呪いが解けた王子様
あ~今日はメンテの日だったんですよ!
決してダラダラしていたわけではないのです。
ハルト君視点です。
「ハルト君はとりあえず一旦部屋に戻って待機していなさい」
先輩のバレリアさんにそう言われると僕は言い返せない。
僕の事を心配して言ってくれているのも理解できるしね。
でも、心の中がずっとざわついていた。なんだろう、胸やけみたいな胃もたれみたいなムカムカが体内を駆け巡っている。
姫と別れてから数時間、夕食時に戻らないのはあちらの使用人から聞いていたので仕方がないと思っていたがさすがに就寝時間前になっても戻ってこないのは王女としてはダメだと思い、もう一度バレリアさんに確認に行くと
プロヴェンツァーレの使用人たちが集まって話し合っていた。
「バレリアさん?」
僕は不安になりバレリアさんに声をかけると周囲の人たちのざわめきが静かになった。
「ハルト君・・・。みんなも取り敢えず部屋に入って話しましょう。貴方たちは入口で待機してください。誰入室許可を求めてきたら私に声をかけてください」
いつも姫を守っている護衛の二人が頷いてすぐにドアの両側に立った。
部屋に入ると数名の姫直属の使用人が集まっていた。
いつもの仕事仲間なので気が知れているはずなのにこの部屋は緊張感に溢れていた。
「アンニーナ様が行方不明になりました」
予期していたことをはっきりと言葉にされるとやはりショックを受けた。
「ハルト君は知っていると思うけど、あの後護衛の二人がアンニーナ様と一緒に移動したのはいいけど途中までしか護衛することを許されなかったの。プライベートエリアに入る必要があったからね。しかも、王子の姿を確認した以上引き下がる事しかできなかったみたいだわ。だから、外で待機している二人を攻めないで上げてね」
バレリアさんは最後の一言は僕の方を見ながら言った。僕が怒り出すのを知っているからだろう。
「あちら側には確認したのですか?」
「ええ、でもサンス王子は泊りがけの公務に出かけているらしくて今城にいる王子はクスター王子のみなのよね」
バレリアさんは不思議そうにしていた。確かに、クスター王子と姫は仲がいいとは言えないからだ。
それに、姫同様に僕もサンス王子が呼び出していると思っていた。
「さすがに、国王にこの件を使えるのは時期尚早と判断し、今夜は私達だけで捜索しようと思っているんですがね・・・。」
「僕も探します!」
一番に手を上げて立候補するとその部屋の皆が「やっぱりね」みたいな表情をする。みんな心配じゃないの?
「ハルト君はダメよ。あなた昨日からずっと勤務しているでしょ?今日の夜は休みだったはず。体調管理も私達の仕事のうちよ。それに、ハルト君が体調を崩して一番悲しむのはアンニーナ様って分かるでしょ?」
お母さんのように優しい口調で注意されると、やっぱり僕は何も言えなくなった。
といっても僕たち使用人ができる事と言えばあちらの国の使用人から情報を集めることぐらいなんだけどね。
ある程度話し合いが終わると解散となり、夜勤チームは聞き取りに休暇チームは自分の部屋に戻っていった。
僕は本当にしっぶしぶ部屋に戻り寝る準備をした。
この国は本当に過ごしやすい気候なので寝るときは大き目のインナーだけを着て寝ていた。
胸のムカつきもあり寝付けないだろうな・・・と思いながらも目を閉じた。
僕は気持ち悪い原因を探すようにひとつの魔力を追っていた。
すると目の前に見慣れた人が眠っていた。
※※※
「アンニーナ!アンニーナ!」
いつもなら『姫』と呼んでいる彼女を無意識に呼び捨てている。
『ん?誰?』
こんなに危機的状況なのにあの子はいつもマイペースだ。
「僕の傍から離れないって約束したよね?」
もしかして昔の約束を忘れちゃったの?
『約束?』
「そう、アンニーナも了承したからその祝福が手首で花咲いているんでしょ!」
『何言ってんの?これは呪いだって。』
はっ?何ってんの?僕はアンニーナの言葉にイラっとした。
「・・・。アンニーナはその祝福で今まで痛い思いや嫌な思いをしたことあんの?」
『なっないわよ』
「おしゃれアイテムにしようかなって言ってたじゃん」
僕は傍で見ていたから知ってるんだよ?
『あれは、冗談よ。ロイヤルジョーク!!』
君はいつもそうやって誤魔化そうとする時その言葉使うよね?
僕はそういう冗談言ったこと無いんだけど?
「そういうの良くないと思うよ」
『ジョーダンを言うって事?』
「違う」
『だったら何?』
「僕意外の男の魔力をまとわせるなって言ってんの!」
やっと気づいた。僕の中でグルグルと渦巻いていた原因。
ねぇ。それは誰の魔力なの?僕のじゃないよね?
そして、なんだか知ってるかも。
ああ、アイツか
僕は目覚めるとそのまま起き上がった。
いつもとは違う視線。立ち上がると姫に「はやく大きくなればいいのにね」なんて言われることのない高さから部屋全体を見渡した。
こんなに見える風景が違うものなのか。
寝巻替わりに着ていた眺めのインナーはちょうどへそが見えるぐらいに短くなっていた。
僕が大きくなっているという事か・・・。
小さな鏡から見える姿は、美しく長い黒髪が背中の真ん中あたりまで伸びていた。
「この姿になるのは本当に久しぶりかも・・・。」
姫の身の回りのお世話で心が満たされていたせいか、呪われた姿のままで過ごすことに不都合を感じる事はなかった。
しかし今は
「うっ」左鎖骨下辺りに綺麗に咲いているそこから黒い茨のようなものが自分の腕と顔の一部を覆うように伸びてきていた。
「アイツ、またアンニーナに魔力を流しやがったな」
いつもより低い声で呟くと、兄様方が用意してくれていた服を身にまといアンニーナがいる場所へと向かった。
今の僕なら侵入することは簡単だろう。しっかりあの子に注意してあげなくちゃね。
「待っててね。僕のアンニーナ」
最後までお読みいただきありがとうございました。




