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ふりむけば、鬼嫁。  作者: 江本マシメサ
第四話「細行を矜まざれば終に体徳を累わす」
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四十

「おんや、旦那じゃねえか~!?」


 遠くから声を掛けられ総一郎は顔を上げる。すると遠くから日よけの笠を被った大男が手を振っていた。

 男は数人のガタイの良い者達を引き連れ、荷物が山ほど積まれた荷車を押している。

 総一郎が走って近づくと男は被っていた笠を脱ぎ、笑顔を見せた。


「アオザイさんでしたか、お久しぶりです。それにしてもすごい荷物ですね」

「ああ、二ヶ月ぶりだなあ! あの葛篭つづらの中身は全部お嬢のだ…っと今は<奥様>だったな」

「ラムウルさんの?」

「ああ、都の一の姫サマからだと。結婚のお祝いだろうなあ」


 一の姫と呼ばれていた伊集院綾華の事は良く知らなかったが、総一郎の世界の伊集院綾子が社長令嬢なので同じく恵まれた環境に身を置いている事は予測出来た。

 荷台には正方形や長方形の葛篭つづらが隙間無く積まれており、運んできた男達は額に汗をかいている。


「じゃあアレを屋敷まで持ってあがるんですね…」

「船乗りの中でも屈強なのを連れて来たから、大した事ではないな!」

「私もお手伝いを」

「いやいやいや、旦那のお手を煩わす訳にはいかねえ、ここは任せてくれ」


 任せろと言ってアオザイは再び荷車を押しながら高台の屋敷まで登って行く。

 総一郎は仕事に戻り畑仕事を行っていたが、一時間後には空になった荷車を押す船乗り達を送る事となった。


「お疲れ様でした」

「ああ! 目出度い贈り物だ、運ぶこちらも良い気分になるな」

「ありがとうございます」

「良いってことよ。--ああ、そうだ。頭領が家に戻れって言ってたぞ。何でも旦那の私物が入った物が一つだけあったらしい」

「私の?」


 都からの私物とはソウの物だろう。自分には関係ないと思ったが、ハクゲイの言いつけを破る訳にもいかないので早々と農具を片付け、家路へとつく事となる。

 屋敷の広間には先ほど運ばれた葛篭が並び、ラムウルは興味無さげに見つめていたが、ハクゲイは中身を検める作業で忙しそうだった。


「ただいま帰りました」

「ああ、いきなり呼びつけて済まなかったな」

「いいえ」

「都からお前宛の荷物が届いていてな」

「はあ」


 指差された方には周囲の籠よりもこじんまりとした葛篭があり、<ソウ殿・私物>と書かれた紙が挟まっている。


「これは、開けてもいいのでしょうか?」

「お前のものだから構わないだろう」

「……」


 早く中身を確認しろと急かされ総一郎は葛篭つづらを開く。

 中身は数着の着物と本が数冊入っているだけだった。


「ハクゲイさん、服と本が入っているだけです」

「そうか」


 若干落胆した声色で返事をしながらハクゲイは届いた荷物の紐を解いていく。

 葛篭の中には小さな桐の箪笥たんすに化粧道具、鏡に色取り取りの反物が山のように積み上げられ、小さな市場の様な状態になっている。

 中でも一番に目を引くのは衣紋掛えもんかけにかかった白無垢だった。

 ラムウルの為に二ヶ月という短期間で作られたもので、ハクゲイは一の姫用に用意していたものではないかと疑っていたが、綾華の若い頃の着丈で製作されたらしく、念のため合わせて見れば驚くほどぴったりに作られていた。


「ここでは結婚した時には白無垢なんて着ないし、村人総出で馬鹿騒ぎをするだけなんだ」


 ラムウルは純白の着物を見ながら呆れたように言う。

 村の<披露宴>とは村人が集まり、結婚した夫婦を囲んで酒を飲んだり食事をしたりするだけの宴会で、婚礼の衣装を着て行うものではない。


「まあ、せっかくだから着ればいいさ。総一郎、お前の紋付羽織袴もあるぞ。これこそおそらく一の姫との結婚用に作られた品だと思うがな」

「……」

「冗談だ。しっかりと五箇所に山田の紋がついている」

「ーー婆さん、笑えない冗談は止してくれ」


 さすがに家紋の染め抜きをする時間は無かったのか、左右の胸と肘の部分と背中に五箇所に花菖蒲をあしらった紋が刺繍されていた。

 総一郎はハクゲイの指示に従い礼装の一式を衣紋掛けにかける。その様子をラムウルは複雑な表情で見つめていた。


「残念だったなラムウルよ、お前の作った着物を披露宴で着て貰えなくて」

「な!? 婆さん、何を言ってるんだ」

「すまんなあ、口が軽くて」

「ラムウルさん着物を縫ってくれていたのですか?」


 総一郎はラムウルの手を握り問いかけたが、あさっての方向に顔を逸らしたまま答えようとしない。


「よかったら見せて貰えませんか?」

「断る!!」 


 相変わらずつんつんとした態度を崩そうとしないラムウルの手を引き、抱きしめると小さな背中を数回軽く叩く。ちなみにハクゲイはこちらに背を向けているので問題は無かった。

 

「雑草のにおいがする」

「ーー草刈りをしていたので」


 そういえば仕事帰りだったことを総一郎は思い出す。出かけて一時間ほどしか経っていなかったので汗はさほどかいてなかったが、綺麗な状態ではないと気付きラムウルを離した。


「着物はまだ出来ていないんだ。完成したら着てくれ」

「そうでしたか、楽しみにしています」


 その後荷物の整理は日が沈むまで続き、ソウの荷物を検める事が出来たのは夕食のあとだった。

 

 葛篭の中には着物が五着、浴衣が七着に作業着の様な着物が二着に紐で閉じられた本が二冊と結構な量が詰められている。

 衣裳部屋へラムウルと行き、箪笥へと仕舞う。


「その本は何だ?」


 ラムウルに言われ手に取ったが、怖ろしく古い書物なのか紙は黄色く変色し、今にも朽ちてしまいそうな雰囲気だ。

 表紙を捲り中身を見たが、文字は擦れ何が書いているのか分からない。


「これは何でしょうか?劣化が激しくて読めません」

「?」


 ラムウルも総一郎の背中から書物を覗き込むが、判別は不可能だと判断をする。


「もう一冊は?」


 もう片方は比較的新しかったが何度も捲ったりした為か、表紙は曲がり中の紙もよれよれになっている。


「これは…」


 手に取った冊子の中身には<白鬼の書・写し>と記されている。


「その古ぼけた本が<白鬼の書>でもう一冊がその写しという訳か」

「そうみたいですね」


 ページを捲れば丁寧な文字で記された白鬼についての情報が書かれていた。


 <白鬼>

 赤、青、黄、という<鬼>の中でも最下位に位置する鬼の一族。<あやかし>としての力は弱く、百鬼夜行の中には加わらず、里で静かに暮らすものも多い。

 しかしながら<あやかし>には必要の無い医療や薬学の知識に長け、人里に紛れ込んで暮らすものも少なくは無い。

 そして他の<あやかし>とは違い、様々な呪術を身につけていた。のろいやまじないとは違う力は一族の口伝のみで伝えられているという。


 <白の眷属>

 白い毛並みの獣を支配下における能力。それ以外の獣とは意思の疎通も可能とする。


 <反魂の儀>

 魂の入れ替えをする儀式。対価には使用者の肋骨が一本必要。


「ーーな!」


 その一文を読むなりラムウルは総一郎の胸から下の部分を押して肋骨の確認をする。


「クソッ…分からん!! そもそも肋骨は何本あるんだ」

「大丈夫ですよ、日常に支障はありませんから」

「大丈夫じゃないだろ!! …こんな話聞いて無い、あいつ…何て事をしてくれたんだ」


 肋骨の数は左右で二十四本。総一郎は自分でも触ってみたが、外からその有無を確かめる事は困難に思えた。

 骨の確認を諦め、書物を読み進める。 


 <現界>

 昼間も姿を維持する力。対価の必要は無い。

 

 <白紙返し>

 物事を無かったものへとする力。対価は己の記憶。


「記憶…」

「そんなものが…」


 起こった事を無かった物とする力の対価に驚きこそしたものの、総一郎には実感が湧かない。


「何の記憶を無くしたのでしょうか?」

「そういえば前に何か言いかけて忘れたと言っていた事があったな」

「ありましたか?」

「ああ、確か」


 三ヶ月前に川に釣りに行った時総一郎は猪について言いかけ、口を噤む事があったという。

 それから両親の名、住んでいた地域の事、白菜の植え方から美幸よしゆきの好物など質問攻めにされたが、全て記憶に残っているもので失った記憶を把握できなかった。


「無いものを確認するのは難しいですね」

「ああ…そうだ、お前の婆さんの事はどうだ? 名前とか好きだったものとか」

「はあ、…お風呂は好きだったみたいですね、名前は響きが嫌いだと言っていたのを覚えています」

「へえ、なんて名前だったんだ?」

「ーー?」

「?」

「祖母の名前は…」


 いくら記憶を掘り起こしても総一郎は祖母の名を思い出す事が出来なかった。

 それからラムウルに三、四個質問され彼の祖母についての思い出が少しずつ抜け落ちている事を自覚する。


「……」

「悲しいですね」

「…」

「何故気付かなかったのでしょうか…」

「ーーこの力は使うな、二度とだ」


 人が傷つくのも死ぬのも自然の理で、それを無理矢理曲げてしまうのは間違っている事だとラムウルは言葉を吐き捨てる。


「分かりました。…この能力について忘れる事が出来たら楽なんですけどね」

「それは無理だろう。本能で使っている力だからな」

「そう、でしたね」


 その後に記されていた文章は手記の様なものでぱらぱらと飛ばし、冊子を葛篭のなかへと仕舞った。


*****


 <とある男の手記の写し>…数箇所抜け落ちた部分あり


 <日昳の月>

 気がつけば知らない天井を見つめたまま転がっていた。わき腹を見知らぬ娘に踏みつけられ、「お前は誰かと問われる」

 今まで見合いの席に居たはずだったが、目の前に居るのは緋色の髪をもつ美しい娘で、額からは角が生えていた。

 ーー自分は元居た世界とは別の空間に飛ばされたらしいと説明を受け、後から現れた老婆に娘の婿になれと脅される。

 見知らぬ世界で混乱していた事もあり、その提案を受けてしまう。

 この判断が正しいことなのかは分からないが、このまま放り出されても困るのでとりあえずは世話になる事にした。


 <哺時の月> 

 この世界に来てから一ヶ月ほど、<鬼>と<人>が暮らす村は驚く位平和だった。他にも喋る虎が居たりと不思議な事を挙げればキリがなかったが、毎日忙しく過ごすうちに気にならなくなっていた。

 とある日の夕刻、帰りが遅くなり帰宅は日没となってしまった。慌てた様子の妻と玄関で鉢合わせをしてしまい、怒られてしまう。

 なんでも<あやかし>と呼ばれる化け物が日が沈むと徘徊するらしく、<人>に危害を加える為、大変危険だという説明をはじめて耳に入れる。

 どうやら鬼の家人達は互いに説明したと思っていたらしく、気まずい雰囲気に包まれた。

 人を喰らう<あやかし>の存在を聞き、背筋が凍る思いをした。今日無事に帰って来れた事を幸いに思う。


 <夜半の月>

 名ばかりの妻となった女性は大層きの強い女性だった。よほど自分との結婚が嫌だったのかしきりにきつい言葉を受けてしまう。

 半年ほどたった今は、日ごろの働きを少しは認めてくれたからか以前よりも柔らかくなったように思える。

 前に夜になると<あやかし>が出るという事を知らない自分に怒ってしまったのを悪く思っているからか、妻は帰りが遅くなると村まで下りてきて迎えに来てくれる。

 不機嫌な様子を見せながらも、帰りが遅いと手を差し伸べてくれる妻の何ともいえない表情が好きだった。


 <平旦の月>

 仕事を終え、帰宅をしようと思っていた折に見た事の無い老婆を見かける。どうやら家人と知り合いの様で道に迷っていたらしい。

 老人を連れ、帰宅をした筈だったが、それからの記憶が無い。


 <日出の月>

 鬼婆が包丁を研ぐという最悪な音で目が覚める。とうとう喰われる時が来たかと覚悟を決めたが、鬼婆は信じられないとばかりに涙をながしていた。

 崖から落ちて数日の間意識不明でいたらしいが、それから後の事は信じられないことの連続で詳しく書くのを控える。

 同じく意識の無かった妻が記憶をなくしていたのが唯一気がかりだった。


 <食事の月>

 裏技を使い、妻の記憶が戻った。彼女がしてしまったことに対して何度も謝罪されたが、今更だと思った。自分はこれまで通りここで暮らしたいという気持ちは変わらず、妻の傍にあろうとする考えは揺るがない。

 

 <日昳の月>

 ここに来てから一年経った。この前きた行商人から指輪を買い、贈る。この世界では求婚するときに指輪を贈らないらしいが、自己満足だと思い渡す。珍しく妻は嬉しそうに微笑み、結婚を受け入れてくれた。


 <黄昏の月>

 今日は結婚式だった。沢山の人に囲まれ幸せだと思った。


 <鶏鳴の月>

 毛玉の<あやかし>が裏庭にご馳走があるといい、出てみれば白い狼が居て、大量の血を流し倒れていた。

 邪悪な気を感じなかったので近づいてみると<百鬼夜行が復活した>と言い息絶えてしまった。


 <平旦の月>

 この所<あやかし>の活動が活発になっているらしい。先月聞いた<百鬼夜行の復活>に関係あるのだろうかと疑問に思う。


 <隅中の月>

 大陸にある小さな町が<あやかし>によって壊滅したと報告が入る。百鬼夜行が近くまで来ていると鬼婆は言う。

 村を覆う結界を張る為の準備が早々にはじめられた。


 <日中の月>

 大掛かりの結界を張る日が来た。自分を結界の核とし術を組むという。鬼婆の祝詞は一晩中続いているが終わらない。こんな日記など書いている場合ではないがどうしても暇だった。


 外に異変を感じ妻と虎は出て行ってしまう。暇だ。


 妻が出て行って数時間ほどしてから鬼婆は血を吐き倒れてしまう。そのまま動かなくなった鬼婆に寄ろうとしたが、背後に仕えていた使用人が陣の中から動くなと言ったので駆け寄ることも侭ならなかった。こんな物を書いている場合ではなかったが、何かしていないと気がおかしくなってしまいそうだった。


 がたがたと屋敷の屋根が震え、低い呻き声が辺りに響き渡る。

 鬼婆の代わりに祝詞を読み進める使用人の声は上擦っていた。

 <あやかし>がここまで来たのだろう。

 ついに屋根は壊され巨大な目が上空から睨み、開いた穴から手を伸ばそうとしていが、その<あやかし>は一瞬で灰となる。

 屋根の穴から傷だらけになった虎が現れ、口に咥えていたものを自分の前に置く。

 「これしか助ける事は出来なかった」と言いそのまま息絶える。

 それは妻に贈った筈の指輪を着けた左手だった。

 

 それから自分は妻を元に戻そうと<白紙返し>を使う。

 <白紙返し>は記憶を対価に使う。自分が何をしようとしているか忘れない様に状況を思い出し、記しながら使う。


 一度目、妻は戻らない。

 二度目、駄目だ。

 三度目、何故無かったものに出来ない?

 四度目、鬼婆が生き返る。

 五度目、屋根が戻る。

 六度目、<あやかし>の気配が無くなった。

 七度目、何も起こらない。

 八度目、自分は何をしている?

 

 ーー何故物事を書きながら<白紙返し>をしている?何故周囲は白く染まっている?分からない。自分が何をしようとしていたのかが、自分の名が、何も存在しないこの場所が。



 男の日記はここで終了している。これが作り話なのか分からないが、<白紙返し>の恐ろしさを伝えるものならば、十分に伝わった。


 ついでに幼い頃に聞いた御伽噺も記しておく。


 ーこの世には異世界からの迷い人が突然現れる事がある。ある時は世界を救済し、ある時は世界へ厄災をもたらした。その正体が何者かを知る者は居ない。


***** 


 結婚式は盛大に執り行われた。沢山の村人が結婚を祝い、宴会は大いに盛り上がる。

 別室で待機をしていた総一郎とラムウルは静かな時を過ごしていた。

 白無垢を纏うラムウルの姿は一段と美しく、頬を染め俯く姿を総一郎はいつまでも眺めていた。


「いやあ、本当に」

「なんだ?」

「綺麗だと」

「そ、そうか? お前も金持ちの道楽息子みたいで似合っている」

「……」


 それは褒め言葉なのだろうかと聞きたかったが、自分でも鏡に映った姿を見て七五三みたいだと思ったので出かけた言葉を呑み込んだ。 

 ラムウルの頭を包むように被せられた花嫁の角隠しは、その名称通りに額から生えた角を隠している。

 

「角隠しってどうしてそういう名前なんでしょうか?」

「ああ、それは<角を隠して夫に従順に従う>っていう意味があるらしい」

「へえ…」


 ラムウルの言葉を信じて手を握ってみる、怒られない。角隠しの力を信用して口付けをする、ラムウルは小さく息をもらすだけで抵抗をしなかった。

 綺麗に塗られた口紅は剥がれ落ちてしまい、みなの前に出られる状態ではなくなっている。 

 総一郎の胸に体を預けるラムウルをこのまま部屋に連れ帰りたかったが、挨拶もして無い所か衣装のお披露目すらしていない状態だった。


「や、やばい…」

「…?」


 不思議そうな顔で見上げるラムウルを惜しみつつ離し、自らの口を拭う。

 丁度良く襖の外からアメリの声がして、部屋へと招き入れる。

 多少の衣服の乱れと口紅が剥がれてしまっている花嫁を見て、アメリが総一郎へ向ける視線が冷たくなったが、その後無事お披露目も終わる。


「ご苦労だったな。疲れただろう?」


 足を崩して座る総一郎の元にハクゲイがやってきてねぎらいの言葉を掛ける。ラムウルは着替えに行った為その場には他に誰も居なかった。


「いえ、まさかあんなに沢山の方に祝ってもらえるとは」

「まあ、大方騒ぎたいだけの輩もいたがな」


 それでもありがたいと総一郎は思った。元々この世界の住人ではなく、来てから一年と少ししか経っていない。

 そんな状況にも関わらず、村人は暖かく二人の門出を祝った。


「色々と迷いもしましたが、ここで大切なものを見つける事が出来た事を幸せに思います」

「そうか…わしからも、礼を」


 ハクゲイは総一郎の手を握り、震える声で礼の言葉を繰り返す。


「これで、安心して…金稼ぎが出来る」


 「安心して逝ける」と言われてしまうと構えていた総一郎はハクゲイの思わぬ言葉に吹いてしまう。


「そうですね、ラムウルさんの事は任せて下さい」

「ああ、任せたぞ」


 そう言ってハクゲイは総一郎の肩を叩き、涙を拭った。


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