炎る日差しもあるけれど少しアンニュイな国王と海辺を散歩する
「だからこれ、壊すことできちゃうよ?」
「えっ」
私は驚きながらラウル国王を見ると、うんと一つ頷いた。
「魔法量には自信があるからね。物理で壊すことができると思う」
「でも、これ魔力に触れると茨が出てくるんです」
「そっか、じゃあその茨が出てくる前に壊しちゃおっか?一気にやっちゃえばアンちゃんは無事だよ」
ラウル国王の言葉に何か引っかかりを感じた。
「私は?」
「そう。相手はどうなるか分からないからね。だってこっちから強引に力業で壊すから、このまとわりついている魔法陣の魔力は相手の所に戻っちゃうと思うんだ。これは呪いの基礎の基礎だよね」
「そうですか・・・。」
「それぐらいこれが嫌でもしこれを付けた人を見つける事ができたら外してくださいって言うつもりだったんでしょ?」
「はい。確かに・・・。」
「だから、そんな一方的に呪いをつけるような相手に気を使わずにえいって壊しちゃえばいいんだよ」
そう言うとラウル国王は私の手首をそっと離してくれた。
今度は私がその魔法陣をそっと撫でる。嫌悪感はない。ただ、ほんのり温かく感じるだけ。
ラウル国王はその姿を愛おしそうに眺めていた。
「僕さ、今はもういないけど奥さんの事が大好きだったんだよね」
私は、手首の魔法陣からラウル国王の方に視線を移した。
「結構小さい頃にその奥さんを見つけちゃってね。この子と結婚する~!ってすっごく我儘
を言ったんだって。でも、その子はたまたまこの国に遊びにきていた普通の貴族の子だったんだ。」
「そうなんですね」
それはそこまで珍しくない話だと思う。
「でも、その子のご両親は王家にお近づきになれるチャンスだと思ってその子をすぐに王族に渡しちゃったんだよね。」
「それは・・・。少し可哀想かも?まだ小さかったんですよね?」
「うん。でも可愛かったな。僕は嬉しかったけど、その子は直ぐに自分は捨てられたと思ってずっと泣いていたらしいよ。今考えると酷い事をしたもんだ」
「でも、王妃様のご両親は面会には来られたのですよね?」
「う~ん。どうなんだろうね。僕も同じぐらい幼かったからその時はあまり教えてもらえなかったけど、後で両親や奥さんに色々現実をつきつけられたよ」
どうやら、王妃様のご両親はこの国の貴族籍に入りなおし、政治に介入したいと言い出したみたいだった。元の国ではあまり高い地位の貴族ではなかったらしい。
しかし、実力主義のメリーディエースは王妃様のご両親の希望を二つ返事で了承したらしい。
「もちろん、条件はあったよ」
ラウル国王はそう言って海を見つめた。私も同じ方向を見ていると奥の方でまだ輪郭ぐらいしか見えないが何かが動いてこちらに向かってきた。
「こちらの貴族になりえる実力を見せる事」
そう言うとラウル国王は魔力を槍のような形に変形すると〝エイッ〟と言いながら放り投げた。
海の奥の方で大きな爆発と共に動いていた何かが沈んでいった。
「まあ、いずれは王妃様の両親になるからね。当時の高位役人はかなり柔軟な対応をしてくれたみたいだったよ」
「もしかして、弱い魔物を担当してもらったのですか?」
私の言葉にラウル国王は頷いた。
「そう。僕やアンちゃんが子どもの頃に遊びで追いかけていた魔物を狩ってこいって言ったんだ」
「どうなったんですか?」
私は気になって話の続きを聞いた。
ラウル国王は微笑みながら
「もちろん狩ることはできたよ。まあ、貴族並みの魔力はあったんだろうね。」
「だったら!」
「その帰りにね・・・。もう少しだけ大きい魔物に遭遇したらしいんだ」
その森の主とまではいかないが意外と大物だったらしい。普段だとその魔物を負傷させたタイミングで逃げることもできたが、魔力を使い果たし隙を作ることができなかったらしい。
「すぐに応援の私を含めた応援の部隊を投入したが遅かったよ。私は、妻の両親を殺してしまったんだ」
いつものふざけている表情の王はそこにはいなかった。
「僕はすぐに奥さんにご両親が亡くなった経緯と謝罪をしたよ。奥さんはすぐに僕の謝罪を受け入れてくれた」
「どうしてなんだろうね」
「ただ、奥さんが亡くなる前にね。『あの時は言えなかったけど、両親は身の程を弁えなかった両親が悪かったのです』と」
「愛する人にそんな事言わせちゃ駄目だよね。夫失格だよ」
と言いながらまた、魔力を石を投げるように出すと手前の方でドォーンと爆発音が聞こえ何かが沈んでいった。
「まっ勝手に縛る相手なんぞさっさと離れて自分できちんと恋に落ちなさい!ってことかな?」
「ラウル国王・・・。」
「奥さんの話をしたのは今のアンちゃんの手首の呪いみたいに大切な人を縛った奴は結局その人の家族を奪ってしまった。そんな愚かな王がここにいますよっていう話を聞いて欲しかったのかも」
「縛った側も、縛られた側も幸せになれるんだったいいけどね」
「なんか、長々とお話ししていたら日が沈み始めちゃったね。綺麗な夕日になりそうだね~」
「そうですね。メリーディエースの王族の髪の色みたいですね。」
「あはは、ありがとう。奥さんにも同じこと言われたことあるよ!」
じゃあ、帰ろっかと言いながら二人で城の方に戻っていった。
ラウル国王は、本当に王妃様の事が好きで今も忘れられないんだなって事が良く分かるお散歩でした。
アンニーナ「別にいいんだけどね。あの討伐された魔物あのまま放置で良かったのかな?」
魔物2体はあの後、王の命令できちんと引き上げられました。
最後までお読みいただきありがとうございました。




