあああ!? 今から参加客が次々と酒を振舞いに来るというのにお前は!!」


 総一郎は周囲に勘付かれないよう小声で喋っていたが、ラムウルの叫び声によって台無しとなってしまった。しかし皆酒を配るのと受け取るので忙しかったからか、二人の異変に気付く事は無い。


「あの……私の居た世界にも結婚式でこういった習慣があるんですが、全部は飲めないので足元にタライを置いて捨てちゃうんですけど」

「ば、馬鹿! 振舞われるのは神様に供えるような酒だ、捨てたりなんかしたら罰が当たるぞ」

「そうですよね」


 現在の状況に対して危機感の無い総一郎だったが、酒の匂いを嗅いでため息を吐き出す。


「はあ、情けない話だなあ」

「生まれつきの体質なんだから仕方がないだろう。諦めろ」

「……」

「客の振舞う分はなるべく私が飲む。お前も頑張れ」

「ありがとうございます…もしもの時はごめんなさい」

「もしもの時ってなんだよ。ってか鬼の体になったんだから、人間の時とは訳が違うんじゃないか?」

「いいえ。この体はあくまでももう一人の自分のものなんです。きっと…いえ、絶対下戸でしょう」

「そんなもんか」

「残念ながら、そんなもんなんです」


 鬼の体になったから人間の時とは何かが違うのでは、と思っていた時が総一郎にもあった。しかし鬼となった時の変化といえば目が良くなった位で、特別能力の差は無いものだと、この数ヶ月の生活で気が付く。この世界に生きていたソウはあくまでもこの世界の自分だという事実を、毎日の暮らしの中でひしひしと実感していた。


 こうして宴会は始まり、ラムウルと総一郎の周囲は人で埋め尽くされた。


「ほうれ、総一郎~飲まんか、飲まんか」

「先に私が貰おう」

「主人より先に杯を出すとは流石ラムウルちゃんやなあ」

「早く注げ、後が支えている」


 こんな感じで今の所ほとんどラムウルが酒を受け取り、早速尻に敷かれているなあと村人の笑いを誘っていた。


「ほら見ろ。私がお前を虐げているかのような印象が付いてしまったではないか」

「…申し訳ありません」


 実際ラムウルには頭が上がらないので、その印象で間違いは無いと総一郎は思ったが、命が惜しいので口に出す事は無い。


「大丈夫ですか?」

「ああ、まだ平気だ」

「強いんですね」

「これ位普通だ」


 こうして話をする間にもどんどんラムウルの杯は参加客の手によって満たされていく。一時間ほど経って落ち着いてきた頃、二人の前に一人の女性が現れた。


「ごきげんよう」

「……」

「……」

 

 花嫁もびっくりの白い着物を着て微笑むのは、山田家の問題児…ではなく山田家の美姫と誉高い聖蘭せいらだった。


「ーーチッ。誰が呼んだんだよ」

「ラムウルさん、聞こえますよ」

「つったく面倒な客だな」

「ほんの少しの我慢ですよ」


 先ほどとは違い、今度は声を潜めずに話をしていた二人に、目の前の姫君は体を震わせながら、怒りを剥き出しにする。 


「ちょっと!! 全部聞こえているわよ!!」


 聖蘭はこめかみ部分に青筋を浮かべながら新郎新婦をここぞとばかりに指差す。


「ふん。うるさい奴め」

「なんですって!?」

「今日はお前と喧嘩をする心算は無い。婆さんならあっちにいる、酔っ払う前に挨拶しておけ。ついでに美雪よしゆきをいじめたいのならこの襖の向こうに居るからな」

『ちょ!! ラムウルの裏切り者~!! 何教えてんのさ!! 個人情報の漏洩反対~!!』


 聖蘭はいつも美雪をいじめて楽しんでいるので、ラムウルは親切心のつもりで居場所を教えた。しかし背後にある部屋からすぐさま美雪からの文句が飛んで来てしまう。 


「それよりも、今日はラムウルの旦那様に贈り物を持って来たのよ」


 そう言って背後に居た付き人に指示を出し、風呂敷に包まれた品物を取り出した。


「山田家にある酒蔵で作られたお酒よ」

「……」

「……」

「あら、嬉しくないの?」

「……」


 死んだ目をしていた総一郎のわき腹をラムウルは軽くつつく。


「ワ、ワア~スゴク、ウレシイ」


 本心を偽れなかったのか、出て来た言葉は片言だった。


「どうぞ」

「エ?」


 聖蘭より手渡されたのは通常は米を計ったりする時などに使う木で出来たますで、受け取った総一郎は嫌な予感がするとラムウルの顔を見た。


「さあさ、私にもお酒を振舞わせて頂けるかしら」


 いつの間にか聖蘭は開封した一升瓶の注ぎ口を総一郎に向け、枡を出せと言う。


「い、いや…枡なんかで飲んだらすぐに潰れてしまいま」

「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとお出しなさいな!!」

「……はい」

「おい、こいつの言う事なんて聞かないでいい!! 聖蘭、せめて杯にしてくれないか?実はこいつ酒駄目なんだ」

「あら、大丈夫よ。そんなに度数の高いものじゃないから」


 話しながら聖蘭はとくとくと枡に酒を注ぐ。酒で満たされた枡はなかなか重い。親指だけで枡のフチを持ちつつ四本の指だけで全体を支えるという持ち方では、格好を維持するのは難しいように思えた。が、枡を上から鷲掴みにする持つのはマナーとしてよろしくないという話を思い出して、総一郎は手先が震えながらも何とか耐える。


「私の、山田家のお酒が飲めないと言うのかしら? なのにその紋付を着ているとは随分な事ね」

「おい、総一郎は飲めないと言っているだろう!!」

「あなたは黙っていて!! 今は総一郎と話しているのよ」

「は!? 何総一郎を呼び捨てで呼んでるんだよ!! お前大馬鹿だろう!?」

「いいじゃない。減る物でもないし」


 いつものように喧嘩を始めてしまったラムウルと聖蘭の様子を婿の取り合いと勘違いしたすでに出来上がっていた村人達が囲み、いいぞ、もっとやれと野次を飛ばす。


「おうおう、痴情のもつれでもあったか~」

「なんだあ? 総の字の昔の女かねえ?」


 最悪な方向へ向かおうとしていた今のありさまを収拾しようと、総一郎は枡を掲げる。


「ーーこちらのお嬢さんは山田家のお姫様、聖蘭さんです。そしてこれが山田家の酒造で造られたお目出度いお酒だそうで、今日の為に贈って頂きました」

「おお!」

「なんと、山田のお姫様だったか」

「綺麗な人だんなあ…」

「息子の嫁さに…無理かあ」


 なんとか周りの気を逸らすのに成功したが、これは飲まないといけない雰囲気かと総一郎はハクゲイの居る方を見る。部屋の隅で他人の様に手酌で酒を楽しんでいたハクゲイは「はよ飲め」と手を動かして総一郎を急かした。


「えー…せっかくなので、イタダキマス」


 総一郎は意を決し、枡のフチに口を付ける。飲み慣れない容器だったので、少量零してしまったが、紋付など一度しか着ないだろうと思いそのまま飲み続け、一息で飲みきってしまった。


「お、おい、大丈夫か?」

「……」

「総一郎、さあ、もう一杯」


 口元を押さえる総一郎の前には先ほど同様に一升瓶を差し出す聖蘭の姿がある。周りも今まで見せなかった総一郎の酒を飲む姿に喜び勇み、今となっては引くに引けない空気となってしまった。


「もう一杯とかお前ふざけんなよ!! もう十分だろ」

「あら、こんなに余って勿体無いじゃない?」

「こういうのは一人一杯と決まっている! 知らない訳ないだろう?」


 そんなラムウルの抗議を余所に、総一郎は枡を笑顔で差し出した。


「飲めないって嘘みたいね」

「…総一郎?」


 結局総一郎は聖蘭の気が済むまで慣れない酒を飲み続ける事になってしまった。


◇◇◇


 こうして一升瓶のお酒を最後まで飲みきった総一郎は平然と枡を机の上に置いた。


「気は済んだ? 山田のお姫様?」

「え?」

「お酌するのが楽しかった? ねえ」

「え? あ、あの…」


 突然雰囲気の変わった総一郎に問い詰められ、聖蘭は一升瓶を抱えたまま後ずさる。


「待って、話したい事があるんだ」

「わ、私はもうおいとましないと」

「大丈夫、すぐ済むからさあ」

「な…え?」


 手を引かれ、無理矢理座らされた聖蘭が信じられないとばかりに瞳を見開いていた。


「山田く~ん、聖蘭姫に座布団一枚持ってきて~」

『え? は、は~い』


 美雪よしゆきは奥の部屋から座布団を持って来て、聖蘭前に置いた。


『おひぃ様、そこ硬いよ?』

「……」


しかし当の姫君は目の前の総一郎に怯え、地べたに座ったまま、逃走の機会を窺っていた。


「話っていうのはねえ、ラムちゃんの事なんだけど」

「……え? ええ、何か?」


 あきらかにいつもと違う総一郎を美雪とラムウルは不思議そうに見つめる。


『ラムウル…あの総ちゃん何か見覚えあるよ』

「偶然だな。私もだ」

『あれってまんまソウ君だよねえ』

「……だな」


 やはり総一郎とソウは同一人物なのだと再確認した鬼嫁と虎の子だった。


「なんでいつも喧嘩をするのかなあって思ってさあ。なんで?」

「え? 何故と言われても…」

「同じ歳なんだし仲良くしてよ」

「それは…」

「出来ない? 出来ないなら金輪際ラムちゃんに近づかないで」

「え?」

「聞こえなかった? もう一度言おうか?」

「いえ…その」

「ーーもういいだろう。解放してやれ」

「ラムちゃん!!」

「はあ!? 誰がラムちゃ…だ、うわ!!」


 近くに来たラムウルを総一郎は引き寄せ抱きしめる。


「な、何をするんだ! 離せ!」


 ラムウルの文句を無視して隣に座るように引き寄せた。総一郎は要らぬ行動を起こしつつも、射抜くように鋭い視線は聖蘭から外れる事は無い。


「聖蘭姫、それでどうするの?」

「……」

「ねえ? 話聞いてるの?」

「わ、分かったわ。もう喧嘩は売らない」

「わあ、良かったねえラムちゃん! 聖蘭姫お友達になってくれるって~」

「はあ!? 何言ってんだ?誰がこいつなんかと友達になるんだ。そんなのお断りだ。ーーそれはそうと、お前かなり酔っ払っているだろ…ひっ」


 今まで肩を寄せていた手が、いつの間にかラムウルの尻に移動し、揉んだり撫でたりを繰り返していた。


「な、何するんだ!!」

「え?」

「え? じゃないだろう!!尻から手を離せ」


 総一郎の意識が完全にラムウルに向いた隙に、聖蘭は祝いの席から逃げるように撤退をする。

 

◇◇◇


「ーーその後も村人達が勧めるがままにお前は酒を飲み続け」

「…はい」

「私にも散々絡み」

「……はい」

「村人達は夜になる前に帰って行ったが、今度は婆さんと飲み始めた」

「…………はい」

「最後は孫の人数や名前の話で盛り上がって……」

「?」



◇◇◇


女子おなごは嫁入りに金が掛るから一人でいい」

「むしろ女の子ばかりでいいんだけど」

「ふん。可愛いのは小さいうちだけさ。大きくなったら男親など嫌われるだけよ」

「そっかあ…」

「理想は上に女の子一人、下に男の子二人だな」

「なんで?」

「上が女子ならば下二人を押さえつける事が出来るからな。男の子供の思春期も辛いものよ」

「へ~」


 総一郎とハクゲイは勝手に家族計画の話で盛り上がり、次々と酒瓶を空にしている。ラムウルはそんな二人から距離を置き、馬鹿らしい事を真面目な顔で話す夫と祖母を無視するかのように、残った料理を食べる作業に集中していた。


「ーー名前はこんなものか」

「流石お婆ちゃん、カッコイイ名前だなあ」

「名前も決まった事だし、さっさと行って来い」

「え!? いいの」

「いいも何もラムウルはお前のものだろう」

「ありがとございまウッ!!」


 謎の会話で盛り上がる二人だったが、勢いよく立ち上がろうとしていた総一郎の体が床の上に沈んだ。


「申し訳ありません、ハクゲイ様。今の状態で初夜を迎えるのは危険と察知しましたゆえ


 総一郎は気配無く忍び寄っていたアメリの手刀であっさりと倒されてしまった。


「…まあ、本人もこの状態で手を出したら後悔もするだろうよ。すまなかったな、アメリ」

「いいえ。総一郎様を部屋に運びましょう」

「悪いな。わしの部屋が一番近いからそこに運んでくれ」

「はい」

「ラムウルよ。総一郎これの意識が戻るまで傍に居てくれないか?」

「はあ!? 勝手に転がしておけばいいだろう?」

「初夜の晩に一人きりで寝かすのも可哀想だろう? 心配しなくても朝まで目覚めんさ」

「ラムウル様、心配しなくても本気で叩きましたので、夜中に起きる事はありませんよ」

「……総一郎、生きてるよな」

「一応」

「……」


 こうしてきこりの姿を借りて変化したアメリの手によって総一郎はハクゲイの寝室に運ばれ、一夜を過ごす事となった。



◇◇◇


「はは…アメリさんが止めを刺してくれたんですね。言われてみれば首の辺りが酷く痛むような」

「気のせいだ」

「……はい、気のせいでした」

「そしてお前は二度と酒を飲むな」

「はい。今後一切酒は口にしません」

「ーーまあ、間違いは誰にでもある」

「はい」

「今回は聖蘭の喧嘩を買った私も悪かった」

「いえいえ、諸悪の根源は全てこちらにあります」

「…言い出したらキリが無いからこの話はこれで終わりにしようじゃないか」

「そうですね」

「もうすぐ朝食の時間だな。食べれそうか?」

「はい。そういえば昨日は何も食べていないような」

「お前よく便所にも行かないであれだけ飲んだよな」

「う、うーん…鬼の不思議なのかな?」

「そんなものを鬼の不思議にしないでほしい」

「ははは…」


 すっかりいつも通りになったラムウルは、ハクゲイの部屋の襖を開き、台所のある方に進んで行く。


 昨日の酒は体を不調を招く事も無く、むしろ調子がいいように思えた総一郎は、背伸びをしながら食堂へと歩いて行った。


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