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大人の常識、大人の純情  作者: 篠宮 英
しーくれっとⅠ:婚約編
12/22

Secret.12

 私がお酒が苦手になった理由は、単純明解で飲酒した後の記憶を失くすから。

 それを自覚してからは、余程の席ではない限りアルコールは避けていた。避けていたはずなのに、どうして私は今、裸でいるの?


 事の始まりは、夜明けの肌寒さに自然の摂理で温もりを欲し、いつもの様に毛布を頭の上まで引き上げようとし、そこにあるはずの毛布の端が無く、代わりに弾力のある温かい壁がある事に気付き、その壁にすり寄った時に何故か感じ取ってしまった違和感に、恐る恐るまだ眠いと渋る瞼を開け、私が視たモノは、この世のモノとは思えない美しい顔をお持ちになられている異性ヒトの、裸体の上半身。


 その異様さに叫んでしまいたかったけれど、それよりも更に驚いたコトが起きていてそれドコロじゃなかったのが実情。


 ホラ、良くあるじゃない?酔った勢いで一夜を共にしちゃったってパターンが。

 最初はそれか!?と早まりかけたけど、噂に聞く身体全身に広がる鈍痛やら軋みが無い事に気付き、アヤマチは無かったと考える事にし、そこで思い至った。


 ――なら、何故私は裸なの?


 それから早数十分。

 私は片腕を組んで悩み続けていたりする。もし、ここにもう一人他人がいたのなら、「そんな事はどうでも良いからさっさとその貧相な身体を隠せ」と、私の姿を罵倒するのだろうけれど、生憎とここには私と幸か不幸か(いいえ、確実に不幸ね!!)神崎課長しかいない。


「とりあえず、シャワー?それとも家に連絡する?」


 どっちが正解なの?

 私としては寒いから身体の芯から温まりたいのだけど、無断外泊はこれまで一切してこなかった娘が急に音沙汰なしに無断外泊。


 ――き、きっと、絶対心配してるぅぅ~。


 そこに思い至れば、温まる事は後回しになっていた。

 急いでベットから降り、脱ぎ散らかされた服を身につけて、鞄の中にある携帯を取り出そうとした、のに。



 ――グイッ、バッフン・・・・。



「まだ、起きるには、はやいですよ・・・?」


「っっ、」


 ぅ、ぅ、うきゃぁぁあああぁーーーーーーー!!


 ど、どどうして、神崎課長が起きてるの!?

 しかも寝惚けてない?

 そ、その潤んだ眼差しやめてぇ~!!


 腕を引っ張られ、しかもその上で、いかにも押し倒された様な姿で見下ろされたら、恥ずかしくて、恥ずかしくて顔から火が出て、それだけで死ねる!!


 しかも神崎課長は絶賛寝惚け中なのか、普段はあえて抑えていらっしゃるのだろう誘惑フェロモンを放出中と見受けられ、ハッキリ言えば、目の毒。


 良い?大事な事だからもう一度言わせてもらうわよ?



 目 の 毒 デスよ?



 あたふたと慌てる私を、面白いモノを見ているかのように暫く見おろしていた課長は、何か思いついたのかニンマリと嗜虐的な笑みを浮かべ、私に特大の爆弾を投下して下さいました。


 その爆弾とは・・・。


「昨日は、無理をさせましたね・・・?でもその代わり、私はあなたの大変愛らしい啼き声を堪能させて頂きました。」


 ――貴女があまりにもいじらしく可愛かったもので、つい。



 その言葉に私は能からの命令で、強制的にブラックアウトして、再び目を覚ました時に、盛大に神崎課長に笑われたのだった。

 

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